ウイルス性肝炎の症状とは?【急性肝炎&慢性肝炎】
公開日: 2020.05.19更新日: 2025.06.02
急性肝炎と診断されると「どのような後遺症があるのか」「完全に治るのか」不安になる方も多いでしょう。
本記事では、急性肝炎の後遺症について分かりやすく解説します。
注意すべき劇症肝炎への進展の可能性やその原因、そして万が一、劇症化してしまった場合の治療法についてもご紹介します。
- 急性肝炎の一般的な予後と後遺症について
- 劇症肝炎に進展する可能性とその主な原因
- 劇症肝炎に対する治療法の概要
急性肝炎と診断され、その後の経過や後遺症について不安を感じている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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損傷した肝臓の症状改善に効果が期待できる治療法なので、合わせてご覧ください。
目次
急性肝炎の後遺症について
ほとんどの急性肝炎は、適切な治療によって後遺症なく回復へと向かいます。
しかし、ごく稀に「劇症肝炎」という非常に重い状態に進行してしまうケースも存在します。
まずは、急性肝炎の一般的な経過と、後遺症の基本的な考え方について見ていきましょう。
以下の記事では、肝機能を回復させる方法について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
適切な治療を受ければ後遺症はほとんどない
肝臓は再生能力が高い臓器のため、先述の通り急性肝炎のほとんどは適切な治療によって後遺症なく回復へと向かいます。
肝臓は再生能力が高い臓器のため急性肝炎によって一時的に肝細胞がダメージを受けても、適切な治療を受け、安静にすることで肝細胞は修復されていきます。
また、自然に治癒するケースも少なくありません。
A型肝炎やB型肝炎では、一度回復すると体内に強い免疫(抗体)ができ、再び同じ型の肝炎にかかりにくくなります。
劇症肝炎に進展する可能性がある
急性肝炎は一般的に良好な経過をたどりますが、約1~2%の方が「劇症肝炎(急性肝不全)」という重篤な状態に移行することが報告されています。
劇症肝炎への進行
- 初期症状:発熱や倦怠感、悪心・嘔吐、食欲不振など
- 進行すると黄疸や肝性脳症(意識障害)もあらわれる
劇症肝炎の初期症状は、急性肝炎と同様に発熱やだるさ、吐き気、食欲不振などがあらわれることが多いです。
その後、肝機能が著しく低下すると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れ、さらに進行するとアンモニアなどの解毒がうまくいかず、肝性脳症(意識が混濁したり昏睡に至る重い意識障害)が生じます。
劇症肝炎まで進むと、全身の臓器障害や血液が固まりにくくなる異常が高頻度で起こり、適切な治療がなければ命に関わります。
発症すると治療が困難になる肝硬変や肝臓がんにつながるサインについて、以下の動画で詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。
急性肝炎の後遺症として劇症肝炎を発症する原因
急性肝炎が劇症肝炎に進行する際、以下のような複数の要因が複雑に関わっていると考えられています。
- ウイルスによる肝炎(ウイルス性肝炎)
- 薬による肝臓の障害(薬剤性肝障害)
- ご自身の免疫システムが肝臓を攻撃してしまう病気(自己免疫性肝炎)
- 原因が特定できない場合(特発性)
劇症肝炎に進行するケースで多いのはB型肝炎ウイルスのキャリアからの発症によるもので、全体の約40%を占めます。
薬剤性肝障害は、アセトアミノフェンや一部の抗てんかん薬、抗生物質などが原因です。
自己免疫性肝炎は、自身の免疫システムが肝細胞を攻撃してしまう病気で、これも劇症肝炎の原因となりえます。
全体の約30%は原因が特定できない「特発性」とされ、なぜ一部の人だけが重症化し劇症肝炎に至るのか、その明確な理由はまだわかっていないのが現状です。
急性肝炎が劇症肝炎に進展した際の治療法
急性肝炎が進行し、劇症肝炎という危険な状態に陥ってしまった場合、肝臓の機能をサポートし、原因に対して集中的な治療を行う必要があります。
治療法は主に以下の3つです。
どのような治療法なのか、詳しく解説します。
抗ウイルス療法
急性肝炎が劇症肝炎(急性肝不全)に進行した場合、原因ウイルスに対して抗ウイルス療法が行われます。
抗ウイルス療法のポイント
- 原因となる肝炎ウイルスの増殖を抑制
- 薬剤で肝臓の損傷進行を防ぐ
- B型肝炎:核酸アナログ製剤やインターフェロンの投与
- C型肝炎:インターフェロンや抗ウイルス剤(DAA)の投与
抗ウイルス薬を適切に使用し、体内のウイルス量を減らすことで、劇症化した肝炎の鎮静化や、肝不全の進行を抑制することを目指します。
人工肝補助療法
人工肝補助療法とは、劇症肝炎で低下した肝臓の解毒・代謝機能を一時的に機械で代替する治療法です。
人工肝補助療法のポイント
- 肝臓の解毒・代謝機能を機械で一時的に代替
- 血漿交換と血液透析を行う
- 血液中の有害物質除去、不足する凝固因子などを補充
- 肝臓自身の再生・回復を待つ
人工肝補助療法自体が肝臓を直接再生させるわけではありません。
あくまで肝臓が自身の力で回復してくるまでの時間を稼ぎ、その間の生命を維持するための役割を担います。
生体部分肝移植
生体部分肝移植は、機能しなくなった患者さまの肝臓を取り出し、健康な肝臓と入れ替える手術です。
肝臓は再生能力が高いため、ドナーの方の肝臓も患者さまに移植された肝臓も数ヶ月ほどで元の大きさに近い状態まで再生します。
近年では、2010年の臓器移植法改正以降、脳死ドナーからの肝臓提供も少しずつ増えてきており、劇症肝炎の患者さまに対する脳死肝移植の実施件数も増加傾向にあります。
急性肝炎の後遺症についてよくある質問
本章では、急性肝炎の後遺症について以下の2つの質問に回答していきます。
急性肝炎と診断されたり、その後の経過について心配な方は、ぜひ参考にしてください。
急性肝炎の予後は?
急性肝炎の多くは適切な治療と安静によって肝機能が回復し、良好な予後を期待できます。
急性肝炎の予後のポイント
- 多くは適切な治療によって肝機能が回復する
- ウイルス性肝炎は自然治癒するケースも多い
- ごく一部(約1~2%)は劇症肝炎へ進行し致命的となる恐れ
- B型・C型肝炎では一部が慢性化する可能性
多くの方が良好な予後を期待できる一方で、急性肝炎にかかった方のうち、全体の約1〜2%の方は「劇症肝炎」という非常に重い状態に進行してしまう可能性があります。
劇症肝炎になると意識障害が出たり、臓器が機能しなくなったりして、命に関わる危険な状態となることがあります。
急性肝炎の予後は一概には言えませんが、多くの方は後遺症なく回復する一方で、一部には重篤化したり慢性化したりするケースがあることを理解しておくことが大切です。
急性肝炎は完治する?
急性肝炎は原因にもよりますが、適切な対処を行えば多くの場合、完治が期待できます。
急性肝炎の完治について
- 原因により完治の期待度は異なる
- A型・E型肝炎ウイルス:ほとんどが自然治癒を見込める
- B型肝炎ウイルス:10%の方が慢性B型肝炎になるリスクがある
- C型肝炎ウイルス:90%以上はウイルスを排除可能
急性肝炎が完治するかどうかは、原因となったウイルスの性質により左右されます。
大部分の急性肝炎は適切な安静と治療のもとで肝臓が再生し完治します。
しかし、一部のウイルス性肝炎では、急性期が過ぎた後もウイルスが体内に残り、経過観察や追加の治療が必要になる場合があることを覚えておく必要があります。
急性肝炎の後遺症を防ぐには適切な治療を受けることが重要
急性肝炎の大部分は、医師による適切な治療と十分な安静によって、後遺症なく回復することが多いという点をご理解いただけたかと思います。
しかし、全体の約1~2%という低い確率ではありますが、肝機能が急激に悪化する劇症肝炎に進行するケースも存在します。
急性肝炎の後遺症を防ぐために大切なことは、診断を受けたら自己判断をせず、必ず医師の指示に従って適切な治療を受けることです。
早期発見・早期治療と、その後の正しい経過観察が、後遺症なく健康な毎日を取り戻すためのポイントとなります。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師