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痛い!肘の筋肉に内側?外側?場所によって異なる病気を医師が徹底解説! 肘の痛む箇所によって違う病気が考えられます。痛みが出る原因としては、肩関節から上腕骨を走行して肘関節をまたぐ筋肉や、前腕部の筋肉、さらには手首の部分も考えられます。 打撲など、明らかに外からの力によって筋肉が損傷し、痛む場合は分かりやすいのですが、日常生活やスポーツ活動を繰り返す中で少しずつ負担が溜まり、いつの日か急に痛みが出ることもあります。さらには、骨折を起こした際にも、その後の経過で肘周辺に痛みが出る可能性があります。 今回は、肘の筋肉で痛みが出ている場合に考えられる原因と、その対処法についてご紹介していきます。 肘の筋肉の仕組み 肘の筋肉といっても、動作によって様々な筋肉が存在しています。 代表的なものは「上腕骨外側上顆(じょうわんこつがいそくじょうか)」や「内側上顆(ないそくじょうか)」につく、前腕の筋肉です。上腕骨外側上顆から起始する筋肉は、前腕の伸筋群で主に手関節の伸展、手指の伸展、前腕の回外に作用しています。 具体的な筋肉でいうと、 ・橈側手根伸筋(とうそくしゅこんしんきん) ・尺側手根伸筋(しゃくそくしゅこんしんきん) ・総指伸筋(そうししんきん) ・回外筋(かいがいきん) といった筋肉です。 上腕骨内側上顆から起始する筋肉は前腕の屈筋群で、 ・尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんくっきん) ・長掌筋(ちょうしょうきん) ・浅指屈筋(せんしくっきん) ・円回内筋(えんかいないきん) などです。 ほとんどの筋肉が上腕骨から手根骨、または手指骨に停止している二関節筋です。 そのため、どこか一つの関節の動きだけに作用するわけではなく、肘関節の屈曲や伸展、前腕の回外と回内、手関節の屈曲や伸展、手指骨の屈曲や伸展、といった動作に関与しています。 肩甲骨からも肘関節を動かす筋肉が走行している 肘関節に関わる筋肉の中には、上腕から前腕にかけて起始停止を持つ筋肉だけでなく、肩関節を超えて肩甲骨から走行してくる筋肉もあります。 屈筋側で言えば上腕二頭筋が代表的で、肘関節の屈曲や前腕の回外に作用しています。伸筋側では上腕三頭筋が最も力の大きな筋肉で、肩甲骨から尺骨の肘頭まで走行しています。肘関節の伸展に関わる主動作筋です。 肘の動き以外にも痛みが出る場合がある ここまでご紹介してきた代表的な筋肉は全て、肘関節の動作だけに関わる筋肉ではありません。したがって、肘の筋肉で痛みが出ている場合、肘関節の動き以外でも痛みを発するケースが多いです。 肩関節の屈曲や外転などでも肘関節部にかけて痛みが出ることや、手関節の屈曲や伸展でも肘関節付近で痛みが出ることがあります。さらには手指の動きも同様で、握りこむまたは手をいっぱいに開くという動作で、肘関節部に痛みが出るケースも考えられます。 肘関節の動作以外でも痛みを感じる場合は、肩関節や手関節など他の関節の運動療法が必要な場合もあるのです。必ずしも痛みのある部位と原因となっている関節が一致するわけではないので、注意が必要です。 肘の筋肉が痛い場合に考えられる病気 肘の筋肉に痛みを感じる場合、どんな病気が考えられるのかご紹介していきます。 外側上顆炎(テニス肘、テニスエルボー) 肘の筋肉が痛いときにまず考えられるのが、外側上顆炎です。上腕骨の外側上顆から、前腕の伸筋側にかけて痛みを発生します。原因は筋肉の使い過ぎやダメージの過度な蓄積で、テニス肘と呼ばれることもあります。 前腕の伸筋群に繰り返し負担をかけることで少しずつ疲労を蓄積し、筋力発揮をするたびに外側上顆で牽引力がかかります。そこから炎症に発展し、安静時でも痛みを伴うケースも珍しくありません。 テニス肘と呼ばれる由来は、テニスのバックハンドの際に外側上顆から起始する筋肉に過度な負担をかけるので、テニスプレーヤーに多い症状であるからです。 もちろん、テニスを経験したことが無い方でも、日常生活動作の中で負担を蓄積し、外側上顆炎に発展するケースは多々あります。手のひらを下に向けた状態で物を掴んで持ち上げるという動作は、全て外側上顆から起始する筋肉に負担をかけるのです。 家事の中でも、包丁を使う、買い物の袋を持つといった些細な動作でも外側上顆炎の一因になります。痛みが出るのは、安静時、肘関節屈曲伸展時、前腕回外時が多いです。 内側上顆炎(ゴルフ肘) 外側上顆炎と同じような発生機所で、内側上顆でも痛みを発生させることがあります。上腕骨の内側上顆から、前腕の屈筋群にかけて痛みを発生させます。 やはり筋肉の使い過ぎや過度な疲労の蓄積が発症の引き金になり、別名ではゴルフ肘と呼ばれることもあります。野球肘の一種と括られることもあり、投球動作を繰り返すことで手関節の屈曲力や手指の屈曲力を必要とするので、内側上顆で痛みを発生させることもあります。 日常生活の中でも、仕事によって内側上顆炎を発生させることも少なくありません。重いものを持つことが頻繁にある方や、指先の細かい作業で手指の動作を行う方など、強い衝撃でなくとも内側上顆炎になる可能性は十分です。 そのため、肘の筋肉で痛みが出ても、自分では何が原因なのか把握できないケースも多いという特徴があります。ゴルフの動作の場合は、スイングの際に後ろ側の手で押し込むような力が加わるので、初心者のゴルファーで内側上顆炎になるケースが多いです。 体幹の捻りを上手く使えず、上肢だけで飛距離と正確性をコントロールしようとするので、余計な力が入って内側上顆炎を発生させます。 側副靭帯損傷 肘関節には、内側と外側に上腕骨から前腕に伸びる靭帯が存在しています。肘関節が異常な動きをしないように、安定性を高める役割を果たしている靭帯です。 外側が外側側副靭帯、内側が内側側副靭帯です。それぞれ、一度の強い外力によって側副靭帯が断裂または部分損傷させられることがあります。 柔道など格闘技系のスポーツ活動によって、肘が過度に外反または内反させられたときに、側副靭帯が耐えきれずに損傷してしまいます。単なる外反や内反だけでなく、回旋力が加わると側副靭帯損傷の可能性は高まるでしょう。 一方で、軽微な外力を繰り返し受けることによって、微細な側副靭帯損傷を繰り返して痛みを発生させるケースもあります。例えば投球動作の繰り返しなどで、コッキング期からアクセレレーション期にかかる肘への外反力によって、内側側副靭帯に損傷を起こします。 肘関節の屈曲や伸展、前腕の回外な回内といった動作で痛みを発生させることが多いので、肘の筋肉で損傷が起きていると感じるかもしれません。 一度の強い外力で側副靭帯が損傷したものについては、保存療法や場合によっては手術も選択肢に入ります。負担の蓄積によって損傷した側副靭帯については、原因となる動作を禁止して安静にすることが第一です。 プロスポーツ選手など、特別な事情がある場合には手術も考えられます。 頸椎ヘルニア 筋肉が痛いと感じていても、実はそれが神経症状であるというケースも考えられます。それが頸椎ヘルニアや頚椎症、ストレートネックといった首の病態で引き起こされるのです。 頸椎部分から派出する神経は、肩甲骨や上腕付近を走行して、前腕から指先へと到達していきます。頸椎ヘルニアや頚椎症が起こっている高位によっては、上腕や肘付近、前腕の感覚を司っている神経を圧迫してしまうこともあります。 そうなれば、肘の筋肉の痛みとして最初は感じられるかもしれません。痛み方の特徴としては、安静時でも痛みやしびれがあり、長時間同じ姿勢を続けていると症状が憎悪します。 場合によっては仰向けで寝ると痛みが増すケースもあり、横向きでしか寝られなくなることもあるくらいです。頸椎ヘルニアや頚椎症の発生原因としては、日々の負担の蓄積にあります。 デスクワークが長時間続く方や、スマートフォンを長時間見続けている方、調理場など前かがみの姿勢が続く方など、物理的に首への負担が大きい方はリスクが高いです。 首凝りや肩凝りが酷くなり、ある日を境に肘関節付近の痛みが強くなるので、頚椎から上肢へ神経が走行している仕組みを知らなければ大変驚くはずです。 筋肉損傷などの痛みと鑑別する方法としては、頸椎の動作によって痛みが憎悪するかどうかを確かめる方法です。 頸椎ヘルニアや頚椎症である場合は、頸椎の伸展や回旋動作によって肘関節付近の痛みが増すことがあります。この場合は早めに受診して、原因を特定する必要があります。これは、神経の通り道が狭くなる動きなので、神経根の圧迫が強くなるためです。 腱鞘炎の可能性も考えられます。手首を繰り返し使う動作で、腱周りの組織が炎症を起こすと、肘周辺にも痛みが起こり得ます。 この場合は肘関節付近の筋肉にいくらアプローチしても、痛みが改善されるどころか時間の経過と共に悪化していきます。整形外科で精査をし、リハビリを行うのか場合によっては手術を行うのか検討していく必要があるでしょう。 肘の筋肉が痛い場合の対処法 肘の筋肉で痛みが出た場合、自分ではどのような対処法を行えばいいのかご紹介していきます。 肘を温める 筋肉の緊張やオーバーユースによって出ている痛みなら、肘を温めると血流が良くなって筋緊張が取れ、痛みも少し緩和することがあります。 お風呂に入った直後など、今まで痛みがあった動作が楽にできるようであれば、温めることは有効なセルフケアです。ホッカイロをあてておくだけでも良いですし、お風呂でよく温まることが大切です。 ただ、温めるというのは時と場所を選ぶケアなので、冷やさないということが重要になってきます。夏場であればクーラーの風があたることで痛みが悪化することもありますし、温度管理に気を配ってみてください。 ストレッチをする 上腕から前腕の筋肉をストレッチすることで、痛みを緩和できるケースもあります。側副靭帯損傷の場合は当てはまりませんが、筋肉そのものが原因で痛みが出ている場合は有効です。 頸椎ヘルニアがきっかけで出ている痛みでも、少し緩和されることもあります。肩関節を水平屈曲させたり、外転させたりして、腕から肩甲骨にかけての筋肉をストレッチします。 また、前腕の筋肉は手関節を過屈曲または過伸展することによってストレッチでき、前腕の回旋も加えることで効果的なストレッチが出来ます。もし動作で痛みがある場合は、無理せず痛みのない範囲で行いましょう。 人間は、痛みを感じると自分の体を守ろうとして筋肉を緊張させることがあります。無理なストレッチで、筋緊張を起こせば痛みが悪化してしまう可能性もあるので注意が必要です。 軽くマッサージをする 前腕や上腕部の、自分で硬さがあると思う部分を軽くマッサージするのも非常に有効です。あまり大きな筋肉ではないので、強く揉みすぎると防衛反応が起きてかえって筋肉が緊張することもあります。 痛みがあるようならさする程度でも大丈夫です。心地よいと感じる程度の強さでセルフマッサージを行うと、筋緊張を緩和することに繋がります。 湿布を貼る 湿布は温湿布でも冷湿布でもどちらでも大丈夫です。ただ、長時間貼っていると皮膚がかぶれてしまいますし、湿布の上からホッカイロをあてるなどすると、肌荒れに繋がるので注意です。 湿布が根本的な改善になるわけではないですが、痛みを軽減して日常生活を送ることができるでしょう。 専門医に相談する 筋肉の損傷なのか、靭帯の損傷なのか、神経症状なのか自分では見当がつかないという場合、すぐに専門医に相談してください。病院であれば整形外科ですし、接骨院や整骨院でも良いです。 筋肉に疲労が溜まっていることが肘の痛みの原因であれば、安静にすることで落ち着くかもしれません。しかし、靭帯損傷や神経症状の場合、放置しておくと痛みが悪化するケースもあります。 痛みをかばいながら行動することで、背骨に歪みを招くことになれば、肩こりや腰痛など二次的な症状に繋がってしまいます。 まとめ・肘の筋肉痛は肘だけの問題ではない! いかがでしたでしょうか。場所によって異なる病気をご紹介いたしました。 肘の筋肉で出る痛みの原因として多いのは外側上顆炎など、オーバーユースによるものです。肘の治療をしっかり行うことも大切ですが、肘に負担をかけすぎないような身体全体の使い方を考えることも、早期治癒と再発予防に繋がります。 自分では見当がつかないという場合、整形外科や接骨院、整骨院などの専門医に相談しましょう。 この記事がご参考になれば幸いです。 監修:リペアセルクリニック大阪院 再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ リペアセルクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 肘の痛み、筋肉の痛みに関連する記事はこちら ・肘から下の痛みは背骨が原因か?前腕が痛む原因で考えられる疾患 ・テニス肘とゴルフ肘の正しい治し方となりやすい条件とは ・肘をぶつけてからずっと痛みが治まらない時、考えられる原因は? ・肘の外側が痛い場合の対処法は?外側上顆炎や神経痛の場合も 肩の痛み、肩の関節の痛みに関連する記事はこちら 肩の関節が痛い場合に有効な治し方と痛みの原因は? 腕に関連する記事はこちら 腕が上がらないのは病気のせい?考えられる症状は何
最終更新日:2024.03.27 -
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肘から下の痛みの原因は?その種類と対処法について 肘から下の痛みが出る場合は、神経が圧迫されている、筋肉の使い過ぎ、または皮膚疾患など様々なことが考えられます。 では、肘から下に出る腕の痛みは何が原因で起こっているのか、自分である程度判断する方法や、どのような疾患が考えられるかについてご紹介していきます。 肘から下の腕を「前腕」、肘から上の腕を上腕と呼ぶ 私たちの腕は大きく分けて2つの部分からできています。肘から下の部分を「前腕(ぜんわん)」、肘から上の部分を「上腕(じょうわん)」と呼びます。 前腕は、手首から肘までの部分です。前腕には2本の長い骨があります。親指側の骨を「橈骨(とうこつ)」、小指側の骨を「尺骨(しゃっこつ)」と呼びます。この2本の骨は、手首で手のひらを回転させる動作に重要な役割を果たしています。また、手首には8個の小さな骨があり、これらは手の繊細な動きを可能にしています。 一方、上腕は肘から肩までの部分です。上腕には1本の長い骨があり、「上腕骨(じょうわんこつ)」と呼ばれています。上腕骨は、肩関節と肘関節をつないでいます。 前腕には手首や指を動かす筋肉が集まっている 前腕には、手や指の動きをコントロールする重要な筋肉が集中しています。これらの筋肉は大きく2つのグループに分けられます。 伸筋群(しんきんぐん):前腕の背側にある筋肉のグループです。この筋肉は、手首を背屈(手の甲側に曲げる動作)させたり、指を伸ばしたりする働きがあります。 屈筋群(くっきんぐん):前腕の掌側にある筋肉のグループです。この筋肉は、手首を掌屈(手のひら側に曲げる動作)させたり、指を曲げたりする働きがあります。 伸筋群と屈筋群は協力して働くことで、手首や指の繊細な動きを可能にしています。例えば、ペンを持つ、ボタンをかける、ピアノを弾くなどの動作では、これらの筋肉に加えて、前腕の回旋運動も関与しています。 また、前腕の筋肉は「回外(かいがい)」と「回内(かいない)」という特殊な動作にも関与しています。回外は、手のひらを上に向ける動作で、回内は手のひらを下に向ける動作です。これらの動作は、ドアノブを回す、ネジを締めるなどの日常生活で頻繁に使われています。 腕の神経は筋肉に圧迫されやすい 前腕には、脳から指先まで伸びる重要な神経が通っています。これらの神経は、筋肉を動かすための信号を送ったり、手や指の感覚を脳に伝えたりする役割を持っています。前腕の主な神経には以下の3つがあります。 正中神経(せいちゅうしんけい):親指、人差し指、中指、および薬指の半分の感覚と運動を担当しています。この神経は手の運動にも関与しています。 尺骨神経(しゃっこつしんけい):小指と薬指の半分の感覚と運動を担当しています。この神経も手の運動に関与しています。 橈骨神経(とうこつしんけい):手の甲側の感覚を担当する感覚神経です。手の運動には直接関与していません。 これらの神経は、筋肉の間を通るため、筋肉に圧迫されやすい位置にあります。例えば、前腕の筋肉が緊張したり、腫れたりすると、神経が圧迫される可能性があります。神経が圧迫されると、しびれ、痛み、筋力低下などの症状が現れることがあります。 なぜ肘から下の前腕で痛みが出るのか? 4 つの原因 前腕で痛みを発生させる原因は主に次の 4 つが考えられます。 1,筋肉の使い過ぎや過度な外力で筋損傷を起こしている場合 2,筋肉の緊張や内圧の高まりで神経を圧迫している場合 3,頚椎から派出する神経を圧迫している場合 4,皮膚の疾患にかかった場合 それぞれ打撲や捻挫など、1回の外力で起こる怪我とは別に日々のダメージの蓄積によって起こる症状も多いのです。 それぞれの原因別に、どんな疾患が考えられるのかご紹介していきます。 1.筋肉の使い過ぎや過度な外力で筋損傷を起こしている場合 筋肉に損傷を起こしているケースでは、肘関節や手関節、手指の動きをよく使う生活習慣を持っている方に多いです。スポーツ活動はもちろん、家事による負担や、デスクワークでの軽微な負担の蓄積によってある日突然痛みを発生するケースがあります。 前腕の痛みの原因について、もっとわかりやすく説明してみましょう。 腱鞘炎(けんしょうえん) 腱鞘炎は、手や指を頻繁に使う人によく見られる症状です。私たちの手や指の動きは、前腕の筋肉によってコントロールされています。この筋肉が過度に使われると、筋肉と骨をつなぐ腱や、腱を覆う腱鞘に炎症が起こります。その結果、前腕から手にかけての痛みやしびれが生じます。 例えば、長時間のキーボード入力、スマートフォンの使用、楽器の演奏などは、腱鞘炎のリスクを高めます。家事や育児でも、同じ動作を繰り返すことで腱鞘炎を発症することがあります。 内側上顆炎(ないそくじょうかえん) 内側上顆炎は、肘の内側にある骨のとがった部分(内側上顆)に付着する筋肉に炎症が起こる病気です。この筋肉は前腕を通って手首や指まで伸びているため、前腕から手にかけての痛みを引き起こします。 主婦の方に多いのは、料理や掃除など、手首を曲げる動作を繰り返すことが原因と考えられています。また、野球のピッチャーなど、肘を酷使するスポーツ選手にも多く見られます。 外側上顆炎(がいそくじょうかえん) 外側上顆炎は、内側上顆炎と同じように、肘の外側にある骨のとがった部分(外側上顆)に付着する筋肉に炎症が起こる病気です。この筋肉も前腕を通って手首や指まで伸びているため、前腕から手にかけての痛みを引き起こします。 テニスのバックハンドストロークなど、肘を伸ばす動作を繰り返すことが原因と考えられていますが、テニス以外のスポーツや日常生活でも発症することがあります。 2.筋肉の緊張や内圧の高まりで神経を圧迫している場合 前腕には狭い空間に神経が密集して通過しており、腕や手首の使い方によっては慢性的に神経を圧迫した症状を発生させることもあります。 手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん) 肘から下に痛みを発生させるだけでなく、しびれや運動障害を起こすこともある疾患です。手根管とは手首の屈筋側にある部位のことで、神経や筋肉の腱などを束ねて正しい動きに導くという役割を持っています。 この手根管は靭帯によって覆われていて、ほとんど伸び縮みができないバンドのような構造をしています。その狭い空間の中に、正中神経と9本の筋肉の腱を通しているので、圧迫されやすい構造でもあります。 病態としては前腕の屈筋群を繰り返し使うことによって疲労を蓄積していることが原因の場合もありますし、腫瘍が出来ているケースや、骨折後の後遺症として発生するケースもあります。しかし、多くの場合は特発性の手根管症候群で、原因がよくわからないというのが現状です。 手根管症候群では正中神経が圧迫されている 前述のように、手根管の中に通っている神経は正中神経であり、手根管症候群によって出る痛みはほとんどの場合は正中神経の絞扼による痛みです。前腕から、手指の母指、第二指、三指、四指まで痛みやしびれを発生させることがあります。 特徴的な症状としては、正中神経支配である母指球の筋肉が徐々に痩せていき、OKサインのような手の形がとりにくくなることがあります。このため、細かい作業がしにくくなり、生活に大きな影響を及ぼすようになるのです。 3.頚椎から派出する神経を圧迫している場合 頚椎と呼ばれる首の背骨から派出している8本の神経は、首、肩、上腕を経由して前腕から手指まで届いています。その過程で神経が圧迫されるようなことがあれば、肘から下で痛みを発生させることも大いに考えられるのです。 頚椎(けいつい)ヘルニア 頚椎ヘルニアは、首にある椎間板が変形して突出し、脊柱の中に通っている脊髄や神経根を圧迫してしまいます。頚椎の5番6番あたりでヘルニアを起こせば、肘から下で常に痛みを生じさせることも多いです。 頚椎ヘルニアを起こしてしまう原因は、急性的なものと亜急性のものがありますが、多くは亜急性です。頚椎に微細な負担を長時間蓄積させ続け、少しずつ椎間板の変形を招くのです。 頚椎から派出している神経が前腕から手指までつながっていることを知らなければ、肘から下の痛みが頚椎の問題が原因で起こっていると見当もつかないでしょう。ひどい場合は座位や立位はもちろん、寝ている間でも常に前腕にしびれや痛みを生じさせることもあります。 頚椎症 頚椎症は頚椎ヘルニアと似たような発生機序で、背骨を構成している椎骨自体の変形によって前腕を支配している神経を圧迫する病態です。頚椎ヘルニアと同じく亜急性の頚椎症が多く、現代では頚椎症のリスクは増加していると言えます。 スマートフォンやパソコンの普及により、長時間の同じ姿勢を取ることが増え、筋肉の緊張や不良姿勢を招いて少しずつ頚椎を変形させていくのです。年齢によるリスクの増加というよりも普段の生活の中で首に負担がかかる猫背やストレートネックなどの姿勢が定着していれば、20代など比較的若い世代でも十分起こり得る症状でもあります。 頚肩腕(けいけんわん)症候群 首から前腕まで向かう神経を圧迫するという点では、頚椎ヘルニアや頚椎症と同じですが、骨や椎間板に圧迫されるというよりは、手指まで通過する過程で筋肉の緊張や血流の悪化によって痛みを引き起こす病態です。 パソコンが普及し始めたころの、いわゆるキーパンチャーと呼ばれる人たちに続出した疾患でもあります。現代でもデスクワークが主な仕事になっている方は同じリスクを抱えています。 首から前腕まで通過している神経は、様々な筋肉の間を縫うように走行しています。その過程で、筋肉が緊張したり関節の悪い動かし方をしたりしていると、慢性的に神経を圧迫して痛みを発生させてしまうのです。 神経を圧迫して肘から下に痛みを発生させるだけでなく、血管を圧迫したことによる症状も併発することがあるのも特徴です。痛みに加え、しびれ、ふるえ、冷え、運動障害も起こります。また、手先が真っ白になるレイノー現象を起こすこともあるのです。 胸郭出口症候群 腕神経叢(わんしんけいそう)と呼ばれる、頚椎から指先に向かう神経群を圧迫することによって肘の下まで痛みを起こす疾患です。 胸郭出口症候群はリスクが高い身体的な特徴が決まっていて、首が長い方、なで肩の女性、やせ型の男性などです。また、生活習慣がデスクワークを中心として座っている時間が長い方でも胸郭出口症候群のリスクは高まります。 胸郭出口症候群で神経を圧迫するポイントは3つで、斜角筋と呼ばれる首と鎖骨の間あたり、肋鎖間隙と呼ばれる鎖骨と第一肋骨の間あたり、小胸筋間隙と呼ばれる小胸筋と鎖骨の下あたりです。 どのポイントにも共通するのが、腕を上げ続けることによって痛みやしびれが悪化する点です。筋肉の緊張によって腕神経叢が圧迫し、肘の下や指先に痛みを発生させることもありますが、鎖骨の動き方によって神経を圧迫してしまっているケースもあります。 そのため、腕を上にあげている時間が長い美容師や理容師の胸郭出口症候群のリスクが高いことも事実です。 4.皮膚の疾患にかかった場合 肘から下の部分に痛みが出たときに、どうしても筋肉や神経が障害されて出ている痛みだと思い込みがちです。しかし、どんな動作でも痛みが悪化することがなく、原因がはっきりしない場合に考えられるのが皮膚の疾患です。 帯状疱疹 帯状疱疹はストレスが蓄積したときや、過労など何らかの原因で免疫力が低下したときに発生する病態です。ヘルペスウイルスの一種によるもので、一度水ぼうそうを経験している方なら誰でもなる可能性があります。 全身どこでも疱疹が出る可能性はありますが、最も多いのが胸背部などの体幹と腕なのです。自分でどんなケアをしても一向に良くならない痛みに関しては、意外と見落としやすい症状でもあるので頭の片隅に置いておくと良いでしょう。 肘から下の痛みの対処方法 帯状疱疹以外で、筋肉や神経の圧迫が原因で出ている前腕の痛みについては、治療方法が共通する部分も多いです。 筋肉の緊張を取る 筋肉の緊張をとって血流を良くすることで、痛みが快方に向かうケースも多いです。ただ、前腕の筋肉はあまり大きな筋肉ではないため、むやみにマッサージをしてしまうとかえって緊張を悪化させてしまう可能性もあります。ストレッチなど、あまり刺激が大きくない施術方法で治療するのが安全です。 背骨のゆがみを取る 頚椎ヘルニアや頚椎症などの神経症状はもちろん、前腕の筋肉疲労が原因で起きている痛みについても、背骨のゆがみを取ることが有効です。背骨のゆがみが矯正されれば肩甲骨の動きも自然と改善され、前腕にかかる負担も大幅に軽減されるのです。 痛みのある部分だけを治療してもなかなか良くならない場合は、背骨など根本的な部分のアプローチが必要と考えてください。 薬物療法を使う あまりにも強い痛みの場合は、痛み止めなど消炎鎮痛剤や、ビタミン剤といった薬物療法を選択することも視野にいれます。症状によってはすぐに効果を感じられないこともありますが、とにかく今の痛みにすぐ対処する方法として選択されることも多いです。 まとめ・肘から下の痛みの原因は?その種類と対処法について 自分の状態では原因が思い当たらない、痛みが急に出だした、痛みが徐々に悪化しているという際は、早めに専門医や病院を受診し、適切な診断と情報を得ることが重要です。まず整形外科やスポーツクリニックなどを探し、医師に相談するのがよいでしょう。 肘から下の腫れや脱臼、断裂などの症状が単独の原因でなければ、痛みのある個所を一生懸命治療しても改善がみられないケースもあります。本当に必要な治療を見極めるために、自己判断だけでなく専門医や医療機関での検査や診断を受けることをおすすめします。 お近くに再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ 当院は、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 監修:リペアセルクリニック大阪院 肘や筋肉の痛みに関連する記事はこちら ・肘・筋肉の痛みは?原因と対策は? ・テニス肘とゴルフ肘の正しい治し方となりやすい条件とは ・肘をぶつけてからずっと痛みが治まらない時、考えられる原因は? ・肘の外側が痛い場合の対処法は?外側上顆炎や神経痛の場合も 腕に関連する記事はこちら 腕が上がらないのは病気のせい?考えられる症状は何
最終更新日:2024.04.04 -
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テニス肘とゴルフ肘は痛む部位が違います!効果的なリハビリと治し方 テニス肘(テニスエルボー)は、肘の外側、ゴルフ肘(ゴルフエルボー)は、肘の内側が痛くなる症状です。どちらもそのスポーツの初心者の方に多いという特徴があります。 症状の違い ・テニス肘:肘の「外側」が痛む ・ゴルフ肘:肘の「内側」が痛む また、スポーツ活動だけでなく、日常生活の中で肘や前腕の筋肉に軽微な外力による負担を蓄積することでも同じような症状が出てきます。今回は、テニス肘や、ゴルフ肘の違いと、リハビリなど、その治し方についてご紹介していきます。 テニス肘(テニスエルボー)とは テニス肘は、正式名称を外側上顆炎と呼びます。上腕骨の遠位部にある外側上顆で炎症が起きてしまう病態です。外側上顆は肘の外側にある、出っ張っている骨なので、体表からも容易に触診することが出来ます。 発生機序としては、テニスのバックハンドなど、手首や指を反らすような動きを繰り返すことによって起こります。外側上顆には前腕の伸筋群が起始している部分なので、伸ばす、反るといった動作がもっとも影響を与えやすいのです。 また、テニスのプレーだけでなく、日常生活動作の積み重ねでもテニス肘を起こします。例えば手のひらをしたにした状態でお鍋の柄を掴んだり、洗濯物を洗濯機の中から取り出したりする動作などで負担がかかります。 一回一回の動作によるダメージはそれほど大きくなくても、疲労が少しずつ蓄積することでテニス肘を発症するのです。外側上顆炎をテニス肘と呼ぶことが多いので、テニスを全くプレーしていない方でもテニス肘になるのです。 テニス肘になると、フライパンが持てない、ペットボトルの蓋が回せないなど日常生活動作でも支障が出てきます。 ゴルフ肘(ゴルフエルボー)とは ゴルフ肘は、内側上顆炎という病態のことを指します。外側上顆同様に、上腕骨の遠位端部に位置しています。内側上顆も骨の形状が出っ張っているので、体表から触診することが簡単にできます。 内側上顆には前腕の屈筋群が起始していて、手首や手指の屈曲や回旋運動に深く関与しています。ゴルフで地面を叩いてしまったり、体幹が上手く回転せずに手の力だけで打ったりするようなフォームを繰り返していると、前腕の屈筋群に余計な力が入ってゴルフ肘を発症します。 主に後ろになる手でゴルフ肘が発生しやすいので、右打ちの方は右肘、左打の方は左肘がゴルフ肘の症状が出やすいと言えます。ゴルフ肘も日常生活の中でかかる負担によっても同じ症状が出ることがあり、ゴルフのプレーだけが発生原因とは限りません。 重い物を何度も運ぶようなことを繰り返していれば、前腕の屈筋群に力が入ってダメージを蓄積してしまいます。ゴルフ肘になると、肘の屈曲や伸展、手首の屈曲、手指の屈曲といった動作で力が入ると肘の内側が痛くなります。 テニス肘やゴルフ肘の治し方(リハビリ) テニス肘やゴルフ肘を治すにはどのような対処法があるのかご紹介していきます。 1.ストレッチを行う テニス肘もゴルフ肘も、前腕の筋肉が緊張したり過度な負担がかかったりすることによって発生します。筋肉が硬くなっていることは間違いないので、前腕の筋肉をストレッチすることが有効です。 テニス肘の場合は特に前腕の伸筋群、ゴルフ肘の場合は特に前腕の屈筋群を入念にストレッチすることが重要です。肘を伸ばした状態で、手首を屈曲方向に他動的に曲げると前腕の伸筋群のストレッチが出来ます。 逆に、手首を伸展方向に他動的に曲げると前腕の屈筋群のストレッチが出来ます。どちらのストレッチも、肘の関節が伸びている状態で行うことがポイントです。 前腕の屈筋群も伸筋群も、肘関節と手関節をまたぐ筋肉なので、肘が伸びていないとストレッチ効果が半減するのです。 2.肘(筋肉)を温める 肘の筋肉を温めることで血流がよくなるので、緊張緩和に繋がります。テニス肘もゴルフ肘も、お風呂に入った後に少し症状が軽くなるというケースも多いです。 それは筋肉が温まったことで柔軟性を取り戻し、外側上顆や内側上顆にかかる負担を軽減できているということでもあります。テニス肘の場合は前腕の伸筋群を中心に、ゴルフ肘の場合は前腕の屈筋群を中心に温めます。 温め方としては、電子レンジなどで作る蒸しタオルをあてがう方法や、お風呂でしっかり温まるという単純な方法で十分です。冷やさないという対策も重要なので、長そでを着たり、上腕から前腕まで覆うことができるサポーターをしたりするのも良いでしょう。 ホッカイロを活用するのも有効です。 3.温熱療法を受ける 前述の方法では、自宅などでできる筋肉の温め方をご紹介しました。それとは別に、整形外科や接骨院などで受けられる温熱療法も効果的です。 筋肉を温めるという点では全く同じですが、温熱治療器を使えば芯の部分からしっかり温めることが出来ます。赤外線治療器なら、体表よりもむしろ深部を温めることができるので、効率的です。 さらに、ホットパックという道具もあり、蒸しタオルなどと違って温度が徐々に下がることなく一定を保つことができるので、自宅で行うよりもよく温まります。 4,電気(低周波)治療を受ける 電気治療は、整形外科でも接骨院でもどちらでも可能です。保険適応になれば数百円と安い金額で受けることが出来ます。電気(低周波治療器)治療器にはいくつか種類があり、低周波治療器や干渉波治療器といったものがあります。 どちらもテニス肘やゴルフ肘の治療において、効果を発揮してくれます。電気刺激を送ることで、テニス肘やゴルフ肘の原因となっている前腕の伸筋群と屈筋群の血流を良くすることが出来ます。血流が良くなれば代謝が向上し、疲労物質も早く流れてくれます。 それによって筋肉の緊張も取れやすくなりますし、外側上顆や内側上顆の負担も軽減されます。しかし、稀に電気治療を受けた後に肘の痛みが悪化してしまうというケースもあります。 その場合、電気(低周波)の刺激が強すぎたということも考えられるので、電気を弱くして試してみてください。また貼り方が悪い場合もあります。それでも悪化するようなら、その他の温熱療法や手技療法で代替するべきです。 人間は強すぎる刺激に対しては、無意識のうちに筋肉を硬直させる防衛反応が働くので、電気が強すぎるとテニス肘やゴルフ肘の症状は悪化してしまうのです。 5.運動療法を受ける 肘関節の屈曲や伸展、手関節の屈曲や伸展、手指の屈曲や伸展、といった動作をスムーズに行えるようにするために、運動療法を受けるのも効果的です。 どれもテニス肘やゴルフ肘の発生リスクに関わる動作であり、動かし方が間違っているとすぐに再発もします。また、テニス肘やゴルフ肘の痛みが軽減してからは、筋力を強化することも重要です。 前腕の屈筋群と伸筋群、肘の屈曲動作に関わる筋肉を強化することで、テニス肘やゴルフ肘の再発予防にも繋がります。最初はあまり大きな負荷でやらなくても良いので、500mlのペットボトルを上げ下げする程度の運動が良いでしょう。 6.マッサージを受ける 前腕の屈筋群や伸筋群をマッサージしたり、上腕、肩甲骨周辺のマッサージをしたりすることが重要です。マッサージをすることによって筋肉の緊張を取り除き、内側上顆や外側上顆にかかる牽引力を軽減するのです。 なぜ上腕や肩甲骨周辺までマッサージが必要なのかというと、上肢帯の動きが悪いと自由上肢骨に大きな負担がかかるからです。肩甲骨の動きが悪ければ、肩を挙げるときに肘関節がそれを代償しようとします。 その結果前腕にも負担をかけ、テニス肘やゴルフ肘のリスクを高めるのです。しかし、マッサージをあまりにも強い力でやりすぎると、かえって自分の体を守ろうとして筋肉が硬くなることもあるので、マッサージが強ければ強いほど良いという勘違いは無くした方が良いでしょう。 7.整体を受ける テニス肘やゴルフ肘の治癒を早くするためには、全身のバランスも整えた方が良いです。背骨のゆがみや骨盤のゆがみがあるせいで、前腕に大きな負担をかけることがあるのです。 テニス肘やゴルフ肘の発生機序として、単に前腕の屈筋群や伸筋群の使い過ぎということがあるだけでなく、それらの筋肉に負担をかけざるを得ない体のバランスが隠れています。 例えば猫背やストレートネックなど、肩甲骨の動きが悪くなるような姿勢だと、上肢全体の動きが悪くなります。通常よりも前腕の屈筋群や伸筋群に大きな負担をかけるようになるので、テニス肘やゴルフ肘のリスクが高まるのです。 肘や前腕の治療を集中的に行っても痛みがなかなか軽減しない場合は、背骨のゆがみが関係していることも視野にいれましょう。むしろ、早期治癒と再発予防を両立していくことを考えるならば、初期段階から整体の施術を取り入れても良いでしょう。 テニス肘やゴルフ肘になりやすい人とは テニス肘やゴルフ肘は、リスクを高める特徴がいくつかあります。再発予防のためにも、ぜひ押さえておきましょう。 1.テニスやゴルフの初心者 初心者の場合、ラケットやクラブのスイング動作を、どうしても上肢の力に頼って行うことになります。長年経験している方や、そのスポーツが上手い方の場合は、体幹の力を上手く使って体全体を回転させて打ちにいけるのですが、それが出来ないうちは肘や手首に負担がかかります。結果的に外側上顆や内側上顆に付着する筋肉へと負担が集中するので、痛みを発症しやすいです。 2.肘以外に痛みを抱えている人 肩や腰など、前腕以外に痛みを抱えている人はテニス肘やゴルフ肘のリスクを高めてしまいます。テニスやゴルフに共通するのは回転動作ですが、腰に不安があると体の回転が甘くなります。 その分パワーを発揮するには上肢の筋力をより大きく発揮させなければなりません。その結果前腕に力が入り、テニス肘やゴルフ肘を発症しやすくなってしまうのです。 日常生活の中でも、肩に痛みがあれば腕が上がりにくくなります。それでも腕を上げて行わなければならない洗濯物を干す動作をすれば、前腕に余計な負担をかけることになります。 その積み重ねでテニス肘やゴルフ肘のような症状を発生させるのです。この場合、肘だけを治療しても改善に時間がかかります。肘以外の痛みの治療も並行して行う必要がありますね。 3.姿勢が悪い人 背骨のバランスが悪い人は、肩を中心とした上肢の筋肉に慢性的な負担をかけ続けます。猫背などのように、横から見た時に頭の位置が体幹からかなり前に出ている人は、首から背中にかけて日常的に負担をかけ続けています。 その結果肩甲骨の動きが悪くなり、肩の可動域が狭まり、肘から先にも疲労を溜めやすくなるのです。さらに、姿勢が悪い人は背骨のしなやかさが失われていることが多く、仰向けや横向きになったときに体が休まりません。 すると睡眠時の回復力が低下してしまうので、疲れが抜けにくく筋肉の疲労を蓄積してしまいます。そこからテニス肘やゴルフ肘の症状に繋がることがあるので、姿勢を改善しておくことは非常に重要な項目であると言えます。 まとめ・テニス肘とゴルフ肘は痛む部位が違います!効果的なリハビリと治し方 テニス肘やゴルフ肘は、そのスポーツを経験している人以外でも起きることがある症状です。肘の内側や外側で痛みが出るということ以外は、発生機序やリスクが同じなので、どちらの症状も同時に起こすことさえあります。 一回の外力で発生するというよりも、徐々に負担を蓄積して症状になるので、体の使い方など根本から改善しないとすぐに再発するでしょう。自分ひとりだけで解決しようとせず、専門医のアドバイスも聞いて早期治癒と再発予防に努めましょう。 監修:リペアセルクリニック大阪院 お近くに再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ リペアセルクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「お電話やメール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 肘や筋肉の痛みに関連する記事はこちら 肘・筋肉の痛みは?原因と対策は? 肘から下の痛みは背骨が原因か?前腕が痛む原因で考えられる疾患 肘をぶつけてからずっと痛みが治まらない時、考えられる原因は? 肘の外側が痛い場合の対処法は?外側上顆炎や神経痛の場合も 肩の痛み、肩の関節の痛みに関連する記事はこちら 肩の関節が痛い場合に有効な治し方と痛みの原因は? 腕に関連する記事はこちら 腕が上がらないのは病気のせい?考えられる症状は何 当院の治療についての考え方や再生医療についての内容もお読みください スポーツ外傷・障害の痛みに対する当院の治療 再生医療とは PRP(多血小板血漿)療法とは ご相談から治療までの流れ 再生医療による膝の治療に関連する記事はこちら 膝の症例 現役プロスポーツ選手 ひざの痛みにPRP治療
最終更新日:2023.10.11 -
- 肘
肘の痛みが治まらない!考えられる病気 肘をぶつけてから痛みが治まらない 肘の関節は、脂肪や筋肉で覆われているわけではないため、ぶつけると痛みを感じやすい部分です。 衝撃にもよりますが骨折などが起こっている場合もあります。小児の特徴的な骨折である「上腕骨顆上(じょうわんこつかじょう)骨折」や、中には肘の先端をぶつけることによっておこる「肘頭(ちゅうとう)骨折」などの可能性も考えられます。 これらの場合、骨折であれば固定が必要ですが、筋肉が痛みの原因である場合は運動療法などが有効となります。 骨折の場合 ・上腕骨顆上(じょうわんこつかじょう)骨折 ・肘頭(ちゅうとう)骨折 そこで今回は、「肘をぶつけて、曲げると痛い」「肘をぶつけてから ずっと痛い」といった場合、どのような症状が考えられるのかご紹介していきます。 痛みが出るのは、筋肉か骨に異常が出ているサイン 肘をぶつけて、曲げると痛い場合は、「筋肉に異常が出ているケース」も、「骨折など器質的な異常が出ているケース」もどちらも考えられます。 肘を曲げるための筋肉は、主に上腕二頭筋や上腕筋といった筋肉で、これらの筋肉に炎症や打撲があれば肘を曲げたときに痛みが出るでしょう。しかし、肘の伸展に作用する筋肉である、上腕三頭筋などに異常が起きている場合でも痛みが出ます。 肘を曲げることによって上腕三頭筋が強制的に伸張される形になるので、筋損傷があって緊張が強い場合には痛みが出るでしょう。骨で異常が出ている場合は、肘頭の骨折や上腕三頭筋付着部での炎症が考えられます。 肘頭は上腕三頭筋の停止部でもあるので、肘を曲げることで骨片が無理に引き離されます。それが痛みを発生させる原因になるのです。 肘を曲げると痛い!考えられる病態とは? 肘をぶつけて曲げると痛い場合、「筋肉が原因」なのか「骨が原因なのか」を見極める必要があります。発生機序や症状から、考えられる病態をご紹介していきます。 肘頭骨折 肘頭は尺骨の近位端部に位置する部位で、肘関節の大部分を構成しています。体表に近い部分まで骨が出ているので、ぶつけることで骨折が起こることは十分考えられます。 肘を曲げると痛いのはもちろん、場合によっては肘の動作がかなり制限されます。伸ばす動作も曲げる動作もどちらもできにくくなるので、生活に支障が出るでしょう。 もし肘をぶつけた後に肘頭部で強い痛みがある場合は、まず安静にして肘を動かさないようにしてから、整形外科を受診しましょう。 治療方法 肘頭の骨折では、保存療法と手術のどちらも考えられます。保存療法の場合はまず硬性材料によって1カ月以上の固定が必要です。ただ、肘頭骨折は固定が難しい骨折でもあり、偽関節を作りやすい部位でもあります。 固定には細心の注意を払い、安静を守ります。骨癒合した後は、少しずつ肘の可動域を広げていくための後療、罨法、手技療法などが有効です。運動療法なども少しずつ取り入れ、肘の可動域を最大にしていきます。 手術の場合はプレートなどで骨片を固定します。当然ですが、保存療法よりもしっかり骨片がくっつくので、早期にリハビリを開始できるというメリットがあります。 上腕骨顆上骨折 小児に多い骨折で、高齢者でも起こすことがあります。上腕骨の下端部の、内側上顆や外側上顆よりも近位部で折れてしまう骨折です。高いところから落ちて手をついたり、後ろ向きに転倒して手をついたりすることで発生します。 上腕骨顆上骨折を起こすと、明らかに変形を認め、運動がかなり制限されます。曲げようとすると激痛になるので、筋肉の損傷とは全く違う痛み方をするでしょう。 治療方法 上腕骨顆上骨折は多くの場合変形が大きく、手術を選択されることもあります。折れた骨片が深く入り込んで短縮してしまうことがあるので、牽引しながら治療することもあります。 手術をせずに保存療法で改善することも可能ですが、ギプスなどでしっかり固定されるのでしばらくは肘を使えなくなります。骨折が起きた時に神経や血管を圧迫したり、固定の仕方によって圧迫してしまったり、二次的な症状が起こることもあります。 小児の上腕骨顆上骨折では、変形したまま骨癒合することで内反肘という特徴的な後遺症を残すこともあります。 テニス肘(テニスエルボー) テニス肘は、特に肘の外側で痛みが起こる症状です。テニスのバックハンドの際に負担がかかる部分で、テニスプレーヤーが肘の外側で痛みを訴えることが多いことからテニス肘と呼ばれています。 外側上顆炎や肘外側の側副靭帯の損傷を、総称しているのです。肘をぶつけたことで痛みを発生しますが、その1回の外力によってテニス肘を発生させることは稀です。 よほど大きな外力で、肘関節に捻りが加わると側副靭帯の損傷を起こしますが、多くは軽微な外力を繰り返し受けることによってダメージが蓄積して起こります。 テニスなどのスポーツ競技はもちろん、パソコンなどのタイピングが多い方や、包丁をよく使う料理人などでもしばしば起こる症状で痛みが起こってから、肘に力が加わるとずっと痛いといった症状が起こります。 治療方法 基本は保存療法です。側副靭帯が損傷していない限りは、固定することはほとんどありません。手首の動きや手指の動きに関する筋肉が障害されていることが多いので、痛みのある動作をなるべく避けて安静にすることが第一です。 前腕の回内や回外、肘関節の屈曲や伸展で痛みが出ることもあるので、日常生活が少し制限される場合もあるでしょう。前腕の伸筋群にかかる負担や疲労を取り除くことが、早期治癒のカギです。マッサージやストレッチなど、自分でできるケアをしていくことも重要になります。 手のひらを下にした状態で、鍋などを持ち上げると激痛になることもあるので注意が必要です。 野球肘 肘の内側側副靭帯の損傷や、上腕骨内側上顆炎を野球肘と呼びます。小学生や中学生の年代で、繰り返し投球動作を繰り返すことによって肘の内側に過度な負担をかけ続けることで起こることが多いので、野球肘と呼ばれるのです。 肘の内側についている靭帯や軟骨、筋肉や腱が損傷している状態なので、肘を曲げるなどの動きでも痛みが出ます。炎症が起きている状態では、肘の内側をぶつけるとかなり痛いでしょう。 手首の屈曲や手指の屈曲など、前腕の屈筋群に負担をかけ続けると野球肘発生のリスクも高まります。 治療方法 骨自体に裂離骨折などが起きているケースは少なく、保存療法が主です。野球をやっている場合は投球の中止、安静が第一になります。上腕部の筋肉から、前腕の屈筋群にかかっている負担を減らしていくことが大切です。 肩甲骨の動きが悪いと代償動作として肘に負担がかかるので、再発の予防をするためには肩甲骨や背骨のゆがみから取り除いていかなければなりません。 関連記事はこちら つらい肘の痛みにPRP治療も効果的です 変形性肘関節症 男性に多い症状で、長年にわたって肘関節を酷使することによって肘で変形が起き、可動域制限や痛みを発生させる症状です。元スポーツ選手で起こるケースもありますし、重い物を持つなどの重労働を繰り返していた方では変形性肘関節症のリスクが高いです。 変形の仕方は骨棘ができることで、肘の関節面にある軟骨がすり減って、骨の部分が直接接触することで徐々に変形していきます。場合によっては肘の屈曲可動域が大幅に制限されるので、食事など日常生活に大きな支障をきたすケースもあります。 肘部管症候群と呼ばれる、尺骨神経を圧迫する症状が特徴的です。ロッキングを起こすこともあります。 治療方法 日常生活へどの程度支障が出ているかによって、手術か保存療法か判断されます。保存療法の場合は温熱療法や薬物療法、筋力トレーニングなどのリハビリを行います。手術の場合は、変形して出来た骨棘を取り除くことが行われます。 関節リウマチ 最初に手指など遠位部で炎症や痛みが起きることが多いですが、肘関節でも痛みを発生させることがあります。関節リウマチは発生の原因がはっきりしておらず、何が誘因になっているのか不明な点も多いです。 病態としては免疫の異常であり、本来であれば病原菌など侵害物に対して攻撃を行う免疫が、体の細胞に対して攻撃を行ってしまうという現象です。関節の組織を破壊してしまうため、肘で起きれば曲げるときに痛みが出ますし、変形を起こすこともあります。 治療方法 薬物療法や運動療法、罨法などが行われることが多いです。あまりに変形がひどく進んでしまっている場合には手術も選択肢に入り、変形によって血管や神経を圧迫してしまうことを防ぎます。人工関節の置換術が行われることもあります。 肘を曲げて痛いときにどうするべきか? 肘を曲げた時に痛みが出るような場合に、自分でできる対処法にはどのようなものがあるでしょうか。 整形外科を受診する 肘に関する症状を精査するなら、整形外科を受診してください。レントゲンやMRIを希望する場合は、大きな病院の中にある整形外科に行った方が確実です。骨折が疑われる場合はもちろん、明らかに変形が起きている場合も精査が必要です。 強く晴れている場合や、肘がほとんど曲がらない状態であれば骨折など、器質的な異常が隠れているかもしれません。 接骨院を受診する 肘を曲げて痛い原因が、筋肉の炎症や関節の動かし方にあるのであれば、接骨院や整骨院でも有効な治療を行うことが出来ます。整形外科で精査してもらい、骨折や病気でないことを確認してから接骨院や整骨院を受診すると確実です。 罨法、後療、電療、運動療法、手技療法など、様々なアプローチが出来ます。 整体を受ける 肘を曲げると痛いのが、肩甲骨の動きや背骨のゆがみによって起きているケースもあります。姿勢が悪く肩甲骨の動きも悪ければ、必然的に肘にも負担がかかります。 肘自体に問題があるというよりも、周りの機能によって二次的なダメージを溜めているパターンもあるのです。その場合、肘関節に電気治療を行ったり、肘の動きを良くするような手技療法を行ったりするだけでは改善できません。 肘にかかる根本的な負担を取り除くには、姿勢から改善する必要があるのです。 温める 捻挫や打撲でない場合や、痛みが出だしてから数日経過している場合、温めることが有効なセルフケアになります。基本的には温めた方が血流も良くなるので、損傷している組織の代謝も上がって回復力がアップします。 サポーターを付けて冷やさない工夫をしたり、お風呂でしっかり温まったりなど、簡単にできるケアで十分です。 安静にする 早く治そうと思ったら、安静にするのが一番です。リウマチなど、黙っていても症状が進行してしまう場合は別ですが、そうでない場合は肘を休めて筋肉疲労を回復させることで痛みが軽減する場合もあります。 再生医療を受ける スポーツによる障害や変形を伴った関節症など、肘に痛みが出る疾患は様々ですが、痛みを取るには自己の自然治癒力を高める事が重要です。温熱療法や手技療法など治療の仕方はいろいろありますが、そのどれもが自然治癒力を高めるための治療です。 その方法の一つに「再生医療」という治療があります。これは自身の血液や脂肪を用いて、「自然治癒力=再生する力」を高める方法です。 血液を用いた方法は「PRP(多血小板血漿)療法」といい、傷を修復させる血液成分を抽出して患部に注射します。PRP療法は、スポーツ選手がケガをした際、手術をせずに早期復帰を目指す治療法としても取り入れられています。 脂肪を用いた方法は、「脂肪由来幹細胞」による再生医療です。幹細胞とは臓器や皮膚、骨、筋肉、靭帯など様々な細胞に分化する能力があります。 自身の脂肪から幹細胞を培養し、それを体内に戻すことで自然治癒力が向上します。この治療法は患部に注射する方法だけでなく、点滴により全身に幹細胞を届けることも可能です。 肘をぶつけて痛みが発生しやすい箇所 肘をぶつけることが多いのは、肘の背面に位置している「尺骨の肘頭」という部分です。 後ろ向きに転倒したときや、肩関節の伸展動作によって打撲することが考えられます。肘頭は、筋肉や脂肪で覆われていることが少ないため、打撲症状や骨折が起こりやすい部位です。 また、上腕骨下端にある外側上顆や内側上顆もぶつけやすい部位です。 外側上顆も内側上顆も、骨が少し外側に出っ張っているため、皮膚の上からでも容易に触わることが出来るくらい体表に近くなっています。転倒などでもぶつけることが多々あります。 肘の痛みから全身が痛くなることもある 最初は肘を曲げると痛いだけだったのが、知らない間に肘をかばって生活するようになり、肩や背中に痛みを発生させることもあります。そこから全身の不調につながっていくことは十分考えらえるので、痛みを放置せずに早めに対処してください。 お近くに再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ リペアセルクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 以上、肘の痛みが治まらない!考えられる病気について記してまいりました。参考になれば幸いです。 >メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 監修:リペアセルクリニック大阪院 肘や筋肉の痛みに関連する記事はこちら 肘・筋肉の痛みは?原因と対策は? テニス肘とゴルフ肘の正しい治し方となりやすい条件とは 肘の外側が痛い場合の対処法は?外側上顆炎や神経痛の場合も 肩の痛み、肩の関節の痛みに関連する記事はこちら 肩の関節が痛い場合に有効な治し方と痛みの原因は? 腕に関連する記事はこちら 腕が上がらないのは病気のせい?考えられる症状は何 当院の治療についての考え方や 再生医療についての内容もお読みください スポーツ外傷・障害の痛みに対する当院の治療 再生医療とは PRP(多血小板血漿)療法とは ご相談から治療までの流れ 再生医療による膝の治療に関連する記事はこちら 膝の症例 現役プロスポーツ選手 ひざの痛みにPRP治療
最終更新日:2023.10.09 -
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肘の外側、何もしてないのに痛い!上腕骨外側上顆炎や神経痛かも ぶつけたり捻ったりしたわけでもないのに、急に肘の外側が痛くなる。実はこれ、珍しい症状ではありません。普段の生活の中で軽微な外力による負担が積み重なり、あるとき突然、肘の外側で痛みを発生させます。 今回は、肘を伸ばすときや曲げると肘の外側が痛いとき、何もしなくても痛いときに考えられる原因や対処法、治療法や予防法についてご紹介していきます。ぜひご参考にされてください。 肘の外側が痛い場合は「上腕骨外側上顆炎(がいそくじょうかえん)」を疑う 上腕外側上顆炎という肘の病気をご存じでしょうか?肘の外側が痛いときの原因として考えられることがよくあります。 上腕骨外側上顆炎(テニス肘、テニスエルボー)とは? 別名テニス肘、近年ではスマホ肘と呼ばれることもある病態です。これらは正式名称を「上腕骨外側上顆炎」と呼び、上腕骨にある外側上顆で炎症が起きているということを言います。 外側上顆で痛みが出ているわけですが、実際に根本的な原因になっているのは肘関節というよりも前腕の筋肉群です。具体的には手関節や手指の伸展動作に関わる筋肉で、前腕の伸筋群と呼ばれます。 前腕の伸筋群は、上腕骨の外側上顆から前腕を通過し、手関節の先まで走行しています。そのため、前腕の伸筋群を使いすぎるなどしてダメージを蓄積した場合、外側上顆にも負担がかかります。 ぶつけていないのに肘が痛くなるのはなぜ? 手関節や手指の動きを繰り返し行うことで、前腕伸筋群が伸張を繰り返し、その牽引力が外側上顆の一点にかかります。これが長時間、または長期間続くことで徐々に外側上顆で炎症を起こし、結果的に伸ばすと痛い、曲げる痛い、何もしなくても肘の外側が痛いという症状となって現れるのです。 前腕の筋肉を多用するテニスプレーヤーに多い症状でもあることから、テニス肘という名称がついています。近年でスマホ肘と呼ばれる理由は、テニスをしていない人でもよく起こる症状であることも由来しています。 スマホを長時間操作していると、スマホを支えるために前腕の筋肉が硬直し、外側上顆に負担をかけるのです。 肘関節の構成 肘の関節は、上腕骨と前腕の橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)の3つの骨で構成されています。 肘関節のなかでもさまざまな関節があり、肘関節をもっと詳しくみていくと3つの関節が1つの関節包の中に納まっています。 1,腕尺関節(わんしゃく‐かんせつ) その中の1つの腕尺関節は、関節の種類でいうと蝶番関節であり、屈曲と伸展の運動を行っています。 2,腕橈関節(わんとう‐かんせつ) もう1つが腕橈関節であり、小さい関節ではありますが球関節の構造をしています。肘の屈曲伸展、回旋運動に関わる関節です。 3,上橈尺関節(じょうとうしゃく‐かんせつ) 最後の1つが上橈尺関節で、前腕の骨である橈骨と尺骨の間で構成されている関節です。主に前腕の回外や回内運動を行っています。 肘関節を動かす最も大きな筋肉は上腕二頭筋で、肘関節の屈曲と前腕の回外の運動に関わっています。 上腕二頭筋は肩甲骨から上腕を通過して前腕まで走行しているため、肩関節の動きに異常がでることによって肘関節に影響が出る可能性もあります。 また、肘関節伸展に関わる主な筋肉は上腕三頭筋であり、これも肩甲骨から上腕を通過して前腕まで走行しています。やはり肩関節を超えて肘関節をコントロールする筋肉なので、肘関節の異常が肩関節の使い方によって影響されることもあり得ます。 上腕骨外側上顆炎の症状 上腕骨外側上顆炎は男女どちらでも当然起こり得る症状ではありますが、患者数でいうと30~50代、さらに女性の方が多い傾向にあります。筋力の弱さやホルモンバランスも関係しているようです。 外側上顆炎を発症すると、伸筋群が原因であるにも関わらず、手関節の伸展や手指の伸展以外の動作でも、肘の外側に痛みを発生させます。 肘を伸ばすときや曲げるとき、前腕の回外、安静時でも肘の外側が痛むという症状があり、日常生活ではドアノブを回すときやタオルを絞るとき、キーボードを打つときや物を持ち上げるときに痛むなど、普段の生活にも大きく影響を及ぼすこともあるのです。 ・肘を伸ばすと痛い ・肘を曲げると痛い ・前腕の回外時に痛い ・安静時でも肘の外側が痛む ・ドアノブを回すと痛い ・タオルを絞ると痛い ・キーボードを打つときに痛む ・物を持ち上げるときに痛む 打撲や捻挫のように、一度の外力で急に外側上顆炎になることよりも、日常生活の動作の中で少しずつ負担を蓄積して発症するケースが多いという特徴もあります。そのため、治癒させるためには治療が長期間に及ぶこともしばしばです。 上腕骨外側上顆炎の5つの治療方法 上腕骨外側上顆炎の治療を医療機関で行う場合、どのような方法がとられるのかを5つご紹介していきます。 1.電気治療 痛みがある肘の外側、前腕の筋肉を中心に低周波や干渉波の電気治療が行われることがあります。主な目的は前腕の筋肉で起きている緊張を取り除くことと、血流を良くすることです。 しかし、炎症であることと、筋肉の緊張による牽引力が原因で起きている症状であるという特徴から、電気治療をすることで稀に悪化するケースも見られます。 電気刺激が強すぎると、かえって自分の体を守ろうとする防衛本能が働き、逆に筋緊張を強めてしまうのです。そのような反応が見られた場合は電気刺激を弱めるか、別の保存療法を選択するべきです。 2.手技療法 前腕の筋肉をマッサージやストレッチでほぐすことが主な手技療法になります。上腕骨から指先まで走行している伸筋群もあるため、前腕だけでなく手指の動きを良くすることも重要です。 手指の動きが良くなれば、必然的に外側上顆の負担は減り、肘の外側の痛みが消えるのも早いです。そういった意味では、手の内在筋をマッサージやストレッチでほぐすということも、外側上顆炎の有効な治療と言えます。 3.温熱療法 外側上顆炎の患者の中には、お風呂に入った後には少し痛みが軽減するという方もいます。これは、温められることによって血流が良くなり、前腕伸筋群の緊張が和らいだことが考えられます。 赤外線などで外側上顆から前腕にかけて温熱療法を行い、その後に手技療法や運動療法を行うことで改善を早めることに繋げます。 4.運動療法 肘関節の正しい動かし方を身につける運動療法や、手関節、手指の関節の動きをスムーズにするための運動学習など、様々な運動療法が有効です。もちろん痛みの程度を見ながら、無理のない範囲で徐々に行うことが大切です。 その際、肩関節の動きを良くして可動域を広げることも外側上顆炎の治療では重要です。肩関節や肩甲骨の動きが肘関節を動かす筋肉の負担に繋がり、それが外側上顆炎に結び付くことが考えられるからです。 5.背骨の矯正 一見すると関係なさそうですが、外側上顆炎を改善するために背骨のゆがみ、さらには骨盤のゆがみを改善することは有効な手段です。姿勢が良くなることで肩甲骨や胸椎の正しい動き、スムーズな動きが獲得でき、肩関節の可動域が広がります。 肩関節の可動域が広がれば、肘関節にかかる負担も軽減することができ、結果的に手関節や手指の動きをスムーズに行うことができるのです。 外側上顆炎だからといって肘だけを集中的に治療するよりも、背骨のゆがみから改善していった方が早期に治癒が見込めます。その上、繰り返しの外力によって発生するという外側上顆炎の特性上、再発の予防にも繋がる治療なのです。 上腕骨外側上顆炎は再発する!その予防方法は? 上腕骨外側上顆炎は一度なってしまうと治癒まで比較的時間がかかる症状であり、一度良くなった後も再発するケースが多いのも特徴です。自分でできる改善方法、再発予防方法をご紹介していきます。 1.ストレッチ 前腕の特に伸筋群に疲労を溜めることで外側上顆炎のリスクが高まるので、前腕のストレッチをこまめに行うことが予防方法になります。外側上顆炎になった後はストレッチの動作でも痛みを感じることがあるので、痛みが軽減してから習慣にしてください。 やり方は簡単で、手関節の屈曲と伸展方向にゆっくりと伸ばすだけです。外側上顆炎の主な原因筋が伸筋群なので、手関節を屈曲方向に曲げれば伸筋群がストレッチできます。 しかし、伸筋群だけのストレッチでは外側上顆炎の再発予防としては不十分です。屈筋群に緊張があるままだと、日常生活の中でも手関節伸展がしにくくなり、余計に筋力を発揮させて伸展動作を行わなければならなくなります。 それが外側上顆にかかる負担を増す原因になるので、屈筋群も併せてストレッチしておくことが大切です。 2.肘と前腕を温める 基本的に冷えは筋肉の緊張を生みやすいので、自分でも温めるようにした方が改善の助けになります。お風呂でしっかり温まることはもちろん、電子レンジなどで蒸しタオルを作って肘の外側から前腕にあてておくだけでも良いセルフケアです。 安価な物でも良いので、肘全体を覆うタイプのサポーターをするのも冷え対策になるのでオススメです。 神経痛によって肘の外側が痛むこともあるので注意! 頚椎ヘルニアなど、首から上肢にかけて走行している神経が圧迫されることによって肘の外側で痛みを発生させている場合もあります。 頚椎ヘルニア・神経痛とは? 神経を圧迫している原因の代表は頚椎ヘルニアで、スマホやPCが大部分に普及してきた現代では発生頻度も高くなっている病態です。頚椎から派出する神経が上肢を走行し、その過程で肘の外側も支配しています。 頚椎ヘルニアが上腕の外側を支配する高さで起こっている場合、肘の外側が痛むということは十分考えられます。デスクワーク、バイクの長時間の運転、姿勢が悪いという既往などが頚椎ヘルニアのリスクを高めます。 頚椎ヘルニアで肘の外側に痛みが出ている場合、そこだけでなく肩甲骨の内側や外側、首自体での痛みも同時に発生しているケースがほとんどです。 もし痛みが肘の外側だけでなく、体幹に近い部分にもいくつか発生しているなら、神経症状であることを疑いましょう。その他の鑑別ポイントとしては、安静時でも常に痛い、頸部の伸展や回旋動作などで痛みが悪化するといったことです。 頚椎ヘルニア・神経痛の5つの治療方法 肘の外側で出ている痛みが神経痛であった場合、肘の動きをいくら良くしようが、前腕や上腕の筋肉をいくらマッサージしようが、根本的な解決にはなりません。神経が発生している背骨の部分から治療していく必要があります。 1.薬物療法 痛み止めの処方や、神経痛の際によく出されるビタミン剤が主な薬物療法で使われます。飲み続けることによって痛みを感じにくくなりますが、頚椎ヘルニアなど神経を圧迫しているものが解決されるわけではないので、薬物だけですべてを解決するのは難しいときもあります。 ただ、あまりの痛みは日常生活に支障をきたすので、それを防ぐ目的で使用するのが良いでしょう。 2.温熱療法 神経痛もやはり温めることが有効な治療方法になります。血流が良くなる上に筋肉の緊張が取れるため、神経の圧迫も軽減されることがあるのです。 3.牽引治療 整形外科などでは、頚椎を牽引して治療する方法になることが多いです。牽引することで背骨全体の筋肉がストレッチされ、神経の通り道を広くすることが期待できます。しかし、現状では牽引治療だけで治癒に至らないケースも多いです。 4.整体 姿勢を改善して首の負担を取り除くことや、関節の動かし方を改善して頚椎から出る神経を圧迫しないような体作りをしていきます。手術以外ではこれがかなり有効な治療方法でもあり、早期の改善と再発予防に繋がる可能性もあります。 5.手術療法 スポーツ選手など特別な事情が無い限りは稀な選択と言えますが、頚椎の手術が選択される場合もあります。頚椎というシビアな場所だけに、一般では最終手段的な立ち位置でもあります。 まとめ・肘の外側、何もしてないのに痛い!上腕骨外側上顆炎や神経痛かも 肘の外側で起きる痛みには、肘や前腕で問題が起きている場合と、頚椎など中枢に近い部分で問題が起きている場合と2種類あります。両者は治療方法も全く異なるので、どこで問題が起きているのか見極めるのが大切です。 当院は、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 監修:リペアセルクリニック大阪院 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ
最終更新日:2023.09.14