-
- 肩
- スポーツ医療
「投球時に肩が痛い」「肩腱板損傷と診断されたけど、本当に野球を続けられるのか」といった不安を抱えている野球選手の方も多いのではないでしょうか。 肩腱板損傷は、特に投手や外野手など肩を酷使するポジションの選手にとって避けて通れないケガの一つです。 しかし、正しい知識と適切な治療を受けることで、選手として再びマウンドやフィールドに立つことが可能です。 この記事では、野球選手の肩腱板損傷について、その原因から最新の治療法まで分かりやすく解説します。 野球をプレーしていて、現在肩の痛みで悩んでいる・肩腱板損傷と診断された方は、痛みを気にせずに競技を楽しむためにも、ぜひ参考にしてください。 肩腱板損傷とは?野球選手に多い理由とその影響 肩腱板損傷とは、肩の動きを支える筋肉と腱(腱板)が傷ついた状態で、肩の痛みや運動障害を引き起こすケガです。 野球選手に肩腱板損傷が多い理由は、投球動作の特殊性と繰り返しの負荷にあります。 投球時には肩関節が極端な位置まで動かされ、腱板に大きな負担がかかるのが理由です。 肩腱板損傷により投球時の痛み、球速低下、制球力の悪化などが現れますが、早期の適切な対処により競技復帰の可能性を高められます。 野球選手が肩腱板損傷を予防するために取り入れるべきトレーニングとセルフケア 肩腱板損傷を予防するには、日常的なトレーニングとケアが何より重要です。 トレーニングとセルフケア方法として、以下をご紹介します。 肩甲骨周辺の強化・可動域アップ フォーム改善と投球制限 アイシング・ストレッチをしっかり行う これらの予防法を継続的に実践することで、肩腱板損傷のリスクを大幅に軽減できます。 肩甲骨周辺の強化・可動域アップ 肩甲骨周辺の筋肉を強化し、可動域を広げるストレッチを2つご紹介します。 肩甲骨はがしストレッチ 両手を肩の高さで前に伸ばし、手のひらを合わせる 息を吸いながら、両腕を大きく後ろに引く 肩甲骨を背骨から引き離すように意識する 息を吐きながら、ゆっくりと元の姿勢に戻る これを10回程度繰り返す 肩甲骨を背骨から引き離すように動かすストレッチです。 デスクワークなどで固まりがちな肩甲骨周りの筋肉をほぐし、柔軟性を高めます。 チューブローイング 床に座り、足を軽く伸ばす ゴムチューブを足の裏に引っ掛け、両端を握る 背筋を伸ばし、胸を張った状態を保つ 肘を曲げながら、チューブを身体の後ろに引く 肩甲骨を背骨に寄せるように意識する 10~15回を3セット行う ゴムチューブを使って肩甲骨を内側に引き寄せる筋肉を鍛えるトレーニングです。 投球時の肩甲骨の安定性向上が期待できます。 フォーム改善と投球制限 正しい投球フォームの習得と適切な投球制限は、肩腱板損傷予防の基本です。 以下のポイントを意識して、投球フォームを見直しましょう。 肩甲骨を寄せて胸を張る姿勢を保つ 下半身の力を上半身に伝える動作を意識する 腕の振りは肩甲骨の動きと連動させる リリース後は自然な腕の振り下ろしを行う 腕だけでなく全身を使った投球動作を心がけることで、肩への負担を分散できます。 また適切な投球制限としては、以下の通りです。 年齢 1日の投球数目安 小学生 50球以下 中学生 70球以下 高校生 100球以下 年齢や体力に応じた投球数の管理は、オーバーユースによる肩腱板損傷を防ぐためにも欠かせませんので必ず守りましょう。 アイシング・ストレッチをしっかり行う 練習後は以下のようにアイシング・ストレッチをしっかり行いましょう。 投球直後から30分以内に開始する 氷嚢やアイスパックを肩に当てる 15~20分間継続する 皮膚を保護するタオルを間に挟む 血行が悪くなりすぎないよう注意する 投球後のアイシングは、肩関節の炎症を抑制し、腱板の回復を促進するため、適切な時間と方法で行うことが重要です。 また、肩関節と腱板の柔軟性を維持するため、肩甲骨はがしストレッチなどを日常的に行いましょう。 テーピングやサポーターの使用をする場合は、以下の記事をご覧ください。 肩腱板損傷の治療法 現在は以下の治療法があるため、肩腱板損傷の診断を受けても、決して諦める必要はありません。 保存療法 手術 再生医療 治療法の選択は症状の程度や個人の状況によって決まりますが、どの方法でも多くの選手が競技復帰を果たしています。各治療法について詳しく見ていきましょう。 保存療法 保存療法は、手術を行わずに肩腱板損傷を治療する方法です。 保存療法では主に以下の3つのアプローチが組み合わせて行われます。 安静 薬物療法 リハビリテーション まず、損傷した腱板の回復を促すため、投球動作を一時的に中止しつつ、完全な安静ではなく日常生活に支障のない範囲での活動を継続しましょう。 次に、痛みや炎症を抑えるために主に消炎鎮痛薬による薬物治療が行われ、症状に応じて内服薬や外用薬が選択されます。 理学療法士の指導のもと、筋力強化・可動域訓練・投球動作の再習得などを含む段階的なリハビリテーションが実施され、競技復帰に向けて計画的に進められるのです。 手術 保存療法で改善が見られない場合や、肩腱板の完全断裂がある場合には手術が検討されます。 現在の主流は関節鏡視下手術と呼ばれる、切開が小さく体の負担が少ない手術です。 カメラを使って関節内を確認しながら、損傷した腱板を修復します。 復帰までの期間目安は以下のとおりです。 復帰期間の目安 活動内容 手術後6週間 固定期間、基本的な日常生活動作 3~6ヶ月 可動域訓練、筋力トレーニング 6~9ヶ月 段階的な投球動作の再開 9~12ヶ月 競技復帰 手術後のスポーツ復帰には時間を要しますが、段階的なリハビリテーションにより、多くの選手が元のレベルまで回復できます。 再生医療 肩腱板の手術には、感染症や痛みの増加、運動制限の悪化などのリスクが伴います。 そこで手術を避けたい方に向けた新しい治療選択肢として注目されているのが、再生医療です。 再生医療の一つ、幹細胞治療では、患者さまの幹細胞を採取・培養して、患部に注射します。 幹細胞は体内の様々な種類の細胞に変化する能力があり、損傷部位に投与すると、必要とされる特定の細胞の種類へと変化するのが特徴です。 手術せずに野球に復帰したいという方は、選択肢の一つとして再生医療もご検討ください。 肩腱板損傷に対する再生医療についての詳細は、以下で解説していますのでぜひご覧ください。 【まとめ】野球を続けるためには肩腱板損傷は放置せずに早期治療を 肩腱板損傷の治療法選択は、損傷の程度、年齢、競技レベル、個人の希望など様々な要因を総合的に考慮して決定されます。 手術後の競技復帰には、以下の期間がおおよその目安とされています。 復帰期間の目安 活動内容 手術後6週間 固定期間、基本的な日常生活動作 3~6ヶ月 可動域訓練、筋力トレーニング 6~9ヶ月 段階的な投球動作の再開 9~12ヶ月 競技復帰 貴重な競技生活を無駄にしないためにも、手術を避けたいという方は再生医療も一つの選択肢としてご検討ください。 幹細胞治療は、患者さまご自身の幹細胞を採取・培養し、損傷部位に注射することで、手術を行わずに自然な回復を促す治療法です。 身体への負担も比較的少なく、競技復帰を目指すことが期待できます。 治療法については、当院(リペアセルクリニック)の公式LINEでも詳細を解説していますので、ぜひ参考にして前向きに治療に取り組み、再び野球を楽しめる日を目指しましょう。 \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/
2019.09.10 -
- 腰
- スポーツ医療
「ジャンプの着地で腰に違和感がある」「ディフェンス姿勢を長く続けると腰が痛くなる」そんな悩みを抱えていませんか? バスケットボールは、腰痛が起こりやすいスポーツの1つです。 バスケ選手の腰痛は、腰を低く保つディフェンス姿勢や、ジャンプ・着地を繰り返すシュート動作など、プレー特有の動きが原因で起こります。 放っておくと症状が悪化し、練習や試合に支障をきたすだけでなく、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。 本記事では、バスケで腰痛が起こる原因や治療法について、詳しく解説します。 「プレーを続けたいけど、腰が痛くて思うように動けない」といったときは我慢せず、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。 バスケによる腰痛を改善するための治療法 バスケによる腰痛を改善するためには、以下の3つの治療法があります。 保存療法 手術療法 再生療法 自身に合った治療法で腰痛を改善し、スポーツや日常生活への早期復帰を目指しましょう。 保存療法 バスケによる腰痛を改善する方法に、保存療法があります。 保存療法とは、生活習慣の改善や痛み止めの内服などで、症状の改善を目指す治療法です。 腰痛があるときは、腰への負担を軽減するために、以下のポイントを押さえ安静に過ごすことが大切です。 ストレッチを行う アイシング(患部の冷却)を行う テーピングやサポーターを使用する 症状に合った薬を処方してもらう 保存療法を行っても症状の改善がみられない場合は、医療機関と相談し、ほかの治療法を検討しましょう。 手術療法 痛み止めの内服やブロック注射などの保存療法を行っても症状の改善がみられない場合は、手術療法による治療を行います。 手術療法の適応となる主な疾患は、以下のとおりです。 腰椎分離症 椎間板ヘルニア 変形性腰椎症 手術では、腰痛の原因となっている神経の圧迫を解除し、痛みを取り除きます。 腰痛の根本的な原因を取り除ける治療法ですが、入院やリハビリ期間が必要な点に注意が必要です。 再生療法 バスケによる腰痛は、再生療法による治療法で改善が期待できます。 再生療法とは、患者様自身の幹細胞を利用して損傷した組織の修復を促す治療法で、以下の特徴があります。 筋膜や筋肉の損傷による腰痛の場合は、再生医療で回復を促すことで治療期間を短縮できる可能性があります。 バスケによる腰痛対策に!今すぐできるセルフケアとストレッチ方法も紹介 バスケによる腰痛対策には、以下のセルフケアやストレッチが効果的です。 広背筋のストレッチ 1.四つん這いになり、右手を左手の前につく 2.手を固定したままお尻を後ろへ引く 3.反対側も同様に実施する 大胸筋のストレッチ 1.仰向けで大の字になる 2.肩と左足を固定したまま、右足をクロスする 3.右足側も同様に実施する 腰痛の再発を防ぐためには、ストレッチだけでなく、体幹を鍛えるトレーニングも合わせて行うことが大切です。 バスケットボール特有の動きが腰を痛める理由|プレー中の動きと起こるリスクがある症状も解説 バスケットボールでは、以下の特有の動きが原因で腰を痛める場合があります。 ディフェンス時の前かがみ・中腰姿勢による慢性的な負担 急な方向転換やストップ動作|筋・筋膜性腰痛(ぎっくり腰) ジャンプや腰を反らすプレーの繰り返し|腰椎分離症 ジャンプ動作・何度も繰り返される着地の衝撃|椎間板ヘルニア 繰り返しの負荷で椎間板や骨に変性が起こる|変形性腰椎症 腰痛があるときに無理にプレーを続けると、症状が悪化する恐れがあるため注意が必要です。 ディフェンス時の前かがみ・中腰姿勢による慢性的な負担 バスケのディフェンスでは、前かがみや中腰の姿勢をとるため、腰へ慢性的な負担がかかりやすくなります。 腰を低くする姿勢は、瞬発力が上がるメリットがありますが、腰痛を起こしやすいため注意が必要です。 とくに、高身長の選手は姿勢が崩れやすく、自身では姿勢の悪さに気づかない場合もあります。 慢性的な腰痛があるときは、周りの方にプレーを見てもらい、姿勢を改善していくことが大切です。 急な方向転換やストップ動作|筋・筋膜性腰痛(ぎっくり腰) 急な方向転換やストップ動作は、筋・筋膜性腰痛(ぎっくり腰)を発症しやすいため注意が必要です。 筋・筋膜性腰痛(ぎっくり腰)とは、腰の筋膜や筋肉を損傷した場合に起こる腰痛のことです。 急性に発症した場合は、まずは安静にしてアイシングを行いましょう。 痛みが軽減したらストレッチを行い、筋力や柔軟性の低下を防ぐことが大切です。 ジャンプや腰を反らすプレーの繰り返し|腰椎分離症 バスケットボールでは、ジャンプや腰を反らすプレーを繰り返すため、腰椎分離症の発症リスクが高まります。 腰椎分離症とは、背骨の一部である「腰椎」に圧力が加わることで、ひびや疲労骨折を生じる疾患です。 下半身に痛みやしびれがみられる場合は、腰椎分離症の可能性があるため、医療機関を受診し治療を受けましょう。 腰椎分離症は悪化すると、脊椎すべり症に進行する恐れがあります。 脊椎すべり症では、痛みによって歩行が困難になる症状(間欠性跛行)が生じる場合もあるため注意が必要です。 ジャンプ動作・何度も繰り返される着地の衝撃|椎間板ヘルニア バスケで多いジャンプや何度も繰り返す着地などの動作は、腰への衝撃が大きく椎間板ヘルニアを発症する可能性があります。 椎間板ヘルニアとは、背骨の骨と骨のあいだにある「椎間板」と呼ばれる軟骨が飛び出し、神経を圧迫する疾患です。 日常的に姿勢が良くなかったり、バスケのプレーによって腰を酷使したりした場合に発症します。 椎間板ヘルニアを発症した際は、腰に負担のかかる動作を避け、痛みの軽減を図りましょう。 繰り返しの負荷で椎間板や骨に変性が起こる|変形性腰椎症 バスケのプレーで腰に繰り返し負荷がかかると、椎間板や骨に変性が起こる「変形性腰椎症」の発症リスクが高まります。 変形性腰椎症は、加齢や腰の酷使によって「腰椎」が変形する疾患で、以下の症状がみられます。 動作時の下肢の痛み 下肢のしびれ 腰のだるさ 歩行困難 臀部の痛み 足の冷え 変形性腰椎症を治療せずに放置すると、脊柱管狭窄症に進行する恐れがあるため注意が必要です。 脊柱管狭窄症をはじめとした変形性疾患では、再生医療による治療で、症状の改善が期待できます。 変形性疾患による腰痛でお悩みの方は、当院(リペアセルクリニック)の再生医療をご検討ください。 【まとめ】バスケットボールによる腰痛が続くときは、専門医に相談を バスケットボールが原因の腰痛が続くときは、早めに専門医へ相談しましょう。 腰痛がある場合は、まずはアイシングを行い安静にすることが大切です。 保存療法を行っても痛みが改善しないときは、再生医療や手術療法による治療を検討します。 スポーツ活動や日常生活への早期復帰を目指すには、症状に合わせて治療法を選択することが重要です。 腰痛が治らず治療法にお悩みの場合は、ぜひ一度当院(リペアセルクリニック)へお問い合わせください。
2019.09.03 -
- スポーツ医療
「最近、水泳の練習中や練習後に股関節が痛む・・」と感じていませんか? 水泳は関節への負担が少ない低負荷の運動とされていますが、同じ動作を繰り返し行うことで股関節周辺の筋肉や筋膜に過度の負担がかかることがあります。 とくに、平泳ぎのように股関節を大きく使う泳法では、インピンジメントや関節唇損傷といった症状が起きることもあり、放置すると悪化やパフォーマンスの低下につながる恐れも。 この記事では、水泳によって股関節に痛みが生じる主な原因と、その対処法について詳しく解説します。 水泳によって股関節が痛くなる原因や治療法まで把握して、水泳を無理なく長く楽しむための知識を身につけましょう。 水泳で股関節が痛くなる主な原因 水泳は全身運動として健康に良いスポーツですが、フォームなど何かしらの問題があると、股関節に痛みを引き起こすことがあります。 本章では、水泳によって股関節に痛みが生じる以下の原因について詳しく解説します。 オーバーユースや筋膜の緊張 股関節インピンジメント 股関節唇損傷 これらの症状を早期に発見・対処して、水泳を長く楽しみましょう。 オーバーユースや筋膜の緊張 オーバーユース(使いすぎ)による股関節の痛みは、とくに長時間・高頻度のトレーニングを行う競泳選手に多く見られる症状です。 水泳では股関節を繰り返し動かすため、周辺の筋肉や筋膜に負担がかかり緊張状態になりやすく、これが長期間続くと股関節周辺に痛みを引き起こすことがあります。 このような症状は、適切な筋膜リリースやストレッチによって改善できる可能性があります。 また、痛みを予防するためにも水泳前後のウォームアップやクールダウンを行い、あわせてトレーニング量の調整にも意識して取り組みましょう。 股関節インピンジメント 股関節インピンジメントは、大腿骨頭と臼蓋(股関節の窪み)の間で骨同士が衝突することで、股関節の可動域が制限される状態を指します。 水泳、とくに平泳ぎのキック動作では股関節の屈曲・外旋・内転といった複雑な動きが繰り返されるため、股関節インピンジメントを引き起こす要因となることがあります。 股関節インピンジメントになると、膝を抱え込むように股関節を内側へ曲げる動作や、仰向けであぐらを組むようなときに痛みを感じることが多いです。 この症状は通常のX線写真では見つけにくいため、CTやMRI検査、関節鏡検査が行われます。 股関節インピンジメントの治療では、運動を控えることが基本です。 また薬物療法や関節内注射でも改善する可能性がありますが、重症の場合は手術が必要なこともあります。 股関節唇損傷 股関節唇損傷は、大腿骨頭と臼蓋(股関節の窪み)の間にある股関節の安定性と滑らかな動きを支える関節唇が傷ついた状態です。 水泳における強い屈曲・回旋動作が、この関節唇に負荷をかけ、損傷を引き起こすことがあります。 主な症状は股関節や足の付け根の痛みで、股関節を曲げると痛みが強くなります。 放置すると変形性股関節症に進行する可能性が高くなる場合もあるため、早期の治療が重要です。 初期段階では安静や消炎鎮痛剤、理学療法が中心となりますが、症状が続く場合は手術も検討されることもあります。 水泳の中でも平泳ぎは股関節に痛みが出やすい 水泳の代表的な泳法の中でも、とくに平泳ぎは股関節に負担がかかりやすいとされています。 平泳ぎのキック動作は「蛙足」とも呼ばれ、以下のように複合的な動きを繰り返し行います。 屈曲:足を引き寄せるときに股関節を前方に曲げる 外旋:膝を外に開く動作 内転:蹴り出すときに足を内側に寄せる動き この一連の動きの繰り返しによって、股関節唇損傷やインピンジメントを引き起こす一因になる可能性があります。 しかし、適切な対策を取ることで、平泳ぎによる股関節への負担を軽減することが可能です。 まず、正しいフォームを身につけることが重要で、過度に膝を開きすぎない、蹴り出しの際に足首をしっかり曲げるなどの点に注意しましょう。 また、水泳前後のストレッチを丁寧に行い股関節周囲の柔軟性を高めるとともに、筋力強化トレーニングを取り入れることで関節の安定性を向上させ、負担を分散することができます。 これらの対策を日常的に取り入れて、股関節を痛めないように予防しましょう。 股関節の痛みに対する治療方法 股関節の痛みに対する治療方法としては、主に次の2つがあります。 保存療法 手術療法 症状の程度や原因によって、適切な治療法が選択されます。 保存療法 水泳による股関節の痛みに対しては、手術を行わずに症状の改善を目指す「保存療法」が選択されることが一般的です。 保存療法では、まず活動の制限を行います。 痛みを引き起こす動作、とくに平泳ぎなどの股関節に負担のかかる泳法を一時的に控えることで、炎症を抑え組織の回復を促します。 薬物療法も効果的で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用剤を使用して、痛みや炎症を抑えます。 症状が強い場合には、ステロイド剤や麻酔薬の関節内注射も治療の選択肢です。 また、理学療法も治療において重要な位置を占めており、専門のセラピストによる股関節周囲の筋力強化やストレッチング、筋膜リリースなどが行われます。 理学療法により、股関節の安定性が高まり、痛みの原因となる動きの改善が期待できます。 ご自身による日常生活での自己管理も大切で、適切なウォームアップやクールダウン、正しいフォームの習得、そして十分な休息を取ることで、症状の再発を防ぐことができます。 手術療法 保存療法で症状が改善しない場合には、手術療法が検討されます。 股関節の問題に対する代表的な手術方法としては、股関節鏡手術(内視鏡手術)があります。 股関節鏡手術(内視鏡手術)は小さな切開から内視鏡を挿入して行う低侵襲な手術です。損傷した関節唇の修復や、インピンジメントを引き起こす骨の突出部分を削る処置などが行われます。 股関節唇損傷の場合は、股関節鏡視下股関節唇形成術という手術が行われます。可能な限り本来の組織を温存することを目指して、傷ついた股関節唇を縫い合わせる手術です。 また、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)に対しては、大腿骨頭の出っ張り(カム変形)を削る処置も組み合わせて行われます。これにより股関節唇への負担を軽減し、変形性股関節症への進行を防ぐことができます。 股関節鏡手術は入院期間も短く、術後のリハビリテーションを経て多くの場合、スポーツ活動への復帰が可能です。ただし、完全な回復には数か月を要することがあります。 より重度の変形性股関節症に進行している場合には、人工股関節置換術などのより大きな手術が必要になることもあります。 【まとめ】水泳時に股関節が痛む場合は放置せず、医療機関へ受診を 水泳は全身運動として健康に良いスポーツですが、適切なフォームや対策なしでは股関節に痛みを引き起こすことがあります。 股関節の痛みを防ぐには、フォームの見直しや運動前のウォームアップ、休息を設けるなどの対策が必要です。 症状によっては、運動の制限や薬物療法で改善できますが、重症の場合は手術が必要になるケースもあります。 手術を避けたい、入院せずなるべく短期間での治療をしたいとお考えの方は、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。 当院「リペアセルクリニック」では、股関節の痛みに対して2つの再生医療「幹細胞治療」と「PRP療法」を行っています。 どちらも患者さま自身の幹細胞・血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。 また、手術・入院を伴わないため、早期のスポーツ復帰も目指せます。 「幹細胞治療」と「PRP療法」について詳しく知りたい方は、当院へお気軽にご相談ください。
2019.09.02 -
- ゴルフ肘
- テニス肘
- 肘
- スポーツ医療
テニス肘の痛みを和らげるために、低周波治療器の貼り方についてお悩みの方もいるのではないでしょうか。 低周波治療器とは、電気刺激を利用して筋肉の痛みをやわらげる医療機器のことで、パッドを貼って微弱な電流を体に流して治療を行います。 そのため、痛みを感じる部分を中心に貼ることが重要です。 本記事では、テニス肘における低周波治療器の貼り方について解説します。 低周波治療器以外の治療法も紹介しているため、テニス肘の痛みを和らげたい方は、ぜひ参考にしてください。 また、長引くテニス肘の痛みには、先端医療である再生医療も選択肢の一つです。 当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、肘の痛みを手術せずに治療できる再生医療に関する情報や症例を配信しております。 「現在の治療で期待した効果が出ていない」「テニス肘を早く治したい」という方は、ぜひ再生医療について確認してみてください。 テニス肘における低周波治療器の貼り方 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、上腕骨の遠位部に位置する外側上顆で炎症が起きて発症します。 低周波治療器は、痛みを感じている部分に貼るのが重要なので、テニス肘の症状を緩和したい場合は肘の外側に貼りましょう。 主に以下のような効果が期待できます。 血流が良くなり、疲労物質の排出が促進される 筋肉の緊張が緩和される 外側上顆や内側上顆への負担が軽減される 炎症が強い急性期には適していない場合が多く、症状が落ち着いてきた亜急性期から慢性期に使用しましょう。 治療前に必ず医師の診断を受け、適切な治療法と時期を判断してもらうのが重要です。電気刺激を行うと以下の効果が得られます。 テニス肘の治療方法【低周波治療器以外】 テニス肘の治療法として、以下の方法も効果的です。 ストレッチを行う 冷やす・温める 病院で温熱治療を受ける 運動療法を行う 患部をマッサージする 整体に通う ステロイド注射を打つ 手術を受ける 自分の状態に合わせて取り入れてください。 ストレッチを行う テニス肘は前腕の筋肉が緊張したり過度な負担がかかったりして発生します。 筋肉が硬くなっているため、前腕の筋肉を伸ばすストレッチが有効です。 テニス肘の場合はとくに手首の伸筋群(前腕)を入念にストレッチしましょう。肘を伸ばした状態で、手首を掌側(手のひら)に反対の手で手首を曲げると手首の伸筋群のストレッチが出来ます。 逆に、手首を伸展方向に他動的に曲げると前腕の屈筋群のストレッチが出来ます。どちらのストレッチも、肘の関節が伸びている状態で行ってください。 前腕の屈筋群も伸筋群も、肘関節と手関節をまたぐ筋肉なので、肘が伸びていないとストレッチ効果が半減します。 冷やす・温める テニス肘の症状に対するケアは、状態によって異なります。 自宅で患部を温める場合は、以下のケア方法がおすすめです。 お風呂でゆっくり温まる 電子レンジで温めた蒸しタオルを患部に当てる カイロを活用する また、慢性期では患部を冷やさないよう注意が必要です。長袖を着用したり、上腕から前腕まで覆うサポーターを使用したりするのも効果的です。 いずれの場合も、症状の程度や経過によって適切なケア方法が異なるため、必ず医師の診断を受け、指示に従いましょう。 自己判断でケアを行うのではなく、専門家のアドバイスを受けながら、症状に合わせた適切な対応を心がけてください。 病院で温熱治療を受ける 自宅で患部を温めるだけでなく、整形外科や接骨院などで受けられる温熱療法も効果的です。 筋肉を温めるという点ではまったく同じですが、温熱治療器を使えば芯の部分からしっかり温められます。赤外線治療器なら、体表面よりも深部を温められるため、効率的です。 さらに、ホットパックという道具を使うと温度を一定に保てるので、自宅で行うよりもよく温まります。 運動療法を行う 肘関節の屈曲や伸展、手関節の屈曲や伸展、手指の屈曲や伸展といった動作をスムーズに行うために、運動療法を受けるのも効果的です。運動療法は患部外を含めた練習動作も行います。 スポーツにおける体の動かし方が間違っているとすぐに再発してしまいます。また、テニス肘やゴルフ肘の痛みが軽減してからは、筋力強化も重要です。 前腕の屈筋群と伸筋群、肘の屈曲動作に関わる筋肉を強化すると、テニス肘やゴルフ肘の再発を予防できます。最初はあまり大きな負荷でやらずに、500mlのペットボトルを上げ下げする程度の運動がおすすめです。もし、痛みや違和感を感じた場合は、直ちに運動を中止し、医療専門家に相談しましょう。 患部をマッサージする 前腕の屈筋群や伸筋群をマッサージしたり、上腕・肩甲骨周辺のマッサージをしたりするのも重要です。マッサージによって筋肉の緊張を取り除き、外側上顆にかかる牽引力を軽減できます。 肩甲骨周りの動きが制限されると肩から指先にかけて負担がかかるため、上腕や肩甲骨周辺までマッサージを行います。 マッサージをあまりにも強い力でやりすぎると、かえって自分の体を守ろうとして筋肉が硬くなる可能性もあるため、マッサージが強ければ強いほど良いわけではありません。 整体に通う テニス肘の治癒を早くするために、全身のバランスも整えましょう。背骨の歪みによって、前腕に大きな負担をかける場合があります。 テニス肘が発症する理由は、単に前腕の屈筋群や伸筋群の使い過ぎだけでなく、体のバランスの崩れも考えられます。 たとえば猫背やストレートネックなど、肩甲骨の動きが悪くなるような姿勢だと、上肢全体の動きが悪くなります。通常よりも前腕の屈筋群や伸筋群に大きな負担をかけるので、テニス肘のリスクが高まるのです。 肘や前腕の治療を集中的に行っても痛みがなかなか軽減しない場合は、医師に相談した上で、姿勢や体全体のバランス評価を受けることを検討しましょう。医師の指示のもと、理学療法士や整体師など他の専門家の助言を得ると、より包括的なアプローチが可能です。 早期治癒と再発予防を目指す場合は、医師の診断と指示に基づいて、適切なリハビリテーションプログラムや姿勢改善エクササイズを取り入れるのが効果的です。 ステロイド注射を打つ テニス肘は、上腕骨外側上顆炎とも言われており、肘の外側に痛みが出る病気です。痛みが強い場合はステロイド注射をする場合もあります。 ステロイド注射は頻繁に打つと肘の腱が弱まるため、打てる回数が決まっています。打てる回数は年に3~4回程度で、1回目の注射から3カ月間の期間を空けてください。 ステロイド注射は即効性があり、数日から数週間効果が持続します。湿布などで痛みを取り除けず日常生活に支障を来す場合は、医師に相談してみましょう。 手術を受ける テニス肘は、症状が重症化すると手術が必要になる可能性があります。テニス肘は進行すると腕を曲げきれない、伸ばしきれないなどの症状が出るケースがあります。 症状がでるとスポーツはもちろん、日常生活にも大きな支障をきたしかねません。そのため、症状が進行した患者さんには、手術による治療が勧められています。 テニス肘になりやすい人の特徴 テニス肘になりやすい人や再発しやすい人には、以下の特徴があります。 テニス初心者 肘以外に痛みを抱えている人 姿勢が悪い人 テニス肘を再発予防するためにも、ぜひ押さえておきましょう。 テニス初心者 初心者の場合、ラケットのスイング動作を上肢の力に頼って行う人が多いです。 長年経験している方や、スポーツが上手い方のは、体幹の力を上手く使って体全体を回転させて打ちにいけますが、出来ないうちは肘や手首に負担がかかります。 結果的に外側上顆に付着する筋肉へと負担が集中するため、痛みを発症しやすいです。 肘以外に痛みを抱えている人 肩や腰など、前腕以外に痛みを抱えている人はテニス肘のリスクを高めてしまいます。テニスは回転動作を行うスポーツのため、腰に不安があると体の回転が甘くなります。 その分パワーを発揮するには上肢の筋力を発達させなければなりません。その結果前腕に力が入り、テニス肘を発症しやすくなってしまうのです。 日常生活の中でも、肩に痛みがあれば腕が上がりにくくなります。例えば腕を上げて行わなければならない洗濯物を干す動作をすれば、前腕に余計な負担をかけてしまうでしょう。 なお肘だけを治療しても改善に時間がかかります。肘以外の痛みの治療も並行して行いましょう。 姿勢が悪い人 背骨のバランスが悪い人は、肩を中心とした上肢の筋肉に慢性的な負担がかかり続けます。 猫背などのように、横から見たときに頭の位置が体幹からかなり前に出ている人は、首から背中にかけて日常的に負担をかけ続けています。 その結果肩甲骨の動きが悪くなって肩の可動域が狭まり、肘から先にも疲労を溜めやすくなるのです。さらに姿勢が悪い人は背骨のしなやかさが失われている場合が多く、仰向けや横向きになったときに体が休まりません。 すると睡眠時の回復力が低下してしまうので、疲れが抜けにくく筋肉の疲労を蓄積してしまいます。疲労からテニス肘の症状につながるケースがあるので、姿勢の改善はとても重要です。 テニス肘と低周波治療器に関するよくある質問 テニス肘と低周波治療器に関するよくある質問にお答えしていきます。以下を参考にして、効果的に低周波治療器を使用しましょう。 低周波治療器は使いすぎるとどうなりますか? 低周波治療器の効果的な使い方を教えてください テニス肘の安静期間はどのくらいですか? 低周波治療器は使いすぎるとどうなりますか? 長時間の治療や出力を強くしすぎた場合は、過剰な刺激になってしまい筋肉が疲労します。※ ※出典:PubMed 心地良いと感じる強さで1カ所あたり3〜15分程度行いましょう。 症状に合わせて刺激時間を30分程度に長くしても問題ありませんが、人によっては疲れを感じやすいため注意が必要です。 低周波治療器の効果的な使い方を教えてください 低周波治療器を効果的に使うためには、正しいパッドの貼り方と電気刺激の強度を知ることが重要です。 パッドは痛みのある部位に貼りましょう。痛みのある部位に合わせて上下または左右で挟むように貼るとより効果的です。 強さは、強すぎず心地良いと感じる強さで実施してください。※ ※出典:PubMed テニス肘の安静期間はどのくらいですか? テニス肘は原因となった動作を行うと痛みが出るので、安静にする必要があります。 軽い場合は数週間程度で治りますが、症状によっては2〜3カ月ほど安静期間が必要です。重症になると、さらなる安静期間をすごさなければなりません。 テニス肘の可能性がある人は、早期に医療機関を受診して医師の診断を受けましょう。 低周波治療器を効果的に貼ってテニス肘の痛みを改善しよう 本記事では、テニス肘の治療法として有効な低周波治療器のパッドの貼り方や、それ以外に併用できるおすすめの治療法を解説しました。 発症時期に合わせて適切に低周波治療器を使用すると、テニス肘の痛みの改善が期待できます。 現在受けている治療で期待した効果が出ていない方や、テニス肘を手術せずに治したい方は、先端医療である再生医療をご検討ください。 再生医療は、患者様の細胞や血液を用いて、損傷した組織や身体機能の再生・修復を図る治療です。 \テニス肘に対する再生医療について解説/ https://youtu.be/jy2_O_mEvGI?si=gakqvr0PwpUYszmz また、当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、肘の痛みを手術せずに治療できる再生医療に関する情報や症例を配信しております。 「つらいテニス肘の痛みを早く治したい」という方は、ぜひ再生医療について確認してみてください。 \公式LINEでは再生医療に関する情報や症例を公開中!/
2019.04.12 -
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日常生活で特に思い当たる原因がないのに、ジンジンとした痛みや違和感を抱える方は少なくありません。 このような痛みが続くと、普段の動作に支障をきたしたり、不安を感じたりすることもあります。 本記事では、肘の外側が痛む原因として考えられる上腕骨外側上顆炎(テニス肘やスマホ肘)や神経痛について詳しく解説します。 肘の痛みを抱える方が少しでも安心して対策を講じられるよう、お役立ち情報をお届けします。 何もしてないのに肘(外側)が痛む原因 何もしていないのに肘の外側が痛む主な原因は、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)と呼ばれる肘の病気です。 別名でテニス肘やスマホ肘とも呼ばれ、老若男女問わず発症する可能性があります。 上腕骨外側上顆炎の概要や治療法、予防法について詳しく解説します。 上腕骨外側上顆炎(テニス肘・スマホ肘)とは 上腕骨外側上顆炎とは、別名でテニス肘・スマホ肘と呼ばれる病態です。上腕骨にある外側上顆で炎症が起きる症状を指します。 上腕骨外側上顆炎の根本的な原因は、肘関節よりも前腕の筋肉群で生じる過度な負担です。手関節や手指の伸展動作に関わる筋肉で、前腕の伸筋群と呼ばれます。 前腕の伸筋群は上腕骨の外側上顆から前腕を通過し、手関節の先まで通っています。そのため、前腕の伸筋群を使いすぎによるダメージの蓄積が外側上顆にも負担をかけているのです。 ぶつけていないのに肘が痛くなるのはなぜ? 手関節や手指を繰り返し動かすことで前腕伸筋群が伸張を繰り返し、その牽引力が外側上顆の一点にかかります。 これが長時間・長期間続くことで徐々に外側上顆が炎症を起こし、結果的に伸ばすと痛い・曲げると痛いといった何もしなくても肘の外側に異常が生じるのです。 前腕の筋肉を酷使するテニスプレーヤーに多い症状であることから、テニス肘と別名がついています。 また、長時間にわたる操作でスマホを持つ(支える)前腕の筋肉が硬直し、外側上顆に負担をかけることからスマホ肘とも呼ばれています。 そのため、前腕をよく使うスポーツ選手はもちろん、何気ない日常生活から万人が発症します。 肘関節の構成 肘の関節は、上腕骨・前腕の橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)の3つの骨で構成されています。 肘関節を詳細に分類すると3つの関節が1つの関節包の中に納まっています。 肘関節を動かす最も大きな筋肉は上腕二頭筋です。肘関節の屈曲と前腕の回外の運動に関わっています。 上腕二頭筋は肩甲骨から上腕を通過して前腕まで通っているため、肩関節の異常が肘関節に影響する可能性もあります。 また、肘関節伸展に関わる主な筋肉は上腕三頭筋です。これも肩甲骨から上腕を通過して前腕まで通っています。 肩関節から肘関節にかけてコントロールする筋肉なので、肩関節の使い方次第で肘関節に影響を及ぼします。 上腕骨外側上顆炎の症状 上腕骨外側上顆炎はどなたでも起こり得る症状ではありますが、30~50代の女性の発症率が高い傾向にあります。筋力の弱さやホルモンバランスが関係しているとされています。 外側上顆炎は伸筋群が原因であるにも関わらず、手関節の伸展や手指の伸展以外の動作でも肘の外側に痛みを発生させます。 日常生活の動作では、以下の状況で痛みを感じます。 打撲や捻挫のように、一度の外力で急に外側上顆炎になることよりも、日常生活の動作の中で少しずつ負担を蓄積して発症するケースが多いのが特徴です。 そのため、治療が長期間に及ぶことも珍しくありません。 上腕骨外側上顆炎の治療方法 医療機関での上腕骨外側上顆炎の治療方法を紹介します。 上記の治療方法は、症状の程度や患者さんの状態に応じて選択されます。 とくに、再生医療は組織の修復や回復を促進する方法として、効果が期待されています。 1.電気治療 痛みがある肘の外側・前腕の筋肉を中心に行う、低周波や干渉波の電気治療が行われることがあります。 主な目的は前腕の筋肉で起きている緊張を取り除くことと、血流を良くすることです。 しかし、上腕骨外側上顆炎は炎症かつ筋肉の緊張による牽引力が原因であることから、稀に電気治療によって悪化してしまうケースもあります。 電気刺激が強すぎると、かえって自分の体を守ろうとする防衛機能が働き、逆に筋緊張を強めてしまうのです。 同反応が見られた場合は、電気刺激を弱めるか別の保存療法を選択します。 2.手技療法 前腕の筋肉をマッサージやストレッチでほぐすことが主な手技療法です。 上腕骨から指先まで通っている伸筋群もあるため、前腕だけでなく手指の動きを良くすることにもつながります。 手指の動きが良くなれば必然的に外側上顆の負担は減り、肘の外側の痛みが改善する仕組みです。 3.温熱療法 外側上顆炎の患者の中には、お風呂に入った後に少し痛みが軽減する方もいます。 これは、温められることによって血流が良くなり、前腕伸筋群の緊張が和らいだことが要因です。 そのため、赤外線などで外側上顆から前腕にかけて温熱療法を行いつつ、手技療法や運動療法をあわせて行うことで改善を早めます。 4.運動療法 運動療法は、肘関節の正しい動かし方を身につけたり、手関節や手指関節の動きをスムーズにしたりとさまざまな療法が存在します。 もちろん、痛みの程度を見ながら無理のない範囲で徐々に行うことが大切です。 肩関節や肩甲骨の動きが間接的に肘関節に影響を及ぼすため、肩関節の動きを良くして可動域を広げることが外側上顆炎の治療において重要です。 5.背骨の矯正 背骨や骨盤のゆがみを改善することで、外側上顆炎の改善効果が期待できます。 矯正によって姿勢が整うと、肩甲骨や胸椎の動きが正しくスムーズになり、肩関節の可動域が広がります。 肩関節の可動域が広がることで、肘関節への負担が軽減され、結果として手関節や手指の動きがスムーズになるのです。 外側上顆炎の治療では、肘だけに焦点を当てるよりも、背骨のゆがみを含めた全身のバランスを整える方が早期の改善につながりやすいとされています。また、再発予防にも効果的です。 6.再生医療 再生医療は幹細胞や血液を活用して損傷した組織の修復や再生を促進する治療法です。 上腕骨外側上顆炎のような慢性的な炎症や組織損傷に対して、有効な治療方法の一つとして挙げられます。 再生医療は従来の治療法では改善が難しい症例にも効果が期待され、早期の症状緩和や機能回復が目指せます。また、自身の細胞を利用する再生医療は副作用が少ない点も特徴です。 肘の痛みが長引いている場合や、より根本的な治療を検討している方は、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。 上腕骨外側上顆炎の予防方法 上腕骨外側上顆炎は一度なってしまうと治癒まで比較的時間がかかる症状であり、一度良くなった後も再発するケースが多いです。 そこでこの項目では、自分でできる上腕骨外側上顆炎の予防方法をご紹介します。 肘の痛みにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。 1.ストレッチ 前腕の伸筋群に疲労が蓄積することで外側上顆炎のリスクが高まることから、こまめな前腕のストレッチが予防に有効です。 外側上顆炎を発症した初期はストレッチの動作でも痛みを感じることがあるので痛みが軽減してから習慣にしてください。 やり方は簡単で、手関節の屈曲と伸展方向にゆっくりと伸ばすだけです。 しかし、伸筋群のみのストレッチでは外側上顆炎の再発予防としては不十分です。 屈筋群に緊張があるままだと、手関節伸展がしにくくなり、余計な筋力を発揮させて伸展動作を行わなければならなくなります。 外側上顆の負担を増す原因になるので、屈筋群もあわせてストレッチしておくことが大切です。 2.肘と前腕を温める 冷えは筋肉の緊張を生みやすいので、基本は温めるようにした方が改善の助けになります。 お風呂でしっかり温まることはもちろん、電子レンジなどで蒸しタオルを作って肘の外側から前腕にあてておくだけでも良いセルフケアです。 安価な物でも良いので、肘全体を覆うタイプのサポーターをするのも冷え対策につながるためおすすめです。 神経痛によって肘の外側が痛むこともある! 首から上肢にかけて通っている神経が圧迫されることによって肘の外側で痛みを発生させている場合もあります。 この項目では、肘の痛みの原因となる神経痛の概要や治療方法についてご紹介します。 頚椎ヘルニア・神経痛とは? 神経を圧迫する主な原因の一つに、頚椎ヘルニアが挙げられます。 この疾患は、神経が圧迫されることでさまざまな症状を引き起こします。 姿勢の悪いデスクワーク、バイクの長時間運転などにより、頚椎ヘルニアになってしまうと上記のような症状が現れます。 また、姿勢の悪さから頸椎ヘルニアになった場合は、肩甲骨の内側や外側の痛みや首自体の痛みも同時に感じるケースが多くあります。 肘の外側の痛みに加え、体幹に近い部位に痛みが点在している場合は、神経症状が原因である可能性を考慮することが重要です。 頚椎ヘルニア・神経痛の治療方法 肘の外側で出る痛みが神経痛であった場合、肘の動きの改善や前腕・上腕のマッサージは根本的な治療にはなりません。 神経が発生している背骨から治療していく必要があります。 この項目では、頚椎ヘルニア・神経痛の主な治療方法を5つご紹介します。 1.薬物療法 痛み止めや、ビタミン剤が薬物療法として主に使用されます。 あくまでも薬物療法は鎮痛作用を促すためのものです。 完治にはつながりにくいものの、日常生活に支障をきたす辛い痛みを防ぐ補助的な目的で利用します。 2.温熱療法 神経痛においても温めることが有効な治療方法です。 血流が良くなる上に筋肉の緊張が取れるため、神経の圧迫の軽減につながります。 3.牽引治療 整形外科では、頚椎を牽引して治療することが多いです。 牽引により背骨全体の筋肉がストレッチされ、神経の通り道を広くすることに期待できます。 しかし、牽引治療だけでは完治に至らない場合が多いです。 4.整体 姿勢を改善して首の負担を取り除くことや、関節の動かし方を改善して頚椎から出る神経を圧迫しないような体作りをしていきます。 手術以外の方法の中でも有効な治療方法であり、早期改善と再発予防につながりやすいです。 5.手術療法 スポーツ選手など特別な事情がある場合を除いては稀な選択と言えますが、頚椎の手術も有効な治療のひとつです。 頚椎のシビアな場所だけに、一般的には最終手段として選択される治療方法です。 肘に痛みが生じている際のストレッチ 肘の痛みが生じている際には、適切なストレッチを行うことで症状の緩和が期待できます。 以下に、肘の外側および内側に効果的なストレッチ方法をご紹介します。 肘の外側に効果的なストレッチ 肘の外側の痛みを和らげたいときは、下記のストレッチを試してみてください。 ストレッチは無理をせず、痛みを感じない範囲で行いましょう。 肘の内側に効果的なストレッチ 続いては、肘の内側の痛みを和らげるストレッチです。 ストレッチを行う際は、無理のない範囲でゆっくりと行い、痛みが強くなる場合は中止してください。 また、症状が長引く場合は専門医にご相談ください。 肘が痛む際に自分でできる対処法はある? 肘の痛みを和らげるために、自宅で簡単にできる対処法をいくつかご紹介します。 対処法 効果と説明 サポーターの使用 肘を固定し、動きを制限することで負担を軽減。炎症や痛みの緩和が期待でき、作業や運動中に効果的。 湿布を貼る 消炎鎮痛効果のある湿布で炎症や痛みを緩和。冷感タイプは急性の痛みに、温感タイプは慢性的な痛みに適している。 テーピング 筋肉や関節をサポートして痛みを軽減。専門家に貼り方を教わると効果的で、運動や日常動作の負担を軽くする。 安静にする 痛みが強い場合は肘を安静に保ち、過度な動作を避けることで症状を悪化させない。負荷のかかる作業や運動を控える。 冷却または温める 急性の痛みにはアイスパックで冷却、慢性的な痛みには温める方法が有効。痛みのタイプに応じて使い分ける。 これらの対処法は一時的な痛みの軽減に役立ちますが、痛みが長引く場合や悪化する場合は、医療機関での診察を受けることをおすすめします。 何もしてないのに肘の外側が痛む方からよくある質問 肘の外側が何もしていないのに痛む症状について、多くの方が疑問や不安を抱えています。 そこでこの項目では、よくある質問に対して医師の観点から回答します。 これらの質問に対する正しい理解を深めることで、症状への不安を軽減し、適切な対応が取りやすくなります。 気になる症状がある場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。 何もしていない肘の痛みはガンの可能性もある? 結論から言えば、肘の痛みがガンである可能性は非常に低いですが、完全に否定はできません。 肘の痛みの大半は、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)や神経痛によるものです。 ただし、痛みが長期間続く、急激な体重減少を伴うなどの場合はガンの可能性も考えられるため、専門医の診断を受けることをおすすめします。 ガン以外にも、関節リウマチなどの自己免疫疾患の可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。 不安な症状がある場合は、まずは医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けましょう。 ジンジン・ズキズキする肘の痛みはすべて神経痛やテニス肘? ジンジンやズキズキといった肘の痛みは、必ずしもすべてが神経痛やテニス肘が原因ではありません。 肘部管症候群・滑膜ひだ症候群・単純な筋肉の張りなど、考えられる疾患はさまざまです。 正確な診断と適切な治療のためには、症状の詳細な観察と医師による専門的な診断が重要です。 自己診断は避け、持続する痛みがある場合は整形外科をはじめとする医療機関を受診しましょう。 何もしていない肘の痛みは内側にも発症する? 肘の痛みは外側だけでなく、内側にも発症する可能性があります。 何もしていないのに肘の内側に痛みを感じる主な原因として、上腕骨内側上顆炎が考えられます。 この症状は、手首を曲げる筋肉や前腕の筋肉が肘の内側の骨(上腕骨内側上顆)に付着する部分で炎症を起こすことで生じます。 とくに、ゴルフやテニスのバックハンド、野球の投球動作など手首を曲げる動作を繰り返す人に多く見られます。 また、デスクワークなどで長時間同じ姿勢を取り続けることでも発症することがあります。 本記事で紹介した上腕骨外側上顆炎の内側版と覚えていただいても差し支えありません。 何もしてないのに肘の外側が痛む原因まとめ 肘の外側で起きる痛みは、肘や前腕で問題が起きている場合と頚椎など中枢に近い部分で問題が起きている場合の2種類があります。 両者は治療方法も異なるので、どこで問題が起きているのか見極めるのが大切です。 何もしていないのに発症する外側の肘の痛みを早期に改善したい方は、医療機関を受診し専門医に相談するよう心がけましょう。 また、当院でも肘の痛みに関するご相談を受け付けています。どうぞお気軽にお問い合わせください。
2019.04.08