肝臓がんの原因と飲酒の関係性|飲酒したアルコール量と発病リスクの関係性について解説
公開日: 2020.01.26更新日: 2025.04.30
「お酒は肝臓がんの原因になる?」
「お酒と肝臓がんとの関係が気になる」
日常的にお酒を楽しんでいる方で「このまま飲み続けても大丈夫?」と不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、肝臓がんの発病リスクと飲酒の関係性や、肝臓がんの原因や予防法について解説します。
肝臓は病気になってもなかなか症状が現れず、気付きにくい臓器です。
そのため、治療が遅れて肝臓がんになってしまう可能性があります。
また、お酒によってダメージを負った肝臓の修復・再生が見込める再生医療についても紹介しているので、参考にしてください。
目次
肝臓がんの原因と飲酒の関係性とは
肝臓がんの原因と飲酒の関係性について解説します。
過度な飲酒は、肝臓がんの原因の一つです。
肝臓がんの発症リスクを高めるお酒の量や、適切な飲酒量を具体的に解説するので、飲酒する際は参考にしてください。
発病リスクを高めるアルコール量
肝臓がんの発病リスクを高める1日あたりの純アルコール摂取量は、男性が69g以上、女性が23g以上※です。
※出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「飲酒と肝がんリスク」
純アルコール量は、お酒を飲んだ際に体内に取り込まれるアルコールの量です。
お酒の種類や度数が異なると、同じ量を飲んでも摂取するアルコール量は異なります。
発病リスクを高める1日あたりのお酒の量を、男女に分けて以下にまとめました。
お酒の種類(アルコール度数) | 男性(純アルコール量69g程度) | 女性(純アルコール量23g程度) |
---|---|---|
日本酒(15%) | 3合(540ml)/1日 | 1合(180ml)/1日 |
ビール(5%) | ロング缶3本(1,500ml)/1日 | ロング缶1本(500ml)/1日 |
チューハイ(7%) | 缶3本(1,050ml)/1日 | 缶1本(350ml)/1日 |
ワイン(12%) | グラス6杯弱(600ml)/1日 | グラス2杯弱(200ml)/1日 |
たとえば、1日に3合以上の日本酒を長い期間に渡って飲んでいる男性は、肝臓がんの発病リスクが高くなると考えられます。
上記の表以上にお酒を飲んでいる方は肝臓にダメージを負っている可能性を疑い、飲酒の習慣を見直して量を減らしたり、休肝日を設けたりしましょう。
推奨される1日あたりの飲酒量
厚生労働省の「節度ある適度な飲酒」として推奨される1日あたりの飲酒量は、1日平均純アルコールで約20g程度※です。
※出典:厚生労働省「アルコール」
純アルコールで約20gの飲酒量は、以下の通りです。
- ビール:中瓶1本500ml
- 日本酒:1合180ml
- ウイスキー:ダブル60ml
- ワイン:2杯弱240ml
肝臓がんが心配な方や、脂肪肝の指摘を受けた方は、日頃の飲酒量を見直しましょう。
また、1日あたりの純アルコール量が男性で10~19g、女性では9gまでの方が最も死亡率が低い※という研究結果もあります。
※出典:PubMed「アルコールと全死因死亡率のメタアナリシス:NHMRCの推奨事項の検証」
健康を意識したい方や女性、少量の飲酒で顔が赤くなる方、65歳以上の方はさらに量を抑えましょう。
肝臓がんの主な原因は?お酒以外にも注意
肝臓がんを引き起こす主な原因は、アルコールだけでなく肥満や、ウイルス性の肝機能障害にも注意しましょう。
それぞれの症状の概要や、肝臓がんに移行するリスクについて解説します。
アルコール性肝炎
アルコール性肝炎とは、長期に渡る多量のアルコール摂取が原因で、肝臓の細胞が傷つき炎症を起こす疾患です。
肝臓はアルコールや有害物質、薬物などを解毒・分解する働きがあるため、アルコールによるダメージを受けやすい臓器です。
アルコール性肝炎の初期段階では、ほとんど自覚症状がないため、肝臓がんへ進行する可能性もあります。
アルコール性肝炎の初期症状は、以下の通りです。
- 疲れやすい
- 食欲不振
- 吐き気
- 微熱
お酒を飲む期間が長いほどアルコール性肝炎のリスクは高くなりますが、飲酒を控えると改善する見込みがあります。
飲酒の習慣があり、初期症状に心当たりのある方は、飲酒の量を見直して医療機関を受診しましょう。
非アルコール性肝炎
非アルコール性肝炎とは、お酒をほとんど飲まない人でも肝臓に脂肪が溜まり、炎症が起こる疾患です。
過食や運動不足、肥満、糖尿病などが非アルコール性肝炎の原因で、症状が進行すると肝臓がんになることがあります。
非アルコール性肝疾患の進行度は、以下の通りです。
- 1.正常な肝臓
- 2.非アルコール性脂肪肝:肝臓に脂肪が溜まった状態
- 3.非アルコール性脂肪肝炎:肝細胞が損傷して炎症を起こしている状態
- 4.肝硬変:慢性的な炎症によって肝臓の組織が硬化する状態
- 5.肝臓がん:肝臓にがん化した細胞がみられる状態
非アルコール性脂肪肝炎は、脂肪肝を経て肝臓がんに進行する場合があります。
健康診断で肥満や脂肪肝を指摘された方は、食生活や運動の習慣を見直して医療機関を受診しましょう。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎とは、肝臓がウイルスに感染し、炎症する疾患です。
主なウイルス性肝炎の特徴は、以下の通りです。
ウイルスの種類 | 主な原因 | 特徴 |
---|---|---|
A型肝炎ウイルス | 貝類や海外旅行での食事 |
|
B型肝炎ウイルス | 輸血・出産・性交渉など |
|
C型肝炎ウイルス | 輸血・血液製剤・刺青など | 慢性的な肝炎に移行するケースが多く、肝硬変や肝臓がんに進展する原因となる |
E型肝炎ウイルス | 豚や猪、鹿などの生肉を食べる | 慢性化するケースはほとんどなく、大半が自然に治癒する |
上記のウイルス性肝炎の中では、B型肝炎・C型肝炎ウイルスは肝臓がんに移行する可能性が高いです。
ウイルスが長い期間、体内に留まり肝臓の炎症による損傷と修復が繰り返されると、肝臓の遺伝子に異常が生じて、がん細胞が発生するケースがみられます。
B型肝炎は母子感染防止策、C型肝炎は輸血や血液製剤による感染対策が取られていて、日常生活で感染する危険は少なくなってきています。
しかし、B型およびC型ウイルス感染の対策以前に感染した方が慢性肝炎になっている場合、自覚症状はほとんどみられません。
肝炎ウイルスに感染しているかどうかは主に血液検査でわかるので、心配な方は医療機関で肝炎検査を受けましょう。
肝臓がんを予防するには?
お酒や食事の習慣による肝臓がんを予防するには、肝臓がんの原因となる病気を早期に発見し、生活習慣を見直しながら適切な治療を受けることが重要です。
以下では、肝臓がんの予防法についてそれぞれ詳しく紹介します。
生活習慣の改善
肝臓がんの予防には、生活習慣の改善が不可欠です。
肝臓がんの原因であるアルコール性肝炎や非アルコール性肝炎は、お酒や食事の習慣と深い関わりがあります。
見直したい生活習慣は、以下の通りです。
- アルコールの制限や禁酒
- 禁煙
- 食生活の改善
- 運動不足の解消
アルコールの制限や禁酒、禁煙は肝臓がんの予防に有効です。
また、食事では糖質と脂質を控え、たんぱく質やビタミンを積極的に摂りましょう。
以下の記事では、肝臓を回復させる食事や運動について解説しているので、合わせて知りたい方はご覧ください。
定期的に検診・検査を受ける
肝臓がんを予防するために、定期的な検査や検診を受けましょう。
肝臓がんに限らず肝臓の病気は、初期段階で自覚できる症状がほとんどないため、検診や検査で発覚する場合が多くみられます。
肝臓がんの主な検査は、以下の通りです。
- 血液検査:がんによって生成される物質を測定する
- 超音波検査:超音波が出る器具を身体に当て、がんの大きさや肝臓の状態を調べる
- 画像検査:CTやMRIでがんの広がりを調べる
肝硬変やウイルスによって慢性的な肝炎になっている方は、3〜6カ月ごとに定期的な検査を受けましょう。
肝臓がんにつながる肝炎や脂肪肝の治療に再生医療の選択肢
脂肪肝や肝炎などの肝臓がんにつながる疾患は、手遅れになる前に治療しましょう。
肝臓の疾患は、自覚症状が少ないために病気に気が付くのが難しいので、お酒を飲む量が多い方や脂肪肝を指摘された方は、医療機関を受診しましょう。
また、肝臓の疾患には再生医療による治療も選択肢の一つです。
再生医療とは、自身の細胞を用いて損傷した組織の修復を目指す治療法で、お酒の飲みすぎによって損傷した肝臓を改善できる可能性があります。
肝臓の状態に不安を抱えている方は、当院(リペアセルクリニック)へご相談ください。
肝臓疾患のお悩みに対する新しい治療法があります。
【まとめ】多量飲酒は肝臓がんの原因に!生活習慣を改善して予防しよう
多量の飲酒習慣は、肝臓がんの原因の一つです。
例えば、男性はビール1,500ml以上/1日、女性はビール500ml以上/1日の飲酒をしている方は、肝臓がんのリスクが高くなる可能性があります。
お酒の量を控え、食事や運動の習慣を見直して肝臓がんの進行を予防しましょう。
また、肝臓がんにならないためには定期的な健康状態のチェックが重要です。
肝臓の病気は自覚症状が現れにくいので、検診の結果を確認してください。
アルコールの制限や食事、運動以外の肝臓疾患の治療として、再生医療による治療に注目が集まっています。
急なお酒の制限や禁酒は難しいとお考えの方、生活習慣の改善だけでは心配な方は、再生医療も選択肢の一つです。
まずは、お気軽に当院(リペアセルクリニック)へご相談ください。

監修者
渡久地 政尚
Masanao Toguchi
医師
略歴
1991年3月琉球大学 医学部 卒業
1991年4月医師免許取得
1992年沖縄協同病院 研修医
2000年癌研究会附属病院 消化器外科 勤務
2008年沖縄協同病院 内科 勤務
2012年老健施設 かりゆしの里 勤務
2013年6月医療法人美喜有会 ふたこクリニック 院長
2014年9月医療法人美喜有会 こまがわホームクリニック 院長
2017年8月医療法人美喜有会 訪問診療部 医局長
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 院長