股関節と骨盤の関係性とは?運動連鎖や痛みの原因として考えられる疾患について解説
公開日: 2020.06.06更新日: 2025.06.02
股関節や骨盤の痛みは、多くの方が一度は経験する可能性のある身近な悩みです。
これらの部位は私たちの体の中心に位置し、日常のあらゆる動作を支える重要な役割を担っています。
本記事では「股関節と骨盤の関係性」に焦点を当て、それらがどのように連動して機能するのか、それぞれの動きの範囲について解説します。
- 股関節と骨盤が連動する「運動連鎖」の仕組み
- 股関節・骨盤を支える主要な筋肉・靭帯の役割
- 股関節や骨盤の痛みの原因となる代表的な疾患
- 骨盤の歪みが股関節痛に与える影響と痛いときの対処法
股関節や骨盤の不調でお悩みの方や、人間の体の仕組みについて詳しく知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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目次
股関節と骨盤の関係性について
股関節と骨盤は、私たち人間の体を支え、日々のさまざまな動きを可能にしています。
本章では、以下の2つのポイントに焦点を当てて解説します。
それぞれの関係性を理解することで、体の動きや痛みがある場合の原因について、新たな気づきがあるかもしれません。
股関節を動かすと骨盤も連動して動く
股関節と骨盤は、歯車のように片方が動けばもう一方も影響を受けて一緒に動く「運動連鎖」という密接な関係にあります。
関係性・構造 | 詳細 |
基本的な構造 | ・骨盤は複数の骨で構成されるリング状 ・股関節は骨盤と太ももの骨(大腿骨)をつなぐ球状の関節 |
運動連鎖 | 股関節と股関節のどちらかが動く際に互いに影響し合いながら連動して動く |
股関節と骨盤は常に連携を取りながら、私たちの体のバランスを保ち、効率的な動きを生み出しているのです。
股関節と骨盤の可動域
股関節は、人間の体の中でも可動域が広い関節の一つですが、骨盤自体の可動域はそこまで広くありません。
骨盤は、主に股関節や腰の骨(腰椎)と連動してわずかに動くことで、体全体のスムーズな動作をサポートしています。
股関節の正常可動域は、以下の通りです。
項目 | 可動域(角度) |
屈曲(太ももを前に上げる) | 125° |
伸展(脚をまっすぐ後ろに引く) | 15° |
外転(脚を真横に開く) | 45° |
内転(脚を閉じて内側に寄せる) | 20° |
外旋(股関節を外向きにねじる) | 45° |
内旋(股関節を内向きにねじる) | 45° |
股関節の可動域が狭くなると、階段を上るときに股関節や脚の付け根(鼠径部)に痛みが出たり、深くしゃがみこめなくなって和式トイレの使用や靴下を履く動作が困難になったりします。
以下の記事では、上記のような股関節の痛みの原因や対処法について詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。
股関節と骨盤の動きに関する筋肉や靭帯について
私たちの体をスムーズに動かし、しっかりと安定させるためには骨格だけでなく、筋肉や靭帯の働きが欠かせません。
この章では、以下の3つのポイントについてご紹介します。
なぜ股関節や骨盤に痛みが生じるのか、その原因を理解するうえでも役立つでしょう。
股関節と骨盤の構成
股関節は、骨盤の受け皿となる部分(寛骨臼)に太ももの骨の先端(大腿骨頭)がはまり込む形をした体の中でも、とくに大きな球状の関節です。
股関節と骨盤の主な骨格要素は、以下の通りです。
区分 | 主要な骨・部位 |
股関節 | 骨盤側の「寛骨臼」と太ももの骨の丸い先端「大腿骨骨頭」から構成される |
骨盤 | 左右一対の「寛骨」、中央の「仙骨」、先端の「尾骨」で成り立つ |
骨盤の連結部 | 左右の寛骨は前側で「恥骨結合」という軟骨でつながり、後ろ側では仙骨との間に「仙腸関節」を形成して背骨(体幹)と連結している |
骨盤は複数の骨が組み合わさって輪のような頑丈な構造を作り、体幹と両脚を安定してつなぐ土台となっています。
骨盤と股関節が一体となって体幹と下肢を支え、立つ・歩く・走るなど様々な動作で体重や衝撃を吸収する役割を担っています。
股関節と骨盤に付着している筋肉
股関節と骨盤の周りには数多くの筋肉が付着しており、これらの筋肉が互いに協調し合って働くことで、日常のあらゆる動きやスポーツにおける複雑な動作が可能になっています。
股関節と骨盤周りの主要な筋肉と役割は、以下の通りです。
主要な筋肉 | 主な役割 |
腸腰筋 | ・股関節を曲げる働き ・太ももを前に持ち上げたり、上半身を前に倒したりする動作で重要 |
大腿筋膜張筋 | ・股関節を外に開く働き ・脚を前に振り出す動きを助け、脚の向きを安定させる役割を持つ |
中殿筋 | ・股関節を外に開く働き ・片足で立ったときや歩行中に骨盤が左右にグラグラしないように安定させる役割を持つ |
大殿筋 | ・股関節を後ろに伸ばす働き ・太ももを外にねじる動きを助ける |
上記以外にも、太ももの前側にある「大腿四頭筋」、太ももの後ろ側にある「ハムストリングス」、内ももの「内転筋群」なども股関節の動きを助けたり、膝の動きと連動したりしています。
股関節と骨盤の靭帯
股関節と骨盤は筋肉だけで支えられているのではなく、複数の強靭な「靭帯」によって骨同士が強固に連結され、補強されています。
股関節と骨盤を支える主な靭帯と役割は、以下の通りです。
主要な靭帯 | 主な役割 |
関節唇 | 大腿骨頭を吸盤のように包み込み安定させる役割を持つ |
関節包 | 関節を保護し、関節液を保持するとともに靭帯と一体となって関節を補強する |
腸骨大腿靭帯・恥骨大腿靭帯 | 股関節の前面を覆い股関節を支える |
坐骨大腿靭帯 | 股関節の後面を覆い股関節を支える |
これらの靭帯が筋肉と精巧に連携することで、股関節ならではの大きな可動域と高い安定性の機能を享受できているのです。
股関節や骨盤の痛みに考えられる疾患
股関節や骨盤の痛みの原因となる代表的な病気には「変形性股関節症」「大腿骨頭壊死症」「関節リウマチ」などがあります。
股関節と骨盤の痛みを引き起こす主な病気の症状は、以下の通りです。
疾患名 | 主な症状 |
変形性股関節症 | 脚の付け根(股関節)の痛み、関節の動く範囲が狭くなる |
大腿骨頭壊死症 | 股関節の痛み、関節が動かしにくくなる |
関節リウマチ | 股関節(足の付け根やお尻の部分)の痛みや腫れ |
上記の疾患は、それぞれ症状の現れ方や進行の仕方が異なりますが、いずれも早期に適切な診断を受け、治療を開始することが症状の悪化を防ぎ、生活の質を保つために重要です。
股関節と骨盤の関係性についてよくある質問
ここでは、股関節と骨盤の関係性に関するよくあるご質問とその回答をまとめました。
日々の体のケアや、痛みの原因を考えるうえでの参考にしていただければ幸いです。
股関節が骨盤の歪みで痛くなるのはなぜ?
骨盤の歪みによって股関節に痛みが出るのは、股関節に余分な負担がかかっているからです。
左右で骨盤の高さが違ったり前や後ろに傾きすぎたりすると、左右の股関節にかかる体重のバランスが崩れたり、股関節がスムーズに動ける範囲が制限されたりします。
このような状態が長く続くと、股関節の周りの筋肉が疲労して硬くなったり、関節そのものに炎症が起きたりして、痛みが生じるのです。
股関節が痛い時やってはいけないことは?
股関節に痛みがあるときは、痛みを悪化させたり、回復を遅らせたりするような無理な動作は避けるべきです。
股関節痛のときにやってはいけないこと
- 痛みを我慢して無理に動かす、運動を続ける
- 重い物を持ち上げる、運ぶといった動作
- ジャンプやランニング、急な方向転換を伴う激しいスポーツ
- 深くしゃがみ込む、あぐらをかくなど、股関節に負担のかかる姿勢
大切なのは「痛みが強いときは無理せず安静にする」ことと「自己判断せずに早めに専門医を受診する」ことです。
痛みの原因を正確に診断してもらい、適切な治療や日常生活での注意点について指導を受けることが、早期回復への一番の近道です。
股関節と骨盤の関係性まとめ|痛みを感じたら医療期間を受診しよう
股関節と骨盤は、二人三脚のように連携し合い、私たちの動作を支えています。
そのため、骨盤の歪みが股関節への負担になり、痛みが生じたり可動域が制限されることがあります。
股関節や骨盤の痛みや違和感が続く場合には、決して自己判断で放置せず、医療機関を受診し、医師による正確な診断を受けることが重要です。
原因を特定し、ご自身の状態に合った適切な治療やアドバイスを受けることが、つらい症状からの解放と、健やかな体を取り戻すための一歩となります。
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「股関節の痛みが長引いている」「現在の治療では期待する効果が得られていない」という方は、先端医療である再生医療をぜひご検討ください。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師