ランニングは免疫力が下がる?免疫低下の原因や有効な運動量について医師が解説
公開日: 2020.04.18更新日: 2025.06.02
健康に良いイメージのあるランニングですが、走った後に風邪など体調を崩した経験はありませんか。
上記のような経験がある方は、ランニングが原因で免疫力が低下している可能性があります。
本記事では、ランニングで免疫力が下がる原因と、運動と免疫力の関係性について詳しく解説します。
- ランニングなどの運動と免疫の関係性
- ランニングで免疫力が下がる原因
- 免疫力向上に有効な運動量の目安
ランニングがどのように免疫機能に影響しているのかを知り、免疫力を向上させる適正なランニング量の参考にしてください。
目次
ランニングで免疫力が下がる?運動と免疫の関係性
健康のためにランニングをしている方も多いですが、ランニングによって免疫が下がってしまうこともあります。
適度なランニングと過度なランニングは、免疫力にどのように影響するのかについて解説します。
適度な運動習慣は免疫力向上につながる
ランニングをはじめとする適度な運動習慣は、免疫力の向上につながり、風邪をひきにくくなるなどのメリットがあります。
適度な運動で免疫力が向上するのには、2つの理由があり、以下のとおりです。
- 体温が上がり血行が促進される
- 自律神経のバランスが良くなる
運動をすると体温が上がるのは、血の巡りが良くなり、酸素が体のすみずみまで行き届きやすくなるためです。
白血球の中に含まれる免疫細胞の活性化により、免疫力が向上します。
また、適度な運動はストレス解消につながり、自律神経のバランスが良くなるため免疫力が向上する効果が期待できます。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがありますが、適度な運動をするとリラックス時に優位となる副交感神経が優位になります。
過度なランニングは免疫力が下がる可能性も
適度な運動では免疫力が上がりますが、フルマラソンなどの過度なランニングは、免疫力を下げてしまうことがあります。
とくにフルマラソンのような長時間の運動では、体が大きなストレスを受け、体調を崩しやすくなります。
健康維持の目的でマラソンをしても、そのあとで体調を崩してしまえば本末転倒です。
フルマラソンなどの高負荷トレーニングで体が受ける強いストレスは、以下のような免疫抑制反応の原因となります。
- 白血球の中のリンパ球が減少
- 唾液中の免疫物質(IgA)が大幅に低下
- 炎症性サイトカインが増加して炎症反応が強くなる
- ストレスホルモンが急上昇して免疫系を抑制
上記のような、運動後の一時的に免疫機能低下が起きる期間のことをオープンウィンドウと呼び、免疫の窓が開いた状態との意味です。
運動を終えて、数時間から72時間ほどがオープンウィンドウに該当します。
ランニングで免疫力が下がる原因
ランニングをして免疫力が下がる原因は、次のようなものが挙げられます。
- コルチゾールの分泌増加
- 白血球の一時的な減少
- 粘膜免疫の低下
マラソンなどの長時間にわたる運動によって体がストレスを受けることで、副腎皮質からストレスホルモンのコルチゾールが大量に分泌されます。
コルチゾールは炎症を抑えるなどの良い働きをする一方で、高濃度の状態が続くと免疫細胞の働きを抑制してしまうため、免疫力が下がる原因となるのです。
また、ランニング中には血流が促進されて白血球が増えますが、運動後に急激に減少してしまいます。
唾液中に含まれる免疫細胞(IgA)は、口や鼻などの粘膜をウイルスや細菌から守る役割がありますが、ランニング後は分泌量が減少するため免疫力低下の一因となります。
適度なランニングはどのくらい?免疫力向上に有効な運動量の目安
適度なランニング量の目安で使われるのが、運動強度を表す単位である「メッツ」です。
運動強度は、運動を行った時に身体にかかる負荷や、身体で感じる疲労などで、厚生労働省の基準により安静時のメッツを1※とします。
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
年代別の免疫力向上に有効な運動量の目安を見ていきましょう。
18〜64歳の運動量の目安
厚生労働省が示している基準によると、日常生活における身体活動のほか、週に1日は運動を行うものとされています。
具体的な運動量をメッツで示すと、以下のようになります。
日常生活での身体活動 | 3メッツ以上の身体運動を週に23メッツ |
週に1日の運動 | 3メッツ以上の運動を週に4メッツ |
日常生活では3メッツの歩行と同等以上の身体活動を、毎日60分以上行うと良いとされています。
たとえば、通常の歩行が3.0メッツに相当するため、毎日60分の散歩で目安の運動量がクリアできます。
掃除など家事も運動していることになるため、今までよりも家事に力を入れてみるのも良いかもしれません。
ランニングの場合、運動強度は次のとおりです。
運動強度(1時間あたり) | |
速歩(かなりのスピードが必要) | 5.0メッツ |
ゆっくりめのジョギング | 6.0メッツ |
ランニング | 8.3メッツ |
週に1日の運動では4メッツが基準なので、運動強度が1時間に8.3メッツのランニングだと、必要な運動量は1週間に30分行うとクリアできます。
出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
65歳以上の運動量の目安
65歳以上の方は、週に10メッツの日常的な運動を行うのが良いとされています。
日常的な運動なので、何かスポーツやランニングなどは必要なく、家の中や近所を歩くだけでも十分です。
実は毎日のように行っている家事も運動をしていることになり、料理や食材の準備に60分かかると2メッツ相当になります。
ランニングをしなくても基準を満たしている方も多いので、運動不足だと思ってランニングをすると、過度な運動となる場合があるので注意しましょう。
ランニングで免疫力が下がることに関するよくある質問
ランニングで免疫力が下がることに関するよくある質問は以下の通りです。
健康的な運動習慣のためにもよくある質問で疑問や不安点を解消しておきましょう。
ランニング後に免疫力が下がっているサインは?
ランニングのあとで免疫力が下がっているかどうかは、次の中にあてはまるかチェックしてみましょう。
- 皮膚のトラブルが起きやすい
- 口内炎や結膜炎にかかりやすく、治りにくい、再発しやすい
- 風邪やインフルエンザにかかりやすい
- 咳が出る
- 傷が治りにくい
- 疲れやすい
- 睡眠不足
- 食欲不振
- 冷え性
- 運動をする習慣がない
- 食事が偏っている
- ストレスを感じやすい
該当する項目が多ければ、免疫力が下がっている可能性が高いです。
ランニング後に風邪をひきやすいのはなぜ?
ランニング後に風邪をひきやすくなるのは、免疫物質(IgA)が減少するためです。
激しい運動をすると免疫物質(IgA)が減ることで、口や鼻などの粘膜からウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなります。
どの程度のランニングが「激しい運動」となるのかは個人差があり、日常的に運動をしている人と、運動不足の人では異なります。
フルマラソン後に免疫力が低下するのはなぜ?
フルマラソン後に免疫力が低下する原因として、激しい運動による身体的ストレスが挙げられます。
高負荷トレーニングで体が受ける強いストレスは、免疫抑制反応の原因となります。
フルマラソン後は休息期間を設け、バランスの良い食事や水分補給などで体を回復させることが大切です。
過度なランニングは免疫力が下がる可能性あり!適度な運動習慣を身につけよう
運動は、体温上昇による血行促進とストレス解消による自律神経バランスの改善によって免疫力が高まります。
ただし、過度なランニングは逆に免疫力を下げてしまう原因にもなるので、 ランニングの距離や頻度に注意しましょう。
また、免疫力アップに適したな運動量は、毎日60分の歩行、毎週60分の息が弾む程度の運動が良いといわれています。
免疫力のために運動を始める場合、ウォーキングなどの手軽にできる運動から始めていきましょう。
より積極的に免疫力向上を目指す方は、当院(リペアセルクリニック)の免疫細胞療法もご検討ください。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師