膝の水の正体と水が溜る原因、考えられる病気の種類と治療方法を徹底解説
公開日: 2019.04.23更新日: 2025.02.04
目次
膝の水の正体と水が溜る原因、考えられる病気の種類と治療方法を徹底解説
膝に起こる異変の一つとして、水が溜まるという現象があります。
膝の水が溜まってしまう原因は様々で、膝の水を検査することでどんな病態が隠れているのか知ることもできます。決して年齢が高いから膝に水が溜まるわけではなく、若年層でも膝に水が溜まるケースは考えられます。
そこで今回は、膝に水が溜まる原因と、完治までどのような経過をたどっていくのかご紹介していきます。
膝の水の正体と、水が溜まる原因
膝に水が溜まる原因は、関節内に炎症が起こるからです。炎症の原因は、まず一つに「靭帯損傷」や「半月板損傷」といった外傷で膝に水が溜まる場合、もう一つは、「変形性膝関節症」などの慢性的な症状によって膝に水が溜まる場合です。
膝関節の動きに重要なものに「関節液」があります。この関節液は、関節の動きがスムーズにする潤滑剤の役割をしています。よく耳にする「膝に水が溜まる」という言葉、実のところ、この関節液が正体なのです。
このように「膝の水」は、関節液なので誰の膝関節にも存在していて、問題はその量ということです。膝に水が溜まると言われる状態は、何らかの原因で関節液が増えてしまった状況です。
この膝関節内に溜まっている膝の水(関節液)は、純粋な水分というわけではなく、血液が混じっていたり、化膿して発生した物質が混ざったりすることがあります。
その膝に溜まっている水を注射で抜き、どんな成分が含まれているか検査をすることで、膝関節で起こっている病変を特定することにも役立ちます。
その成分が、「炎症成分であれば、関節炎が起きていることが分かり」、「血液であれば靭帯損傷などの軟部組織損傷」であることがわかるのです。
膝の水 | 関節液 |
▲炎症成分 | 関節炎 |
▲血液 | 靭帯損傷、軟部組織損傷 |
膝の水を抜くと癖になる?!
膝に水がたまると、「水を抜くと癖になる」という話。膝に溜まった水を抜くと、何度も繰り返すようになってしまうという噂ですが、これは正しい情報ではありません。
実際に、一度膝に溜まった水を抜き、その後も何度も処置をしなければならないケースはありますが、抜いたことで癖になっているのではありません。単純に、膝関節内での炎症が治まっていないから腫れが引かないだけなのです。
ですから、癖になるからと言って膝関節の水を抜くことをためらっている方もいらっしゃいますが、我慢する必要は全くないのです。むしろ、膝の水を放置しておくことで、悪影響が出ることもあります。
水を抜くと癖になる | ✕(嘘) |
炎症が収まっていないから溜る | 〇(抜いたほうが良い) |
抜くのを我慢する | ✕(意味がないので抜いたほうが良い) |
膝の水を放置する | ✕(悪影響も) |
膝の水を放置すると、どうなるか?
膝の水を放置すると膝関節にズレが出やすく悪影響となる恐れがあります。通常であれば関節包内で関節軟骨がスムーズな動作や衝撃吸収のシステムを作り出していますが、関節内に水が充満しているとそれらの機構が上手く機能しなくなるからです。
その結果、膝をかばった動作を行うことで膝周辺の筋肉に余計に負担をかけ、その周辺に異常な緊張が生まれ、膝関節の安定性をさらに低下させてしまいます。
膝の動作でズレが出るので、膝の水が引いたあとも再び関節炎を起こしやすくなり、膝に水が溜まる現象を繰り返すことになります。また、可動域制限がかかった膝をかばうことで、股関節や足関節の負担が増加し、新たな障害の可能性が増すだけです。
膝の水を放置することは、膝だけの問題であったものが二次的に他の関節にも痛みを生じさせることになってしまうのです。
膝にたまった水の放置 | ▼膝関節のスムーズな動作を阻害 |
▼膝をかばった動作となり、その他の関節に負担が出る | |
▼新たな障害の可能性が増える | |
膝にたまった水を放置してはいけません |
膝の水は、完治するまで無くならない
ここまでご紹介してきたように、「膝に溜った水は抜いても癖になりません。」むしろ「放置しておくことは逆効果」で、炎症が治まっていない限りは膝の水は発生し続けます。
膝に水が溜ることを完治させるためには、水が無くなるまで注射で抜き続けるのではなく、膝で炎症を起こしている根本的な原因を改善しなければなりません。その原因が解決されない限りは、膝の水が溜まる現象は完治することは無いのです。
水が溜る | ▼水がなくなるまで抜く | ✕ |
水が溜る根本原因を改善する | 〇 | |
▲水が溜らなくなる | 水を抜く必要がなくなる |
膝に水が溜まる病気の種類について
膝に水が溜まるという現象が起こり得る病態とは、どのようなものがあるでしょうか。
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは、打撲や捻挫をしたわけでもないのに、慢性的な症状で膝に水を溜める大きな原因が「変形性膝関節症」です。特に50代以降で、「外傷の可能性が無いのに膝に水が溜まってきている」場合、高い確率で「変形性膝関節症」だと思ってください。
変形性膝関節症は関節の軟骨が摩耗により、大腿骨と脛骨の関節面が直接擦れ合うようになり、関節内で炎症を起こす病態です。膝関節に負担を蓄積することで、少しずつ関節が変形していきます。
一度変形が起きた骨は元に戻ることはなく、炎症を抑えるためには体の使い方を見直す必要があります。股関節の動かし方や膝関節の動かし方、さらには背骨のゆがみや骨盤のゆがみなど、全身のバランスから改善することが必要なる場合もあります。
変形性膝関節症による炎症が落ち着けば、膝の水も無くなっていくので、必ずしも水を抜く処置を受ける必要はありません。
関節リウマチ
関節リウマチとは、全身のどの関節でも起こる可能性がある炎症です。この炎症は、免疫機能が異常を起こし、健康な骨や筋肉を構成している細胞を攻撃してしまう病態で、関節内での炎症と変形が主な症状となります。
痛みもあるので関節の可動域も狭くなり、変形が起きればさらに関節が動かしにくくなります。そこから慢性的な膝関節炎を起こし、膝全体が腫れあがったような水のたまり方をすることもあります。
薬物療法や運動療法などで炎症が軽減されれば、膝の水は自然と吸収されていきます。
靭帯損傷
靭帯損傷は、膝を支える靭帯に大きな外的衝撃を受けた場合に起こる損傷です。中でも膝に腫れを起こしやすいのが、前十字靭帯の損傷です。前十字靭帯は、他の膝関節の靭帯である後十字靭帯や内側と外側の側副靭帯に比べて、血流量が多いという特徴があります。
そのため、損傷すると関節内に出血を起こしやすく、血腫が溜まるので外から見ると膝に水が溜まったように見えるかもしれません。関節内に存在しているという構造上、保存療法だけではしっかり靭帯が治癒しないことも多くあります。
この場合、膝の腫れに対して対処するというよりは、「前十字靭帯の再建術など外科的処置を受けることによって、膝の水も治まっていく」という過程をたどります。
しかし、前十字靭帯損傷後には後遺症として、膝関節の負担が大きくなったことで慢性的な膝関節炎に移行するということが考えられます。この場合、再び膝に水が溜まる可能性もああり、運動療法などで膝に負担をかけない動かし方を獲得していく必要があります。
半月板損傷
膝の半月板を損傷するのは、外傷など強力な一回の外力によって起こるものと、変形性膝関節症などゆっくりと時間をかけて少しずつ損傷していくものとがあります。
どちらにせよ、膝関節にかかる荷重の衝撃を吸収するクッション作用が弱まるので、膝関節内で炎症を起こすことになります。そこから膝に水が溜まるようになるため、膝の水を抜くことが根本的な改善策になるわけではありません。
結局、膝の負担が変わっていなければ、すぐに膝の水は再度溜まっていきます。また、外傷によって半月板損傷を起こしている場合、半月板だけの単独損傷である場合は少なく、周辺の靭帯や軟部組織損傷を伴っていることがほとんどです。
膝に水が溜まったとき、やってはいけないこと
膝に水がたまった場合、早く完治させるために気を付けなければならないポイントをご紹介します。
我慢しすぎない
前述したように、膝に溜まった水を抜くことで癖になることはありません。必ず外科的な処置によって抜かなければならないわけではありませんが、放置すると膝関節の安定性は低下してしまいます。
屈曲角度が著しく制限されている場合や、日常生活に大きく支障が出ている場合は、我慢せずに早めに整形外科などで相談してください。放置しすぎることによって、かばった体の使い方が定着してしまい、腰痛など二次的な不調を引き起こす可能性が高まります。
痛みを無理して動かす
膝に水が溜まっているということは、少なくとも何か膝に負担をかける要因があるわけです。炎症かもしれませんし、軟部組織損傷かもしれません。いずれにせよ、痛みがありながら無理して動かすことで、プラスに働くことは無いと思ってください。
むしろ、痛みを我慢しながら動かすことで、炎症を悪化させて関節の内圧をさらに高めてしまうこともあります。安静にすることもとても大切なケアなので、膝に水が溜まってきたら出来る限り安静にしてみてください。
それでも膝の水が完治しなければ、医療機関を早めに受診してください。
過剰に冷やす
よく炎症が起きた時にはアイシングをすると良いという話を聞くことがあると思います。しかし、過剰に冷やすことは、かえって膝の炎症が完治するのを遅らせてしまうこともあります。
確かに冷やすことで感覚が鈍って、痛みを感じにくくなるかもしれません。しかし、常に冷やしていると血流も悪くなり、代謝が下がって膝の水が吸収されにくくなります。
結局のところ、組織を早期に治癒させるためには、豊富な血流が必要なので基本的には温めるべきです。例外としては、前十字靭帯損傷後に、血腫が大量に溜まっている場合くらいです。急性期の大きな外傷の場合は温めることはせず、安静にしてください。
膝に水が溜まった場合の対処について
膝に水が溜まった場合、完治させるためにはどのような対処法を行うべきでしょうか。
ストレッチをする
出来る限りでいいので、ストレッチなどで膝関節周辺にある筋肉の緊張を緩和させることが大切です。筋肉の緊張が緩和すれば、膝関節の動きもスムーズになって腫れも早く引きます。
膝の水は、抜かなくても自然と吸収されるので、その機能を最大限引き出すつもりでゆっくりストレッチをしてみてください。大腿部や下腿部のストレッチが有効です。
安静にして荷重を避ける
膝が炎症を起こしてしまうのは、荷重による異常がほとんどです。荷重の角度が悪かったり、荷重の頻度が高すぎたり、荷重が重すぎたりすることでダメージを蓄積していきます。
膝に水が溜まるくらいまで炎症が進んでいるようなら、安静にして荷重を避けるだけでも完治を早めることに繋がります。
サポーターなどの装具を使う
膝関節を保護するために、ただ巻くだけの簡易的なサポーターでも良いです。荷重を分散させてくれるような高価なサポーターももちろん良いですが、一時的な対処法であることは自覚しておいた方が良いでしょう。
サポーターを付けることで慢性的な症状に対して、冷えを防ぎ安定性を高めてくれます。実際に装着してみて、少しでも楽に過ごせるようなら使い続けてみてください。
その際には、四六時中サポーターを装着して生活するのではなく、寝るときは外すなどメリハリをつけることも大切です。特に慢性的な症状が原因で出ている膝の水であれば、根本的な体の使い方を見直さない限り完治には至りません。
整形外科で水を抜いてもらう
膝関節の水を抜けるのは、整形外科です。関節に針を刺して抜く方法で、対処してもらえます。膝に水が溜まっているから即座に抜くというわけではなく、生活への支障度合いなどを考慮して選択されます。
水を抜いて検査をしてみれば、実際に何が炎症の原因になっているか判断できるので、長期間続いている場合は早めに抜いてもらってみてください。
接骨院や整骨院にいく
接骨院や整骨院では、外科的処置ができないので、水を直接的に抜くことは出来ません。しかし、周りの筋肉の緊張を緩和させたり、運動療法を行うことによって膝のダメージを軽減させたりすることは出来ます。
その結果、自然と膝の水は吸収されていくので、可動域の制限度合いによっては真っ先に受診するのも良いでしょう。
膝の水は吸収されていく
膝に水が溜まるという現象は、あくまで関節内で炎症が起きていることのサインです。炎症が治まれば、周辺の組織に吸収されて無くなっていきます。膝の水を完治させるためには、なぜ炎症を起こしているのか原因を突き止め、根本を改善することが大切です。
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監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設