
What will happen?
脊髄を損傷するとどうなるの?
背骨(脊椎)の中には、脳と身体をつないで感覚や運動を伝達する脊髄という神経の束があります。交通事故や高所からの転落など、強い外力による外傷で脊髄を損傷すると、自律神経障害、知覚麻痺、手や足の運動麻痺、排尿・排便機能障害などが生じます。
損傷の程度によって、感覚や運動が全く機能しない完全麻痺と、⼀部の機能は残存する不完全麻痺があります。

脊髄損傷に伴う主な症状
脊髄損傷の後遺症に
有効な治療方法はあるの?
これまでは脊髄損傷に対して有効な治療法が見つかっておらず、脊髄損傷の後遺症により寝たきりの生活や車いす生活を強いられている現状があります。
ところが近年では研究が進歩し、ご自身の幹細胞を用いた再生医療により脊髄損傷の後遺症が改善した症例報告が数多く発表されています。
当院の再生医療の特徴
1.損傷した部位に直接幹細胞を投与できる脊髄内幹細胞療法
現在国内で実施されている脊髄損傷の⼀般的な再生医療といえば、点滴により幹細胞を血管内に注入して脊髄へ届けます。血流に乗って運ばれる幹細胞は全身を巡ることにより分散されますので、損傷した脊髄に到着する頃には幹細胞の数は少なくなってしまいます。



この問題を解消するために、当院では損傷部位へ直接幹細胞を投与する方法を行なっております。この治療法では損傷した部位へダイレクトに幹細胞を届けますので、点滴で全身に投与する方法よりも確実に神経の再生能力を高めることができます。
脊髄内幹細胞療法

- STEP1
- 脊髄のくも膜下に幹細胞を注射で投与します。
- STEP2
- 投与された幹細胞は髄液の中に入ります。
- STEP3
- 髄液は脊髄の中で還流しているので脊髄損傷部位に直接、幹細胞が届きます。
治療も簡単な注射で数分だけの処置となり、それほど痛みも伴いません。また、幹細胞の点滴と併用することでさらなる効果が期待できます。


2.脂肪由来の幹細胞を投与
脊髄損傷の再生医療には大きく分けて、脂肪由来の幹細胞と骨盤から採取する骨髄由来の幹細胞との2つの方法があります。
臨床研究では脂肪由来の幹細胞の方が高い治療成績が得られた報告があります。また、幹細胞の数をたくさん投与した方が明らかに治療成績が改善されています。両者を比較すると脂肪由来の幹細胞の方が培養がしやすく、たくさんの細胞を投与できるため、骨髄由来の幹細胞よりも優れた治療効果が期待できます。
脂肪由来の 幹細胞 |
骨髄由来の 幹細胞 |
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---|---|---|
期待できる効果 | 〇 | △ |
治療の痛み リスク |
ほとんど無し | 骨髄穿刺に伴う痛みと 感染のリスクあり |
培養能力 | 高い | 低い |
入院 | 必要なし | 必要なし |
このような理由により当院では脂肪由来の幹細胞を採用しています。また、骨髄から幹細胞を採取する骨髄穿刺(マルク)は感染のリスクもあるため、脂肪から幹細胞を採取する方が安全です。
脂肪由来の幹細胞を使用
- 採取するのに安全性が高い
- 骨髄や滑膜、内臓の幹細胞より体への負担が少ない

3.独自の細胞培養技術
冷凍保存しないので
幹細胞の高い生存率が実現
CPC(細胞加工室)の比較
-
当院のCPC
-
他院のCPC
国内トップクラスの細胞加工室の高い技術によって冷凍保存しなくてもよくなったんだよ。
だから、多くの生き生きした幹細胞を投与できるんだ。


幹細胞が生き生きしているほうがよく治りそうだね。
解凍マグロよりも、冷凍保存していない生マグロのほうが美味しいのとなんか似ているね!
そうだね、生き生きしたフレッシュな幹細胞が多ければ多いほど治療成績は良いんだよ。
これは、海外の文献でも証明されていること。
そして当院ではその生き生きした幹細胞を、さらに1億個以上にまで増やすことができるんだよ。

独自の細胞培養技術の
もう一つの特長
- 自身の脂肪と血液を使って幹細胞を培養するので拒絶反応やアレルギーがなく安心安全
- 採取する脂肪は米粒大で2~3粒程度とごくわずかなので、身体への負担が少ない
- 添加物、不純物、薬品は一切含まれておらず副作用がなく安心
自己脂肪由来幹細胞治療の流れ
幹細胞治療はご自身の脂肪を局所麻酔をしてからごく少量を採取し、約1ヶ月ほどかけて幹細胞を培養したあと注射で投与します。身体に負担の少ない簡単な日帰りの治療となります。
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MRIやレントゲンなどの画像や身体の状態を診察でしっかりと確認した上で、幹細胞治療が適応しているのかを判断し、納得できるまで治療方針や内容、治療を受けるメリット・デメリットなどを説明させていただきます。
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血液検査により、感染症の有無や治療可能かの判断をします。
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局所麻酔をした上で下腹部周辺から5ミリほど切開し、米粒の大きさで2~3粒ほど脂肪を採取します。脂肪採取にかかる時間は20分ほどであり、ほとんど痛みを感じることはありません。
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約4~6週間ほどかけて、CPC(細胞加⼯室)で幹細胞を培養します。
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培養した幹細胞を脊髄のくも膜下に投与をします。局所麻酔により痛みはほとんどありません。
概要と原因
高所からの転落 事故 スポーツによる外傷 骨粗しょう症 など
日本では脊髄損傷の患者数が約10万人以上いるとされており、毎年約5000人ほどが新たに発症しています。原因としては主に高所からの転落や不慮の事故、スポーツによる外傷などで脊椎に強い外力が加わり、その中の脊髄神経が受傷します。
その他にも、近年では高齢者に多く発症する『非骨傷性頸髄損傷』が増加しています。これは骨粗しょう症などで骨が弱くなっている⽅が軽微な外力によって発症する脊髄損傷のことを言います。症状としては腕の痺れや手が動かしにくくなるなどが見られます。
症状
- 筋肉を動かせない
- 感覚が無くなる
- 自発呼吸ができなくなる
- 排尿・排便障害が起こる
損傷を受けた部位によって麻痺の現れ方が変わります。損傷は『完全麻痺』と『不完全麻痺』の2つに分けることができます。完全麻痺では筋肉に力を入れることができず、感覚も消失しますが、不完全麻痺では⼀部の運動や感覚の機能が残存します。首の上位脊髄が損傷すると自発的に呼吸をすることができなくなり、人口呼吸器の装着が必要不可欠となります。その他にも、排尿・排便障害が起こります。

脊髄損傷には様々な
症状が伴います。
呼吸器症状
頸髄のC4以上の高位で損傷すると横隔膜の運動が機能しなくなり、呼吸することができなくなりますので、人工呼吸器をしなければなりません。C4より下位の損傷であっても肋骨の動きが制限されることもあります。また肺活量が低下することで肺炎や無気肺のリスクが高くなり、痰も出しにくくなります。
循環器症状
起き上がりの際に血圧が下がる起立性低血圧となったり、徐脈などが見られます。下肢の運動麻痺により深部静脈血栓症やエコノミー症候群のリスクも高くなります。
消化器症状
胃腸が活動不良となり、麻痺性腸イレウスや胃潰瘍となる場合があります。
泌尿器症状
排尿と排便の機能が低下するため、オムツが必要となることもあります。また尿路感染症のリスクも高くなります。
褥瘡(床ずれ)
手足の運動麻痺により寝返りがうまくできず、局所的に圧迫を受けている皮膚が血流障害を起こし、褥瘡(床ずれ)ができます。長い時間、車イスに座ることでも仙骨部に褥瘡が発症しやすくなります。
検査
MRI、CT、レントゲンなどの画像を用いて判断します。
治療方法
脊椎の骨折や脱臼などの外傷により脊髄が圧迫を受けた時には、緊急手術が必要となることがあります。
当院では、幹細胞を損傷した脊髄の部位に直接を投与する「脊髄内幹細胞療法」という、国内でも実施されることが極めて少ない画期的な治療法で、損傷した神経の再生を目指しています。