股関節の骨切り手術とは?種類やメリット・デメリットを徹底解説
公開日: 2020.05.29更新日: 2025.04.30
変形性股関節症の治療法の1つに、骨切り術があります。
骨切り術とは、患者様自身の関節を残す治療法で、関節の傷みが少ない早期の段階に行われます。
本記事では、変形性股関節症の骨切り術について、詳しく解説します。
保存療法を行っても症状の改善がみられない場合は、骨切り術をはじめとした手術による治療も検討しましょう。
目次
股関節の骨切り術とは|自分の関節を残す治療法
骨切り術は、変形性股関節症における手術療法の1つで、自身の股関節を温存できる治療法です。
重症の場合に適用となる人工股関節置換術に対し、骨切り術が行われるのは、関節の傷みが少ない早期です。
骨切り術は、股関節を形成する骨を手術で切り取ったり、ずらしたりして、体重のかかる部位を調整します。
術後は股関節の負担が分散されるため、軟骨がすり減りにくくなり、症状の軽減に期待できます。
股関節骨切り術の主な種類と特徴
股関節骨切り術の主な種類は、以下の2つです。
股関節は、骨盤と大腿骨の2種の骨で構成され、骨の削る位置によって骨切り術の種類が異なります。
骨盤側を削る手術を寛骨臼回転骨切り術、大腿骨を調整する方法を大腿骨骨切り術と呼びます。
寛骨臼側(骨盤側)の骨切り術
股関節の骨切り術の1つに、寛骨臼側(骨盤側)の骨切り術があります。
寛骨臼側の骨切り術は、骨盤のくぼんでいる部分(臼蓋)に沿って骨を切り、寛骨臼を前外方に回転させて大腿骨頭を覆う手術です。
変形性股関節症や、臼蓋形成不全の方に効果が期待できる治療法です。
大腿骨側(太もも側)の骨切り術
変形性股関節症の骨切り術に、大腿骨側(太もも側)の骨切り術があります。
大腿骨側の骨切り術は、太ももの骨を切って角度を調整して固定する骨切り術で、切り取る方向によって以下の2種類に分けられます。
内反骨切り術 | 内側から大腿骨を切り取る方法 |
外反骨切り術 | 外側から大腿骨を切り取る術式 |
大腿骨側の骨切り術は、症状が進行している場合でも適応となるケースがあるため、医師へ確認しましょう。
骨切り術のメリット・デメリット
変形性股関節症で骨切り術を受けるメリットは、自身の股関節を温存できることです。
一方で、入院やリハビリ期間を必要とする治療法のため、日常生活への復帰までに時間がかかるといったデメリットがあります。
骨切り術を行っても、軟骨のすり減りが元に戻るわけではありません。
痛みを我慢して無理な運動を行うと、変形性股関節症はさらに悪化するため注意しましょう。
メリット
骨切り術を受けるメリットは、主に以下の2つです。
- 自身の股関節を残せること
- 日常生活での制限がないこと
変形性股関節症を骨切り術で治療した場合は、股関節に大きな負担がかからないよう注意すれば、日常生活や運動などにとくに制限はありません。
骨切り術後は再手術を避けるために、定期的に受診し、股関節の状態を確認することが大切です。
デメリット
骨切り術には、以下のデメリットがあるため、短所も考慮して治療法を検討しましょう。
- 入院やリハビリなどが必要なため、日常生活への復帰に時間がかかる
- 術後はすぐに動かせず、リハビリが必要
- 再手術や感染のリスクがある
骨切りした部分は負担がかからないように安静にする必要があり、入院やリハビリ期間が長くなる可能性もあります。
また、再度関節の軟骨がすり減って痛みが出るときは、再手術やほかの術式での手術が検討されます。
股関節骨切り術の流れと回復までの期間
股関節骨切り術の主な流れは、以下のとおりです。
1.入院し骨切り術を受ける
2.医師の許可が出るまで安静に過ごす
3.安静指示が解除されたらリハビリが開始となる
4.補助具を使用し、歩行ができるようになったら退院
5.退院後も外来にてリハビリを行う
術後のリハビリでは、まずはベッドサイドでの車椅子移乗や、トイレ移動などの生活動作の習得を目指します。
術後1カ月目からは、両松葉杖や平行棒などを使用して片足での歩行訓練を行います。
片足歩行が安定してきたら、手術した側の足に体重を乗せる練習を行いますが、両足歩行ができるまでには約2カ月必要です。
退院後もリハビリを継続する必要があり、スポーツや日常生活への復帰までには1年程度かかるため注意しましょう。
【まとめ】骨切り術を正しく理解し、納得のいく治療選択を
変形性股関節症では、自身の関節を温存できる「骨切り術」で治療できる場合があります。
骨切り術は、年齢が若く、変形性股関節症の症状が早期の方が対象となる治療法です。
人工関節手術やほかの治療法のメリット・デメリットを比較して、納得のいく治療法を選択しましょう。
骨切り術による治療の適応外の方や、手術を避けて変形性股関節症を治したい場合は、再生医療による治療も1つの選択肢です。
再生医療では、自身の細胞を利用して、軟骨や関節のすり減りを修復・再生する治療法です。
変形性股関節症の症状にお悩みの方は、当院(リペアセルクリニック)の再生医療をご検討ください。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師
略歴
2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業
2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医
2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科
2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科
2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科
2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長
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