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糖尿病は爪白癬を引き起こす!最悪の場合、足が壊死します 糖尿病の患者の方は血管が細くなり血流が悪くなります。 血液は細胞に酸素と栄養を運び、細胞が排出した二酸化酸素と老廃物を回収しますが、血流が悪化すると、それらが滞りトラブルが起こります。 特に身体の末端にはトラブルの影響がでやすいので糖尿病患者の方が足にトラブルを抱えることが多くなります。爪の異変もその1つです。爪の異変で代表的なものに爪白癬(爪水虫)や巻き爪などがあります。 この記事では、糖尿病を発症すると、なぜ爪のトラブルが引き起こりやすいのか、そのメカニズムと、予防法、早期発見のためのチェック方法などを紹介します。 糖尿病の人がなりやすい爪の異常 糖尿病の人がなりやすい爪のトラブルには次のようなものがあります。 ●爪白癬 ●爪の変形(巻き爪など) ●爪の肥厚(爪が分厚くなる) ●爪の変色 以下で、それぞれ詳しく解説していきます。 爪白癬 爪白癬(つめはくせん)の白癬とは、カビの仲間である白癬菌に感染して発症する感染症の一種です。白癬菌はケラチンというたんぱく質を栄養にするため、ケラチンが多く存在する頭部、顔面、体部、股部、足、足の爪などに白癬を引き起こします。 白癬の呼び名は発症する部位で異なり、股部の白癬をインキンタムシといい、足の白癬を水虫と呼ぶことがあります。爪白癬は足白癬に次いで発症頻度が高い白癬です。 爪白癬の症状は、爪の色が白色や褐色になり、分厚くなります。水虫やインキンタムシはかゆみや痛みが出ますが、爪には神経が通っていないため爪白癬には出ません。爪白癬で爪が分厚くなると非常に脆くなります。そのため、放っておくと割れたり、ヒビが入ることがあります。 爪の変形 糖尿病による爪の変形では、爪の端の方が内側に曲がりこむ巻き爪(陥入爪)が頻発します。放置すると爪が肉に食い込んでしまうので痛みが強く、食い込みが深くなると傷がつき、細菌が入ると化膿や炎症を引き起こしてしまいます。 爪の肥厚 爪の肥厚とは、正常な爪のように前方に向かって伸びていかず、爪が分厚く成長していくことをいいます。足に合わない靴での圧迫や加齢、体重の増加で起こることがありますが、先に紹介した白癬菌がきっかけになることもあります。 白癬菌による爪の肥厚を放置しておくと割れやすくなったり剥がれやすくなったりします。また、白癬菌に感染していなかった場合でも、爪の肥厚を放置していると爪と指の間が浮いて白癬菌が入り込みやすくなるため、爪白癬を合併症として引き起こすリスクが高まるといわれています。 爪の変色 乾燥がひどくなり、白く濁ったように変色します。また、糖尿病患者の方は血管が細くなり栄養分が行き届かず不足しているので爪の成長が均一にいかず白い線が出たり、爪の表面が波打ったような段差ができることもあります。 爪に異常が出やすい理由 糖尿病患者さんの足の爪に異常が出やすい理由には、以下の2つがあります。 ・血流の問題 ・糖尿病足病変 次の項目で詳しく説明していきます。 血流の問題 糖尿病患者の方の血流の悪化には動脈硬化が考えられます。動脈硬化は、酸素と栄養を多く含む血液が流れる動脈という血管の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れてしまうので、結果的に血流を悪化させてしまいます。 高血糖状態が続くと血管を傷つけます。さらに糖尿病の原因であるインスリンが効きにくくなる状態(インスリン抵抗性)や肥満も動脈硬化の原因にもなります。また糖尿病になると血液粘度が高くなり、高脂血症や高血圧を発症しやすくなります。この3つは動脈硬化の危険因子になります。 動脈硬化を起こしている血管では、内側にコレステロールが蓄積していき血管の空間が狭くなっていきます。また血栓や潰瘍をつくることもあるので血流が悪化します。血流が悪くなると、身体の末端部分の手足にまで栄養が十分に行き渡らなくなります。 爪は、爪の根元の爪母(そうぼ)という皮膚で見えない部分でつくられ、1日0.1mmほど成長します。爪が正常に成長するには酸素と栄養が必要になりますが、血流が悪くなると酸素も栄養も届きにくくなります。その結果として爪に異常が出てしまいます。 糖尿病足病変 糖尿病によって起きる足の異変(たこ、巻き爪、爪白癬など)を総称して、糖尿病足病変といいます。 糖尿病患者の方は、先述したように身体の末端である足の血管が詰まりやすく、その結果血流が悪化して、必要な酸素や栄養が不足して、糖尿病足病変の症状を引き起こすと考えられています。 糖尿病足病変には、しびれや痛み、感覚が鈍くなるといた神経障害もあります。そのため、足に傷があっても異変に気付きにくく、気がつかないうちに症状が悪化してしまい、場合によっては壊疽を起こし、足を切断することもあります。 爪のケアのポイント こちらも併せてご参照ください 糖尿病患者さんが足の爪の異変を起さないようにするには、セルフケアが欠かせません。以下の点に注意してください。 ●足のチェックを欠かさない ●清潔に保つ ●爪の切り方 1つずつ確認していきましょう。 足のチェックを欠かさない 足のチェックポイントは、次のとおりです。 ●足のしびれ ●足がほてり、冷え ●足がつる、こむら返り ●長時間歩いたあとのふくらはぎの痛み ●足の爪が見えづらい ●爪がよく見えず切りづらい ●爪切りでケガをすることがある ●足をケガすることが多い これらの項目について思い当たるものが多いほど、爪の異常や糖尿病足病変のリスクが高くなります。 清潔に保つ 足は常に汚れや細菌が多い地面や床の近くにあります。また、靴を長時間履くことも多く、汗や熱がこもりやすく菌が繁殖しやすくなります。一方、足は意識しなければほとんど見ることがない部分ですので、異変があっても気付きにくくなります。 したがって足は特に意識的に清潔を保つようにケアしなければなりません。 例えば次の点に注意してみてください。 ●靴下は必ず着用する ●靴を洗う頻度を上げる ●入浴時、足の裏や指の間をよく洗う ●入浴後は清潔なタオルで水分をよくふき取る ●クリームなどで乾燥やひび割れを予防する 靴下は靴擦れを防ぐなど汚れやケガから足を保護するだけでなく、水虫の予防にもなります。着用するときは通気性の良い綿製のものを履き、毎日履き替えるようにしましょう。また入浴後に足が濡れたままだと、かえって水虫の原因になります。 入浴後は足の水分をしっかりと取るようにしましょう。雨で濡れた場合やスポーツで汗をかいた場合はすぐに靴下を履き替え、濡れたままにしないことも大切です。また、靴を履くときだけでなく、足と爪を保護するために室内でも靴下を履くと良いでしょう。 また、糖尿病を発症すると皮膚が乾燥しやすくなるため、足がかさかさしたり、ひび割れすることがあります。ひび割れを放置すると感染症を招く原因になるため、足を保湿することも重要です。 毎日こまめに手入れをすれば、足を清潔に保つだけでなく足の異変にも気付きやすくなります。 爪の切り方 爪が長すぎるとケガをしやすいため、こまめに爪を切ることが大切です。しかし、糖尿病患者の方が爪を切る場合は注意点があります。 まず、爪は必ず明るい場所で切ってください。さらに爪を切るときは深爪を避けるようにすることも重要です。そして、巻き爪が起きたり爪が硬くなったりしたら、無理に自分で切らずに皮膚科にかかりましょう。 暗い場所で切ったり、無理な力を入れて切ると、ケガの原因になります。また、爪が見えにくいという場合は家族に切ってもらうのも良いでしょう。 爪の切り方は、以下のイラストを参考にしてください。 引用元:BIYOUnote.「ネイリストが解説!正しい爪の切り方と6つの注意点」 1:爪はまっすぐ横に切ります。角を落とすことは避けてください。 2:角があると布などに触れたときに引っかかってしまうので、やすりで削って角を落としてください。 爪を切るタイミングは、爪が柔らかく、爪切りの刃を当てても爪が割れにくい入浴後がベストです。また入浴後は足の汚れが落ちているので、もし爪切りで皮膚を傷つけても感染症のリスクが低くなります。 まとめ 糖尿病の方は、足に何らかの症状が出る場合が多いです。症状の予防と、もし発症してしまった場合にも、すぐに気がついて治療ができるように、日頃から足や爪のケアを行ってください。 また、足のチェックを習慣とし、異常がないか確認したり、クリームなどで保湿して清潔に保っておくことも重要です。 そもそも足の爪や足の異変は、糖尿病により血流の悪化が原因でトラブルが起きやすくなります。そのため足のケアだけではなく、糖尿病による動脈硬化などの血管の病気を発症しないように治療に取り組むことも大切です。 関連する記事はこちら
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病|糖尿病と診断される基準と7つの検査項目 糖尿病の初期段階は自覚症状がないため、糖尿病を発症しているかどうかは医療機関で検査しなければわかりません。糖尿病は、初期段階で治療に着手できれば通常の生活を送ることができますが、放置すると重大な合併症を引き起こすことがあります。 早期発見のためにも糖尿病検査はとても重要です。 この記事では糖尿病の検査と診断方法について解説します。 糖尿病の検査項目 糖尿病検査には複数の検査項目があります。医師はこれらを総合的に確認することで「糖尿病」と診断します。 以下でそれぞれの検査項目の内容を7つ紹介します。 空腹時血糖値検査 空腹時血糖値検査は血糖値検査の一種で、空腹時に採血を行い血液中にブドウ糖がどれくらいあるかを測定します。血液中のブドウ糖の濃度のことを血糖値といい、検査結果は「血液1dl中にブドウ糖が何mg含まれているか」を表します。 空腹時血糖値検査は10時間以上何も食べていない状態で行います。血糖値は食事をすると高くなるため、空腹時は血糖値が最も低く出るはずです。したがって空腹時血糖値検査で高い数値が出ると、糖尿病である確率が高いと推測できます。 また空腹時血糖値検査は治療効果を判断するときにも使います。 随時血糖値検査 随時血糖検査は、食後からの時間を決めずに採血して血糖値を測定する方法です。随時検討検査と空腹時血糖値検査の両方の結果を確認することで血糖値の変動がわかります。 75gOGTT(ブドウ糖負荷)による血糖値検査 75gOGTT(ブドウ糖負荷)血糖値検査とは、10時間以上絶食した検査対象者に75gのブドウ糖を水に溶かしたものを飲んでもらい採血を行います。 採血は、ブドウ糖を飲む前(空腹時)、飲んでから30分後、1時間後、2時間後の計4回行います。 75gOGTTは食事による血糖値の影響を見るために行います。 尿検査 糖尿病の尿検査では、採尿し、尿糖(尿1dlのなかに糖が何mg入っているか)を調べます。 糖尿病の尿検査は、食前に行ったり、排尿してから食事をしてもらい食後2時間後に行ったりします。通常、血糖値が160~180mg/dlまで高くなると尿に糖が出てくるため、尿検査は主に糖尿病かどうかのスクリーニングを目的として行われます。 HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)検査 ヘモグロビン(Hb)は、赤血球のたんぱく質の1つで、酸素を運搬する働きがあります。ヘモグロビンは血液中の糖と結合し、糖化ヘモグロビンに変化します。HbA1cはすべてのヘモグロビンのうち糖化ヘモグロビンがどれだけあるかを割合(%)で示したものです。 血糖値が高ければヘモグロビンと結合する糖も多くなります。 ヘモグロビンが作られてから壊れるまで120日かかるため、HbA1c検査によって過去1~2カ月間の血糖値の変動がわかります。 GA(グルコアルブミン)検査 アルブミンとは血液中を流れるたんぱく質で、血液中のアルブミンが糖にさらされて結合したものをグルコアルブミン(GA)といいます。アルブミンは作られてから壊れるまで約20日かかるため、GA検査によって1~2週間の血糖変動がわかります。 GA検査は全アルブミン量に占めるGAの割合を%で表したものです。 日本赤十字社では、献血に協力した方へのサービスとして、GAなどの生化学検査を行っています。そのため献血に行くとGAを計測してもらうことができます。 1,5AG(1,5アンヒドログルシトール)検査 1,5AG(1,5アンヒドログルシトール)は血液中の糖類のなかでブドウ糖の次に多いもので、ブドウ糖に似た構造をしています。 血液中の1,5AGは腎臓で濾過されたあと、99.9%が再吸収されます。1,5AGは多くの食品に含まれますが、健康な人であれば摂取した量と同じ量が排泄されるため、血中濃度は一定値を保ち、変動がほとんどありません。つまり、血糖のように食事による影響がほとんどないのです。 一方、構造の近いブドウ糖が血中で大量に増えると、腎臓でブドウ糖を再吸収することができず、尿中に排出されます。ブドウ糖は腎臓で1,5AGの再吸収を競合阻害するため、1,5AGの尿への排出量が増え、血中濃度が下がります。 つまり糖尿病を発症すると1,5AGが尿として排出され、血液中の1,5AGが減ることになります。したがって1,5AG検査は基準値より低いときに糖尿病が疑われることになります。 1,5AG検査では、血液1ml中に何μgの1,5AGが含まれているかを計測しており、基準値は以下となっています。 男性:15~45μg/ml 女性:12~29μg/ml HbA1c検査は過去1~2か月、GA検査は過去1~2週間の平均の血糖値を見るのに対し、1,5AGは数日程度の短期間の血糖変化を見る目的で用います。 糖尿病と診断される基準 「糖尿病の診断基準」とは医師が「糖尿病である」と診断する基準のことです。2012年、日本糖尿病学会は新しい糖尿病診断基準を発表し、HbA1cの値も診断基準として用いることになりました。 新しい糖尿病の臨床診断のフローチャートは以下となります。 引用元:糖尿病情報センター「糖尿病の新しい診断基準」 診断基準はまず、「血糖値とHbA1c」または「血糖値のみ」または「HbA1cのみ」からスタートします。この3つの基準で糖尿病あるいは糖尿病型と判定できるかどうかを判断します。 「糖尿病型」については後述します。 糖尿病の診断方法 ここからは糖尿病の診断方法について解説していきます。 診断基準の組み合わせによって診断される 糖尿病の診断は、各種検査の結果を診断基準と照らし合わせ、症状や家族歴、体重歴なども含めて総合的に判断することになります。 診断にあたっては下記のいずれかを用います。 ・糖尿病型を2回確認する ※少なくとも1回は血糖値による検査結果を含めること ・糖尿病型(血糖値の結果のみ)を1回確認+慢性高血糖症状がある ・過去に糖尿病と診断されたことがある 血糖値による糖尿病の診断 糖尿病はある日突然発症するものではなく、徐々に血糖値が高くなり糖尿病と診断される状態にいたります。医療機関では、正常な状態から糖尿病にいたるまでの段階を症状や状態ごとに「正常型、境界型、糖尿型」の3つにわけ、それぞれの段階に応じて対応しています。 こちらも併せてご参照ください 正常型の判定 以下の2条件をともに満たすときは正常型と判定されます。 ・空腹時血糖値110mg/dl未満 ・75gOGTT(ブドウ糖負荷)による食後2時間の血糖値140mg/dl未満 ただし、正常型に該当する場合でも、空腹時血糖値が100mg/dl以上の場合は「正常型」でのなかでも「正常高値」と判定されます。正常高値に該当する人は病態に応じて経過観察を行い、OGTTを勧めることがあります。 正常型とはあくまで糖尿病型への悪化率が年1%未満の状態のことをいいます。正常型であっても、OGTTの値が高い場合は糖尿病型に進むケースもあります。 境界型の判定 境界型は、糖尿病型とも正常型にも含まれない状態のことをいいます。具体的には以下の2つのいずれかに該当するとき境界型と判定されます。 ・空腹時血糖値110mg/dl以上126mg/dl未満 ・75gOGTT(ブドウ糖負荷)による食後2時間の血糖値140mg/dl以上200mg/dl未満 病態や家族歴によっては、境界型の患者の方に、再検査や他の検査を受けることを勧めることがあります。 境界型の患者の方は糖尿病型に悪化する確率が高いだけでなく、動脈硬化性の合併症の発生頻度が増加する傾向があります。そのため、境界型と診断した患者の方に対し、医師は食事療法や運動療法を指導し、肥満解消を勧め、定期的に検査することになります。 糖尿病型の判定 以下のいずれかの条件に該当する場合は糖尿病型と判定されます ・空腹時血糖値126mg/dl以上 ・75gOGTT(ブドウ糖負荷)による食後2時間の血糖値200mg/dl以上 ・随時血糖値200mg/dl以上 ・HbA1c 6.5%以上 3つの血糖値検査のうちいずれかの値とHbA1cの値がいずれも糖尿病型であると判断された場合は糖尿病と診断されます。また、血糖値のみが糖尿病型と判定された場合は、別の日に検査を行い、2回とも糖尿病型であることが確認された場合は糖尿病と診断されます。 HbA1cのみが糖尿病型であると判定された場合も再検査を行いますが、血糖値が糖尿病型であるという結果が出た場合にのみ糖尿病と判定されます。HbA1cのみの検査で判断することはありません。 ただし、必ず1回は血糖値による検査で糖尿病型であることが確認されていることが必要です。さらに、血糖値のみが糖尿病型で、糖尿病の典型的な症状または確実な糖尿病網膜症がある場合など一定の条件を満たす場合も糖尿病と診断されます。 まとめ 糖尿病の診断基準と診断方法について説明しました。糖尿病の検査にはさまざまな種類があります。複数の検査を組み合わせることで、健康診断などの血糖値検査では見つけにくい糖尿病なども発見しやすくなります。 気になることがある場合は医師に相談し、積極的に検査を受けることが大切です。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.10.10 -
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糖尿病の治療法は食事療法、運動療法、薬物療法の3つが基本ですが、最初は食事療法と運動療法で治療を開始します。運動療法は合併症や持病がある場合は実施しないこともありますが、食事療法はすべての糖尿病患者の方が取り組む必要があります。 しかし、糖尿病の食事療法でどんな栄養素を摂れば良いか、どんな食事をすれば良いのかわからない人も多いのではないでしょうか。 この記事では、糖尿病治療の基本である食事療法について詳しく解説したうえで、おすすめの料理レシピを紹介します。 栄養素バランスと食事の摂り方 糖尿病の食事療法は複数の食品を組み合わせて栄養のバランスの良い食事を摂ることが基本になります。素人が栄養バランスを考えることは難しいかもしれませんが、日本糖尿病学会から出版された「糖尿病食事療法のための食品交換表」を使うと簡単に行えます。 食品交換表ではさまざまな食品を栄養素ごとに6つの表にわけていて、それぞれの表のなかの食品をまんべんなく食べることを推奨しています。 食品交換表の概要は以下のとおりです。 食品交換表ではさらに80kcalを1単位として、食材ごとに1単位の量(g)を表示しています。そして、同じ表のなかであれば、同じ単位の別の食品と交換してもよい、というルールにしています。 例えばご飯と食パンとうどんとジャガイモは表1に属します。そして、それぞれの1単位(80kcal)は、ご飯50g、食パン30g、うどん20g、ジャガイモ110gとなっています。例えば、病院の管理栄養士から「朝食では表1から2単位食べるように」と指示されたら、ご飯100gでも食パン60gでもうどん40gでもジャガイモ220gでも、好きなものを1つを選択できるのです。 表1~6から何単位食べるかは、医師や管理栄養士が糖尿病患者の方の状態や嗜好を考慮しながら決めていきます。 こちらも併せてご参照ください 1日に必要な摂取カロリー 糖尿病の食事療法では、「1日に必要な摂取カロリーを守ること」が大切です。 必要な摂取カロリー量は、糖尿病の合併症の有無や年齢、性別によって異なりますが、以下の計算式で大体の目安を知ることができます。 1日に必要な摂取カロリー(kcal)=標準体重(kg)※1×身体活動量(kcal/kg)※2 ※1 標準体重(kg) =身長(m)×身長(m)×22 ※2 身体活動量は以下のとおりです。 ・デスクワークが多い人:25~30kcal ・立ち仕事が多い人:30~35kcal ・力仕事が多い人:35kcal~ 身長170cmの人で立ち仕事の多いという場合を想定して計算してみましょう。 この場合、標準体重は1.7(m)×1.7(m)×22=63.6(kg)、身体活動量は30~35kcalとなりますから、 1日に必要な摂取カロリーは以下となります。 1日に必要な摂取カロリー(kcal)=63.6(kg)×(30~35)(kcal)=1,908~2,226(kcal) この数字は大体の目安です。実際に糖尿病の食事療法に取り組むときは、医師と話し合って1日に必要な摂取カロリーを算出します。 炭水化物制限 「糖尿病診療ガイドライン2016」(編・著:日本糖尿病学会)によると、糖尿病の食事療法を行う際に適正な炭水化物の割合は50~60%となっています。 ただし、炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスクの関係や炭水化物の制限が糖尿病の改善に有効であるという明確なデータはないため、食事療法に取り組むときは炭水化物の摂取量についても医師と相談しながら決めることになります。 一方、糖尿病の食事療法にはカーボカウントという方法もあります。カーボカウントとは、炭水化物を「制限」するのではなく、食事ごとの炭水化物量を「計算する」方法です。 これによって、食事ごとの炭水化物の摂取量を一定にしたり、注射するインスリン量を調節し、食後の急激な血糖値の上昇を抑えます。 食塩制限 日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインによると、糖尿病患者は1日の塩分摂取量を5~6gに抑えることが推奨されています。食塩は食欲を増加させる作用があるうえ、食塩の過剰摂取は血圧を上昇させるリスクがあるため、心疾患や脳卒中などの発症リスクが高まります。 なお、塩分摂取量には食材や調味料のなかに含まれている塩も含みます。加工食品は意外に多くの塩分が含まれているので注意してください。 糖尿病治療におすすめのメニュー 糖尿病患者の方は栄養バランスと食事量に気をつける必要があります。ここからは糖尿病の症状の軽減させるためのおすすめメニューを紹介します。 サバとミニトマトのグリル 引用元:糖尿病サイト「サバとミニトマトのグリル」 カロリー: 258kcal たんぱく質:17.8g 食物繊維 :1.4g 脂質:13.8g 糖質:11.5g 炭水化物:12.9g 食塩:0.8g ●材料(1人分) サバ(3等分にカット)・・・80g 長ねぎ(食べやすい大きさにカット)・・・15g インゲン(食べやすい大きさにカット)・・・2本 ミニトマト(食べやすい大きさにカット)・・・3個 こしょう 少々 <A> にんにくみじん切り 小さじ1/4 白ワイン 小さじ2 バルサミコ酢 小さじ2 塩 少々 オリーブオイル 小さじ1 ●つくり方 ・ボウルにAを入れて混ぜ、その後、長ネギ、インゲン、ミニトマトを絡める<B> ・耐熱容器にサバを並べて、上から<B>を乗せ、余熱したトースターで15~20分焼く ・サバに火が通っていることを確かめたら、こしょうをふって完成 ●おすすめポイント 鯖などの青魚にはDHAやEPAなど血液をさらさらにする成分が豊富に含まれているため、動脈硬化などの合併症予防に効果が期待できます。 回鍋肉 引用元:おいしい健康「ヘルシーだけどこくうま回鍋肉」 エネルギー:203kcal たんぱく質:14.8g 脂質:9.8g 炭水化物:12.8g コレステロール:40mg 食塩相当量:1.4g 食物繊維:2.8g カリウム:518mg ●材料(1人分) 豚もも肉(薄切り、食べやすい大きさにカット)・・・60g キャベツ(食べやすい大きさにカット)・・・100g ピーマン(食べやすい大きさにカット)・・・30g にんにく(薄切り)・・・2g 油小さじ・・・3/4 (3 g) <A> 酒 小さじ1 (5g) 片栗粉 小さじ2/3 (2 g) <B> しょうゆ 小さじ1弱(5g) 砂糖 小さじ1/3(1g) 甜麺醤 小さじ2/3強(5g) 豆板醤 小さじ1/4弱(1.5g) 水 小さじ1(5g) ●つくり方 ・豚もも肉にAをもみ込む ・キャベツとピーマンを耐熱容器に入れてラップをかけ、電子レンジ(600W)で約2分加熱 ・油をひいたフライパンににんにく入れ、香りが出るまで弱火で炒める ・フライパンに豚もも肉を投入して中火で炒める ・キャベツとピーマンを入れてさらに炒める ・具材に火が通ったらBを加えて混ぜ合わせて完成 ●おすすめポイント キャベツをとピーマンをレンジで加熱しておくことで、少ない油で炒めることができます。 筑前煮 引用元:糖尿病サイト「筑前煮」 カロリー:90cal たんぱく質:5g 食物繊維:2.3g 脂質:2.6g 糖質:8.2g 炭水化物:10.7g 食塩相当量:0.8g ●材料(1人分) 鶏もも肉(皮なしのもの、食べやすい大きさにカット)・・・40g 干ししいたけ(水につけて戻しておく、食べやすい大きさにカット)・・・2g こんにゃく(食べやすい大きさにカット)・・・30g 里いも(食べやすい大きさにカット)・・・30g ごぼう(食べやすい大きさにカット)・・・25g れんこん(食べやすい大きさにカット)・・・25g にんじん(食べやすい大きさにカット)・・・20g 絹さや(食べやすい大きさにカット)・・・1/2枚 だし汁・・・ひたひた程度 酒・・・大さじ1/2 砂糖・・・大さじ1/3 みりん・・・小さじ1/2 しょうゆ・・・大さじ1/2 サラダ油・・・小さじ1弱 ●つくり方 ・こんにゃくを下ゆでする ・里いもの皮をむき、ゆでこぼす ・ごぼうとれんこんは水にさらしておく ・鍋にサラダ油を入れて熱し、鶏もも肉を炒める ・鍋に干ししいたけ、ごぼう、にんじん、里いも、こんにゃくの順に入れて炒める ・鍋に酒を入れ、1分ほど煮てアルコールを飛ばす ・鍋にだし汁を入れる ・鍋に砂糖、みりんを加える ・アクを取りながら中火で5分煮たら、しょうゆを加える ・落とし蓋をして中火で15分煮る ・れんこんを加えて7分ほど煮て火を止める ・絹さやを熱湯でさっとゆでる ・皿に盛りつけて絹さやで彩を加えて完成 ●おすすめポイント 鶏肉は皮なしを選ぶか、皮を取り除くことで脂質を減らすことができます。 つくり置きできる食事療法レシピ 仕事などで忙しく、食事を作ることが難しい方もいるでしょう。そのような方に糖尿病患者の方のための作り置きできるメニューを紹介します。 キャベツとミックスビーンズのマリネ 引用元:糖尿病サイト「キャベツとミックスビーンズのマリネ」 カロリー:87kcal たんぱく質:4.6g 食物繊維:3.0g 脂質:3.8g 炭水化物:9.8g 食塩:0.7g ●材料(1人分) キャベツ(食べやすい大きさにカット)・・・100g ミックスビーンズ・・・25g <A> 穀物酢・・・小さじ2 醤油・・・小さじ1 オリーブオイル・・・小さじ1/2 はちみつ・・・小さじ1/2 ●つくり方 ・キャベツをさっとゆでて冷水にさらし、水気を取る ・ボウルにAとキャベツ、ミックスビーンズを入れて和えたら完成 ●おすすめポイント ミックスビーンズは食物繊維が豊富です。パウチや缶詰で売られているため、簡単に調理することができます。 豆苗ときくらげのナムル 引用元:糖尿病サイト「豆苗ときくらげのナムル」 カロリー:15kcal たんぱく質:1.1g 食物繊維:1.5g 脂質:0.7g 糖質:0.7g 炭水化物:2.1g 食塩相当量:0.3g ●材料(1人分) 豆苗・・・50g きくらげ(水でもどしておく)・・・3g <A> 湯・・・大さじ1/3 鶏がらスープの素・・・小さじ1/2弱 ごま油・・・小さじ1/4 にんにく(すりおろし)・・・0.5g ●つくり方 ・きくらげはさっとゆでる ・豆苗をゆでて水分をきる ・きくらげは細切りに、豆苗は3等分に切る ・ボウルにA、きくらげ、豆苗を加えて混ぜたら完成 ●おすすめポイント きくらげにはビタミンDが多く含まれます。ビタミンDは腎臓や肝臓で活性化され、すい臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を促進する効果があるといわれています。 まとめ 糖尿病改善に効果の期待できる栄養素とおすすめの食事メニューを紹介しました。 糖尿病の食事療法の基本は「1日の摂取カロリーを守り、栄養バランスの良い食事を規則正しく食べること」です。食品交換表を使えば、食材や料理のバリエーションが増えますので、楽しみながら食事療法を取り入れると良いでしょう。
最終更新日:2022.09.21 -
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糖尿病で血管はどうなるか|血管障害が引き起こす合併症 国民病と呼ばれる糖尿病ですが、糖尿病予備軍と診断されたけど「糖尿病がどういうものかはっきりしない」「予防したくてもどう予防したら良いかわからない」と、詳しいことまでわかっているという人は少ないのではないでしょうか。 糖尿病は、「甘いものを食べ過ぎることで発症する」」「尿の病気」というイメージがあるかもしれませんが、実は「糖尿病は血管の病気」です。 この記事では、糖尿病がどういうものなのか、また血管の病気と呼ばれる理由や糖尿病の予防法について説明していきます。 糖尿病の血管への影響 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと血管を傷つけます。このとき、末梢の細い血管だけでなく、心臓などの太い血管も傷つけます。傷ついた血管の壁は次第に硬くなり、血管内が細くなったり詰まったりします。太い血管が、傷つき、血流が悪くなったり血管が詰まることを動脈硬化といいます。 糖尿病で血管障害が起こるメカニズム 糖尿病による血管障害のことを糖尿病性血管障害といいます。では、なぜ糖尿病によって血管障害が起こるのでしょうか。 高血糖状態が続くと血管が傷つきます。このとき細い血管が傷つくと、毛細血管の集まる腎臓や網膜、神経などに症状が現れます。一方、太い血管が傷つくと、傷ついた場所にコレステロールなどが溜まることでプラークが生じ、動脈硬化が起こります。動脈硬化が心臓の血管で起こると心筋梗塞、脳の血管で起こると脳梗塞を引き起こすことになります。 糖尿病の原因 食事を摂るとすい臓からインスリンという血糖値を下げるホルモンが分泌されます。しかし、糖尿病患者の方はインスリンの分泌量が少ない、あるいはインスリンが作用しにくいため、血糖値が下がりません。 糖尿病は発症原因によって大きく1型糖尿病と2型糖尿病にわかれますが、一般的に「糖尿病」と呼ばれるのは2型糖尿病のことを指すことが多いです。 2型糖尿病を発症する原因には次のようなものがあります。 ・体質(遺伝的要素) ・運動不足 ・肥満 ・食べすぎ ・ストレス 2型糖尿病は遺伝的要素と食べすぎなどの生活習慣の乱れが組み合わさることで発症するといわれています。 食べ過ぎが続くとすい臓はインスリンを過剰に分泌することになるため、疲弊してしまい、インスリンの分泌力が低下します。また、運動不足や肥満はインスリンが作用しづらくなります。これをインスリン抵抗性といいます。 また、ストレスは交感神経を活発にするため、血糖値を上げるホルモンが分泌しやすくなります。もともとインスリンの分泌力が低かったり、インスリンの効きづらい体質に上記のような生活習慣の乱れが加わることで糖尿病を発症するといわれています。 糖尿病の慢性合併症 糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状がありませんが、放置するとさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。 糖尿病による合併症は大きく次の2つにわけることができます。 1)細小血管障害 2)大血管障害 それぞれについて以下で詳しく見ていきます。 1)細小血管障害 糖尿病の合併症における細小血管障害の代表的なものは次の3つです。 ①糖尿病神経障害 ②糖尿病網膜症 ③糖尿病性腎症 いずれも糖尿病に特有な症状のため「糖尿病の3大合併症」と呼ばれています。 それぞれどのような症状なのか解説します。 ①糖尿病性神経障害 糖尿病性神経障害の症状には、手足のしびれや痛み、感覚の麻痺などがあります。感覚が麻痺すると、やけどやケガをしても気付かないため、傷が治りにくく、感染症を引き起こやすくなります。最悪の場合、足の細胞が壊死し、切断することもあります。 なぜ血糖値が高い状態が続くと神経が障害されるのでしょうか。 糖尿病性神経障害の発症原因はまだはっきりとはわかっていません。一説には、血糖値が高い状態が続くことで神経細胞にソルビトールという物質が蓄積されるため神経障害が起こるといわれています。 また、糖尿病になると細い血管(細小血管)が傷つくことで血流が悪くなり、神経細胞に酸素や栄養を届けにくくなくなることも原因の1つといわれています。 ②糖尿病性網膜症 糖尿病性網膜症とは糖尿病によって網膜の血管が障害され、視力低下や失明を招く病気です。網膜は眼底にある薄い神経の膜のことをいい、目に入ってきた色や光を受け取り、視神経を通って能に伝達する働きがあります。 網膜には細小血管がたくさん張り巡らされており、糖尿病によってそれらの細い血管が壊されてしまうと必要な栄養や酸素が網膜に届かなくなります。網膜が酸欠状態になると、新しい血管「新生血管」を作り、酸素を補おうとします。しかし新生血管はもろいため、すぐに出血してしまいます。 出血すると新生血管の周りにかさぶたのような組織(増殖膜)ができ、網膜を引っ張るため、場合によって網膜が剥がれてしまい失明を招くことがあります。 ③糖尿病性腎症 糖尿病性腎症は悪化すると腎不全に陥ります。腎不全を引き起こすと人工透析を受け続けるか、腎移植を受けるしか方法はありません。血液内の老廃物は腎臓にある糸球体と呼ばれる組織で濾過され、尿と一緒に体外に排出されます。 糸球体は毛細血管の塊ですので、毛細血管が糖尿病によって傷つくことで腎臓の機能が低下してしまいます。 2)大血管障害 糖尿病によって太い血管が障害される大血管障害には次のようなものがあります。 ●脳梗塞 ●狭心症・心筋梗塞 ●閉塞性動脈疾患 それぞれ以下で詳しく見ていきましょう。 脳梗塞 脳梗塞は、脳の血管が詰まり、その先に酸素と栄養が運ばれないために脳の細胞の一部が壊死する病気です。壊死した場所によって、右半身麻痺や左半身麻痺が起きたり、言語障害や意識が薄れたりします。 脳梗塞を発症すると重い障害が残ることが多く、場合によっては死亡することもあります。 高血糖状態が続くと太い血管が傷つけられます。傷の部分にコレステロールや脂肪などでできたプラークという物質が付着します。プラークが大きくなり破裂すると、血小板が集まります。通常、血小板は傷口と結合して血栓を作ることで傷口をふさぐ働きがあります。 そのため、プラークが破裂すると、血小板はプラークの脂肪分が混ざった血栓を作り出します。血栓ができると、そこから先の組織に血液が流れなくなります。 これが脳の血管で起こると脳梗塞になります。 狭心症・心筋梗塞 心筋梗塞は心臓に栄養と酸素を運んでいる冠動脈と呼ばれる血管が詰まり、心筋細胞が壊死してしまう病気で、胸に激痛が走り、30分から数時間続くことが特徴です。 狭心症は血管が狭くなること心筋への血液の流れが悪くなることです。心筋梗塞は血管が完全に詰まった状態ですが、狭心症は血管が細くなることで発症します。狭心症はぎゅっと締め付けられるような胸の痛みが一時的に起こることが特徴です。 心筋梗塞と異なる点は、数分から15分程度で痛みが治まる点です。狭心症と心筋梗塞をまとめて虚血性心臓疾患と呼びます。 高血糖状態が続くことで心臓の血管が傷つき、傷口にプラークができることで血管が狭くなると狭心症、プラークが破裂して血栓ができ、血液の流れがふさがると心筋梗塞になります。 閉塞性動脈疾患 閉塞性動脈疾患とは足の動脈が閉塞して起きる障害です。 閉塞性動脈硬化症は、高血糖状態が続くことで足の太い血管(動脈)が傷つき、動脈硬化を起こすことで発症します。足の動脈が詰まることで足の細胞に栄養や酸素が届かなくなり、間歇性跛行などが起きます。 間歇性跛行とは、歩行など足に負担をかけると痛みやしびれ、冷えを感じるが、少し休むと症状が軽減するというものです。進行すると安静時にも痛みが生じるようになり、さらに痛みで歩行が困難となって壊疽を起こし、最悪の場合は足を切断することがあります。 糖尿病の治療方法! ここまで説明したように、糖尿病は放置すると人工透析や足の切断など、恐ろしい合併症を引き起こす可能性があります。したがって、糖尿病は初期段階で治療を行うことが大切になります。 糖尿病の治療は以下の3つによる血糖コントロールが基本になります。 ・食事療法 ・運動療法 ・薬物療法 最初は食事療法と運動療法によって血糖コントロールを行います。食事療法といっても食べてはいけないものがあるわけではなく、医師の指示エネルギーの範囲内で栄養バランスの良い食事を規則正しく摂ることが基本です。 食事療法や運動療法を行ても血糖値の改善が見られない場合は経口血糖降下薬やインスリン注射などの薬を使って血糖値をコントロールすることになります。薬物療法を取り入れる場合も食事療法と運動療法は継続して行います。 詳しくはこちら 糖尿病の予防 糖尿病は発症してしまうと完治することはなく、血糖コントロールを続けなければなりません。そのため糖尿病予備軍と診断されたら糖尿病の予防に取り組むことが大切です。 2型糖尿病は遺伝的要素と生活習慣が組み合わさることで発症するといわれているため、以下のような生活習慣の改善に取り組むことが糖尿病の予防につながります。 ・食べすぎを防ぐ ・バランスよく食べる ・運動習慣をつける 糖尿病の予防では栄養のバランスの良い食事を規則正しく食べ、適度な運動の習慣をつけることが基本になります。 一方、ストレスも糖尿病の原因といわれています。そのため、厳格な食事管理やハードな運動は逆効果となることがあるため注意が必要です。特に運動はゲーム感覚で楽しめるもののほうが長く続けやすく、おすすめです。 いずれの場合も前向きに取り組むことが継続の鍵になります。 まとめ/糖尿病で血管はどうなるか|血管障害が引き起こす合併症 糖尿病の合併症や糖尿病の治療法・予防法について説明しました。 糖尿病は進行すると重い合併症を引き起こす可能性があります。さらに糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどないため放置してしまうことがあります。そのため、糖尿病予備軍と診断された場合は、糖尿病を発症させないために生活習慣の改善に努め予防することを心がけることが大切です。 少しでも異変を感じたら放置せず、すぐに医師の診察を受けましょう。 ▼糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.12.01 -
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糖尿病による腎臓の病気|糖尿病性腎症におすすめの食事 糖尿病はさまざまな合併症を引き起こします。糖尿病性腎症もその1つです。 この記事では、糖尿病性腎症の代表的な症状と治療法を解説したうえで、糖尿病性腎症の患者の方におすすめの食事レシピを紹介します。 糖尿病性腎症とは 糖尿病性腎症は、糖尿性網膜症、糖尿病性神経障害と並ぶ糖尿病の3大合併症の1つです。 糖尿病性腎症は糖尿病と診断されてから5~15年程度で発症するといわれています。糖尿病性腎症の症状は、アルブミン尿に始まり、蛋白尿、高血圧やむくみが生じ、最終的には腎不全に陥り、腎臓が機能しなくなってしまいます。 なぜ、糖尿病から糖尿病性腎症を発症してしまうのでしょうか。 血液中の老廃物は腎臓にある糸球体と呼ばれる毛細血管の塊で濾過され、尿として排泄されます。血糖値が高い状態が続くと血管が障害されるため、糸球体が破壊され、老廃物がうまく濾過できなくなり、糖尿病性腎症を発症するといわれています。 特に、糖尿病と高血圧を併せ持つ人は腎臓への負担が大きいため、糖尿病性腎症の進行を早めてしまう傾向があります。糖尿病性腎症の病期は最も軽い「第1期:腎症前期」から「第5期:透析療法期」まで5つの段階にわかれています。 病期ごとの症状や基準は以下のとおりです。 糖尿病性腎症の症状 糖尿病性腎症は進行するまで自覚症状がありませんが、進行すると以下のような症状が現れます。 ・蛋白尿 ・高血圧 ・むくみ それぞれの症状について以下で詳しく解説します。 蛋白尿 蛋白尿とは、正常範囲を超えた量のたんぱく質が、尿のなかに含まれている状態のことをいいます。健康な人であれば、たんぱく質は濾過されず老廃物だけが濾過されるため、少量しか尿のなかにたんぱく質は出てきません。 しかし糖尿病性腎症を発症すると腎臓の濾過機能が低下するため、血液中のたんぱく質が尿のなかに流出してしまうのです。 高血圧 糖尿病性腎症を発症すると、レニンと呼ばれる血圧を上げるホルモンが分泌されるため、血圧が上がりやすくなります。 さらに、高血糖状態が続くと血液の浸透圧が上がります。これにより、細胞から水分が出たり、腎臓から水分を吸収する量が増えるため、血液量や体液が増えることで高血圧を招くことになります。 糖尿病性腎症を発症した当初は、高血糖による悪影響が大きいのですが、第4期まで進行すると血圧による影響のほうが大きくなります。そのため、糖尿病性腎症を発症したら血糖コントロールと血圧管理が重要になります。 むくみ むくみとは、いわゆる「顔や足がぱんぱんになる」状態のことをいい、体内の水分が異常に増えることで発症します。医療機関では、むくみが出たら腎臓病を疑うほど両者は深い関係があります。 腎臓が機能しなくなると尿があまり出なくなるので、飲んだ水分が体内に溜まってしまいむくみます。糖尿病性腎症で腎臓の機能が低下した場合も同じメカニズムでむくみが生じるようになります。糖尿病性腎症によるむくみは足に現れることが多いです。 糖尿病性腎症の治療 糖尿病性腎症の治療法は病期ごとに異なります。 第1~2期の期間は10~20年ほどかけて、ゆっくり進行しますが、第3期に入ると進行スピードが増します。第3期になると蛋白尿が出るようになります。ここまで進んでしまうと元の状態に戻すことはできないため、進行を遅らせるための治療を行うことになります。 第4期からは透析療法が導入され、第5期になると透析療法を継続するか腎移植するしか選択肢がなくなります。 このように、糖尿病性腎症は、早期に発見して早期に治療を開始し、血糖コントロールを徹底する必要があります。 第3期の治療法のなかにたんぱく質制限とありますが、これは食事療法で行います。なぜ糖尿病性腎症の食事ではたんぱく質を制限するのでしょうか。 3大栄養素のうち、脂質や糖質はエネルギーとして使われたあと、呼吸や汗で体の外に排出することができます。しかし、たんぱく質はエネルギーとして使われたあと老廃物となってしまいます。 このとき、老廃物を排出できる唯一の器官が腎臓になります。しかし、糖尿病性腎症を発症している方は腎臓の機能が低下しています。つまり、老廃物を濾過して排出する機能が低下しているということです。 そのため、これ以上腎臓に負担をかけないためにも老廃物の原料となるたんぱく質の摂取を減らす必要があるのです。次の章で、糖尿病性腎症の患者の方のための食事レシピを紹介します。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病性腎症の食事レシピ 糖尿病性腎症の患者の方の食事では、塩分とたんぱく質、カリウムの制限が重要になります。ここでは調理時間が短く簡単に作ることのできるレシピを紹介します。 レンコンのきんぴら 引用元:腎臓にやさしいお料理レシピカード「レンコンのきんぴら」 ●材料(1人分) ・レンコン 40g ・ニンジン 20g ・いり黒ゴマ 1g ・ごま油 4g ・醤油 6g ・みりん 6g ・砂糖 5g ・日本酒 6g ・鷹の爪 少々 ●調理手順 1,レンコンをひと口サイズに切って水に浸してアクを抜く 2,ニンジンもひと口サイズに切る 3,調味料を混ぜる 4,フライパンにごま油を入れてレンコンとニンジンを炒める 5,レンコンとニンジンに火が通ったら調味料を混ぜたものを入れる 6,レンコンとニンジンに味が染みたら完成 ●糖尿病性腎症への効果 機能が低下している場合、カリウムの排泄量が少なくなります。そのため糖尿病性腎症患者の方はカリウムの制限が必要です。 カリウムはさまざまな食品に含まれる成分ですが、野菜などの食物繊維は積極的に摂取したいものです。野菜は水にさらすことでカリウムをある程度減らすことができます。レンコンは不溶性の食物繊維が豊富ですので、水に浸してカリウムを減らすことで糖尿病性腎症患者の方にも取り入れやすくなります。 ●調理に関するおすすめポイント 下茹での必要がないため、手軽においしく野菜の栄養を摂取できます。 いわしフライのタルタルソースがけ 引用元:腎臓にやさしいお料理レシピカード「いわしフライのタルタルソースがけ」 ●材料(1人分) ・イワシ(15cm以内、生で開いたもの) 2匹 ・卵 20g ・小麦粉 5g ・パン粉 10g ・塩 2g ・こしょう 少々 ・タルタルソースの材料(マヨネーズ12g、玉ねぎみじん切り5g、レモン汁5g、ウズラ卵の缶詰10g、らっきょう5g) ●調理手順 1,イワシに塩とこしょうをかけてなじませる 2,タルタルソースの材料をよく混ぜる 3,卵をとく 4,イワシに小麦粉をまぶしてといた卵をつけてパン粉をつける 5,180度の油でイワシを揚げる(細かい泡が出たら完成) 6,揚げたイワシにタルタルソースをかけて完成 ●糖尿病性腎症への効果 糖尿病性腎症の患者の方は、たんぱく質を制限しなければなりませんが、カロリーは必要量摂取しなければなりません。イワシを揚げることで必要なカロリーを確保できます。さらに、イワシにはDHAやEPAといったいわゆる「血液さらさら」成分が含まれているので血栓の予防に効果が期待できます。 ●調理に関するおすすめポイント イワシは比較的安価な魚なのでコスパにも優れています。 卵スープ 引用元:腎臓にやさしいお料理レシピカード「卵スープ」 ●材料(1人分) ・卵(といておく) 1個 ・玉ねぎ薄切り 20g ・生ワカメ(水につけて塩抜きしておく)3g ・青ネギこぐち切り 1g ・固形コンソメ 2g ・こしょう 少々 ・水 150ml ●調理手順 1,鍋に水、コンソメ、玉ねぎ、生ワカメを入れ、中火で加熱する 2,玉ねぎが透明になったらといた卵を少しずつ入れる 3,こしょうで味を調える 4,火を止めて青ネギを入れて完成 ●糖尿病性腎症への効果 卵はたんぱく質の塊ですので、腎臓病の方に敬遠されがちな食品です。しかし、卵は必須アミノ酸がバランスよく含まれているため、摂取量をコントロールすれば、良質なたんぱく質を摂取できます。 ●調理に関するおすすめポイント 生ワカメはしっかり塩抜きしておかないと塩分を摂取しすぎることがあるため十分に塩抜きしましょう。 まとめ・糖尿病による腎臓の病気|糖尿病性腎症におすすめの食事 糖尿病性腎症についてとおすすめの食事について説明しました。 糖尿病性腎症は進行してしまうと元の状態に戻すことはできなくなります。 糖尿病と診断されたら血糖コントロールを徹底し、糖尿病を悪化させないことが大切です。また、糖尿病性腎症を発症しても初期段階で食い止めれば通常の生活を送れる可能性が高くなりますので、早期発見・早期治療が大切です。 食事のバランスをコントロールしながら、美味しい食事で健康な身体を取り戻しましょう。ご参考になれば幸いです。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.10.11 -
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糖尿病|糖尿病性神経障害の症状と原因 最近、手足が痛む…健康な人ならそれほど悩むことではないかもしれません。しかし、糖尿病と診断された方にとって、手足の痛みは糖尿病と関係があるのではないか、病気が進行しているのではないかと不安になりますよね。 この記事では糖尿病と診断されてから手や足が痛むようになったという場合、何が原因で痛むのか、また手足の痛みは糖尿病と関係があるのかについて解説していきます。 糖尿病と痛みの関係性について 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると手や足にしびれや痛みなどの症状が現れることがあります。具体的にどのような症状がどのような部分に現れるかについて詳しく見ていきます。 糖尿病が原因の痛みやしびれ 糖尿病は進行すると合併症を引き起こすことがあります。なかでも、発症することの多い「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」「糖尿病性腎症」のことを糖尿病の3大合併症と呼びます。 糖尿病によって手や足にしびれや痛みが現れるのは、糖尿病の3大合併症の1つである糖尿病性神経障害が原因と考えられています。糖尿病性神経障害の症状にはほかにも以下のようなものがあります。 ・手足の「じんじん」「ぴりぴり」とした痛み ・しびれ ・ほてり ・冷え ・感覚が鈍くなる ・その他 痛みが現れる場所 最初、糖尿病による痛みは足の指や足の裏に現れます。しかし、進行すると手の指にも痛みやしびれの症状が現れます。場所としては手袋や靴下に覆われる部分に痛みが出ます。痛みの強さに関しても手よりも足のほうが強く感じる傾向があります。 糖尿病性神経障害とは 前述のとおり、糖尿病は進行すると糖尿病性神経障害を引き起こすことがあります。糖尿病性神経障害とはどういう症状で何が原因で発症するのでしょうか。 糖尿病性神経障害の症状 糖尿病性神経障害は足先や足の裏の痛みやしびれといった違和感から始まります。しかし、進行すると手の指にも痛みやしびれを感じるようになってきます。痛みやしびれの程度は足のほうが強く、場合によっては日常生活に支障が出るほど強いこともあります。 糖尿病性神経障害は自然に治るというものではありません。糖尿病性神経障害の症状は、最初は軽度なものが多いですが、放置してしまうと症状が進行します。症状が進行すると感覚が鈍くなり、やけどやケガをしても気付かずに放置してしまうため、患部や傷が治りにくく、化膿してしまうケースもあります。 糖尿病性神経障害の原因 なぜ糖尿病によって神経障害が起こるのでしょうか。糖尿病性神経障害の原因ははっきりとはわかっていませんが、高血糖状態が続くことで血管が障害され、毛細血管などの血流が悪くなり、栄養や酸素が神経細胞に行き渡らくなることが原因の1つと考えられています。 一方、高血糖状態が続くことで神経障害を引き起こす原因となるソルビトールという物質が神経細胞に蓄積することで神経障害が起こるともいわれています。このほか、糖尿病性神経障害の原因としては遺伝的要因や神経栄養因子(神経細胞の発生・生存・機能に必要な因子)によるとも考えられています。 痛みの改善方法 糖尿病性神経障害は糖尿病が進行したことによる合併症の1つです。そのため糖尿病性神経障害による痛みやしびれを改善するには、血糖コントロールを行うことになります。 糖尿病の血糖コントロールは以下の方法で行うのが基本です。 ・食事療法 ・運動療法 ・薬物療法 最初は食事療法と運動療法で血糖コントロールを行い、それでも改善されない場合に経口血糖降下薬やインスリン注射などの薬物療法を取り入れます。ただし、高血糖が長期間続いていた糖尿病患者が急激に血糖値を下げてしまうと、治療後有痛性神経障害という痛みが生じることがあります。そのため血糖値はゆっくりと下げることが大切です。 糖尿病性神経障害が軽度の場合は血糖コントロールを行うことで改善することも多いです。血糖コントロールを行っても症状がよくならない場合は、痛みやしびれなどの緩和を目的とした薬物療法を行います。 前述のとおり、糖尿病性神経障害はソルビトールという物質が神経細胞に蓄積することが原因の1つと考えられています。ソルビトールはアルドース還元酵素によってブドウ糖が変化したものです。そのため、アルドース還元酵素阻害薬を使ってソルビトールの生成を抑えるという方法があります。また、場合によっては血流改善薬や抗うつ剤、鎮痛剤、抗不整脈薬、ビタミン剤などを用います。 まとめ・糖尿病にある|糖尿病性神経障害の症状と原因 糖尿病と痛みの関係について解説しました。糖尿病と診断された方で、手足に痛みやしびれがある場合は糖尿病性神経障害が原因である可能性があります。 糖尿病性神経障害は放置すると症状が進行して感覚が鈍くなり、ケガややけどをしても気付かず、患部や傷が化膿したり、場合によっては壊疽を起こす可能性があります。痛みやしびれの程度が軽いからといって放置せず、早い段階で医師に相談することが重要です。 監修:リペアセルクリニック大阪院 ▼糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください ▼こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.10.10 -
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糖尿病で教育入院はしたくない!治療に必要な知識を紹介 糖尿病と診断されたら、治療には入院が必要なのでしょうか。もし入院が必要なら仕事や日常生活、入院時の費用などいろいろなことが心配になります。できることなら入院せずに治療したいものですよね。 この記事では糖尿病治療には入院が必要なのか、また糖尿病で入院する場合はどのような治療を行うのかについて解説します。 医者に勧められたのなら入院すべき 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと血管が障害されるため、放置すると病気が進行し、さまざまな合併症を引き起こします。つまり、糖尿病は自然治癒することはなく、治療を行わなければならないということです。 糖尿病の治療にはさまざまな方法があり、自宅で生活習慣の改善に取り組むことで治療する方法もあります。ただし、自宅での治療がうまくいかない場合や合併症が進んだ場合などは入院による治療を行うこともあります。特に医師が入院を勧めてきた場合は必ず応じなければなりません。 入院して糖尿病治療を行うメリットについて以下で詳しく見ていきましょう。 糖尿病治療のための入院をする意味 糖尿尿治療のために入院をするケースには以下のようなものがあります。 ・血糖値の管理が不十分である ・合併症が進行している ・治療方針が決まっていない ・食事療法が実践できていない など 糖尿病で入院することは、上記のような問題を医師などの専門家と一緒に解決し、病気の進行を抑えて生活の質を維持しながら健康寿命を延ばすことが目的になります。 合併症がある場合に入院する意味 すでに糖尿病による合併症を発症している場合は合併症の治療や悪化を食い止めることが入院の目的になります。入院することでさまざまな検査を行うことができ、専門家に相談しながら治療を受けられるため、集約治療が可能になります。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病教育入院とは?その目的 教育入院とは、一般的な治療目的の入院ではなく、病気への理解を深め、正しい食事や生活習慣に対する知識を習得してもらうための入院になります。教育入院の具体的な目的は以下となります。 ・自身の糖尿病の状態を正しく把握すること ・糖尿病に関する正しい知識を身に付けること ・食事、運動の正しい管理方法を身に付けること 糖尿病教育入院には入院が必要ですが、これらの知識が身に付くことで結果的に血糖コントロールがうまくいき、糖尿病の改善につながることになります。 糖尿病教育入院の内容 入院期間は病院やプログラム、患者の方の状況によって異なりますが、1~2週間前後のところが多いです。一般的な糖尿病教育入院の流れと内容は以下となります。 診断・治療のための検査 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、さまざまな検査を行うことで現在の糖尿病の状態を把握します。糖尿病教育入院中の検査には血糖値の日内変動を見るための採血検査やC-ペプチド蓄尿検査といったものがあります。 血糖値の日内変動 血糖値は1日のなかでも時間によって変化します。血糖値は食事の量や内容、ストレス、運動などによっても変動することがありますが、特に食事は血糖値に与える影響が大きく、食後1~2時間でピークを迎えたあと元に戻ります。そのため食事ごとに空腹時と食後2時間の血糖値を測り、血糖値の変動を見ていきます。 C-ペプチド蓄尿検査 食事をするとインスリンというホルモンがすい臓から分泌され、血液中の糖を細胞に取り込みやすくすることで血糖値を下げます。糖尿病はこのインスリンの分泌量が少なかったり、分泌されたインスリンの働きが悪くなることで発症します。C-ペプチドはインスリンが作られる際にできる物質で、インスリンとほとんど同じ割合で生成されます。 C-ペプチドはインスリンと一緒に血液に放出され、尿中に排泄されます。そのため尿のなかのC-ペプチドの量を測定すれば、インスリンの分泌量がわかります。糖尿病患者のインスリン分泌能を調べる際は、24時間蓄尿した尿中のC-ペプチドの量を測定することが一般的です。 現在の状況を把握することでどのような治療が必要になるのか、理解を深めることにつながります。糖尿病が進行する前に教育入院すれば、合併症の発症や進行を食い止めるための知識や方法が身に付き、糖尿病の改善につながります。 糖尿病の知識を学ぶ 糖尿病教育入院では、糖尿病がどういうもので、どういう治療が必要になるかを学んでいきます。具体的には以下の治療法について学んでいきます。 ・食事療法の知識 ・運動療法の知識 ・薬物療法の知識 それぞれどのような内容を学ぶのか以下で見ていきましょう。 食事療法の知識 糖尿病教育入院では糖尿病治療の基本である食事療法について学びます。なぜ食事療法が必要なのか、食事療法とは具体的にどうすれば良いかなど、食事療法の基本を学びます。 具体的には以下の知識を深め、習得していくことになります。 ・食事療法の重要性 ・適正体重を維持すること ・適正なエネルギーを守った食事を摂ること ・規則正しい食事を摂ること(適正な食事の時間や食事量、回数など) ・栄養バランスの良い食事を摂ること など 運動療法の知識 糖尿病の治療は食事療法と運動療法を併せて行うことが基本です。 糖尿病の運動療法を行う際は運動の習慣をつけることが大切です。そのため、糖尿病教育入院では、実際にエルゴメーターやトレッドミル(ランニングマシン)などを用いて有酸素運動を行い、身体状態や血糖値の変化を見てもらうことで、運動による血糖コントロールの効果を感じてもらいます。同時に、どの程度の負荷や運動強度が患者にとって適正かも判断していきます。 薬物療法の知識 糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本ですが、それでも血糖コントロールがうまくいかない場合は薬物療法を取り入れることになります。糖尿病の治療薬は、大きくわけると経口血糖降下薬とインスリン注射があります。 経口血糖降下薬にはインスリンの働きを改善する薬やインスリンの分泌を促進するもの、糖の吸収と排泄を調節するものなど、さまざまな種類があり、患者の状況に応じてどの薬をどのタイミングで服用するかが変わります。糖尿病教育入院では、それぞれの薬にどういう効果があり、どのような副作用があるのかをしっかりと理解してもらうことになります 一方、インスリン注射は体の外からインスリンを補充する方法で、インスリンが作用する時間によって超速効型・速効型・中間型・混合型・持効型にわかれます。糖尿病教育入院では、まずインスリンはいつ分泌され、どのように作用するのが正常なのかを理解したうえで、インスリン治療薬をどのように扱えば良いかを習得します。 生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病の場合は経口血糖降下薬から始め、それでも効果が出ない場合はインスリン注射へと進むことが一般的です。一方、1型糖尿病はインスリンをほとんど分泌できないため、インスリン注射が第一選択となります。 まとめ 糖尿病は入院せずに治療することもできます。しかし、患者の状況や医師の指示がある場合は入院して治療を行うことが必須です。また、病院によっては糖尿病教育入院を実施しているところもあります。1~2週間の短期的な入院によって、糖尿病や治療に対する知識を深める目的で実施します。 「1~2週間でも入院するのはつらい」と思うかもしれませんが、自宅での治療が困難になったり合併症を発症してしまうと、入院による治療を余儀なくされる可能性もあります。また、結果的に治療が長引くケースもあります。 合併症に関する記事はこちら
最終更新日:2022.10.10 -
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糖尿病が原因の皮膚の症状をそれぞれ解説 糖尿病になると、皮膚に症状が現れます。でも、糖尿病と皮膚は一見関係がなさそうに思えますよね。ではどうして糖尿病になると皮膚に症状が現れることが多いのでしょうか。 この記事では糖尿病を発症するとなぜ皮膚に症状が現れるのか、また、どのような症状が皮膚に現れるのかについて説明します。 糖尿病と皮膚疾患の関係 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと浸透圧が上昇し、細胞から水分を奪います。そのため、皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみが起きやすくなります。 また、高血糖状態が続くと白血球や免疫機能が低下するため、抵抗力が落ちてしまいます。さらに高血糖が続くことで血管が障害されるため、細胞に酸素や栄養が行き渡りにくくなり、感染症にかかりやすくなります。 そのため、ちょっとした傷が治りにくくなったり、健康な状態であれば発症しないような症状が皮膚に現れることがあるのです。 こちらも併せてご参照ください 【糖尿病】合併症の症状は皮膚にでることもある?|内科専門医師が配信 糖尿病が引き起こす皮膚の症状 糖尿病を発症すると、どのような症状が皮膚に現れるのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。 皮膚の乾燥とかゆみが起こる 高血糖状態が続くと浸透圧が高くなり、頻尿や多尿になりやすく、脱水症状が現れたり、皮膚が乾燥することがあります。 皮膚は一番外側に皮脂膜があり、その下に角質層と呼ばれる、何層にも積み重なった角質細胞があります。角質細胞の間には細胞間脂質というものがあり、細胞同士の隙間を埋めることで水分を保持し、バリア機能を担っています。 しかし、皮膚が乾燥してしまうとバリア機能が弱くなり、外部刺激に敏感になります。そのため、ちょっとした刺激でもかゆみにつながることになります。そのため、糖尿病と診断されたら、日頃から保湿を心がけ、皮膚が乾燥しないように注意することが大切です。 皮膚に赤い斑点ができる 糖尿病ではリポイド類壊死症という皮膚症状が現れることがあります。糖尿病性リポイド類壊死症は主にすねの前面に黄色や赤、オレンジ色の光沢のある斑点ができるもので、痛みなどはありません。 糖尿病性ルポイド類壊死症はひざから足首にかけて多く見られますが、腕や太ももにもできることがあります。糖尿病性リポイド類壊死症は糖尿病による微小な血管障害が原因と考えられています。なお、リポイドは脂肪に似た物質のため、糖尿病性リポイド類壊死症は類脂肪性仮性壊死症とも呼ばれます。 傷が治りにくくなる 高血糖状態が続くと、血流が悪くなり細胞に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなります。さらに糖尿病を発症すると白血球や免疫機能が低下して細菌などに対する抵抗力が落ちるため、感染症にかかりやすく、傷が治りにくくなります。 毛嚢炎(毛包炎)などの細菌感染症 糖尿病では、毛の根元に赤あるいは白色の吹き出物のようなものができることがあります。これを毛嚢炎(毛包炎)といいます。毛嚢炎は細菌感染により毛包に膿が溜まったものです。 毛嚢炎の原因としては免疫力の低下や高齢、肥満などがありますが、糖尿病が引き金となって発症することもあります。これも糖尿病によって白血球や免疫機能が低下することで細菌に対する抵抗力が落ちることが原因と考えられます。 足白癬(水虫) 糖尿病は足白癬(水虫)も引き起こしやすくなります。これは高血糖状態が続くことで白血球や免疫機能が低下し、細菌やカビなどの真菌に対する抵抗力が下がることが要因と考えられています。 元々、人間の身体には多くの真菌や細菌が常在していますが、特に足は他の部位と比べて真菌が多く生息していることがわかっています。また、足は靴下や靴を履くことが多いため他の部位よりも湿度が高く、白癬菌が増殖しやすくなります。 そのため、日頃からフットケアや足を清潔に保つように心がけ、こまめに足のチェックを行うことが大切になります。 水疱 糖尿病を発症すると手や足にやけどをしたときのような水疱ができることがあります。これを糖尿病性水疱といいます。 糖尿病性水疱はカビの一種である真菌に感染することで発症します。高血糖状態が続くと細菌や真菌に対する抵抗力が低下し、血流が悪くなるため感染症を引き起こしやすくなることが原因と考えられています。 糖尿病性水疱を放置すると、水疱部分に血液が行き渡らず、最悪の場合、患部が壊疽してしまうこともあります。日ごろから足のチェックやフットケアを怠らないように注意しましょう。 カンジダ症 カンジダ症は真菌による感染症で、発疹や腫れ、鱗屑、かゆみなどが現れます。 元々、カンジダ属の真菌は膣や消化管、口腔に常在しており、健康な状態であれば人体に害があるわけではありません。しかし、病気や妊娠中、抵抗力が落ちたときなど特定の条件下でカンジダが増殖することがあります。特にカンジダは鼠径部や口腔粘膜など湿潤部位や粘膜部分で過剰に増殖する傾向があります。 糖尿病になると免疫力が低下するため、カンジダ症を引き起こしやすくなるのです。 まとめ 糖尿病になるとどのような皮膚症状が現れるのかについて説明しました。 糖尿病は皮膚が乾燥し、外部からの刺激に反応しやすくなります。また、糖尿病を発症すると白血球や免疫機能が低下して抵抗力が落ちるため、感染症にかかりやすくなります。 糖尿病が原因の皮膚症状は、放置すると壊疽することもあります。また、糖尿病神経障害を発症している場合は痛みなどの感覚が鈍くなるため、ケガや傷に気付きにくくなります。特に足は目に触れることが少ないため、異変に気付きにくい傾向があります。そのため傷やケガがあっても気付かずに放置してしまい、最悪の場合、足を切断する可能性もあります。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.09.29 -
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糖尿病の方は市販薬の服用に注意!血糖値が下がりすぎる可能性も 糖尿病の治療中に、ほかの病気になることもあるでしょう。 でも、すでに糖尿病の薬を服用している場合、他の薬を飲んでも大丈夫なのか気になりますよね。 この記事では糖尿病治療中に他の市販薬を飲む際の注意点や飲み合わせについて解説します。 飲み合わせに注意すべき理由 糖尿病に限らず複数の薬を飲む場合は、薬の成分や組み合わせよよって効果が出にくくなったり、逆に効果が強く出すぎてしまうこともあります。 また、飲み合わせの問題は市販薬だけでなく漢方薬やサプリメント、ハーブなどでも起こる可能性があります。 例えば、健康食品として有名なグァバ葉ポリフェノールやイチョウ葉エキスは糖尿病の薬と併せて飲むことで血糖値が下がりすぎる可能性があるといわれています。 飲み合わせによって具体的にどのような問題があるのか以下で見ていきます。 こちらも併せてご参照ください 血糖値を下げ過ぎる 糖尿病で薬を服用中に他の薬を服用すると、場合によって血糖値が下がりすぎることがあります。血糖値が下がり、低血糖に陥った場合は以下のような症状が現れます。 ・強い空腹感 ・ふるえ ・冷や汗 ・顔面蒼白 ・動悸 ・発汗 ・生あくび など 血糖値が下がりすぎると意識障害や昏睡状態に陥る可能性もあります。そのため、家族や周りの人に自分が糖尿病であることや低血糖になる可能性があることをあらかじめ伝えておき、低血糖に陥った場合の対処法も連絡しておきましょう。 どのような飲み合わせが低血糖を招くのかについては後述します。 血糖値が上がる 薬の飲み合わせによっては低血糖だけではなく、血糖値が上がったり、血糖コントロールが不良になることもあります。血糖値が上昇すると血液が濃くなるため、脱水症状が見られたり、糖尿病の症状が増悪することがあります。 どのような組み合わせが血糖値の上昇を招くのかについては後述します。 糖尿病治療薬の効果が弱まる 薬の飲み合わせによっては糖尿病治療薬の効果を弱めてしまうこともあります。 例えば服用している薬と逆の作用を持つ薬を一緒に飲んでしまうと、互いの効果を打ち消し合うため治療効果が得られにくくなります。また、薬の成分によっては同時に服用することで体に吸収されにくくなることもあります。 このように、薬の効果を弱めるような飲み方をしてしまうと治療効果がなかなか現れません。治療効果が出なければ糖尿病の長期化や悪化を招くことにつながります。 一方、糖尿病薬の効果を弱めるわけではありませんが、糖尿病治療薬の副作用を増悪させてしまうものもあります。例えば、キシリトールは虫歯になりにくい甘味料としてガムなどに用いられることが多いですよね。キシリトールはそれ自体に便を柔らかくする働きがあるため、キシリトールと糖尿病治療薬を同時に服用すると下痢がひどくなることもあります。 服用前に市販薬との飲み合わせをチェックする 薬の飲み合わせによるトラブルを防ぐためにも、糖尿病に限らず、常に服用している薬がある場合は併せて飲むといけない薬の種類を医師に確認しておきましょう。 また、注意が必要な薬は飲み薬だけでなく塗り薬などもありますので忘れずに確認しておきましょう。 市販の風邪薬や鎮痛剤、サプリメントといったものは、その場で医師に直接確認することは難しいため、診察を受ける際にあらかじめ市販薬やサプリメントとの組み合わせについて確認しておきましょう。 市販薬やサプリメントを購入する際は、医師に確認した内容を踏まえて選ぶようにしましょう。 風邪薬との飲み合わせ 風邪薬と一口にいっても、鼻の症状に効くものや喉の症状に効くもの、熱風邪に効くものなど、いろいろな種類があります。そのため、どのような成分が入っている薬なのかを知っておくことが重要です。 例えば鼻炎薬や総合感冒薬に多い成分であるプソイドエフェドリン、メチルエフェドリン、フェニレフリン、メトキシフェナミンは、血管を収縮することで鼻づまりを解消する効果がある一方、交感神経を刺激し、グリコーゲンの分解を促進するため血糖値を上げる働きがあります。 さらに、末梢血管収縮や心機能を亢進させるため、血圧を上げ、糖尿病を悪化させることがあります。 ほかにも風邪薬にはさまざまな成分が入っています。どのような成分が入っている薬なのか購入前にチェックをすることが重要です。 解熱鎮痛剤との飲み合わせ 解熱鎮痛剤は解熱だけでなく、頭痛や腰痛などさまざまな場面で多く用いられる薬です。 解熱鎮痛剤に配合されていることの多いアスピリンは、インスリンの作用を増強することがわかっています。 また、アススピリン自体にも血糖値を下げる働きがあるため、糖尿病治療薬と同時に服用すると血糖値が下がりすぎる可能性があります。 アスピリンは解熱鎮痛剤だけでなく総合感冒薬に配合されることもあります。解熱鎮痛剤や総合感冒薬を服用する際はアスピリンが入っていないことを確認することも大切です。 咳止めとの飲み合わせ 咳止め薬に配合されることの多い麻黄やメチルエフェドリンといった成分は、前述のように交感神経を刺激し、グリコーゲンの分解を促進するため、血糖値を上げる恐れがあります。 麻黄やメチルエフェドリンも咳止めだけでなく、総合感冒薬や漢方、鼻炎薬などに配合さていることがあります。これらの薬を選ぶ際は麻黄やメチルエフェドリンが配合されていないことを確認しましょう。 まとめ 糖尿病の薬を服用中に市販薬を服用する際の注意点について説明しました。 市販薬には糖尿病治療薬の効果を弱めるだけでなく、血糖値が上がったり、血糖値を下げすぎることもあります。 糖尿病で医師の診察を受ける際は、どのような薬との飲み合わせに気を付けるべきか事前に確認しておきましょう。また、市販薬だけでなく、サプリメントや健康食品、ハーブについても確認しておきましょう。 医師に確認するは 「風邪薬」や「咳止め」といった薬の種類ではなく、どのような成分に注意すべきかを確認することが大切です。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病患者が糖尿病以外の病気で手術するときの注意点とリスク 糖尿病患者の方がケガをしたり、糖尿病以外の病気を発症することもあるでしょう。もし、糖尿病患者が他のケガや病気で手術が必要になった場合、手術を受けても良いのでしょうか。 この記事では糖尿病患者の方が他の病気やケガで手術をしても問題がないのか、また糖尿病患者の方が手術を受けることになった場合のリスクについて解説します。 糖尿病患者が他の病気で手術するときの注意点 糖尿病患者の方が他の病気やケガで手術をしなければならない場合、以下の点に注意する必要があります。 1)医者に糖尿病であることを伝える 2)手術前に血糖コントロールをしておく それぞれ以下で詳しく見ていきましょう。 1)医者に糖尿病であることを伝える 糖尿病は高血糖状態が続く病気のことです。高血糖状態が続くと、抵抗力が下がり、感染症を引き起こしやすくなります。そのため、糖尿病患者が他の病気やケガで手術をする場合、糖尿病を患っていることをあらかじめ外科医に伝えておくことが大切です。 また、糖尿病の診察をしている担当医師にも「他の病気(ケガ)で手術を受けること」を事前に伝えておきましょう。 2)手術前に血糖コントロールをしておく 糖尿病患者は抵抗力が低いため、感染症にかかりやすい傾向があります。そのため、血糖値が高い状態で手術を行うと、手術創が治りづらく、感染症にかかりやすくなります。 糖尿病患者の方が手術を受ける場合は、手術する前にしっかりと血糖コントロールを行い、血糖値が落ち着いてから手術を受けるのが基本です。血糖値のコントロールが難しい場合、緊急性の低い手術であれば手術を延期することになります。 インスリンを使用して血糖値をコントロールする場合は2週間程度で正常値に近づきます。手術と糖尿病のどちらの治療を優先するかによりますが、例えば癌の手術であれば、手術日が2週間程度遅れても大きな影響はないといわれています。 なお、手術が可能とされる血糖値の目安は以下です。 ・空腹時血糖値…110~130mg/dl ・食後血糖値…140~180mg/dl ・HbA1C…5.8~6.5% ただし、糖尿病の合併症を発症している場合、発症していない場合と比べて手術の可否判断がより慎重になります。 糖尿病患者が他の病気で手術するときのリスク 前述のとおり、糖尿病患者は高血糖状態が続いている状態ですので、抵抗力が低下し、感染症を起こしたり手術創が化膿しやすくなります。糖尿病患者の方が他の病気で手術を受ける場合に起こるリスクは主に以下の3つになります。 ・手術後の血糖値の変化 ・傷の化膿、治りが遅い ・手術後の感染症の発症 それぞれの項目について以下で詳しく見ていきます。 手術後の血糖値の変化 健康な人であっても外科手術を受けると交感神経が活発になります。交感神経が活発になると、成長ホルモンやコルチゾール、グルコガンといった抗インスリン作用やインスリン抵抗性を高める働きのあるホルモンが放出されます。したがって、外科手術を受けるとインスリン抵抗性が高くなり、高血糖状態になります。 ですから、糖尿病患者の方が手術を受ける場合は血糖コントロールをいつもより慎重に行う必要があります。糖尿病患者で血糖コントロールができていない場合は、手術創が治りにくく、傷が化膿したり感染症を発症しやすく、重症化することもあります。 傷の化膿や治りが遅い 高血糖状態が続くと血管が障害されます。つまり糖尿病とは血管に炎症が起こる病気です。外科的手術を行うと、以下のように創傷治癒の過程を経て傷が治ります。 ①出血が止まる ②炎症反応が起こる ③新しい毛細血管ができる(血管新生) ④繊維芽細胞の増殖(肉芽形成) ⑤再上皮化 このように、創傷治癒の過程では新しく血管ができることで傷が治ります。外科的手術はこの創傷治癒があることを前提として行われます。 しかし、糖尿病は血管が炎症を起こす病気ですので、新しい血管ができません。そのため、手術創の治りが遅くなったり、傷が治らないことで患部が化膿してしまうことがあります。特に膝から下は血管が詰まりやすく血流が悪くなることが多いため、手術創の治りが遅く、化膿しやすい傾向があります。手術の場所によっては足を切断するということもあります。 手術後の感染症の発症 高血糖状態が続くと殺菌能の低下など、白血球の働きや免疫機能が低下します。そのため、手術後はさまざまな感染症にかかりやすくなります。手術後の感染症を防ぐためにも手術前にしっかりと血糖コントロールをしておくことが重要です。 まとめ/糖尿病患者が他の病気で手術するときの注意点とリスク 糖尿病患者の方が糖尿病以外の病気で手術を受ける際のリスクや注意点について解説しました。糖尿病患者の方は抵抗力が低く、感染症にかかりやすいため、手術を受ける際は血糖コントロールをしっかりと行う必要があります。 また、手術を受ける際はあらかじめ手術担当の医師に糖尿病であることを伝え、糖尿病の担当医師にも手術を受けることを連絡する必要があります。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.09.21 -
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糖尿病かどうか症状をチェックしよう!その原因についても説明 中年になってくると、会社や健康診断でメタボ検査や糖尿病などの言葉を目にするようになります。「糖尿病が気になるけど、心当たりがないのにわざわざ病院に行くのは気が進まない」という人もいるでしょう。このような場合、糖尿病にはどんな症状があるのかを事前に知っておけば、病院に行くきっかけになりますよね。 この記事では、糖尿病の初期症状にはどんなものがあるのかについてチェック方法も踏まえて解説します。 糖尿病の症状と原因 食事をするとすい臓からインスリンが分泌され、血液中の糖が細胞に取り込まれやすくなり、血糖値が下がります。しかし、糖尿病患者の方は何らかの原因によりインスリンの分泌量が減ったり、インスリンが作用しにくくなり、高血糖状態が続きます。 糖尿病は高血糖状態が続く病気のことをいいます。糖尿病は発症原因によっていくつか種類があり、1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。 それぞれの症状と発症原因について以下で見ていきます。 1型糖尿病の症状と原因 1型糖尿病も2型糖尿病も高血糖によるさまざまな症状が現れます。ただし、1型糖尿病は以下のような症状が「突然」「急激に」現れることが特徴です。 ・喉の渇き ・頻尿 ・体重減少 ・疲労感 1型糖尿病を発症する原因としては、以下の2つがあるといわれていますが、はっきりとはわかっていません。 ・体質 ・インスリンを分泌する細胞の破壊 インスリンはすい臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌されます。1型糖尿病は、何らかの原因によってβ細胞が破壊されることで発症するといわれています。β細胞が破壊される理由は不明ですが、免疫反応の異常により自分の細胞を攻撃すること(自己免疫)が原因と考えられています。 1型糖尿病患者の方はほとんど、あるいはまったくインスリンを分泌することができません。そのため、体の外から注射でインスリンを補充する必要があります。 2型糖尿病の症状と原因 2型糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。2型糖尿病は進行すると多飲や倦怠感、かすみ目、皮膚の乾燥など高血糖による症状が現れますが、1型糖尿病と違い、「ゆっくりと」「少しずつ」現れます。 2型糖尿病は以下のように体質などの遺伝的要素と生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。 ・体質などの遺伝的要素 ・運動不足 ・食べ過ぎ ・肥満 運動不足が続くと血液中の糖がエネルギーとして消費しにくくなるため血糖値が下がりづらくなります。また、食べ過ぎが続くとインスリンを分泌するすい臓が疲弊してしまい、インスリンの分泌力が低下します。さらに肥満はインスリン抵抗性を招くため、インスリンが効きづらくなり血糖値が下がりにくくなります。 2型糖尿病は自覚症状がないまま進行するため、早期発見が重要になります。 糖尿病かどうか調べる 糖尿病は進行すると合併症を引き起こし、失明や足の切断など重大な結果を招くことがあります。そのため、なるべく早い段階で検査や診察を受けることが大切です。 糖尿病の検査やチェック方法について以下で見ていきしょう。 糖尿病の検査と診断方法 現在、日本の糖尿病患者の9割は2型糖尿病患者であるといわれています。2型糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど現れないため、定期的に検査を受けることが大切です。2型糖尿病かどうかは、以下の検査を単独あるいは複数組み合わせて判断することになります。 ・HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)検査 ・随時血糖検査 ・早朝空腹時血糖検査 ・75g経口ブドウ糖負荷試験 隠れ糖尿病には尿糖チェック 会社などの定期健康診断では、空腹時の血糖値を測定することがほとんどです。しかし、空腹時の血糖値は正常でも、食後に糖尿病のレベルまで血糖値が上がるという隠れ糖尿病もあります。隠れ糖尿病は健康診断では発見できません。そのため、気付いたときには糖尿病が進行した状態になってしまうこともあります。 では隠れ糖尿病はどうチェックすれば良いのでしょうか。隠れ糖尿病を自分でチェックするには尿糖チェックが便利です。これは、尿検査薬(尿試験紙)を尿に浸し、一定時間後の試験紙の色で判断するものです。尿検査薬はドラッグストアや薬局、インターネット通信販売などで簡単に購入できます。 糖尿病をセルフチェック 2型糖尿病は遺伝的要素と生活習慣が組み合わさることで発症するため、自分が糖尿病を発症しやすいかどうかをチェックすることができます。 初期症状を知って予防につなげましょう 糖尿病の初期症状とチェック方法について説明しました。 2型糖尿病は初期段階では自覚症状が現れません。また、隠れ糖尿病の場合、定期健康診断でも糖尿病を見付けることが難しくなります。特に糖尿病のセルフチェックでチェックした項目が多い方は、定期的に尿糖チェックを行い、いつもと違う結果が出た場合はすぐに医師に相談することが大切です。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.11.24 -
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糖尿病と診断された方のなかには医師や家族から「足のケガに気を付けて」といわれた人もいるのでは?また、「糖尿病が原因で足を切断した」という話を聞いたことがあるかもしれません。糖尿病を発症したら足に注意する必要があります。足の切断など、最悪の事態を避けるためにも、日常生活で気を付けるべきことがあれば知っておきたいですよね。 この記事では糖尿病と診断された方のフットケア方法や日常生活の注意点について解説します。 こちらも併せてご参照ください 足の異常を毎日チェックすることが大切 糖尿病患者の足に生じるさまざまなトラブルのことを糖尿病足病変といいます。糖尿病足病変の代表的なものには水虫やタコ、足の変形、細菌感染、足壊疽などがあります。 なぜ糖尿病になると足に異常が生じやすくなるのでしょうか。 糖尿病で足の異常が現れやすい理由 糖尿病を発症すると足にトラブルが起きやすくなるのは、高血糖状態が続く故に引き起こる以下の3つの理由によるものと考えられています。 ・神経障害によりケガの発見が遅れる ・動脈硬化によりケガが治りにくい ・抵抗力が下がり感染症を起こしやすい 神経障害によりケガの発見が遅れる 高血糖状態が続くと血管が障害されます。血管が障害されると血流が悪くなり、神経細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、糖尿病神経障害が起こります。また、高血糖状態が続くとソルビトールという、障害を起こす原因物質が神経細胞に蓄積することも原因といわれています。 糖尿病神経障害は糖尿病の合併症の1つで、痛みやしびれのほか、感覚が鈍くなることがあります。そのため、糖尿病神経障害を発症するとケガや傷があっても気付きにくくなります。特に足は目に触れにくいため、さらにケガや傷に気付きにくくなります。 動脈硬化によりケガが治りにくい 高血糖により血管が障害されると動脈硬化が起こり、血流が悪くなります。特に足先は心臓から遠いため、細胞に酸素や栄養が行き渡らず、傷やケガをしても治りにくくなります。 抵抗力が下がり感染症を起こしやすい 高血糖状態が続くと抵抗力が下がるため、感染症に起こしやすくなります。タコやウオノメのような軽度の病気でも、放置したり、間違った対処をしてしまうと悪化してしまい、最悪の場合、細胞が壊疽することもあります。 これらの糖尿病足病変を防ぐには日常生活のなかでフットケアを行い、足をチェックすることが大切になります。 糖尿病患者のフットケア方法と注意点 糖尿病足病変を防ぐためには日常的にフットケアを行うことが大切です。フットケアの基本は足を毎日観察することです。糖尿病足病変は早期発見・早期治療が重要です。足を観察し、腫れや赤み、タコやウオノメなどの異変がないかチェックしましょう。 特に運動後や長時間歩いたあとは注意して観察するようにしましょう。見えにくい部分があれば鏡を使うのも有効です。少しでも異変があれば速やかに医師の診察を受けましょう。 ほかにも、日常生活のなかで行うフットケアには以下のポイントがあります。 ・爪切り ・靴選び ・靴下 ・足浴 上記について注意点やケア方法を見ていきましょう。 爪切り 深爪や爪の角を切り落としすぎると爪が周りの組織に食い込み(陥入爪)、炎症や腫れが生じることがあります。爪を切る際は切りすぎないこと、爪の角を切り落とさないこと、切ったあとはやすりで削ることが大切です。 正しく爪を切るためには下記の4つに注意することが大切です。 ・入浴後など爪が柔らかくなっているときに切る ・指先の高さと同じ位置でスクエア型に切る ・一気に切らずに少しずつ一直線に切る ・やすりで爪の先端をそろえ、なめらかにする 爪が伸びすぎているとケガを招きやすくなるため、こまめにケアすることも重要です。 靴選び 足にフィットしない靴を履くと靴擦れや足の血管を圧迫することがあります。また、通気性の悪い靴は水虫になりやすくなります。柔らかくて通気性が良く、自分の足に合った靴を選ぶことが大切です。 靴を選ぶ際は以下のポイントも参考に選ぶようにしましょう。 ・つま先に1cm程度の余裕がある ・足首と靴が固定するマジックテープや紐がある ・クッション性が良い ・一か所に体重の負担がかかるハイヒールなどは避ける ・土踏まずや踵、足幅が靴と合っている 新しい靴を履く際は、最初から長時間履いてしまうと靴擦れなどが起きやすくなるため、少しずつ履き慣らすことが大切です。 靴下 傷やケガを防ぐためには素足を避け、靴下を履くことも大切です。また、靴下を履くことで水虫の予防にもなります。 靴下を選ぶ際は以下のポイントに注意しましょう。 ・綿などの通気性の良い素材を選ぶ ・靴下は毎日履き替える ・締め付けがなく、サイズの合ったものを選ぶ ・出血に気付きやすくするため白色のものを選ぶ ・縫い目やゴツゴツしないものを選ぶ 靴下が雨で濡れたときはすぐに履き替えることも大切です。また、靴を履くときだけでなく、室内でも靴下を履くようにしましょう。 足浴 足浴とは、足だけをお湯につけ、温めながら洗うことをいいます。足浴には、足を清潔にし、角質や爪を柔らかくするほかリラクゼーション効果もあります。 足浴を行う際は以下のポイントに注意して行いましょう。 ・足浴の温度は37~40度程度にする ・足浴の時間は5~7分間程度にする ・石鹸をよく泡立てて片足ずつ洗う ・指の間も丁寧に洗う 足浴後は、指の間や足の裏の水分を十分に拭き取りましょう。皮膚を傷つけないためにも、水気を拭き取る際はこすらず、押さえるようにしましょう。 まとめ 糖尿病患者の方のフットケア方法について説明しました。 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると合併症を引き起こしやすくなります。特に足は目に触れることが少ないため、異変があっても気付きにくい部分です。ここで紹介したフットケア方法と注意点を参考に、異常を見付けたら医師に相談することが大切です。
最終更新日:2022.09.21 -
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2型糖尿病と診断されてからむくみがひどくなってきた… 糖尿病は進行すると腎臓に影響をおよぼすことがあります。糖尿病は「サイレントキラー」「初期段階では自覚症状がほとんどない」といわれるだけに、「むくみがあるということは症状が悪化しているのではないか」と心配になりますよね。 この記事では、糖尿病でむくみが生じる原因やむくみの改善方法について見ていきます。 糖尿病患者のむくみの原因 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると重大な合併症を招くことがあります。 糖尿病の合併症の1つに糖尿病性腎症があります。糖尿病性腎症は進行段階によって後述する5つの病期にわかれます。糖尿病性腎症は、初期段階では糖尿病以外に何か症状が現れるということはありませんが、進行すると尿にタンパク質が出てくるようになります。ここまでくると、むくみを始め、さまざまな症状が現れるようになります。 糖尿病性腎症とは 腎臓には糸球体と呼ばれる毛細血管の塊があり、血液中の老廃物を濾過して尿として排泄します。 糖尿病は血糖値が高い状態が続く病気です。高血糖状態が続くことにより細い血管が障害されると、神経や網膜、腎臓など毛細血管が多い部分に症状が現れます。糖尿病性腎症は、毛細血管の塊である糸球体が傷付き、老廃物がうまく濾過できなくなることで発症するといわれています。 糖尿病性腎症の発生状況や発症する時期、症状について以下で詳しく見ていきます。 糖尿病性腎症は糖尿病の合併症の1 糖尿病の3大合併症のひとつ つです。なかでも糖尿病性腎症・糖尿病網膜症・糖尿病神経障害は発症頻度が高いため、糖尿病の3大合併症といわれています。糖尿病性腎症は進行段階によって5つの病期に分類され、それぞれの病期で症状や治療法が異なります。第5期まで進行すると透析療法が必要になります。2017年のデータによると、糖尿病性腎症が原因による人工透析導入患者の割合は42.5%と、全透析患者のうち最も高くなっています。 こちらも併せてご参照ください 合併症の発症時期 通常、糖尿病を発症してから5~15年経過後に糖尿病性腎症の症状が現れます。 第3期まで進むと進行を遅らせることはできますが、元の状態まで改善することはできません。さらに、第3期以降は進行が早まり、2~5年で人工透析にいたってしまいます。そのため、糖尿病性腎症は早期発見、早期治療が重要になります。 糖尿病性腎症の症状 糖尿病性腎症は病期によって以下のような症状が現れます。 糖尿病性腎症が原因でむくみが現れている場合は、第3期まで進行している可能性があります。また、第5期まで進行してしまうと人工透析を行う必要があります。 むくみの改善 糖尿病を診断され、むくみが生じたときは糖尿病性腎症の可能性があります。この場合はすぐに医師に相談することが大切です。 一方、一時的なむくみの場合は血行を良くすることで改善できることもあります。以下にむくみを解消する方法を紹介します。 ・マッサージをする ・入浴して体を温める ・栄養バランスの良い食事を摂る ・運動で筋肉を増やし、基礎代謝を上げる ・こまめに体を動かし、長時間同じ姿勢を取らないようにする 入浴する際は半身浴だと上半身が温まりにくいため、全身浴がおすすめです。また、長時間入浴するとのぼせてしまうため、肩まで湯船につかるのは5分を目安に入浴するようにしましょう。 また、キュウリやスイカなど利尿作用のある食べ物やバナナやりんごなどのカリウムを多く含む食べ物、豆腐や豚肉などのビタミンB1を多く含む食べ物はむくみ解消に効果的といわれています。特に小豆はサポニンという利尿作用のある成分が多いためむくみ解消に効果的といわれています。 むくみは糖尿病以外の病気で発症することもあります。上記の解消法を試してもむくみが改善しない場合は、ほかの病気が隠れていることもありますので必ず医師の診察を受けましょう。 まとめ 糖尿病でむくむ原因と糖尿病性腎症について説明しました。 糖尿病性腎症が原因でむくみが見られる場合は、病気が進行している可能性があります。糖尿病性腎症は進行すると腎移植や人工透析を行うこともあります。さらに人工透析導入後の5年後生存率は約50%といわれ、生命予後も良くありません。 糖尿病性腎症は進行してしまうと健康な状態に戻すことはできない病気です。少しでも病気を進行させないためにも早い段階で医師に相談することが大切です。
最終更新日:2022.09.21 -
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糖尿病の遺伝について|1型と2型で異なるその原因 「糖尿病は遺伝する」などと聞いたことはありませんか?健康診断の問診でも糖尿病などの一部の病気は家族の既往歴を聞かれますよね。では、糖尿病は本当に遺伝するのでしょうか。遺伝するのが事実ならどういった対策を取れば良いのでしょうか。 この記事では糖尿病は遺伝するのか、遺伝する場合はどう予防したら良いのかについて解説します。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病の種類について 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。糖尿病は発症原因によって以下の4つに分類されます。 ・1型糖尿病 ・2型糖尿病 ・妊娠糖尿病 ・その他の糖尿病 同じ種類の糖尿病であっても人によって生活習慣や合併症が違うため、治療方法も1人ずつ異なります。上記4つの糖尿病なかから、1型糖尿病と2型糖尿病について以下で説明していきます。 1型糖尿病の特徴 食事をすると、すい臓のランゲルハンス島という組織にあるβ細胞からインスリンが分泌されます。インスリンは血液中の糖を細胞に取り込みやすくする働きがあるため、血糖値を下げる効果があります。 しかし、1型糖尿病はほとんど、あるいは全くインスリンを分泌することができません。そのため、1型糖尿病の場合は体の外から注射でインスリンを補充する必要があります。 1型糖尿病も後述する2型糖尿病も高血糖が続くことによる症状が現れます。ただし、1型糖尿病では以下のような症状が「突然」かつ「急に」が現れることが特徴です。 ・多飲 ・頻尿 ・倦怠感 ・急激な体重減少 1型糖尿病の原因ははっきりとはわかっていませんが、免疫反応の異常(自己免疫)によってすい臓のβ細胞が破壊されることが原因と考えられています。1型糖尿病の遺伝性については後述します。 2型糖尿病の特徴 現在、日本の糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病といわれています。2型糖尿病はインスリンの分泌量が減ったり、インスリンの作用不足によって血糖値が高い状態が続く病気です。2型糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状が見られません。 しかし、病気が進行すると、以下のような症状が「少しずつ」「ゆっくりと」現れます。 ・皮膚がかゆい ・皮膚の乾燥 ・頻尿 ・手足の痺れや違和感 ・傷が治りにくい ・多飲 ・倦怠感 ・目がかすむ 2型糖尿病は体質などの遺伝的要因と食生活などの生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。そのため、2型糖尿病の場合は食事療法と運動療法で血糖値をコントロールし、それでも改善しない場合は薬物療法を取り入れるというのが治療の基本になります。2型糖尿病の遺伝性についても後述します。 糖尿病が遺伝する可能性について 糖尿病は発症原因が種類によって異なるため、遺伝するかどうかも糖尿病の種類によって違います。1型糖尿病と2型糖尿病について遺伝する可能性があるかどうか見ていきます。 1型糖尿病の遺伝の可能性 前述のとおり、1型糖尿病の原因ははっきりとはわかっていませんが、自己免疫によってインスリンを分泌するβ細胞が破壊されることが原因といわれています。そのため、1型糖尿病の発症に特定の遺伝子が影響しているわけではないと考えられています。 2型糖尿病の遺伝の可能性 2型糖尿病は体質などの遺伝的要因と食生活などの生活習慣が組み合わさることが原因といわれています。一方、遺伝というわけではありませんが、乱れた食習慣や運動不足など「糖尿病の引き金になりやすい生活習慣」を家族から引き継ぐことがあれば家族内で糖尿病を発症する可能性が高くなります。 糖尿病の予防について 前述のとおり、2型糖尿病は遺伝的要因と生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。体質などの遺伝的要因は変えることができませんが、食習慣や運動などの生活習慣を改善すれば糖尿病の予防につながります。 一方、1型糖尿病は突発的に発症するうえ、いまだに明確な原因がわかっていないため、予防することは難しいというのが現状です。 食生活の改善 食べ過ぎが続くと、すい臓はインスリンを多く分泌しようとします。その結果、すい臓は疲弊してしまい、インスリンの分泌量が減ってしまいます。糖尿病予防を目的とした食習慣の改善では、食べ過ぎを防ぎ、すい臓に負担を軽くすることが基本になります。 また、食習慣の改善の際は以下のポイントを押さえて行うとより効果的です。 ・栄養バランスの良い食事を摂る ・一日3食(朝・昼・夕)しっかり摂る ・ゆっくりよく噛んで食べる ・夜食を避ける ・外食時は和定食を選ぶ 運動 運動は糖を細胞に取り込みやすくするため、血糖値を下げる効果があります。糖尿病予防のために運動を取り入れる際は以下の点に注意して行うことが大切です。 ・持病がある場合は医師に相談してから行う ・準備運動と整理運動を必ず行う ・体調が悪いときは無理をしない ・毎日継続できる運動を選ぶ まとめ 糖尿病は遺伝するのかについて解説しました。2型糖尿病には遺伝的要因があるため、家族に糖尿病の既往歴がある方は糖尿病を発症しないよう注意が必要です。逆にいえば、努力次第で2型糖尿病は予防できる可能性あるということです。 糖尿病と診断されていない段階から食事や運動に気を配り、糖尿病を発症しないように心がけましょう。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病患者が痩せる症状は要注意!病状と余命について説明 糖尿病で「痩せてきたら病気が進行している証拠」と聞いたことはありませんか? 糖尿病と診断されてから、食べる量を減らしたわけでもないのに痩せてきた…もし糖尿病が進行しているということなら心配ですよね。そもそも、なぜ糖尿病になると痩せてくるのでしょうか。 この記事では、糖尿病になると痩せる原因や糖尿病で痩せたときはどういう状態なのかについて説明します。 糖尿病患者が痩せてしまったら 結論からいうと、糖尿病が原因で痩せる場合は病気が進行している可能性があります。では、なぜ糖尿病が進行すると痩せるのでしょうか。 糖尿病で痩せる原因 糖尿病は高血糖状態が続く病気で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンの作用不足が原因で発症します。 食べる量が変わらないのに体重が減るということは、食事で摂った糖がエネルギーとして使われず、代わりに筋肉や脂肪が分解されてエネルギー源になっているということです。場合によっては1か月で5~10kg体重が減ることもあります。 糖尿病は発症原因によって1型糖尿病と2型糖尿病に大別されますが、いずれも症状の1つに体重減少があります。ただし、1型糖尿病の場合は突然かつ急激に体重が減るのが特徴です。 糖尿病が進行している可能性 糖尿病と診断され、食事の量が変わらないのに痩せてしまうという場合は糖尿病が重症化している可能性があります。このような場合、一刻も早く医師の診察を受けることが大切です。 関連記事はこちら 糖尿病で体重が減少する原因について 痩せた場合の余命について 食べる量が変わらないのに痩せていくということは、エネルギー源として筋肉や脂肪が分解されているということです。このとき、副産物としてケトン体が分泌されます。 血液中に急激にケトン体が増えると血液が酸性に傾くため、糖尿病ケトアシドーシスを引き起こし、脱水症状などの異常が現れます。糖尿病ケトアシドーシスを放置すると昏睡や意識障害を引き起こし、最悪の場合、死にいたることもあります。 糖尿病と診断された場合、余命はどうなるのか見ていきます。 糖尿病患者は長生きできないのか オックスフォード大などの研究によると、50歳以前に糖尿病を発症した患者は、健康な人と比べて平均で10年寿命が短くなることがわかりました。糖尿病は脳卒中や心筋梗塞など命に関わる合併症を引き起こすリスクが高まります。 もちろん、後述する糖尿病治療に積極的に取り組むことで寿命を延ばすことは不可能ではありません。 病状が末期の場合 糖尿病は進行するとさまざまな合併症を招きます。糖尿病によって動脈硬化を起こした場合、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる結果を招くこともあります。 また、糖尿病が原因で痩せているケースでは、インスリンの作用不足による糖尿病ケトアシドーシスによって昏睡や意識障害を招き、場合によっては死にいたることもあります。 このように、末期の糖尿病は合併症や症状によって余命が変わるため、一概に「余命〇年」ということはできません。一方、糖尿病性腎症を発症して人工透析を行うことになった場合の余命は約5年といわれています。 悪化しないために!できること 糖尿病は完治する・しないという病気ではありません。糖尿病の治療目的は、血糖コントロールを継続することで健康な状態を維持することです。何より大切なことは「糖尿病を発症しないこと」、そして糖尿病を発症してしまったら「病気が進行しないようにすること」が重要なのです。 糖尿病の予防方法 糖尿病を予防するには食生活の改善と運動に取り組むことが基本になります。 食生活の改善ポイント 糖尿病を予防するには乱れた食生活を改善することが大切です。このとき、以下のポイントを押さえて取り組むことが重要になります。 ・栄養バランスが良い食事を摂る ・食べ過ぎない ・規則正しく3食(朝・昼・夕)食べる ・夜遅い時間の食事は避ける 食生活改善について 詳しくはこちら 運動のポイント 糖尿病の予防には運動を取り入れることも大切です。運動を行う際は以下のポイントを意識して、楽しみながら行うことが重要です。 ・持病がある場合は医師に相談する ・体調が悪い場合は無理をしない ・準備運動と整理運動を行う ・最初は軽い運動から始める ・毎日継続できる運動を行う 糖尿病の治療 糖尿病と診断されたら、早い段階で治療に取り組むことが大切です。 糖尿病の治療は食事療法・運動療法・薬物療法が基本です。最初は食事療法と運動療法で血糖コントロールを行い、それでも改善されない場合は薬物療法を取り入れていきます。 食事療法 食事療法だからといって、食べてはいけないものがあるわけではありません。 糖尿病の食事療法は医師から指示されたエネルギーを守り、バランスの良い食事を規則正しく摂ることが基本になります。また、食事の際はゆっくりとよく噛んで食べると食後の血糖値が上がりにくくなります。 1日の適正なエネルギー量は人によって異なります。そのため、食事療法は医師と相談のうえで治療に取り組むことになります。 関連記事はこちら 食事療法のポイント 運動療法 糖尿病は食事療法と運動療法を組み合わせて行うことが大切です。糖尿病の改善に効果がある運動は有酸素運動と筋力(レジスタンス)トレーニングです。 有酸素運動とはウォーキングや水泳、ジョギングといった全身運動のことをいいます。有酸素運動を行うと血液中の糖が細胞に取り込まれやすくなるため、血糖値を下げる効果があります。 一方、筋力トレーニングとはダンベル運動や腕立て伏せなど筋肉に負荷を与える運動のことをいいます。筋力トレーニングは筋肉が増やし、インスリンの効果を高めます。 関連記事はこちら 運動の効果とおすすめの運動療法 薬物療法 食事療法と運動療法に取り組んでも血糖値の改善ができない場合は薬物療法を取り入れます。糖尿病の薬物療法には、インスリンの働きを高める薬やインスリンの分泌を改善するもの、身体の外から注射でインスリンを補うものなどさまざまなものがあります。 いずれも医師の指示に従って正しく使用することが大切です。 まとめ/糖尿病患者が痩せる症状には要注意!病状と余命について 糖尿病と診断され、食べる量を変えていないにも関わらず痩せてきた場合は病気が進行している可能性があります。そのまま放置しておくと意識障害を招き、死にいたることもあります。さらに、糖尿病は進行すると合併症を引き起こし、深刻な結果を招くこともあります。 ▼こちらもご参照ください 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.09.21 -
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糖尿病が原因の下痢について|特徴と原因を解説 「糖尿病予備軍」と診断されたというあなた。「最近お腹がゆるい」「消化が悪いものを食べたわけでもないのに下痢が続く」そんなことはありませんか?あまり知られていませんが、下痢は糖尿病の症状の1つです。 この記事では、なぜ糖尿病で下痢が起こるのか、自分の症状が糖尿病によるものなのかなどについて説明します。 糖尿病と下痢の関係 結論からいうと、糖尿病が原因で下痢になることはあります。 もちろん、下痢などの胃腸の症状は糖尿病だけでなくさまざまな要因で起こることがあります。糖尿病が引き金となって下痢が起こる場合、便利と下痢を繰り返したり、症状が酷くなったり長引くことがあります。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病で下痢になる原因 糖尿病が引き金となって起こる下痢の原因には以下の2つがあります。 ・自律神経障害 ・薬の副作用 それぞれ詳しく見ていきます。 自律神経障害 糖尿病による下痢の原因の1つに自律神経障害があります。 糖尿病が進行するとさまざまな合併症を引き起こすことがあります。糖尿病の合併症の代表的なものに糖尿病性神経障害があります。 糖尿病性神経障害によって自律神経が障害されると胃腸運動に異常が起きます。このとき、排便のコントロールがうまくいかず、下痢や便秘が起きやすくなります。 糖尿病性神経障害による下痢は症状が重くなったり、便秘と下痢を繰り返したり、長引くことがあります。一方、糖尿病神経障害による下痢では血便や腹痛は見られないという特徴があります。 薬の副作用 糖尿病の治療薬は、副作用として下痢を引き起こすものがあります。下痢を引き起こす可能性がある治療薬には以下のようなものがあります。 ・ビグアナイド薬 ・α-グルコシダーゼ阻害薬 ビグアナイド薬 肝臓ではアミノ酸や乳酸からブドウ糖を産生しています。これを糖新生といいます。 ビグアナイド薬は肝臓での糖新生を抑制したり、インスリンの効きを良くする薬です。ビグアナイド薬の副作用に腹痛や下痢があります。 α-グルコシダーゼ阻害薬 α-グルコシダーゼは小腸にある酵素で、炭水化物をブドウ糖に分解して、吸収しやすくする役割があります。 α-グルコシダーゼ阻害薬は、α-グルコシダーゼの働きを抑制し、ブドウ糖への分解を遅らせることで血糖値の上昇を抑える効果があります。α-グルコシダーゼ阻害薬は副作用として下痢やおなら、膨満感があります。 下痢以外に併発する神経障害の症状 前述のように、糖尿病が引き金となる下痢の原因に、糖尿病性神経障害による自律神経障害があると説明しました。 糖尿病性神経障害は自律神経以外に運動神経や知覚神経などさまざまな神経が障害されます。そのため、下痢だけでなく手足のしびれや痛みなど、さまざまな症状が全身で起こる可能性があります。 なかにはほかの病気と区別しにくいものや日常的に起こりうる症状と似たものもあるため、糖尿病による症状かどうかの判断は困難です。 どのような症状があるか以下で詳しく見ていきましょう。 手足のしびれ 高血糖状態が続くことで末梢神経が障害されると足裏や手足に痛みやしびれなどの異常を感じることがあります。糖尿病性神経障害による手足のしびれは左右対称に症状が現れることが特徴です。 立ちくらみ 高血糖によって自律神経が障害されると、血圧のコントロールがうまくいかずに起立性低血圧(立ちくらみ)を起こすことがあります。 便秘 高血糖によって自律神経が障害されると胃腸運動に異常が起き、下痢だけでなく便秘も起こることがあります。 排尿異常 高血糖によって自律神経が障害されると、膀胱に尿が溜まっているにも関わらず尿意を感じにくくなることがあります。そのため、だんだん膀胱がだんだん大きくなり、排尿する時間が長くなったり、残尿が生じることもあります。 勃起不全(ED) 糖尿病による自律神経障害では勃起不全(ED)が起こることもあります。勃起しても持続しなかったり、固さが不十分になることが続くと、自信をなくし、精神的な影響も出てきます。 発汗異常 汗をかくのも自律神経によるものです。糖尿病で自律神経が障害されると、汗をかきやすくなったり、反対に汗をかきにくくなることがあります。 まとめ 糖尿病が原因で下痢が起こる原因について説明しました。 下痢をはじめ、自律神経が障害されることで起こる症状は糖尿病以外の病気と区別することは難しいです。自己判断せず、必ず医師の診断を受けましょう。 尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.09.29 -
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糖尿病は痩せれば治る?|完治しない理由と症状を軽減する方法 肥満気味で糖尿病と診断された方は、医師から「体重を減らしましょう」といわれているのではないでしょうか。一方、「糖尿病は発症したら治らない」や「糖尿病は痩せたら治る」など、巷には糖尿病にまつわる噂がたくさんあります。 痩せたら糖尿病が治るのであればダイエットにも気合いが入りますが、頑張っても治らないのであればやる気も起きませんよね。 この記事では、糖尿病は痩せたら治るのかについて見ていきます。 糖尿病は痩せれば治るのか 結論からいうと、糖尿病は痩せたからといって完治する病気ではありません。では糖尿病患者の方がダイエットに取り組む意味はないのでしょうか。 実は、肥満の糖尿病患者が体重を5%減らすと糖尿病が治った状態(健康な人と同じ状態)に近づけることができることがわかっています。 食事をするとすい臓からインスリンが分泌され、血液中の糖を細胞に取り込みやすくします。しかし、肥満や運動不足があるとインスリン抵抗性を招くため、インスリンが分泌されても作用しにくく、血糖値が下がりません。そのため、肥満の方は体重を減らし、インスリン抵抗性を改善することが重要なのです。 糖尿病が治らない理由 そもそも、糖尿病には「完治する」という概念がありません。 糖尿病は発症しやすい体質(遺伝的要素)に生活習慣が組み合わさって発症します。治療(血糖コントロール)によって血糖値を下げることができたとしても、インスリンが効きにくかったり、インスリンの分泌が少ないといった血糖値が上がりやすい体質は変わりません。そのため、治療をやめて元の生活に戻るとすぐに血糖値が上がってしまうのです。 糖尿病は一度発症したら血糖コントロールを続けなければなりません。そういう意味では糖尿病は完治することのない病気です。ただし、血糖コントロールを適切に行うことで健康な人と同じレベルを維持することができる病気でもあります。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病の原因 糖尿病には4つの種類がありますが、大別すると1型糖尿病と2型糖尿病にわけられ、それぞれ発症原因と治療法が異なります。以下で詳しく見ていきましょう。 1型糖尿病の原因 1型糖尿病はほとんど、あるいは全くインスリンを分泌できなくなる病気です。後述する2型糖尿病と違い、1糖尿病は幅広い年齢で発症します。 1型糖尿病の原因はわかっていませんが、免疫が自分の細胞を攻撃してしまうこと(自己免疫)によってインスリンを分泌する細胞が破壊されるためと考えられています。1型糖尿病はインスリンをほとんど分泌できないため、注射で体の外からインスリンを補う必要があります。 2型糖尿病の原因 2型糖尿病は体質などの遺伝的要素や生活習慣が組み合わさることでインスリンの分泌量が減ったり、インスリンの効きが悪くなることで発症します。 現在、日本の糖尿病患者の9割以上は2型糖尿病といわれています。2型糖尿病を招く生活習慣には以下のようなものがあります。 ・過食 ・肥満 ・運動不足 ・喫煙 ・飲酒 など なお、糖尿病は40歳以降で発症率が高くなるため、加齢も発症原因となります。ただ、現代人は生活習慣が乱れがちのため、年齢が若い人でも糖尿病を発症するケースがあります。 2型糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本となり、場合によって薬物療法も取り入れることになります。これについては後述します。 ストレスによる糖尿病は治るか 前項で糖尿病は治療を続けたからといって完治する病気ではありませんと、お伝えしました。そのうえ、糖尿病の治療は生活習慣の改善や継続的な服薬などがあるためストレスがたまります。 実は、ストレスも血糖値を上げる原因になります。人間はストレスを感じるとアドレナリンやコルチゾールといったホルモンの分泌量が増えます。実はこれらのホルモンには血糖値を上げる働きがあります。さらにストレスは食習慣の乱れも招くことがあります。 そのため、血糖コントロールを行う際はストレスをコントロールすることも重要です。音楽鑑賞や入浴など自分に合ったストレス対処法(ストレスコーピング)を見付け、実践することが大切です。 現在の糖尿病治療 ここまで説明したとおり、糖尿病治療(血糖コントロール)は健康な人と同じ状態を維持することを目的としています。 糖尿病治療で行う血糖コントロールは以下の3つが基本になります。 ・食事療法 ・運動療法 ・薬物療法 食事療法 糖尿病と診断されたらまず食事療法と運動療法で血糖コントロールを行います。食事療法といっても、食べてはいけないものがあるわけではなく、以下の5つのポイントを押さえた食事を心がけることが大切です。 ・適正なエネルギー量の食事を摂る ・栄養バランスの良い食事を摂る ・3食(朝・昼・夕)規則正しく食べる ・よく噛んでゆっくり食べる ・夜食は避ける 適正なエネルギー量は人によって異なります。医師と相談のうえ、指示されたエネルギーを守ることが大切です。 食事療法の関連記事はこちら 運動療法 血糖コントロールに有効な運動には有酸素運動と筋力(レジスタンス)トレーニングがあります。有酸素運動をすると血中のブドウ糖が細胞に取り込まれやすくなるため血糖値が下がりやすくなります。また、筋力トレーニングで筋肉を増やすことで、さらにインスリンの効果が現れやすくなります。 有酸素運動 有酸素運動として代表的なものに以下のようなものがあります。 ・ウォーキング ・ジョギング ・水泳 など 筋力(レジスタンス)トレーニング 筋力トレーニングとして代表的なものに以下のようなものがあります。 ・ダンベル運動 ・腕立て伏せ ・腹筋運動 など 運動療法の関連記事はこちら 薬物療法 糖尿病では食事療法と運動療法から取り組むのが基本ですが、それでも血糖値の改善が見られない場合は薬物療法を取り入れることになります。 糖尿病で使用する薬はインスリンの効果を高めるものやインスリンの分泌量を増やすもの、注射によって外からインスリンを補充するものなどがあります。 薬物療法の関連記事はこちら まとめ 糖尿病は完治する・しないというものではありません。血糖コントロールによって健康な人と同じ状態を維持することを目指すことが糖尿病の治療になります。したがって、糖尿病は痩せたら治るというものでもありません。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病による血圧の変化|高血圧をコントロールする方法 日本では糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病といわれています。 2型糖尿病と診断された方のなかには「糖尿病になったら血圧にも気を付けてください」などといわれた人もいるのではないでしょうか。糖尿病と血圧は一見関係がないように思えますが、なぜ血圧に気を付ける必要があるのでしょうか。 この記事では糖尿病と血圧の関係について詳しく見ていきます。 糖尿病と血圧の関係 糖尿病患者の40~60%は高血圧であるといわれています。そのため、糖尿病と診断されたら高血圧にも気を付ける必要があります。 一方、糖尿病治療で使用する薬や合併症によっては低血圧を招くこともあるため、血圧のコントロールは慎重に行う必要があります。 血圧が上がる理由 糖尿病患者の方が高血圧になる理由には以下のようなものがあります。 高血糖になると血液量が増える 糖尿病は血糖値(血液中の糖の割合)が高い状態が続く病気です。血糖値が高くなると血液の浸透圧が高くなるため、腎臓から水分を吸収する量が増えたり、細胞から水分が排出されて血液量や体液が増えるため、血圧が上がります。 インスリン抵抗性により血管が広がりにくく血液量も増える 2型糖尿病は何らかの原因によりインスリンの分泌量が減ったり、インスリンが効きにくくなっている状態(インスリン抵抗性)です。 通常、インスリンはすい臓から分泌され、血液中の糖を細胞に取り込みやすくするものですが、インスリン抵抗性の場合、分泌されたインスリンがうまく作用しません。このとき、インスリンの作用不足を補うためにすい臓はインスリンを大量に分泌するため、高インスリン血症を招きます。 高インスリン血症を発症すると、腎臓で塩分(ナトリウム)が排泄されにくくなったり、交感神経の働きを高めたり、血管壁の細胞が増殖して血管が広がりにくくなるため、血圧が上がりやすくなります。 インスリンについてはこちら 糖尿病患者は肥満が多く、血圧を上げるホルモンの分泌量が多くなる 2型糖尿病は遺伝的要素と食べ過ぎなどの生活習慣病が組み合わさって発症するといわれています。そのため、糖尿病を患っている人は肥満傾向であることが多いです。 肥満は交感神経を緊張させ、アドレナリンなどの血圧を上げるホルモンの分泌を増やすため、血圧が上がりやすくなります。 糖尿病の合併症(糖尿病性腎症)の影響 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、病気が進行するとさまざまな合併症を招きます。このとき、糖尿病性腎症を発症すると、レニン(血圧を上昇させるホルモン)が腎臓から分泌されます。 また、糖尿病性腎症を発症すると腎臓の濾過機能が低下するため、血液量が増え、高血圧を招くことになります。 血圧が下がるケース 糖尿病では高血圧だけでなく、低血圧も気を付ける必要があります。 高浸透圧高血糖症候群 糖尿病で血圧が下がるケースの1つに高浸透圧高血糖症候群があります。高血糖症候群とは、感染症や薬の影響で糖尿病患者にインスリンの作用不足が起こったときに見られる、高血糖性の急性代謝失調のことです。 高浸透圧高血糖症候群は重度の脱水を引き起こし、多飲や意識障害、体重減少のほか血圧の低下も招くことがあります。 自律神経障害による起立性低血圧 起立性低血圧とは、急に立ち上がったときなどにフラッとすること(立ちくらみ)のことです。糖尿病で自律神経が障害されると血圧の制御ができなくなり、起立性低血圧を起こしやすくなります。 高血圧が引き起こす合併症 糖尿病患者の方が高血圧になると、さまざまな問題を引き起こします。 細小血管障害 糖尿病の3大合併症と呼ばれる糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害は細小血管障害の代表的なものになります。高血糖状態が続くと血管が傷つきますが、細い血管が障害されると細小血管障害が起こります。 腎臓や網膜、神経には毛細血管が集まっているため、細小血管障害が起こりやすくなるのです。 なかでも、糖尿病性腎症は初期段階では血糖値の影響が大きいのですが、症状が進行すると血圧の影響のほうが大きくなるため、血圧と血糖値のコントロールが重要になります。 大血管障害 大血管障害には脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症といったものがあり、文字どおり太くて大きな血管が動脈硬化を起こすことで発症する病気です。糖尿病と高血圧はいずれも動脈硬化を進行させるため、両方発症している場合は大血管障害の危険性が高まります。 糖尿病の血圧コントロール 糖尿病患者の方は合併症の発症を防ぐためにも血圧をコントロールすることが重要になります。 ここからは糖尿病患者の方の血圧コントロールについて見ていきます。 目標とする血圧数値 血圧とは血管内の圧力のことです。血圧は心臓収縮時に最大になり(収縮期血圧)、心臓拡張時に最低になります(拡張期血圧)。血圧は心臓や神経系などの影響を受けるだけでなく、身体活動や精神状態によっても変動します。 引用元:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2014」 本ガイドラインによると、循環器系などの病気を最も発症しにくい血圧は収縮期血圧<120かつ拡張期血圧<80となります。 従来は、血圧のレベルによって軽症、中等症、重症と分類されていましたが、現在はⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度という分類に変わっています。 食事によるコントロール 血圧をコントロールするには食事などの生活習慣を改善することが基本になります。「高血圧治療ガイドライン2014」では以下のポイントを押さえることを推奨しています。 ・食塩制限(6g/日未満) ・野菜や果物の積極的摂取 ・コレステロールや飽和脂肪の制限 ・飲酒制限 運動によるコントロール 運動は血圧を下げる効果があることがわかっています。血圧をコントロールするには、以下のような有酸素運動を1日30分以上、毎日継続して行うことをおすすめします。 ・ウォーキング ・サイクリング ・水泳 など 禁煙によるコントロール たばこに含まれるニコチンは交感神経系を刺激するため、喫煙は高血圧を招きます。そのため、血圧のコントロールでは禁煙が欠かせません。以下の結果からも、たばこを1本吸うだけで血圧が上がることがわかります。 引用元:テルモ株式会社「脳卒中や心臓病の危険を高める『仮面高血圧』」 薬によるコントロール 食事や運動など生活習慣の改善だけで血圧のコントロールをするには限界があるケースがあります。この場合、生活習慣の改善に加えて降圧薬を用いた薬物治療を取り入れることになります。 なお、降圧薬にはさまざまな種類があります。処方された薬によって飲み合わせや注意点が異なりますので、医師の指示に従って服用することが大切です。 まとめ 糖尿病と血圧の関係について説明しました。 糖尿病を発症している方は高血圧になりやすいため、血糖値と併せて血圧もコントロールしていく必要があります。糖尿病と高血圧が重なると合併症の危険性が高まるため、医師の指示に従い、早い段階で治療に取り組みことが大切です。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.10.11 -
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糖尿病の原因となる食事を紹介|メニュー見直しで病気を予防! 国内で糖尿病の可能性があるのは、約1,000万人と推計されており、国民病とされています。 糖尿病の予防と糖尿病の改善に欠かせないのが、食生活の見直しです。なぜなら食事の量や栄養素の配分を調節することにより、血糖値をコントロールできるようになるからです。 しかし「糖尿病対策の食事」と聞くと、難しそうに感じる方もいるでしょう。そこで本記事では、糖尿病患者の方や糖尿病予備軍の方の理想の食事について考えていきます。 糖尿病リスクの高い食事の特徴 糖尿病を発症させたり糖尿病を悪化させたりする可能性がある食事とは、次の3つの食事です。 ・高血糖を招く食事 ・高カロリーな食事 ・高脂質な食事 3つについて順番に説明していきます。 高血糖 高血糖のリスクを高めるのは、糖類を多く含んだ食材です。糖類のなかでも、ケーキや菓子パンなどに多く含まれる単糖類は特に血糖値を急激に上げてしまうので、避けたほうがよいでしょう。 また、パン・おにぎりだけの食事やラーメンといった一品料理は、栄養バランスが炭水化物に偏っており血糖値を上げやすいので、こちらも避けてください。おやつなどの間食が多い人も、血糖値を高くしてしまいますので控えましょう。 高カロリー 過食や糖分の多い食事は高カロリーになります。必要以上のカロリー摂取は肥満や高血糖を引き起こし健康を害します。 日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌量が少ないので、欧米化した高カロリー食ばかりを食べていると、糖分の処理が間に合わず高血糖状態が続くことになります。 また清涼飲料水は飲みやすいですが糖分が多いので、気づかぬうちにカロリーを過剰に摂取している場合があります。ごくごく飲んでしまわないようにしてください。 清涼飲料水の糖の種類によっては吸収が早いものがあり体重増加を招いてしまいます。肥満も糖尿病リスクを高めてしまいまうので、糖尿病の可能性がある際は我慢することをお勧めします。 高脂質 高血圧の人が糖尿病を発症するリスクは、普通の人の2~3倍といわれています。高脂質の食事を日常的に摂ると高血圧になりやすいので、糖尿病リスクも大幅に上昇させてしまいます。脂質が多い食事で代表的なのは肉類です。食事に取り入れる際は、料理する前に脂身を取り除くだけでも脂質の摂取を抑えることができます。 また、肉を避け、代わりに魚や大豆製品をメインにしたメニューに切り替えると脂質を抑えることができます。 糖尿病の危険度をチェック 糖尿病の危険度を高める原因をチェックしておいてください。できるところから気をつけることが糖尿病予防につながります。 ・血圧が高い ・若いころより10㎏以上太った ・食べすぎる傾向がある ・お酒を多く飲む ・間食が多い ・甘いものが好き ・脂っこいものが好き ・濃い味が好き ・夕食を22時以降に摂ることが多い ・朝食を食べない ・3食の時間が定まっていない ・野菜が嫌い ・海藻が嫌い ・キノコが嫌い ・家族の糖尿病患者がいる ・40歳以上 ・早食い ・運動が嫌い ・ストレスが多い ・健康診断を受けていない 糖尿病予防に効果のある食事 糖尿病は食事の改善で発症を防ぎ、発症しても食生活を気を付けることで病気の進行を遅らせられます。 そこで、糖尿病予防のための食事について、次の3項目に分けて詳しく解説します。 ・糖尿病予防に良い食べ物 ・糖尿病予防のためのカロリー計算の方法 ・糖尿病予防に役立つ食事メニュー 糖尿病予防に良い食べ物 糖尿病治療に「これだけを食べれば大丈夫」という万能な食材は、ありません。また食べてはいけない制限されている食材もありません。炭水化物の摂りすぎは糖尿病のリスクを高めることがありますが、炭水化物は3大栄養素の1つで、体に必要な栄養素なので全く摂取しないのは、お勧めできません。 栄養のバランスよく、さまざまな食材を適切な量、食べましょう。 以下の表は、3大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)とビタミン・ミネラルを含む食材とその食材の特性を表したものです。食材選びの参考にしてください。 糖尿病予防のためのカロリー計算 適切な食事量(エネルギー量)を守ることで血糖値の上昇や合併症のリスクを低下させることが期待できます。 適切なエネルギー量は次の計算式で算出します。 <1日のエネルギー量の計算方法> ・1日のエネルギー量(kcal)=身体活動量×標準体重 ・身体活動量 軽い労作(デスクワークが多い人)25~30kcal/kg 普通の労作(立ち仕事が多い人)30~35 kcal/kg 重い労作(力仕事が多い人)35~kcal/kg ・標準体重(kg) = 身長(m)×身長(m)×22 また食品交換表をもとに、食べる量を計算するのも有効です。食品交換表には次のように記載されています。 食品交換表では、80kcal=1単位と取り決められているので、医師から指示された1日のエネルギー量に沿って計算します。 例えば、1日1,200kcalの摂取を指示された糖尿病患者の方は、15単位分の食品を選んで食べれば適正量になります。計算式は次のとおりです。 ・1,200kcal÷80kcal=15単位 食品交換表を使って食材を選んで調理すれば、自然にバランスのよい献立になります。 糖尿病予防に役立つ食事メニュー 糖尿病予防に役立つ献立の組み立て方の基本は次のとおりです。 ・主菜を肉もしくは魚から1品選ぶ ・野菜、きのこ、海藻から主菜に合うものを1~2品選ぶ ・汁物から1品選ぶ ・乳製品と果物でカルシウム、ビタミンを補給 この4項目を気をつけておけば、食材選びに悩まず糖尿病を予防する献立がスムーズに決まります。 まとめ 糖尿病は1度発症すると完治することのない病気です。糖尿病発症の原因の1つは食生活の乱れなので、食習慣を改善することで、発症を予防することができます。もし糖尿病が発症した場合も治療の基本として、食事療法に取り組むことが重要です。 食習慣の改善は、好みと違った食事のメニューに慣れるまでは不満に感じるかもしれませんが、変えていくことで糖尿病発症リスクと重症化リスクを減らせるので十分取り組む価値があります。 こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の種類は1型と2型がある!ふたつの症状と原因を解説 糖尿病予備軍を含めると、有病者は1,000万人を超えるともいわれる糖尿病。 そんな糖尿病には、主に「1型」「2型」のふたつの種類が存在します。 それぞれの種類の症状と原因のほか、予防法や治療法を紹介していきます。 糖尿病のふたつの種類 主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」のふたつに大別される糖尿病。それぞれに異なる特徴を、以下の図から確認してみましょう。 1型糖尿病 厚生労働省の発表によれば、国内における1型糖尿病の患者数は推定10〜14万人。2型糖尿病と比べて発症率は低く、日本では10万人中、約1.5〜2.5人ほどの割合となっています。ただし、世界全体で見ると、糖尿病患者のおよそ5%が1型糖尿病ともいわれています。 1型糖尿病は、すい臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が何らかの原因によって破壊されることにより、インスリンの分泌が低下もしくは枯渇する症状が特徴です。25歳以下の若年層の症例が多いですが、幅広い年齢で発症する可能性があります。 発症要因に生活習慣も深く関係する2型糖尿病とは、基本的な治療方針も大きく異なります。 1型糖尿病の主な症状 1型糖尿病でもっとも発症頻度の高い、急性発症1型糖尿病では、症状は突然現れるとされており、数日~数週といった短期間に急激に発症します。これはゆっくりと症状が進行し、初期段階では自覚症状が見られない2型糖尿病との大きな違いといえるでしょう。 以下、1型糖尿病の主な症状を紹介します。 ● 喉の渇き 高血糖状態がキープされ、浸透圧が高くなることで細胞から水分が出て行きます。水分が尿から排泄されることで、体が脱水状態となり、喉の乾きにつながります。 ● 多飲・頻尿 高血糖状態によって体が脱水症状に陥ると、排泄の機会が増え頻尿になります。また、自然に喉が渇いくために多飲の傾向も見られ、これによって尿意をもよおす機会が増えることも考えられます。 ● 急な体重減少 糖尿病の発症により、食事から取るエネルギーを吸収できない状態になりますが、体はエネルギー源として脂肪や筋肉を分解してエネルギーに変換しようとします。このために、急激な体重減少が起こるケースも見られます。 ● 疲労感 糖尿病によりエネルギーが吸収できない状態になると、大きな疲労感を感じることも増えてきます。 ● 意識障害 高血糖状態と、ひどい脱水状態の結果、意識障害へとつながることがあります。糖尿病ケトアシドーシス、もしくは高浸透圧高血糖症候群などの急性合併症の可能性が考えられます。 1型糖尿病の原因 1型糖尿病の原因は明確になっているわけではありませんが、大きく分けて、以下のふたつの要因が推測されています。 ● 1型糖尿病を発症しやすい体質 ● 何らかの原因により、すい臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が破壊される すい臓のインスリンを出すβ細胞が破壊される現象は、1型糖尿病の特徴的なものです。β細胞が破壊される原因もやはり分かっていませんが、ひとつには自己免疫が関係するともいわれています。 免疫機能が適切に働かないことで、自らの細胞を攻撃するケースがありますが、これがすい臓にダメージを与えているとする説です。 さらにもうひとつの原因として、ウイルス感染が指摘されています。2015年に九州大学の研究グループが、世界で初となる「ウイルス感染により発症するとみられる1型糖尿病のリスクを向上させる遺伝子」を発見したと発表しています。 2型糖尿病 2型糖尿病は、日本における糖尿病患者のおよそ95%といわれています。若い段階での発症も多い1型糖尿病に対して、2型糖尿病は40歳以上に多くの症例が見られます。また、1型糖尿病は肥満とは無関係で、比較的痩せ型も多いとされますが、2型糖尿病患者には肥満、または昔肥満だったという方が多いです。 2型糖尿病の原因は、生活習慣や食習慣も含む複数の要因によるインスリン分泌の低下や、インスリンの働きが悪くなること(インスリン抵抗性)にある点が特徴です。 2型糖尿病の主な症状 2型糖尿病は、初期段階では自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな病気です。急激に発症するのではなく、長い期間をかけてゆっくりと進行するため、2型糖尿病ではっきりとした症状が出る頃には、すでに160~180mg/dLを超える血糖値となっているケースが見られます。 慢性的な高血糖により水分の排出が進み、尿が過剰に作られることで、頻尿・多尿や、それにともなう喉の渇き、そして空腹感を感じ始めます。さらに症状が悪化すると、疲労感をはじめとするさまざまな症状が現れます。 2型糖尿病の主な症状は以下となります。 ● 疲労感 ● 皮膚の乾燥、痒み ● 手足の感覚低下、チクチクとした痛み ● 感染症にかかりやすい ● 頻尿 ● 目のかすみ ● 性機能低下 ● 傷が治りにくい ● 空腹感 ● 喉の渇き また、糖尿病を数ヶ月〜数年など長い間放置し高血糖状態が維持されると、以下のようなさまざまな合併症の引き金となります。 ● 脳梗塞 ● 心筋梗塞 ● 糖尿病網膜症 ● 糖尿病腎症 ● 糖尿病神経障害 2型糖尿病の原因 2型糖尿病の原因には、大きく分けて「環境的要因」と「遺伝的要因(体質)」があるとされます。環境的要因とは、生活習慣・食習慣上の要因を指しています。 ● 運動不足 運動不足になると糖が消費される機会が少なくなるため、高血糖リスクが高まります。また、運動不足から肥満になると、インスリンが十分に作用しなくなる「インスリン抵抗性」の原因となります。脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」というホルモンが、 インスリンの効きを阻害するからです。 ● 過食 食べ過ぎによるエネルギーの過剰摂取、糖質や脂質の摂りすぎは、慢性的な高血糖や肥満によるインスリン抵抗性の要因となります。 ● ストレス ストレスを受けることで、血糖値上昇につながる複数のホルモンが分泌されます。 また、遺伝的要因(体質)とは、糖尿病を発症する可能性が高い体質を受け継いでいることを指します。具体的には、父母、兄弟姉妹や親戚に糖尿病の方がいる場合であれば、そうでない方に比べて糖尿病発症リスクが高いと考えられています。 糖尿病の予防・治療方法 1型糖尿病と2型糖尿病では、その原因や症状も大きく異なります。そのため、予防・治療方法もそれぞれ別のものとなります。 1型糖尿病ではインスリンの絶対量が不足する状態となり、これはしばしば生命にもかかわります。そのため、インスリンを外部から直接補う治療法が中心となります。一方、2型糖尿病においては、まずは生活習慣の改善が検討されるケースが多いです。 1型糖尿病の予防・治療方法 緩やかにインスリン分泌が低下する「緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病」と呼ばれるタイプを除いて、1型糖尿病の治療では、インスリンを外部から補う治療法が実施されます。インスリンの補充方法については、口からの摂取(経口インスリン)や皮膚からの摂取(経皮パッチ)も研究されていますが、現在の日本では注射以外の方法はありません。 インスリンの補い方は、通常1日を通じて分泌される基礎分泌、食事などで分泌される追加分泌をそれぞれ補う強化インスリン療法を基本とします。適切にインスリンを補えているかをチェックするために、日常的な血糖の自己測定も必要となります。 食事については、標準体重などを考慮して、1日の適正なエネルギー量に設定するなどの食事療法が実施されます。ただし、基本的には食べてはいけないものはなく、厳格に制限されることはありません。 なお、1型糖尿病の原因には不明瞭な部分も多く、明確な予防法はありません。 2型糖尿病の予防・治療方法 2型糖尿病の発症には、生活習慣・食習慣上の要因(環境的要因)も大きく関係すると考えられます。そのため、生活習慣や食習慣の改善が2型糖尿病の予防・治療に有効です。 生活習慣改善のための運動療法として、有酸素運動を中心に筋力トレーニングを組み合わせることが求められます。初めは軽めに行い、少しずつ運動量を増やしてください。可能であれば毎日の定期的な運動が理想ではありますが、まずは無理なく続けることを目標としましょう。なお、 具体的な有酸素運動には以下のようなものがあります。 ● ウォーキング ● ストレッチ ● ジョギング ● サイクリング また、2型糖尿病の予防・治療には、食事の見直し(食事療法)も重要です。2型糖尿病の予防・治療に効果的な食事のポイントを押さえておきましょう。 ● カロリーを取り過ぎない ● 栄養バランスを良くする ● 1日3食規則正しく食べる なお、運動療法・食事療法を行っても糖尿病の改善が見られない場合には、内服薬やインスリン注射による薬物療法が検討されます。 まとめ 糖尿病には、主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」のふたつのタイプが存在します。それぞれ原因や症状、治療法も異なるため、タイプに応じた治療法が必要です。 国内の発症例の大半を占める2型糖尿病に関しては、普段の生活習慣も症状の予防・治療にかかわります。乱れた食生活や運動不足など生活上の悪習慣に自覚がある場合、または発症が疑われる症状があれば、医師の指導の下で生活改善に取り組みましょう。
最終更新日:2022.10.31 -
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糖尿病の初期段階の方の食事方法を解説|メニューやレシピも紹介 糖尿病患者の方の治療で食事療法は基本です。特別に避けるべき食べ物はありませんが、いざ食事のメニューを考える場合、困る人は多いです。 糖尿病患者の方に対応した料理のレシピは、実はそれほど難しくありません。簡単に調理できるのに、しっかり糖尿病対策ができて、おいしい料理のつくり方を紹介します。 糖尿病治療における食事の重要性も併せて解説していきます。 糖尿病は初期の段階での治療が大切 糖尿病を発症したら、早い段階での治療が重要になってきます。なぜなら、きちんと治療をすれば、今までの健康な状態と変わらない生活を送れる可能性があるからです。逆に、初期の段階で治療に取り組まないと次のようなリスクを高めてしまいます。 ・血管がもろくなって血管病になる ・慢性糖尿病合併症が起こる ・急性糖尿病合併症が起こる こうした病気に進んでしまうと生活の質が下がるだけでなく、命に関わる事態に陥ることもあります。今回紹介する糖尿病対策の食事は、糖尿病の進行を食い止め、合併症などを防ぐことにつながります。 食事療法の必要性 食事療法は糖尿病治療において必要不可欠な治療法です。食事療法とは、適切なエネルギー内で栄養バランスが取れた食事をすることに重点が置かれます。 糖尿病は、すい臓のインスリン分泌や働きが乏しかったり、分泌しなくなった場合に発症します。食事療法によってブドウ糖の摂取量をコントロールすると、すい臓への負担が軽くなり機能回復を図れるかもしれません。 また食事療法を徹底すると薬物療法の効果を高めることが期待でき、インスリン補給による血糖値のコントロールがしやすくなります。食事療法は全ての糖尿病患者の方の治療の基本です。医師や管理栄養士の指示にしたがって正しい食事療法に取り組んでください。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病患者の食事のポイント 糖尿病患者の方の食事のポイントには、次のようなものが挙げられます。 ・1日3回規則正しく食べる ・適切な食事量を守る ・栄養バランスを取る ひとつずつ解説していきます。 1日3回規則正しく 1日3回規則正しく食べることで、1回ずつの食事で適切な量を摂ることができます。一度に「ドカ食い」すると血糖値が一気に上昇して大量のインスリンが必要になり、すい臓に負荷がかかりすぎてしまいます。 規則正しく食事を摂ることで、食事による血糖値の上昇が緩やかになり、すい臓の負担を軽くできます。また間食はなるべく控えて、我慢できないときだけ摂るようにしてください。 適切な食事量を守る 適切な食事量(エネルギー量)を守ることで血糖値の上昇や合併症のリスクを低下させることが期待できます。 適切なエネルギー量は次の計算式で算出します。 <1日のエネルギー量の計算方法> ・1日のエネルギー量(kcal)=身体活動量×標準体重 ・身体活動量 軽い労作(デスクワークが多い人)25~30kcal/kg 普通の労作(立ち仕事が多い人)30~35 kcal/kg 重い労作(力仕事が多い人)35~kcal/kg ・標準体重(kg) = 身長(m)×身長(m)×22 栄養バランスに注意する 栄養バランスの良い食事とは主食・主菜・副菜を意識することです。糖尿病患者の方は炭水化物の摂りすぎに注意が必要ですが、「炭水化物ゼロ食」はおすすめできません。適切な量を摂取することが重要です。 以下の表は、3大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)とビタミン・ミネラルを含む食材と、その食材の特性を表したものです。食材選びの参考にしてください。 食品交換表では、1単位80kcalで計算します。例えば、1日1,200kcalの摂取を指示された糖尿病患者の方は、15単位分の食品を選ぶことになります。計算式は次のとおりです。 ・1,200kcal÷80kcal=15単位 食品交換表を使って食材を選んで調理すれば、自然に栄養バランスのよい献立になります。 糖尿病の食事におすすめのメニューとレシピ 糖尿病に配慮しながら、簡単につくることができて、さらにおいしい食事のつくり方を紹介します。 鮭としめじの柚子こしょう炒めの作り方 鮭でボリューム感を出しながら、免疫力を高めるしめじを使います。さらに食物繊維を多く摂ることができます <材料(1人分)> 生鮭:1切れ(80g) 塩:少々 こしょう:少々 しめじ:1/袋 玉ねぎ:1/8個 <A> 醤油:小さじ1/2 みりん:小さじ1 酒:小さじ1 柚子こしょう:小さじ1/4 サラダ油:小さじ1 <つくり方> 1.鮭は3等分に切り、塩、こしょうを振る 2.Aをまぜておく 3.しめじは石づきをとり、小房に分け、玉ねぎはくし形に切る 4.フライパンにサラダ油をひき、鮭を焼く 5.鮭に火が通ったらしめじと玉ねぎを加えさらに炒める 6.火が通ったら、Aを加えてからめる もずくとトマトの黒酢和え ビタミンやミネラルが豊富な海藻とトマトを同時に食べることができます。 <材料(2人分)> もずく:120g トマト:中1/2個 黒酢:大さじ1 砂糖:小さじ1/2 しょう油:小さじ1/4 <つくり方> 1.もずくを水洗いをしてざるにあける 2.トマトをさいの目状に切る 3.黒酢、砂糖、しょう油を合わせる 4.ボールにもずく、トマト、3を入れ全体を混ぜ合わせる エビとパプリカのガーリック炒め 免疫力を高めるニンニク(ガーリック)を使った料理です。 <材料(2人分)> エビ:100g 赤パプリカ:30g 黄パプリカ:30g ピーマン:30g 長ネギ:20g にんにく:1片 ごま油:大さじ1 顆粒中華だし:小さじ1 塩:少々 こしょう:少々 <作り方> 1.赤パプリカ、黄パプリカ、ピーマンは乱切り、長ネギは斜め切りにする 2.にんにくをみじん切りにする 3.フライパンにごま油をひき、にんにくを入れ弱火で香りが出できたらエビを入れ、中火で炒める 4.エビに火が通ってきたら1を入れ、中華だし、塩、こしょうで味を整える まとめ 紹介したレシピのとおり、糖尿病対策の食事づくりは難しくありません。食品交換表をみながら、食材を変えれば、簡単に食事のレパートリーを増やすこともできます。 糖尿病患者の方も、とくに食べてはいけない食べ物はありません。1日のエネルギー量を超えないように注意しながら、栄養バランスに気をつけたメニューで食事を楽しみましょう。 監修:坂本貞範
最終更新日:2022.10.31