肝臓の病気で女性特有の症状は?自己免疫性肝炎の原因や治療法について医師が解説
公開日: 2020.05.10更新日: 2025.06.02
肝臓の病気は初期には自覚症状が現れにくいものが多いですが、中には女性に多く見られるタイプも存在します。
「自己免疫性肝炎」はその代表的な疾患の一つで、早期発見と適切な対応が大切です。
本記事では、女性に多い「自己免疫性肝炎」の症状やセルフチェックリストについて解説します。
また、進行するとどのようなサインが現れるのか、そして女性が発症しやすいとされる原因や主な治療法について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
- 女性に多い自己免疫性肝炎の具体的な症状
- 自己免疫性肝炎が女性に発症しやすいとされる背景
- 自己免疫性肝炎の主な治療法
- 肝臓の不調に気づくためのセルフチェック項目
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目次
肝臓の病気で女性特有の症状とは|自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎は、自己免疫の異常により本来守るべき肝臓を免疫システムが誤って攻撃してしまうことで慢性的な肝炎を起こす疾患です。
男性に比べ女性に多く発症することが知られており、50〜60代以降の女性に好発するのが特徴です。
本章では、自己免疫性肝炎の症状の現れ方について解説していきます。
「自分は大丈夫かな?」と少しでも気になる方は、ぜひ読み進めてみてください。
初期段階では自覚症状がほぼない
自己免疫性肝炎の初期段階では、自覚症状がほとんど現れずに静かに進行する病気です。
初期段階の特徴
- 初期段階は自覚できる症状が乏しい
- 健康診断の血液検査で発見が多い
- 肝機能異常(AST・ ALT)が手がかり
初期段階の自覚症状が乏しいため、定期的に健康診断や肝機能検査を受けることが重要です。
健康診断で肝障害を指摘された場合は放置せず、専門医を受診することが勧められており、適切な診断と治療により肝硬変や肝不全への進行を防ぐことができます。
また、以下の記事では肝機能の数値が高いときの症状について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
悪化すると腹部の張りや下肢のむくみが起きる
自己免疫性肝炎は初期に症状が出にくいため、何らかの自覚症状が現れたときには、病状がある程度進行してしまっていることも少なくありません。
病状が進み肝硬変に至ると、腹水のためお腹が張る(腹部膨満)症状や、血液中の水分が滞留して足にむくみが生じるといった症状が現れます。
自覚症状が出る頃には肝臓の障害がかなり進行していることが多いため、早期の段階で疾患をコントロールすることが重要です。
以下の記事では肝硬変の治療法について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
女性必見!肝臓の病気の症状セルフチェックリスト
肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、不調があってもなかなか自覚症状として現れにくいことがあります。
しかし、日々のちょっとした体調の変化が、実は肝臓不調のサインである可能性も否定できません。
ここでは、ご自身で「もしかして肝臓の調子が悪いのかな?」と感じたときに、チェックしていただきたいポイントをご紹介します。
チェック項目 | 具体的な症状・観察ポイント |
全身の倦怠感 |
・原因不明のだるさ、疲れやすさ |
黄疸(おうだん) |
・皮膚や白目が黄色っぽくなる |
皮膚のかゆみ |
・はっきりした原因がないのにかゆみが続く |
吐き気・食欲不振 |
・吐き気や食欲の低下が続く |
むくみ |
・下肢にむくみが出る |
尿の色の変化 |
・尿の色が普段より濃く、茶色っぽく変化する(褐色尿) |
上記は、あくまで目安ではありますが、肝臓疾患の早期発見の手がかりになることもありますので、ぜひ参考にしてみてください。
肝臓の病気(自己免疫性肝炎)を女性が発症しやすい原因
自己免疫性肝炎がなぜ女性に多いのか、そのはっきりとした理由はまだわかっていません。
しかし、男性に比べて女性の割合が多く、特に中年以降に発症しやすいことから、女性ホルモンや遺伝的な背景が発症に関与していると推測されています。
そのため、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が免疫の働きに何らかの影響を与えている可能性が指摘されています。
女性に多い肝臓の病気(自己免疫性肝炎)に対する治療法
自己免疫性肝炎の治療は、肝臓への攻撃を抑えるために免疫の働きを調整する「副腎皮質ステロイド」というお薬の内服が基本となります。
主な治療法は以下の通りです。
治療の種類 | 主な薬剤・方法 |
基本治療 |
副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン等)内服 |
追加・併用治療 |
免疫抑制剤(アザチオプリン等)内服 |
進行した場合 |
肝移植 |
副腎皮質ステロイドの効果のあらわれ方、副作用に応じて他の免疫抑制剤を併用することもあります。
また、肝硬変に進行した場合には、肝移植や再生医療も選択肢として挙げられます。
近年では、患者さまご自身の細胞を利用して、傷んだ肝臓組織の再生を促し、肝機能の回復を目指す「再生医療」の研究開発が進められています。
従来の治療では治らないとされている肝硬変の改善が期待できる選択肢として注目されている治療法なので、再生医療について知識を深めておきましょう。
いずれにしても早期に適切な診断を受け、医師とよく相談しながら治療計画を立て、根気強く治療を続けることが大切です。
以下の記事では、肝硬変の治療として注目されている再生医療について詳しく解説しています。
肝臓の病気で女性特有の症状についてよくある質問
ここでは、肝臓の病気で女性特有の症状についてよくある質問とその回答をまとめました。
「もしかして肝臓疾患かも?」と感じるサインや、日頃から気をつけておきたいことなど、ぜひ参考にしてください。
肝臓がやばいサインは?
肝臓からのSOSサインには、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、原因不明のだるさ・むくみ・皮膚のかゆみなどがあります。
このような症状に気づいたら、自己判断せずに早めに医療機関を受診することが大切です。
女性によくある肝臓病の症状は?
女性はホルモンの影響で肝機能が変動しやすく、妊娠中・更年期には肝機能障害のリスクが高まる場合があります。
例えば、はっきりとした原因がないのに皮膚にかゆみが続く、夕方になると足がむくむ、あるいは月経不順といった症状が肝機能の低下と関連している場合があります。
いつもと違う体調の変化には注意し、異変を感じる場合や違和感が強い場合は医療機関を受診しましょう。
若い女性でも肝臓病になる?
若い女性でも肝臓病になる可能性があります。
例えば、「自己免疫性肝炎」は中年以降の女性に多いとされていますが、若い世代の女性やまれに小児でも発症することが報告されています。
「B型肝炎ウイルス」は、近年、性的接触による感染が若年層で増加していることが指摘されており、急性肝炎や慢性肝炎の原因となります。
年齢が若いからといって油断せず、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。
自己免疫肝炎の注意点は?
自己免疫性肝炎は女性に多い病気ですが、初期症状に気づきにくい点に注意が必要です。
気づかないうちに病気が進行し、倦怠感や黄疸などの症状が現れたときには、すでに肝臓の炎症が進んでしまっているケースも少なくありません。
治療を受けずに放置してしまうと、慢性的な炎症によって肝臓が硬くなる「肝硬変」や、肝臓の機能が著しく低下する「肝不全」になる可能性があります。
これらかの肝臓疾患は命に関わる深刻な状態に進行してしまうケースもあるため注意が必要です。
そのため、定期的な健康診断や血液検査を受け、肝機能の異常を早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。
肝臓の病気(自己免疫性肝炎)が不安な女性は早めに医療機関を受診しよう
女性に多く見られる肝臓の病気である「自己免疫性肝炎」は、症状が初期段階では自覚しにくく、進行するとお腹の張りや足のむくみといったサインが現れます。
肝臓は私たちの体にとって重要な臓器ですが「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、不調が表面化しにくいという側面があります。
本記事のセルフチェックリストで何か気になる点があったり、あるいは健康診断などで肝機能の異常を指摘されたりした場合は注意が必要です。
決して「大丈夫だろう」と自己判断せず、できるだけ早く専門の医療機関を受診しましょう。。
早期に発見し、適切な治療を開始することが病気の進行を食い止め、健やかな毎日を守るための一歩となります。
不安なことは抱え込まず専門医に相談し、一緒に対処法を見つけていきましょう。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師