腕(肘から下)が痛む原因は?スポーツ・日常生活における疾患と対処法を紹介
公開日: 2019.04.13更新日: 2025.02.04
肘から下(前腕)の痛みが出る場合は、神経が圧迫されている・筋肉の使い過ぎ・皮膚疾患などさまざまな要因が考えられます。
そこで本記事では、肘から下に出る腕の痛みの主な原因を疾患別で紹介します。対処法もあわせて解説しているので、肘から下の腕の痛みにお悩みの方は最後までご覧ください。
- 腕における肘から下の痛みの原因
- 腕における肘から下が痛いときの対処法
目次
腕(肘から下)が痛む主な原因|スポーツによる疾患
腕(肘から下)が痛む代表的な原因はスポーツによる疾患です。スポーツ特有の繰り返し動作が知らず知らずの間に部位を傷つけています。
この項目では、スポーツによって腕の痛みを引き起こす主な原因(疾患)について紹介します。
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)は、肘の内側にある骨のとがった部分(内側上顆)に付着する筋肉が炎症する疾患です。
この筋肉は前腕を通って手首や指まで伸びているため、前腕から手にかけての痛みを引き起こします。名前の通り、ゴルフのスイングが原因で発症するケースが多い一方、他のスポーツの繰り返し動作でも発症しうる疾患です。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、上記で紹介した内側上顆炎と類似した疾患で、肘の外側にある骨のとがった部分に付着する筋肉の炎症で引き起こされます。
テニスのバックハンドストロークといった肘を伸ばす繰り返しの動作が原因とされていますが、テニス以外のスポーツや日常生活でも発症します。
野球肘
野球肘は、投球における繰り返し動作によって引き起こされる疾患です。肘の内側・外側の靭帯や骨に負担がかかることで発症します。
主な症状は、肘の内側や外側の痛み・可動域の制限・投球時のパフォーマンス低下です。また、痛みの部位によって、内側型・外側型・後方型に分類されます。
成長期の子どもに多く見られ、適切な処置をしないと将来的に大きな問題につながる可能性があります。
変形性肘関節症
変形性肘関節症は、とくに肘から下の腕部分に痛みや違和感を感じる慢性的な疾患です。加齢や長年の疲労による肘関節軟骨の摩耗や変性が主な原因となります。
年齢と共に発症リスクは高まりますが、繰り返しの動作を伴う職業の方やスポーツ選手などの若い方でも発症します。
主な症状は、肘の痛み・関節の腫れや硬直・可動域の制限です。とくに朝起きたときや長時間の安静後に症状が強くなることがあります。また、天候の変化で症状が悪化することもあります。
骨折
腕または肘から下に対して強い衝撃を受けた場合に考えられるのが骨折です。
肘から下には橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の前腕骨がありますが、どちらかが損傷していると肘から下に痛みが生じます。
転倒や衝突といったさまざまな不意の事故で骨折してしまう恐れがあり、誰しもが起こりうる疾患です。
腕(肘から下)が痛む原因|日常生活で起こりうる疾患
腕(肘から下)の痛みは日常生活においても発症します。
スポーツと同様に繰り返しの動作により引き起こされやすく、多くの方の悩みの種となっています。
そこでこの項目では、日常生活で起こりうる疾患について詳細に紹介します。
腱鞘炎
腱鞘炎は、手や指を頻繁に使う人によく見られる症状です。
私たちの手や指の動きは、前腕の筋肉によってコントロールされています。この筋肉が過度に使われると、筋肉と骨をつなぐ腱や腱を覆う腱鞘に炎症が起こります。その結果、前腕から手にかけての痛みやしびれが生じます。
たとえば、長時間のキーボード入力・スマートフォンの使用・楽器の演奏などは腱鞘炎のリスクを高めます。家事や育児でも、同じ動作を繰り返すことで腱鞘炎を発症することがあります。
肘部管症候群
肘部管症候群は、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫されることで起こります。
主な原因は、肘を曲げた姿勢の長時間維持です。たとえば、デスクワークで肘をつく・運転中に肘掛けに肘をのせる・就寝時に肘を曲げた姿勢をとるなどの習慣が挙げられます。また、肘の怪我や関節炎などが要因となるケースもあります。
症状としては、肘の内側から小指側の前腕、手、指にかけてのしびれや痛み、握力の低下などがあります。肘を曲げた状態で長時間過ごした後に症状が強くなるのが特徴です。
肘内障
肘内障は、幼児に多く見られ「肘が抜けた」状態を指します。
主な原因は、腕を強く引っ張られたり、突然持ち上げられたりすることです。たとえば、子どもの手を引いて歩いているときに転びそうになり、急に腕を引っ張ってしまうような状況で頻繁に発生します。
主な症状は激しい痛みと腕を動かせなくなることで、子どもが突然泣き出したり、腕をだらんと下げたままにしていたりすると要注意です。
手根管症候群
手根管症候群は肘から下に痛みを発生させるだけでなく、しびれや運動障害を起こす疾患です。
手根管とは手首の屈筋側にある部位のことで、神経や筋肉の腱などを束ねて正しい動きに導く役割を持っています。この手根管は靭帯によって覆われていて、ほとんど伸び縮みができないバンドのような構造をしています。その狭い空間の中に、正中神経と9本の筋肉の腱が通っているので圧迫されやすい部位です。
前腕の屈筋群を繰り返し使うことによって引き起こされる疲労の蓄積が原因の場合もありますし、腫瘍が出来ているケースや骨折の後遺症として発生するケースもあります。しかし、多くの場合は特発性の手根管症候群で、原因の追求が難しい疾患です。
OKサインのような手の形がとりにくくなることが代表的な特徴です。したがって、細かい作業がしにくくなり日常生活に大きな影響を及ぼします。
頚椎ヘルニア
頚椎ヘルニアは、首にある椎間板が変形・突出し、脊柱の中を通っている脊髄や神経根を圧迫することで発症します。頚椎ヘルニアを引き起こす部位によっては肘から下に痛みを生じます。
頚椎ヘルニアには、急性的なものと亜急性(徐々に進行する)のものがありますが、多くは亜急性です。頚椎に微細な負担を長時間蓄積させ続け、少しずつ椎間板の変形を招くのです。
肘から下の痛みであることから見逃されがちな疾患ですが、頚椎から派出した神経が前腕から手指までつながっていることを理解しておきましょう。
頚椎症
頚椎症は頚椎ヘルニアと似たような発生機序で、背骨を構成している椎骨の変形によって前腕の神経を圧迫する病態です。
頚椎ヘルニアと同様に亜急性が多く、長時間にわたり同じ姿勢を取ることで筋肉の緊張を招いて少しずつ頚椎を変形させていきます。
日常生活の中で首に負担がかかる猫背やストレートネックなどの姿勢が定着していれば、若い世代でも十分に発症しえる疾患です。
頚肩腕症候群
頚肩腕症候群は、筋肉の緊張や血流の悪化によって痛みを引き起こす疾患です。
パソコンが普及し始めたころの、いわゆるキーパンチャーと呼ばれる人たちに続出した疾患でもあります。デスクワークが主流となりつつある現代でも同じリスクを抱えています。
首から前腕まで通過している神経は、さまざまな筋肉の間を縫うように通っています。その過程で、筋肉が緊張したり関節の悪い動かし方をしたりしていると、慢性的に神経を圧迫して痛みを伴うのです。
血管の圧迫による痛みにくわえ、しびれ・ふるえ・冷え・運動障害を引き起こすことが特徴です。また、手先が真っ白になるレイノー現象を引き起こすこともあります。
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は、腕神経叢(わんしんけいそう)と呼ばれる神経群の圧迫によって発症する疾患です。
胸郭出口症候群は首が長い方・なで肩の女性・やせ型の男性といった身体的特徴をもつ方の発症率が高い一方で、日常生活において座っている時間が長い方でも発症リスクが高まります。
また、腕を上げ続けることによって痛みやしびれが悪化する点が特徴で、筋肉の緊張や鎖骨の動きによって腕神経叢が圧迫され肘の下や指先に痛みを発生させることもあります。
そのため、腕を上にあげている時間が長い美容師・理容師の発症率も高い傾向にあります。
肘から下の腕が痛い時の対処法
腕(肘から下)の痛みは自分で対処するよりも病院を早期に受診する方が確実かつ効果的に対処できます。しかし、痛みに我慢できる程度であれば「仕事や子どもの世話などの都合で様子を見てから」とお考えの方も多いことでしょう。
そこで本項目では、腕(肘から下)が痛いときの対処法をまとめて紹介します。
ストレッチ
寝起きに痛みを感じる場合や、重だるさを感じる場合は、腕の筋肉が温まっていないことで痛みを感じている可能性があります。 そんな腕の痛みや、だるい時におすすめしたいのがストレッチです。
あくまで気持ち良いと感じられる程度のストレッチで十分です。痛みが酷くなるほど強く、あるいは繰り返して行う必要は全くありません。
- 片方の手をまっすぐ前に伸ばし、もう片方の手で指をつかむ
- 指をつかんだ手を自分のほうにゆっくりと引き寄せる
- 痛すぎない程度で引っ張るのをやめ、20秒キープ
たったこれだけで肘から下の腕の筋肉をほぐせます。
片方が終わったら反対側も同様に伸ばしてください。血行が促進され、筋肉が少しずつ温まり痛みの解消につながります。
繰り返しになりますが、痛みが酷い場合の無理なストレッチはNGです。強い痛みを感じた際には速やかに医療機関を受診しましょう。
テーピング
仕事や作業などでどうしても腕を動かさねばならない方にはテーピングが効果的です。
上手に活用できれば、痛みを軽減しつつ腕をスムーズに動かすことも可能です。
- 肘を曲げ、腕が床と平行になるようにします
- 親指の付け根から痛みのあるポイントに向けてテーピングを装着
また、ブレスレットをはめるようなテーピングもおすすめです。
あくまでも、テーピングは痛みを軽減する補助的な役割に過ぎません。ストレッチ同様、痛みが続くようであれば医療機関を受診しましょう。
背骨のゆがみを取る
頚椎ヘルニアや頚椎症などの神経症状はもちろん、前腕の筋肉疲労が原因で起きている痛みには背骨のゆがみを取ることが有効です。
根本となる背骨のゆがみが矯正されれば肩甲骨の動きも自然と改善され、前腕にかかる負担も大幅に軽減できます。
痛みのある部分だけを治療してもなかなか良くならない場合は、背骨といった根本的な部位のアプローチが必要と覚えておきましょう。
薬物療法を使う
あまりにも強い痛みの場合は、痛み止め(消炎鎮痛剤)やビタミン剤の服用といった薬物療法も選択肢のひとつです。
症状によってはすぐに効果を感じられないこともありますが、とにかく痛みを解消したい際に有効な治療法です。
肘を温める
筋肉の緊張やオーバーユースによって出ている痛みに対しては肘を温め、血流を促すことで痛みの緩和につながります。
ホッカイロをあてておくだけでも良いですし、お風呂でよく温まることも効果を発揮します。
また、時と場所を選ぶケアなので実施する環境には注意しましょう。たとえば、クーラーの風があたってしまうと痛みが悪化する可能性もあります。
専門医に相談する
- 強い痛みがある場合
- 動かすと痛い
- 痺れを感じる場合
- 発症の原因がわからない場合
筋肉の損傷・靭帯の損傷・神経症状なのか自分で判断できない場合は専門医に相談してください。ひとまず整形外科の受診を推奨します。筋肉の疲労蓄積が原因の場合は安静処置で完治するかもしれませんが、靭帯損傷や神経症状の場合は悪化してしまうことも考えられます。
また、痛みをかばいながら行動してしまうと、肩こりや腰痛といった二次的な疾患を発症してしまいます。
腕(肘から下)の痛みに悩む方からよくある質問
この項目では、腕(肘から下)の痛みに悩む方からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。これらの情報を参考に、適切な対処法を見つけてください。
肘から下が急に痛くなったらどうすれば良い?
肘から下の腕が急に痛くなった場合、まず考えられる原因と適切な対処法の把握が重要です。
激しい痛みや、腫れ・変形が見られる場合は骨折や脱臼の可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
軽度から中程度の痛みの場合は、以下の対処法を試してみましょう。
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外側からくる肘下の痛みの原因は?
外側からくる肘下の痛みで代表的な原因は上腕骨外側上顆炎(テニス肘)ですが、他にもさまざまな要因が考えられます。
これらの症状は、似たような痛みを引き起こすため自己診断が難しいです。
痛みが長引く場合や、日常生活に支障をきたす場合は整形外科医の診断を受けることをおすすめします
腕(肘から下)が痛い原因を特定し適切な対処を行おう
原因不明の痛みが急に発症したり、徐々に悪化している場合は整形外科やスポーツクリニックといった病院を早期に受診することが重要です。
疾患によっては、痛みのある局部を集中的に治療しても改善しないケースもあります。
当院でもメールやオンライン相談を受け付けているので、ご気軽にお問い合わせください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設