肝臓の再生能力について|肝臓は切除しても再生する!?
公開日: 2020.07.09更新日: 2024.12.05
肝臓は再生する臓器として知られており、約70%を切除しても元の大きさに復活するといわれています。
そのため、疾患などによっては、肝臓を切除する場合もありますが、実は再生できない肝臓の病気もあります。
この記事では、肝臓の再生能力や疾患、肝硬変を治療できる再生医療について解説します。
この記事を読むとわかること |
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目次
肝臓の再生能力について
肝臓は切除しても、時間が経てば再生することを知っている人は多いと思います。
しかし、「肝臓は再生する」とはいっても、何割切除しても大丈夫なのかは心配なところです。
今回は、肝臓は何割切除しても大丈夫なのか、肝臓の再生能力についてご紹介します。
肝臓は何割切除できるのか
肝臓がんなどの場合は手術で肝臓を切除することもありますが、最大70%の切除が一般的な安全範囲と言われています。
また、個人差はあるものの、肝臓の7割を切除しても正常な肝臓であれば約2週間で元の重量に戻り※1、機能的には約3ヶ月から6ヶ月で元の80%程度まで再生※2されるとされています。
※1出典:大阪赤十字病院がん診療センター
※2出典:国立がん研究センター
半分以上切除しても時間が経てば再生することから、肝臓の再生機能の高さがわかります。
肝臓の再生能力には肝細胞が大きく関わっており、肝細胞が細胞分裂をして増殖することで、肝臓が元の重量まで戻るのです。
こうした肝臓の再生力の高さから肝臓の病気では切除という方法の選択を可能としていますが、肝臓疾患の進行度合いによっては再生しきらず、切除後より萎縮が進む場合もあります。
肝臓の働き
肝臓は、人体最大の代謝機能をもつ臓器として人間の体を支えてくれています。
私たちが口にした食べ物は胃や腸で消化・吸収され、残ったエネルギーは肝臓に蓄えられます。また、アルコールや薬物のような有害物質は肝臓で無害なものに解毒されるのです。
肝臓は、このような重大な働きをしてくれていますが、大きな負荷がかかることもあります。
アルコールの過剰摂取がその代表です。いくら再生機能に優れているとはいえ、長い時間繰り返し解毒をおこなうのは、肝臓にとって大きな負担になります。
また、脂肪や糖分の多い食事は、肝臓に脂肪が蓄積する原因となってしまいます。
肝臓は再生する!ただし再生できない肝臓の病気には注意が必要
肝臓は7割切除しても再生できますが、肝臓の病気の中でも再生できないケースもあります。
再生できない肝臓の病気とは、肝硬変です。肝硬変とは、肝臓が線維化して固くなった状態で、再生力に優れた肝臓でも、肝硬変になると元の状態に戻ることが難しくなってしまいます。
損傷した肝臓の細胞は再生できないばかりか、本来の肝臓の機能も低下してしまいます。
そんな肝硬変はいきなり線維化するのではなく、脂肪肝や肝炎といった病気が進展することで起こるものです。
脂肪肝や肝炎の何割が肝硬変になる?
まず、肝臓に脂肪が蓄積することで起こる脂肪肝ですが、肥満の人の2〜3 割に脂肪肝が見られます。アルコールの過剰摂取が脂肪肝の原因の多くを占めていましたが、近年食生活の欧米化によってアルコールを飲まない人の脂肪肝の割合も増加しています。
アルコールを飲まない人の脂肪肝では、1割程度の人が脂肪肝炎になり、さらに進むと肝硬変になります。
また、ウイルス性肝炎のひとつであるC型肝炎の場合、7割が慢性肝炎となり、進行すると 20〜30年という長い時間を経て肝硬変になります。
肝硬変を予防するためにも、定期的に健診を受け、肝臓の病気の早期発見につなげることをおすすめします。
肝硬変を治療できる最先端の「再生医療」という方法もある
脂肪肝の何割かは肝硬変に進行するため、脂肪肝の段階で治療を始めることが肝硬変への進行を防ぐために重要です。
しかし肝臓は沈黙の臓器ともいわれ、自覚症状が出ないことが多いです。そのため、脂肪肝になっていても気づかず、健診や他の病気の検査で偶然見つかったということもあります。
脂肪肝の治療は生活習慣の見直しが重要で、食生活を改善し、アルコールを摂取する人は禁酒することが勧められます。
それでも病気が進行してしまったり、発見したときにはすでに肝硬変になっていたということもあります。肝硬変になると肝臓は元の状態に戻ることが難しいです。
現代の一般的な肝臓疾患の治療法では、肝硬変だけでなく脂肪肝も根本的な治療は確立されておりません。
そんな肝硬変の治療として注目されているのが「再生医療」です。自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療では、静脈注射を用いて幹細胞を肝臓に送り届けます。
幹細胞が傷ついた細胞を見つけ、線維化した組織を溶解・修復させてくれます。これによって、肝硬変の状態から元の肝臓に戻すことが期待されているのです。
まとめ・再生しない肝臓の病気を未然に防ごう
再生力に優れた肝臓ですが、肝硬変になると再生できない状態になってしまいます。
肝硬変になると元の状態に再生できません。脂肪肝の何割かは肝硬変に進行するため、脂肪肝のうちに食生活の改善をはじめとした食事療法が必要となってきます。
しかしそれでも肝硬変になった場合や、そもそもの肝臓疾患を解消していきたい場合は、幹細胞を用いた再生医療という方法もあります。
時間がたっても再生しない肝臓の病気になってしまう前に予防をすることも大切ですが、治療での効果を期待したい場合は再生医療も選択肢の1つとして検討してみてください。
再生医療の可能性に興味がある、頼ってみたいという方は、まずは、再生医療の専門医にご相談ください。