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多発性硬化症で寿命は短くなる?生命予後を左右する要因と治療を解説

多発性硬化症と診断され「寿命は短くなるのか」と不安を感じている患者様やご家族は少なくありません。
結論として、この病気に「発症後○年」といった一律の余命はなく、経過は患者様ごとに大きく異なります。
また、近年は再発を抑える治療の選択肢が広がり、長期的に病気を管理しながら生活を続けられるようになってきました。
本記事では、多発性硬化症の生命予後を左右する要因や治療の意義、長く付き合っていくために大切なことを解説します。
不安を整理し、これからの見通しを考える参考として、ぜひ最後までご覧ください。
目次
多発性硬化症で寿命が一律に短くなるとはいえない
多発性硬化症には、「発症後何年」といった一律の余命はありません。
生命予後は、病型、発症年齢、障害の程度、治療の状況などによって大きく異なります。
一般人口と比較して平均寿命がやや短いとする報告もありますが、これらの多くは治療法が限られていた時代のデータを含んでいます。
現在は再発や進行を抑える薬剤が登場し、病気の活動性をコントロールしながら生活を続ける患者様が増えています。
多発性硬化症は再発と寛解を繰り返し、慢性の経過をとる疾患とされており、長期の療養が必要になります。
※参照:難病情報センター「多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13)」
そのため、古い情報だけを根拠にご自身の将来を判断せず、現在の病状をもとに主治医と見通しを共有することが大切です。
多発性硬化症の寿命・予後を左右する主な要因
長期的な経過は、病名そのものではなく複数の要因の組み合わせによって決まります。
このほか、発症年齢、治療を開始した時期、合併症の有無なども関わります。
ここでは、とくに影響が大きい2つの要因について解説します。
病型や障害の進行度
多発性硬化症は、経過の仕方によっていくつかの病型に分けられます。
| 病型 | 経過の特徴 |
|---|---|
| 再発寛解型 | 症状が現れる再発期と、落ち着いている寛解期を繰り返す |
| 二次性進行型 | 再発寛解型の経過を経たのち、再発とは関係なく徐々に障害が進む |
| 一次性進行型 | 発症当初から明らかな再発を伴わず、緩やかに進行する |
歩行障害などの身体機能の低下が進むと、生活全体への影響が大きくなります。
移動が制限されることで活動量が減り、体力や筋力の低下につながる場合もあります。
ただし、進行のスピードには個人差があり、病型だけで寿命を予測することはできません。
同じ病型でも、経過が緩やかな方もいれば変化が早い方もいます。
再発の回数や病気の活動性
再発や新たな神経障害が繰り返されると、障害が少しずつ蓄積していく場合があります。
再発時の症状は治療によって改善することもありますが、一部が後遺症として残ることがあります。
そこに次の再発が加われば、残った障害の上にさらに新しい障害が重なる可能性があります。
そのため、再発を抑えて病気の活動性をコントロールすることが、長期的な身体機能の維持につながります。
なお、活動性は自覚症状だけでは判断できません。
症状として現れないまま、MRIで新しい病変が見つかることもあるため、定期的な検査が重要になります。
多発性硬化症の治療は長期予後に重要
多発性硬化症の治療の中心となるのが、疾患修飾薬(DMD)と呼ばれる薬剤です。
再発を抑えたり、障害の進行を遅らせたりすることを目的として用いられます。
薬剤の種類は複数あり、病型や病気の活動性、年齢、合併症、副作用の出方などを踏まえて選択されます。
ここで重要なのが、症状が落ち着いていても自己判断で治療を中止しないことです。
調子がよい状態は、治療によって病気の活動性が抑えられている結果である場合が多くあります。
中断によって再発が起これば、これまで維持できていた機能が失われる可能性もあります。
副作用や通院の負担で治療が難しいと感じる場合も、まずは主治医へ相談しましょう。
寿命に影響する可能性がある合併症
生命予後に関わるのは、多発性硬化症そのものだけではありません。
障害が進んだ場合に注意したい合併症は、以下のとおりです。
- 誤嚥性肺炎(嚥下機能の低下による)
- 尿路感染症(排尿障害による残尿など)
- 床ずれ(褥瘡)
- 活動量の低下による筋力・体力の低下
- 転倒による骨折
- 免疫を抑える治療中の感染症
とくに誤嚥性肺炎と尿路感染症は、全身状態に影響を及ぼしやすい合併症です。
食事中にむせる、発熱を繰り返すといった様子があれば、早めに医師へ伝えてください。
一方で、これらの多くは予防や早期対応が可能です。
障害が進んだ場合でも、リハビリを続けて機能を維持し、合併症を防ぐ管理を行うことが予後に関わります。
多発性硬化症と長く付き合うために大切なこと
基本となるのは、疾患修飾薬を医師の指示どおりに継続し、定期的に病気の活動性を確認することです。
診察に加えてMRI検査を行い、新しい病変が出ていないかを確認していきます。
あわせて、日常生活では以下の点を心がけましょう。
- 喫煙している場合は禁煙を検討する
- 体調に合わせて適度に体を動かす
- 手洗いやワクチンなど感染症の予防を行う
- 適正体重を維持する
- 十分な睡眠と休息をとる
- 疲労や体温上昇で症状が強まる場合は無理をしない
喫煙は病気の経過に影響する可能性が指摘されているため、禁煙は取り組む価値のある対策です。
また、暑さや入浴で一時的に症状が強まることがあるため、体温が上がりすぎない工夫も役立ちます。
なお、ワクチン接種の可否は治療内容によって判断が異なるため、必ず主治医に確認してください。
新たな麻痺や視力低下がある場合は早めに受診する
以下のような症状が現れた場合は、再発の可能性があるため早めに主治医へ相談してください。
- 新たな手足のしびれや感覚の鈍さが出た
- 手足に力が入りにくい、物を落とすようになった
- 片目の視力低下や、目を動かしたときの痛みがある
- 物が二重に見える
- ふらつきが強くなり歩きにくい
- 排尿・排便の障害が新たに現れた
- これらの症状が24時間以上続いている
とくに、突然の強い症状や急に歩けなくなるような変化がある場合は、自己判断で様子を見ないでください。
再発は早期に治療を始めるほど、障害を残しにくいとされています。
なお、発熱や疲労で一時的に症状が強まることもあり、この場合は再発とは区別されます。
判断が難しいときこそ、自分で決めずに医療機関へ連絡しましょう。
多発性硬化症の寿命は一律ではなく長期的な治療管理が重要
多発性硬化症は生命予後に個人差が大きく、病名だけで寿命を判断することはできません。
病型や障害の進行度、再発の頻度、合併症の有無など、複数の要因が経過に関わります。
一方で、治療の選択肢は広がっており、再発を抑えながら長く付き合っていくことが可能になってきました。
疾患修飾薬を自己判断で中断せず、定期的な診察とMRIで病気の活動性を確認していきましょう。
新たな神経症状が現れた場合は早めに主治医へ相談し、不安な点は抱え込まずに共有することが、これからの生活を支える基盤になります。
監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
資格・所属学会
日本脳神経外科学会 所属
脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。






















