睡眠不足による免疫力低下のメカニズムとは?睡眠の質を高める方法を解説【医師監修】
公開日: 2020.07.11更新日: 2025.06.30
「寝不足が続くと決まって体調を崩す」という方も多いでしょう。
近年の研究では、睡眠不足がなぜ免疫力を低下させるのか、その科学的なメカニズムが解明されつつあり、質の高い睡眠を確保するためのアプローチも注目されています。
本記事では、「睡眠不足による免疫力低下のメカニズム」について、ホルモンや自律神経の働きといった観点から解説します。
- 睡眠不足で免疫力が低下するメカニズム
- 睡眠の質を高めるための6つの方法
- 免疫力を高める選択肢としての免疫細胞療法
睡眠不足で体調を崩しやすいと感じている方、その原因と対策を詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
また、当院リペアセルクリニックでは、治療によって免疫力アップを目指せる免疫細胞療法をご提供しています。
「免疫力低下が気になる」「簡単に免疫力を上げたい」という方は、ぜひ当院へご相談ください。
目次
睡眠不足による免疫力低下のメカニズム
多くの人が感じている「睡眠不足と体調不良の関係」ですが、その裏には、免疫力の低下という科学的なメカニズムが隠されています。
本章では、睡眠不足が免疫力低下を引き起こすメカニズムについて、以下の2つの側面から解説していきます。
私たちの体を守る免疫システムと睡眠との深い関わりを知ることで、日々の睡眠を大切にする意識がより一層高まるはずです。
成長ホルモンの分泌量が低下して自然免疫の働きが低下する
睡眠中には、昼間の活動で傷ついた細胞を修復するための成長ホルモンが多く分泌されます。
成長ホルモンは免疫細胞の維持・強化にも役立ちますが、睡眠不足になると十分に分泌されず、免疫細胞(NK細胞など)の減少を招きます。
その結果、ウイルスや細菌に対する自然免疫の働きが低下し、免疫力が落ちてしまいます。
自律神経が乱れて免疫物質の分泌量が低下する
睡眠不足が引き起こす心身へのストレスは、「自律神経」のバランスを崩してしまいます。
項目 | 詳細 |
自律神経の乱れ | 睡眠不足のストレスにより、活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」の切り替えがうまくいかなくなる |
免疫物質の減少 | 副交感神経の働きが低下し、鼻や喉の粘膜で病原体をブロックする「免疫抗体IgA」という免疫物質の分泌量が減少。 その結果、ウイルスなどに感染しやすくなる。 |
免疫細胞の働きが低下 | 副交感神経が十分に働かないと、末梢の血流が悪化。 パトロール役である白血球(免疫細胞)が体の隅々まで行き渡りにくくなり、感染が起きた場所に集まりにくくなる。 |
さらに、慢性的な寝不足によるストレスは、「アドレナリン」などのストレスホルモンの過剰な分泌を招きます。
アドレナリンには免疫の働きを抑制する作用があるため、病原体への抵抗力がさらに低下してしまう、という悪循環に陥ります。
また、次の記事ではストレスで免疫力が低下する原因や免疫力を高める方法について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
睡眠の質を高めて免疫力を向上させる方法
本章では、今日からでも始められる、睡眠の質を高めるための方法を6つご紹介します。
忙しい毎日の中で、理想的な睡眠時間を確保するのは難しいと感じる方も多いかもしれません。
しかし、睡眠は「長さ」だけでなく「質」も重要です。
ご自身のライフスタイルに合わせて、取り入れやすいものから試してみてください。
体内時計を整えて規則正しい生活を送る
私たちの体に備わっている「体内時計」を整え、規則正しい生活を送ることが、質の高い睡眠と免疫力の向上につながります。
体内時計を整えて規則正しい生活を送るポイント
- 毎朝同じ時間に起き、夜もできるだけ同じ時間に就寝する
- 朝起きたら太陽の光を浴びて体内時計をリセットする
- 朝食をきちんと摂り、体を目覚めさせ一日のリズムを作る
週末になるとつい寝坊してしまいがちですが、平日との起床時間の差が大きいと、体内時計は簡単に乱れてしまいます。
休日の寝坊はほどほどにし、規則正しい生活を心がけましょう。
睡眠の3時間前までに食事を済ませる
質の高い睡眠を確保し、体をしっかりと休ませるためには、就寝の約3時間前までに夕食を済ませることが大切です。
就寝前の食事に関するポイント
- 食後すぐに眠ると体は消化活動を優先し、脳や体が十分に休まらず眠りが浅くなる
- 胃腸の消化活動が落ち着くまでには、一般的に食後約3時間かかるとされている
- 夕食が遅くなる場合は、脂肪分の多い食事は避け、うどんやお粥、スープなど、消化の良い軽いメニューにする
寝る前の食事のタイミングと内容を少し意識するだけで、睡眠の質は変わってきます。
次の記事では、免疫力をあげる食べ物について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
寝る前にスマホやパソコンを使わない
就寝前にスマホやパソコンなどの画面を見る習慣は、寝つきを悪くしたり睡眠の質を低下させたりする原因となります。
就寝前のスマホやパソコンの注意点
- スマホ等のブルーライトは脳を覚醒させる
- 睡眠を促すホルモン(メラトニン)の分泌が抑えられる
- 結果、寝つきが悪くなり、睡眠の質が低下
- 就寝1~2時間前には画面を見ないようにするのが理想
ベッドに入るときはスマホを手元に置かない、といった簡単な工夫だけでも、寝つきが良くなることが期待できます。
ぬるめのお風呂で身体を温める
ぬるめのお風呂に浸かり、身体を温めることも大切です。
質の高い睡眠のための入浴法
- 就寝の1~2時間前に、38~40℃のぬるめのお湯に5~20分ほど浸かる
- 入浴で一度上がった体温が下がる過程で自然な眠気を誘う
- 体の芯から温まり、筋肉の緊張がほぐれてリラックスできる
一方、42℃を超えるような熱いお湯に長時間入るのは、睡眠前にはおすすめできません。
熱いお湯は、体を活動モードにする神経(交感神経)を刺激してしまい、かえって目が覚めてしまうことがあります。
また、次の記事では免疫力アップにつながる入浴法について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
寝具などの就寝環境を整える
快適な睡眠のためには、寝室の温度や湿度・光・音といった環境づくりも重要です。
快眠のための就寝環境づくりのポイント
- 寝室の温度は18~22℃・湿度は50~60%に保つ
- 遮光カーテンなどを使い、部屋を暗く静かな環境に整える
- 自分の体格に合い、自然な寝姿勢を保てるマットレスや枕を選ぶ
また、人は寝ている間にコップ1杯程度の汗をかくといわれています。
通気性や吸湿性の良い素材の寝具やパジャマを選ぶことも、快適さを保ち、途中で目が覚めるのを防ぐためのポイントです。
適度な運動習慣を身につける
適度な運動を行うと体に心地よい疲労感が生まれ、夜の寝つきが良くなり、深い睡眠が得られやすくなります。
睡眠の質を高める運動のポイント
- 日中にウォーキングなどの適度な有酸素運動を行うと夜の眠りの質が高まる
- 運動は日中から夕方にかけて行い、就寝の3時間前までには終えるのが理想
- 寝る直前の激しい運動は体を興奮させてしまうため逆効果
- 無理のない範囲で楽しみながら運動を習慣として続けることが大切
継続的な運動習慣によって睡眠の質が高まれば、結果として免疫力の向上や、日中の疲労回復にも貢献してくれます。
また、次の記事では運動で免疫力アップできる理由や適度な運動量について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
睡眠不足に悩んでいる方は免疫細胞療法も選択肢の一つ
十分な睡眠が確保できず、免疫力の低下が心配な場合、免疫細胞療法を受けることも一つの選択肢です。
項目 | 詳細 |
治療の概要 | 人間が本来もっている免疫の力を人工的に高める治療法 |
治療の目的 | がん治療において、がん細胞と戦う免疫細胞の力を強化する目的の治療法が、免疫機能全般の強化にも応用されている。 |
具体的な方法 |
患者様ご自身の血液を少量採取し、その中からウイルスやがん細胞などと戦う働きをもつ免疫細胞を取り出す。 専門の施設で数週間かけて、免疫細胞を数億個から数千億個というレベルまで培養・増殖させ、さらに働きが活発になるように活性化させる。 パワーアップさせた自己の免疫細胞を点滴によって再び体内に戻す。 |
ご自身の細胞を用いるため副作用も少なく、体への負担も比較的軽い治療法とされています。
睡眠の質を高めて免疫力低下を防ごう
免疫力の低下を防ぐためには、ただ長く眠るだけでなく、「睡眠の質」を高めることが重要です。
まずは始めやすいものから取り入れてみましょう。
- 規則正しい生活で体内時計を整える
- 就寝前の食事やスマホの使用を控える
- ぬるめのお風呂でリラックスする
- 快適な寝室環境を整える
- 日中の適度な運動習慣
しかし、多忙な生活で十分な睡眠が確保できない、あるいは免疫力の低下が特に心配だという方もいるでしょう。
そのような方には、ご自身の免疫細胞を培養・活性化させて体内に戻すことで、免疫機能の向上を目指す「免疫細胞療法」という選択肢もあります。
まずは睡眠の質を高める工夫を続け、それでも改善しないお悩みがあれば、ぜひ当院へご相談ください。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師