ジャンパー膝とオスグッド病の違いは?セルフチェックリストと再生医療による治療について解説
公開日: 2020.07.08更新日: 2025.04.30
膝の前面に痛みを感じると、「ジャンパー膝」か「オスグッド病」を疑うことがありますが、見た目や症状が似ているため、どちらなのか判断に迷うケースが少なくありません。
特にスポーツを頻繁に行う方にとっては、正確な判断と適切な対処が早期回復の鍵となります。
本記事では、これら2つの膝の障害について、発症部位や原因、症状、治療法の違いを詳しく解説します。
- ジャンパー膝とオスグッド病の発症部位と原因の違い
- 両疾患の症状の特徴と見分け方
- 自分の症状を確認できるセルフチェックリスト
- それぞれの疾患に適した治療法と最新の再生医療について
それぞれの特徴を理解することで、自分の症状がどちらに当てはまるのか判断する助けになるでしょう。
目次
ジャンパー膝とオスグッド病の違い
膝の前面に痛みを感じる代表的なスポーツ障害として、ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とオスグッド病があります。
どちらもジャンプや走行といった繰り返しの動作による負担が原因で発症しますが、病態や発症するメカニズム、治療法は異なります。
本章では、以下4つの観点から詳しく解説します。
似たような膝の痛みでも適切な対処法が異なるため、まずは自分の症状がどちらに近いのかを知りましょう。
比較項目 |
ジャンパー膝 |
オスグッド病 |
定義 |
膝蓋腱の炎症 |
脛骨粗面の剥離(はくり) |
発症部位 |
膝蓋腱(膝蓋骨の下の腱) |
脛骨粗面(膝蓋骨の下にある突出している骨) |
原因 |
膝蓋腱への繰り返しの負荷による炎症 |
成長期に大腿四頭筋からの牽引力が脛骨粗面にかかること |
主な症状 |
ジャンプ時の膝蓋腱の痛み・軽度の腫れ |
脛骨粗面の突出・腫れ、運動後の痛み |
治療法 |
スポーツ休止、リハビリ(筋力強化・ストレッチ) |
安静、成長による自然治癒待ち |
発症部位の違い
ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらも膝の前側に痛みが出る障害ですが、痛みが生じる部位が異なります。
発症部位の比較 |
ジャンパー膝 |
オスグッド病 |
痛みが現れる部位 |
膝蓋腱(膝蓋骨の直下にある腱) |
脛骨粗面(脛骨の上端部分) |
組織の種類 |
腱(靭帯) |
骨(成長軟骨部) |
視認できる変化 |
あまり目立たない |
コブ状の隆起が見られることがある |
ジャンパー膝では膝蓋骨(膝のお皿)の直下にある膝蓋腱に炎症が起こり、痛みを感じます。
一方、オスグッド病では膝蓋骨よりさらに下方、脛骨(すねの骨)の上端部分にある脛骨粗面が痛みます。
つまり、ジャンパー膝は膝蓋腱という腱の障害であるのに対し、オスグッド病は脛骨粗面という骨の成長部位の障害です。
原因の違い
ジャンパー膝とオスグッド病は、どちらもスポーツによる膝の使いすぎ(オーバーユース)が背景にありますが、発症メカニズムと好発年齢に違いがあります。
原因の比較 |
ジャンパー膝 |
オスグッド病 |
主な原因 |
ジャンプや着地などによる膝蓋腱の繰り返しの酷使 |
成長期に大腿四頭筋の牽引力が脛骨粗面に繰り返しかかること |
好発時期 |
中学生~20代のスポーツ選手に多い |
小学校高学年~中学生の成長期に多い |
ジャンパー膝は、ジャンプやダッシュなどの動作を繰り返すことで膝蓋腱に微細な損傷が生じ、炎症が起きている状態です。
対してオスグッド病は、成長期特有の障害です。
成長期には骨の成長が筋肉や腱の伸びより速いため、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が硬くなりやすくなります。
上記のように、ジャンパー膝は主に腱の使いすぎによる炎症であるのに対し、オスグッド病は成長期の骨と筋肉のアンバランスが原因の成長痛的な性質を持ちます。
症状の違い
ジャンパー膝とオスグッド病は膝の前面に痛みが出る点では共通していますが、痛みのパターンや外見的な変化に違いがあります。
症状の比較 |
ジャンパー膝 |
オスグッド病 |
痛みの特徴 |
膝のお皿直下に痛みがある ジャンプや着地で痛みが増強される |
膝下(脛骨粗面)に痛みがある 運動後に痛みが強くなったり、膝立ちで痛みを感じたりする |
外見の変化 |
腫れは軽度で目立つ変形はないことが多い |
膝下の骨がコブ状に出っぱり腫れることが多い |
痛みのタイミング |
運動中、特に動作の瞬間に強い痛みを感じる |
運動後や翌日に痛みが強くなることが多い |
ジャンパー膝では、特にジャンプや着地の瞬間、階段の上り下りなど膝を曲げ伸ばしする動作中に膝蓋腱付近に鋭い痛みを感じます。
外見上は膝蓋腱の周囲がわずかに腫れる程度で、目立った変形はありません。
一方、オスグッド病では、運動中よりも運動後や翌日に膝下(脛骨粗面)の痛みが強まることが特徴的です。
痛む脛骨粗面がコブのように腫れて突き出てくることが多く、これがオスグッド病の特徴的な外見変化です。
治療法の違い
ジャンパー膝とオスグッド病はどちらも基本的に保存療法(手術をしない治療)が行われますが、治療と回復のプロセスに違いがあります。
治療法の比較 |
ジャンパー膝 |
オスグッド病 |
治療の基本 |
スポーツの休止とリハビリ(ストレッチや筋力強化)で回復を図る |
安静にして自然回復を待つ。 必要に応じ大腿四頭筋のストレッチを行う |
補助療法 |
痛みに応じアイシングや消炎鎮痛剤を用いる |
痛みが強い時は膝下バンドなどで膝蓋腱の負担を軽減 |
手術 |
慢性化した重症例では腱の手術を検討 |
骨片が残り痛みが続く場合など成長期後の稀な例で検討 |
回復の特徴 |
適切なリハビリをしないと慢性化・再発しやすい |
成長期が終われば自然治癒することが多い |
ジャンパー膝の治療では、痛みがある間はスポーツなど膝に負担のかかる動作を控えて安静にし、患部の炎症を鎮めます。
アイシング(冷却)や消炎鎮痛剤の使用で痛みをコントロールし、痛みが落ち着いた後は、大腿四頭筋や膝周囲のストレッチと筋力トレーニングを積極的に行います。
対して、オスグッド病の治療は、基本的に成長とともに自然に症状が治まるのを待つアプローチが中心です。
痛みが強い間は運動を休み、必要に応じて大腿四頭筋のストレッチを行います。
運動を続ける必要がある場合は、膝下に専用のバンドを巻いて膝蓋腱が脛骨粗面を引っ張る力を緩和します。
ジャンパー膝とオスグッド病のセルフチェックリスト
膝の痛みがあるとき、自分の症状がジャンパー膝なのかオスグッド病なのか、それとも全く別の病気なのか判断に迷うことがあるでしょう。
以下では、それぞれの疾患に特徴的な症状をチェックリスト形式でご紹介します。
セルフチェックをもとに自分の状態を把握し、適切な対処につなげることが、膝の痛みを早期に改善するポイントとなります。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)のチェックリスト
ジャンパー膝の可能性が高い症状は、以下の通りです。
- ジャンプの着地や急な方向転換の際、膝のお皿下あたりに鋭い痛みが走る
- 運動後や翌朝になると、膝の前に鈍い痛みが残る
- 膝蓋腱の周辺が腫れていたり、触ると熱っぽく感じる
- 膝の動かし始めに突っ張るような違和感がある
- 膝のお皿の下の部分を押すと痛みがある(圧痛がある)
- 階段の上り下りや深くしゃがむ動作で膝に痛みが出る
上記のような症状が複数当てはまる場合は、膝蓋腱に負担がかかるスポーツを一時中断し、整形外科の診察を受けることをおすすめします。
オスグッド病のチェックリスト
オスグッド病の可能性が高い症状は、以下の通りです。
- 膝のお皿の下にある骨(脛骨粗面)に限って痛みがある
- 膝の下の特定の場所を押すと強い痛みを感じる(圧痛がある)
- 膝のお皿の下が腫れて熱を帯びている
- 膝のお皿下の骨が前より出っ張ってきた(骨のコブがある)
- 運動時に膝下の痛みが強くなる(ジャンプやダッシュで悪化する)
- 休むと痛みが和らぐが、運動を続けると痛みがぶり返す
- 成長期(おおむね10~15歳前後)に発症している
- 両方の膝に同じ症状が現れることもある
上記のような症状が見られたら、まずは成長期の膝に負担をかける動作を控え、症状が強い場合は整形外科を受診しましょう。
成長期を過ぎれば多くは自然に軽快しますが、適切な処置を受けることで回復を早めることが期待できます。
ジャンパー膝とオスグッド病の痛みには再生医療による治療も選択肢の一つ
ジャンパー膝やオスグッド病の痛みが長引く場合、従来の保存療法(安静、投薬、リハビリなど)に加えて再生医療による治療を検討することも可能です。
特に注目されているのが、PRP療法(多血小板血漿療法)と呼ばれる治療法です。
PRP療法とは
- 患者自身の血液から血小板を多く含む血漿成分を抽出して注射する方法
- 血小板に含まれる成長因子が組織の修復や再生を促進する
- 自分自身の血液を使うため、拒絶反応やアレルギーのリスクが低い
- 組織の修復促進や痛みの軽減が期待できる
他の治療で改善が見られない慢性的な膝の痛みに対して、PRP療法は新たな選択肢として検討する価値があるでしょう。
治療を検討する際は、専門医と十分に相談し、費用や効果について理解した上で判断することが大切です。
【まとめ】ジャンパー膝とオスグッド病はどちらも早期治療が重要
ジャンパー膝は膝蓋腱に発症し、主に運動中の痛みが特徴的で、中学生から成人のスポーツ選手に多く見られます。
一方、オスグッド病は脛骨粗面に発症し、成長期の子どもに多く、運動後の痛みや骨の突出が特徴です。
どちらも適切な対処をせずに放置すると症状が悪化する恐れがあるため、早期発見・早期治療が重要です。
セルフチェックリストを活用して自分の症状を把握し、該当する項目が多い場合は整形外科を受診しましょう。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設