大腿骨頭壊死を手術しない治療法!放置するリスクや人工関節を避けるために重要なことを解説
公開日: 2020.06.08更新日: 2025.04.30
大腿骨頭壊死と診断されると「必ず手術が必要」と思われがちですが、近年の医療進歩により手術を避ける選択肢も広がっています。
本記事では、従来の保存療法から最新の再生医療まで、手術をせずに治療する方法を解説します。
- 保存療法と再生医療による手術しない治療法の違い
- 大腿骨頭壊死を放置した場合のリスク
- 早期発見・早期治療の重要性と日常生活での注意点
大腿骨頭壊死と診断された方や、治療には手術が必要と言われた方はぜひ参考にしてください。
目次
大腿骨頭壊死を手術しない治療法
大腿骨頭壊死症は、太ももの骨(大腿骨)の球状の頭部に血液の供給が途絶え、骨組織が死んでしまう病気です。
従来は症状が進行すると手術が必要と考えられてきましたが、近年では手術をせずに治療する選択肢も広がっています。
本章では、大腿骨頭壊死に対する治療法について、従来から行われている保存療法と、近年注目を集める再生医療の二つを中心に解説します。
手術を避けたい方や、まだ初期段階にある患者さんは、ぜひ参考にしてください。
従来の治療法「保存療法」
大腿骨頭壊死に対する非手術療法として長年実施されてきたのが保存療法です。
この治療法は主に症状緩和と日常生活の維持を目的としています。
保存療法の主なポイント
- 患部の安静
- 杖の使用
- 体重管理
- 負担軽減
- 鎮痛剤投与
- リハビリ
保存療法では、股関節への負担を減らすために日常生活での工夫が重要です。
痛みに対しては、消炎鎮痛剤などの薬物療法で症状を和らげることが中心となります。
しかし、保存療法は「対症療法」であり、壊死した骨を根本的に改善させる治療法ではありません。
そのため、保存療法で経過観察中に股関節の変形が進行したり痛みが増強した場合には、骨切り術や人工股関節置換術などの手術的治療が検討されることになります。
根本的な改善が期待できる「再生医療」
近年、大腿骨頭壊死に対して骨組織の再生を促す「再生医療」が注目を集めています。
大腿骨頭壊死の場合、血流が途絶えて死んでしまった骨部分に再び血液の流れを取り戻し、新しい骨を形成することで痛みや骨の崩壊防止が期待できます。
再生医療は、患者さま自身の細胞や成長因子を利用して損傷した組織の再生を促す最先端治療法です。
患者さまから採取した細胞のみを用いるため、アレルギーや拒絶反応などの副作用リスクが少ない点がメリットです。
大腿骨頭壊死を手術せずに放置するリスク
腿骨頭壊死症を治療せずに放置すると以下のようなリスクがあります。
初期段階では無症状のこともあるため、「様子を見よう」と放置してしまう患者さまも少なくありません。
早期発見・早期治療の重要性を理解し、適切な医療機関での相談を検討するための参考にしてください。
歩行困難になるほど痛みが強くなる
大腿骨頭壊死を放置すると、壊死した骨が徐々に潰れていき、歩行困難なほどの激しい痛みを引き起こします。
大腿骨頭壊死を放置した場合の痛みの特徴
- 最初は無症状でも、潰れが進むほど痛みが強くなる
- 痛みは鋭く激しくなり、安静時でも持続するようになる
- 階段の上り下りや椅子からの立ち上がりなど日常動作が困難になる
- 痛みをかばうことで足を引きずり、正常な歩行ができなくなる
症状が悪化すると、歩行時に患側の脚に体重をかけられなくなるため、身体を支えるのも困難になり、杖が手放せなくなることもあります。
変形性股関節症につながる可能性
大腿骨頭壊死を放置すると、股関節全体の変形へと進行し、より深刻な病態を引き起こす恐れがあります。
大腿骨頭壊死が変形性股関節症につながるリスク
- 壊死した骨頭が潰れると関節軟骨がすり減り、二次的に変形性股関節症を発症する可能性がある
- 関節面の変形と寛骨臼(骨盤側の受け皿)の破壊により股関節の可動域が著しく制限される
- 骨同士が直接擦れ合うため慢性的な激痛と強いこわばりが生じ、痛み止めが効きにくくなる
- 関節が変形・崩壊すると人工関節置換術が検討される
大腿骨頭壊死は初期段階で適切な治療を行えば、上記の重篤な状態への進行を防げる可能性があります。
症状が軽いからといって放置せず、専門医に相談することが大切です。
大腿骨頭壊死で手術・人工関節を避けるためには早期発見が重要
大腿骨頭壊死は、早期発見と適切な治療開始が何よりも重要です。
壊死範囲が広がると骨頭の圧潰(つぶれ)が進行し、人工関節置換術などの大掛かりな手術が必要になるケースがあります。
まずは以下のような初期症状がないか確認してみましょう。
- <歩行時に股関節や脚の付け根に痛みや違和感がある
- 階段の上り下りで股関節が痛む、動作がつらい
- 膝や腰、お尻に痛みが出ることがある
- 休むと痛みが和らぐが、動くと再び痛む
上記のような症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
MRIなどの精密検査で初期段階の壊死を発見できれば、治療の選択肢も広がります。
大腿骨頭壊死に関するよくある質問
大腿骨頭壊死は、「手術が必要なのか」「もう治らないのか」「どんな生活を送ればいいのか」といった不安を抱える方は少なくありません。
本章では、大腿骨頭壊死に関するよくある質問にお答えし、現在の医学で考えられる治療選択肢や生活上の注意点について解説します。
大腿骨頭壊死は手術をしなくても治せる?
結論、現時点で従来の保存療法だけで大腿骨頭壊死を根治することは難しいのが実情です。
保存療法は主に痛み止めの薬やリハビリなどによって症状を和らげる対症療法が中心であり、骨の壊死や変形を改善させる効果はありません。
しかし、近年の治療では、手術をせずに損傷した骨や関節を修復する再生医療が注目されています。
従来は「痛み止めでしのぎながら潰れてきたら人工関節にする」しかなかった大腿骨頭壊死ですが、再生医療の進歩によって、自分の骨・関節を残したまま治療できる新たな選択肢が生まれているのです。
従来の治療では、手術が必要だった大腿骨頭壊死ですが、再生医療の進歩によって手術せずに治療できる選択肢が生まれているのです。
骨頭壊死になったらやってはいけないことは?
大腿骨頭壊死と診断されたら、股関節に負担をかける動作はできるだけ避ける必要があります。
骨頭壊死になったら避けるべき行動
- 激しい運動や階段の上り下り
- 重い物を持つ
- 長時間立ちっぱなしでいる
- 深くしゃがみ込む姿勢や前かがみの姿勢
- 過度の体重増加
- アルコールの多量摂取と喫煙
何より重要なのは、股関節に継続的に強い負荷がかかることを避けることです。
壊死のある骨頭に過度な荷重がかかると、潰れが進行してしまう恐れがあるからです。
必要に応じて松葉杖などを使いながら負荷を軽減し、適切なリハビリや生活習慣の改善によって股関節への負担を減らすことが、症状悪化の防止につながります。
【まとめ】大腿骨頭壊死を手術しない治療法なら再生医療を検討しよう
大腿骨頭壊死症は放置すると骨の壊死・崩壊が進行し、激しい痛みや歩行障害、最終的には変形性股関節症へと進展する恐れがあります。
従来の保存療法は痛みを和らげる対症療法が中心で、根本的な治癒は期待できませんでした。
しかし、近年発展している再生医療は、患者さま自身の幹細胞を活用して壊死した骨の修復を促す治療法として注目されています。
大腿骨頭壊死と診断された方は、股関節に負担をかける動作を避け、適切な治療を早期に開始することが重要です。
少しでも症状があれば早めに専門医を受診し、MRIなどの精密検査で状態を確認しましょう。
再生医療という新たな選択肢を含め、ご自身に合った治療法を医師と相談しながら決めていくことをおすすめします。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師
略歴
2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業
2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医
2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科
2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科
2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科
2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長
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