靭帯を損傷・断裂しても歩くことはできる?足首や膝、部位別に解説
目次
足首の靭帯断裂を起こしても歩くことができるのか?
「靱帯断裂」と聞くと、大ケガというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。足首の靱帯断裂を起こすと、歩けなくなるのか、それとも歩けるのか…という事が気になる方もおられるでしょう。
今回は、そんな「足首の靱帯断裂」を起こした場合、歩けるのかどうかについて解説します。
足首の靭帯断裂は歩けるものの、注意が必要
足首の靱帯断裂を起こしても歩ける!ということがほとんどです。
しかし、完全断裂や複数個所の断裂の場合は痛みや足首の不安定さから歩行が困難になることもあります。また、歩けない場合は捻挫ではなく骨折を疑う必要もあります。
軽度の足首の靱帯断裂の場合、歩けることがほとんどなので、痛みに強い人なら、テーピングなどで固定し、痛みを我慢し、スポーツ復帰をしてしまう人もいるかもしれません。
痛みがあっても歩ければ捻挫程度だろうと自己判断し、医療機関を受診しない人もいます。しかし、損傷した靭帯は自然に元のような状態に戻ることは難しいのが実情です。
そのまま放置すると後遺症になることもあり、再発を繰り返す原因にもなります。そのため、自己で判断することなく医療機関を受診されることをお勧めします。
- 足首の靱帯断裂
- ・足首の靱帯断裂を起こしても歩ける
- ・完全断裂や複数箇所の断裂の場合、歩行が困難に
- ・歩けない場合は捻挫ではなく骨折を疑う必要
- ・損傷した靭帯は自然に元にもどらず放置すると後遺症として再発を繰り返すことに
- ・軽傷、重症にかかわらず医療機関を受診しましょう
靱帯断裂とは、どのような病気・ケガ?
靱帯は関節を安定させるために骨と骨を繋ぐ弾性線維、結合組織からできています。
「靱帯損傷」とは、この靱帯が怪我などで損傷した状態を指します。靭帯損傷の主な原因は、事故やスポーツ活動などで強い靱帯に強い負担がかかり発生します。
靱帯損傷が起きると、損傷部位に痛みや腫れが生じ、時には関節がぐらつくような不安定感が現れます。特に膝、肘、足首などの比較的大きな関節で多く見られますが、小さな関節でも発生することがあります。
部分的な損傷は軽度であることが多いですが、完全に断裂すると関節が不安定になり、時には関節の脱臼(関節が外れること)を引き起こすこともあります。
整形外科を選択して損傷の部位や程度に応じて検査の上、保存療法や手術など、さまざまな治療方法から選択されることになります。
膝の靭帯損傷
膝に靱帯損傷が起きた際には、最初に膝に炎症が生じ、腫れたりするほか熱を帯びることがあります。膝を動かすと痛みが現れ、ひどい場合には安静時であったも痛みが続くことがあります。
靱帯は関節を安定させる役割を持っています。その靭帯に損傷が現れると膝に不安定感を感じることになります。損傷する靱帯の種類により具体的な症状は異なるため、以下で詳しく説明します。
膝には、前十字靱帯、後十字靱帯、外側側副靱帯、内側側副靱帯と4つの靭帯があります。
前十字靱帯損傷では、膝がずれたり、崩れるような感じがします。関節内で出血が起こるため、腫れと痛みが伴います。損傷後しばらくは歩けることもありますが、歩き始めると再び膝が崩れることがあります。スポーツや日常生活に影響が出るため、手術の判断基準では膝の崩れ具合も選択基準に含まれます。
後十字靱帯損傷では、時間が経つと関節内で出血し、腫れが生じます。膝を曲げると痛みが現れ、前後にぐらつくような感じがああります。膝を立てて座ると、損傷した膝の下腿骨が後ろに落ち込むように見えることが特徴です。
内側側副靱帯が損傷すると、膝の内側に痛みが現れます。内側に膝を入れた際に痛みを感じ、戻すとガクッとした感覚を感じることもあります。
しかし、これら靭帯の炎症が治まった後、靱帯損傷による前十字靭帯をはじめ、スポーツへの影響は多大です。スポーツや日常生活への影響は少ないことが多く、その場合は手術を行わずに自然治癒を選ぶこともあります。
前十字靱帯損傷(ACL損傷)とは
「前十字靱帯損傷」とは、膝関節の中にある靭帯である膝前十字靱帯が損傷を起こしている状態です。
膝前十字靱帯とは、運動するときに膝を安定させる働きがある靭帯で、大腿骨と脛骨をつなぐ役割をしています。
膝前十字靱帯の損傷はスポーツ外傷として頻度の高いものであり、ジャンプ後の着地や走っている最中の急な方向転換やストップなどによって膝関節に急激な回旋力が加わることで発生します。
ある病院行った調査では、中高生に行った前十字靱帯損傷の手術の割合として、バスケを行っている生徒が多かったことがわかっています。
そして前十字靱帯損傷になると、主に膝の不安定さや違和感が症状として現れることが多いです。
後十字靭帯の損傷とは(PCL損傷)
後十字靭帯の損傷は、足の「すね」にある脛骨前面を打撲することで生じます。特にサッカーや柔道などの接触が多いスポーツでよく見られる症状です。
後十字靭帯損傷の特徴
- 日常生活で階段を降りる際に感じる膝の不安定感
- スポーツ時に感じる膝の不安定な感覚
- 膝の曲げ伸ばしが困難
- 動くことが難しいほどの膝の強い痛み
- 膝の強い腫れ
この損傷は、比較的早期に腫れが見られ痛みも改善することが多々あり、治療されず放置されることが多くあります。しかしながら、注意したいのは放置すると後遺症として膝に不安定な感覚が残る可能性が残ってしまうことです。
一般的な後十字靭帯損傷の治療は、保存療法が用いられます。膝を固定するため、サポーターを装着し、靭帯に負担がかからないように可動域を制限するじょとで膝の安静を保持します。
リハビリを行うタイミングは、痛みや腫れが引くことが大切です。関節可動域訓練と合わせて筋力トレーニングを行い靭帯の周囲の筋肉を鍛えて靭帯の負担を軽減させます。
万一、痛みが続いたり、膝の不安定な感覚がが強く残り、手術が必要となった場合には、前十字靭帯損傷でも行われる関節鏡を使った再建手術が適応となります。
内側側副靭帯損傷(MCL損傷)
内側側副靭帯の損傷については、膝の靭帯損傷の中にあって頻度が一番高く、その多くはスポーツ外傷によって引き起こされます。
内側側副靭帯損傷の特徴
- 膝の曲げ伸ばしが困難
- 歩行が困難になる
- 膝に不安定さを感じる
- 膝の内側が腫れ、強い痛み
内側側副靭帯損傷の治療の多くは、保存療法が用いられます。その際は靭帯に負担をかけないよう膝をサポーターで固定することで可動域を制限し、安静にすることが推奨されます。
保存療法が効果を示さない場合や、膝の痛みや、不安定感が改善せず、日常生活上で大きな影響を与える場合は、手術を検討することがあります。
内側側副靭帯は、膝関節の内側(体の中心に近い側)に位置しているため、手術は切開することで靭帯を再建する方法が採用されます。
外側側副靭帯損傷(LCL損傷)
外側側副靭帯損傷は、膝の内側から外側に強い力が加わったり、膝の下側を内側に強くひねる等で引き起こされます。
外側側副靭帯損傷の特徴
- 膝の外側に痛みや腫れが起こる
- 膝関節が不安定に感じられる
- 膝を曲げて伸ばす際に膝の外側が痛む
外側側副靭帯損傷の特徴に稀ではありますが腓骨神経麻痺を伴うことがあります。腓骨神経とは。太ももから膝の外側を通って足先まで続く神経であり、損傷時には感覚麻痺や痺れが生じる可能性があります。
外側側副靭帯損傷には、保存療法が主流であり、膝をサポーターで固定し、靭帯に負担をかけないようにして安静にすることが求められます。
保存療法が不十分な場合や、症状が持続的に悪化する場合には、手術が必要となることがあります。外側側副靭帯は関節の外側に位置しているため、手術は切開となり、靭帯を再建する方法が選択されます。
足首の靱帯損傷
足首は歩くときや走るときなど、日常生活の中でも動かすことの多い部分で、スポーツで、跳んだり蹴ったりなどをすれば、さらに負荷がかかる部位です。
そんな足首には2つの関節があり、靭帯と関節包がその関節を守っています。そして、足首を捻ったり、無理な動きをしたりすると靭帯が関節を支えようとして伸びます。
そのときにかかる力が大きいと靭帯断裂などのケガが起こるのです。
靭帯断裂の場合、炎症が起き、患部が腫れることがあります。また、出血している場合は、内出血が見られることもあり、自覚症状としては足首の痛みがあります。
足首の捻挫が発生しやすいのが外くるぶし側の前距腓靭帯・後距腓靭帯・踵腓靭帯です。中でも前距腓靭帯と踵腓靭帯が断裂の好発部位となっており、この2つの靭帯断裂が一緒に起こることもあります。
足首の靭帯断裂は歩けるものの、注意が必要
足首の靱帯断裂を起こしても歩ける!ということがほとんどです。
しかし、完全断裂や複数個所の断裂の場合は痛みや足首の不安定さから歩行が困難になることもあります。また、歩けない場合は捻挫ではなく骨折を疑う必要もあります。
軽度の足首の靱帯断裂の場合、歩けることがほとんどなので、痛みに強い人なら、テーピングなどで固定し、痛みを我慢し、スポーツ復帰をしてしまう人もいるかもしれません。
痛みがあっても歩ければ捻挫程度だろうと自己判断し、医療機関を受診しない人もいます。しかし、損傷した靭帯は自然に元のような状態に戻ることは難しいのが実情です。
そのまま放置すると後遺症になることもあり、再発を繰り返す原因にもなります。そのため、自己で判断することなく医療機関を受診されることをお勧めします。
- 足首の靱帯断裂
- ・足首の靱帯断裂を起こしても歩ける
- ・完全断裂や複数箇所の断裂の場合の歩行は困難
- ・歩けない場合は捻挫ではなく骨折を疑う必要
- ・損傷した靭帯は自然に元にもどらない
- ・放置すると後遺症として再発を繰り返すことになる
- ・軽傷、重症にかかわらず医療機関を受診すること
靭帯損傷の治療法
靭帯損傷を治療する方法には、保存療法として周囲の筋肉をリハビリテーションで強くして靭帯を支えることで関節の機能を回復させる方法と、手術で損傷した靭帯を外科的に修復する治療の二つに分けられます。
どちらを選ぶかは、靭帯損傷の症状や程度、年齢や今後の運動レベルなどを総合的に考慮して医師が判断の上、患者さんと相談して決定することになります。
保存療法におけるリハビリは非常に重要です。損傷直後は強い炎症が起こることが多く、ギプスやテーピング等で固定し、膝に体重が掛からないよう安静にして炎症を抑えなけらばなりません。
炎症が収まると動く範囲を戻せるよう関節の可動性を回復させるリハビリを開始、同時に、靭帯を支える筋肉の強化に向けて筋力トレーニングを行います。
このトレーニングにより、段階的にですが歩行や、階段昇降、捻るなどを行うことで日常生活の動作に必要な機能を回復させます。スポーツ選手の場合はランニングなどのスポーツも始めます。
リハビリの期間は損傷の程度や患者さんの目標によって異なりますが、例えば前十字靭帯損傷の場合、6ヶ月から8ヶ月、他の靭帯損傷の場合でも1ヶ月から3ヶ月程度は必要になるのではないでしょうか。
靭帯損傷後の過ごし方
一般の方はもとより、スポーツをしている方々なら特に、靭帯損傷を早く治してスポーツに復帰したいと願われることでしょう。
早く治すためのには受傷後の過ごし方が大切になります。受傷後数日から数週間が経過し、痛みや腫れが軽減するまでは安静に過ごし、それらが引いた後、医師の指導の下、早期にリハビリを始めることが肝心です。
サポーターやテーピングで適度に関節を安定させながら、関節の動きを回復させるための訓練やストレッチを行いまししょう。その後は、筋力トレーニングなどを行い、関節の安定性を向上させ、損傷した靭帯をサポートできるようにします。
尚、怪我の再発は防ぎたいものです。焦ることなく、リハビリに取り組みましょう。スポーツに復帰することを目的にしている場合も無理せず、損傷した部位や症状に応じて計画通り実行することが大切です。
靭帯損傷後の過ごし方で大切なのは、早期の復帰を目指して適切なリハビリを継続して行うことです。
リハビリを根気よく続ける
足首の靭帯損傷後のスポーツ復帰の目安は、腫れや痛みが治ったときではありません。低下してしまった筋力が元に戻ったときが復帰の目安です。
筋力や足首の柔軟性が不十分なままで通常の競技に戻ると、捻挫を繰り返したり、別の部位をケガしてしまう恐れがあります。
専門の医師やトレーナーとよく相談して、競技に必要なリハビリを根気よく続けましょう。
段階的に強度を上げていくようなリハビリは、地味でつまらないかもしれませんが必要なことです。
ケガに合わせた体の使い方をする
一度足首の靭帯損傷を起こしたら、完治したとしても体はそれ以前と全く同じ状態とは言えません。靭帯は伸びているし、トレーニングを休んでいる間に筋力は落ち、足首も硬くなっています。
リハビリを続ければ、限りなくケガ以前の状態には近づけられますが、同じには戻れませんし、無理をすれば再発する可能性もあるのです。
そのため、スポーツ復帰後は、今の自分の状態に合わせた体の使い方を覚えて、ケガを防ぎながら最高のパフォーマンスを出せるような工夫が必要です。
まとめ
足首を捻ったり、膝に強い力が加わったりすると、靭帯断裂が起こることがあります。膝の場合は前十字靭帯(ACL)や後十字靭帯(PCL)など、足首なら外くるぶし側の靭帯が損傷しやすいんです。スポーツ中の急な動きや、日常生活でのちょっとした不注意で起こりやすいケガとなります。
靭帯が損傷すると、関節が不安定になったり、痛みや腫れが出たりします。足首の靭帯断裂だと、多くの場合歩くことはできます。しかし、歩けるからといって治療を受けないという選択は賢明ではありません。軽症でも、ちゃんと病院で診てもらうことが大切です。
治療方法は主に二つ。一つは保存療法。リハビリで周りの筋肉を鍛えて、関節の機能を回復させる方法です。もう一つは手術。損傷がひどい場合や、保存療法では良くならない時に選択されます。最近では、幹細胞を使った再生医療も注目されています。
しかし、どんな治療法を選んでも、リハビリが重要です。痛みや腫れが引いても、筋力や関節の柔軟性が戻るまでしっかり続けましょう。特にスポーツに復帰したい人は、専門家と相談しながら、段階的にトレーニングの強度を上げていくのがおすすめです。
適切な治療とリハビリで、多くの場合は回復できます。しかし、完全に元の状態に戻るのは難しいことあります。ですので、ケガの後は自分の体の状態に合わせた使い方を覚えて、再発を防ぐ工夫が必要になります。
早めに発見して、早めに治療。そして、しっかりリハビリ。これが靭帯損傷からの回復の近道となります。
監修:リペアセルクリニック大阪院