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もやもや病で気をつけることは?日常生活において注意したいポイントを医師が解説

もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)は、脳に血液を送る太い血管(内頸動脈)の終末部が徐々に細くなり、脳が血流不足に陥る難病です。
不足した血流を補うために、「もやもや血管」と呼ばれる細い血管が新たに形成されますが、この血管は非常に脆いため、脳梗塞や脳出血などの脳卒中を引き起こすリスクがあります。
しかし、もやもや病は、避けるべき行動を正しく理解して実践することで、発作(脳虚血や脳出血)のリスクを抑え、安定した生活を目指すことが可能とされています。
本記事では、もやもや病の患者様が日常生活や職場で気をつけるべき具体的なポイントを解説します。
もやもや病と上手に付き合うために、日常生活で実践できるポイントを確認しましょう。
目次
もやもや病で気をつけること|日常生活・私生活
日常生活では、過換気につながる行動を避け、こまめな水分補給とストレス管理を心がけることが、発作の予防につながります。
ここでは、私生活で特に意識したい3つのポイントを解説します。
発作の引き金になる行動を避ける
もやもや病では、過換気(過呼吸)を引き起こす行動が、一過性脳虚血発作(TIA)のきっかけになることがあります。
特に以下のような動作は、呼吸が速く深くなりやすいため注意が必要です。
- 熱い食べ物・飲み物を息を吹きかけて冷ます
- フルートやリコーダーなどの管楽器を吹く
- 風船を膨らませる
- 激しく泣く(啼泣)・大声を出し続ける
過換気になると、血液中の二酸化炭素濃度が低下(低炭酸ガス血症)し、脳の血管が収縮します。
もやもや病では、もともと脳への血流が不足しやすいため、血管がさらに収縮すると血流が低下し、手足のしびれや脱力、ろれつが回らないなどの一過性脳虚血発作(TIA)を引き起こす可能性があります。
日常生活では、呼吸が速く深くなる動作をできるだけ避け、症状が現れた場合は速やかに安静にし、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
規則正しい生活と体調管理を心がける
もやもや病による脳虚血発作や脳梗塞のリスクを抑えるためには、日頃から規則正しい生活を送り、体調を整えることが大切です。
特に意識したいポイントは以下のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| こまめに水分補給をする | ・脱水になると血液の粘度が高まり、血栓ができやすくなる ・夏場や運動後、入浴前後は特に意識して水分を補給することが大事 |
| 十分な睡眠と休養を確保する | 睡眠不足や慢性的な疲労は、自律神経の乱れや血圧変動につながる可能性がある |
| 体調不良を放置しない | 風邪などによる発熱時は無理をせず、早めに医療機関を受診する必要がある |
毎日の生活習慣を整え、体調を良好に保つことが、発作や脳梗塞の予防につながります。
ストレスをため込まないようにする
過度な精神的ストレスは、脳出血のリスクを高める要因の一つです。
強いストレスを感じると、交感神経が刺激されてストレスホルモンが分泌され、血圧が急激に上昇します。
もやもや病によって形成された異常血管(もやもや血管)は通常の血管よりも壁が薄く脆いため、血圧の急上昇による負荷に耐えきれず、血管が破れて脳出血やくも膜下出血を引き起こす危険性があります。
ストレスを感じやすい環境をなるべく避け、趣味の時間を持ったり、リラックスできる音楽を聴いたりするなど、自分に合ったストレス発散方法を見つけて血圧を安定させることが大切です。
もやもや病で気をつけること|仕事・人間関係
仕事においては、身体的・精神的な負担をかけすぎず、急激な温度変化や過換気につながる作業を避け、周囲の理解を得て無理のない環境を整えることが重要です。
ここでは、働き続けるうえで意識したい3つのポイントを解説します。
身体的・精神的な負担をかけすぎない
もやもや病では、以下のような身体的・精神的な負担が発作の誘因となることがあるため、無理のない生活を心がけることが大切です。
- 長時間のデスクワーク
- 睡眠不足や過労
- 重い物を持ち上げるなどの重労働
これらは血圧の変動を招き、発作のリスクを高める可能性があります。
また、もやもや病では慢性的な脳血流の低下や、過去の脳梗塞・脳出血の影響により、注意力や記憶力の低下などの高次脳機能障害がみられる場合があります。
そのため、複数の業務を同時に進めるマルチタスクは脳への負担になりやすく、疲労や集中力の低下につながることがあります。
日常生活や仕事では、以下のような工夫を取り入れましょう。
- 一度に一つの作業へ集中する
- こまめに休憩を取り、疲労をため込まない
- 必要に応じてテレワークや短時間勤務などを活用する
身体だけでなく脳への負担も意識し、自分の体調に合わせて無理のない生活を続けることが、発作の予防につながります。
急激な温度変化や過換気につながる作業を避ける
職場環境における急激な温度変化(ヒートショック)には十分な注意が必要です。
冬場の寒い屋外と暖房の効いた室内、あるいは夏場の冷房が強く効いた部屋と屋外との行き来など、急激な寒暖差は血管を急激に収縮させ、血圧を急上昇させます。
外出時や移動の際は、羽織るものでこまめに体温調節を行ってください。
また、接客業などで長時間大声を出し続ける業務や重い荷物を運ぶ際に息んでしまう動作は、過換気や急激な血圧上昇を招き、脳虚血を誘発するリスクがあります。
これらの業務は可能な限り控えるか、周囲のサポートを受けるようにしましょう。
周囲の理解を得て無理のない環境を整える
もやもや病や、それに伴う高次脳機能障害による「段取りの悪さ」「物忘れの多さ」「感情のコントロールの難しさ」は、外見からは分かりにくいものです。
そのため、職場で「怠けている」「性格が変わって怒りっぽくなった」と誤解され、人間関係のトラブルに発展しやすい側面があります。
これを防ぐためには、職場の上司や同僚に病気の特性(疲れやすいこと、目に見えない脳の障害があること)をあらかじめ説明し、理解を得ることが欠かせません。
必要に応じて主治医の診断書や意見書を活用し、静かな作業スペースの確保や、指示を口頭ではなくメモで渡してもらうなどの具体的な配慮をお願いすることで、安心して働き続ける環境を整えましょう。
家族が知っておきたいもやもや病の注意点
家族は、患者様の変化を医学的な症状として理解し、発作の前兆や異変に早く気づけるようにしておくことが大切です。
ここでは、家族が知っておきたい2つのポイントを解説します。
家族ができるサポート
患者様が以前よりも怒りっぽくなったり、物忘れが激しくなったりした場合、それは本人の性格や努力不足によるものではなく、脳のダメージ(高次脳機能障害)による「社会的行動障害」や「記憶障害」という症状の一つです。
家族ができるサポートとして、感情的に責めたり言い争ったりせず、本人のペースに合わせることが大切です。
記憶障害に対しては、カレンダーやメモを一緒に活用して視覚的に確認できるようにする環境調整が有効とされています。
また、注意障害がある場合は、テレビを消して静かな環境を作り、一度に複数の用事を頼まずに一つずつお願いするよう工夫してください。
家族だけで抱え込まず、リハビリ専門職や医療機関の支援を頼ることも検討しましょう。
発作の前兆や異変に気づけるようにする
もやもや病では、脳梗塞や脳出血などの重篤な発作を防ぐために、初期症状を早期に見つけて対応することが大切です。
緊急性を判断する指標として、「FASTチェック」を覚えておきましょう。
| サイン | チェック内容 |
|---|---|
| F(Face:顔) | 笑顔を作ったときに、顔の片側が下がる・ゆがむ |
| A(Arm:腕) | 両腕を前に上げたときに、片方の腕だけが下がる |
| S(Speech:言葉) | ろれつが回らない、言葉が出ない、相手の話を理解できない |
| T(Time:時間) | 症状が1つでも突然現れたら、発症時刻を確認し、ためらわず119番通報する |
これらは一過性脳虚血発作(TIA)や脳卒中の代表的なサインです。
症状が短時間で改善した場合でも、その後に脳梗塞を発症する可能性があるため、自己判断で様子を見ず、速やかに医療機関を受診してください。
「いつもと違う」「何かおかしい」と感じたら、迷わず救急要請や医療機関への相談を行いましょう。
子どものもやもや病で気をつけること
子どものもやもや病は、大人とは症状の現れ方が異なり、過換気を招く行動が発作の直接的な引き金になるため、特に注意が必要です。
もやもや病は5〜10歳ごろに発症のピークがあるとされ、大人が脳出血で発症することが多いのに対し、小児もやもや病では脳の血流が不足する一過性脳虚血発作(TIA)が多く見られます。
※参照:難病情報センター「もやもや病(指定難病22)」
また、子どもの場合、以下のような行動によって過換気が起こり、発作を誘発することがあります。
- 激しく泣く(啼泣)
- 熱い食べ物や飲み物を息を吹きかけて冷ます
- リコーダーやピアニカなどの管楽器を吹く
- 激しく走り回るなどの運動
これらの行動の後に、手足の脱力やしびれ、ろれつが回らない、けいれんなどの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
子どものもやもや病では、慢性的な脳血流の低下により、精神発達の遅れや注意力・記憶力の低下などの高次脳機能障害がみられることがあります。
重篤な脳梗塞や発達への影響を防ぐため、診断後は病状に応じて外科的治療(血行再建術)が検討されます。
学校生活では、体育や部活動などの運動制限の有無や、発作が起きた際の対応について、あらかじめ教員や学校と情報共有しておくことが大切です。
家庭・学校・医療機関が連携し、子どもが安心して学校生活を送れる環境を整えましょう。
もやもや病で気をつけることを正しく理解し、適切に向き合おう
もやもや病は進行性の指定難病であり、現在のところ病気そのものを根本的に治す治療法は確立されていません。
しかし、適切な治療と日常生活の管理によって、発作や脳卒中のリスクを軽減しながら生活を送ることは期待できます。
血流を改善する血行再建術を適切なタイミングで受けることに加え、内服薬を正しく服用し、本記事で紹介した日常生活での注意点を意識することが大切です。
ご自身の状態に合わせて無理のない生活を続けていきましょう。
一方で、もやもや病に伴う脳梗塞や脳出血によって後遺症が残った場合には、再生医療が選択肢の一つとなる可能性があります。
再生医療は、患者様ご自身の幹細胞を培養して投与し、損傷した脳の神経や組織の修復・再生を目指す治療法です。
脳卒中後の手足のしびれや麻痺などの後遺症に対する新たな治療選択肢として期待されています。
脳梗塞・脳出血の後遺症に対する再生医療の詳しい内容は、リペアセルクリニックの公式サイトでもご紹介していますので、手術以外の選択肢を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
もやもや病に関するよくある質問
もやもや病に関するよくある質問と回答は以下のとおりです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
もやもや病は寿命に影響する?
もやもや病と診断されたからといって、必ずしも寿命が短くなるわけではありません。
無治療のまま放置してしまうと、脳の血流不足が進行したり脆弱な血管が破れたりして、重篤な脳梗塞や脳出血を引き起こし、命に関わる危険が高まります。
しかし、適切な時期にバイパス手術(血行再建術)を受けて脳の血流を改善し、その後の血圧管理や生活習慣の見直しを継続すれば、病気の重症化や再発の予防が期待できます。
早期発見と適切な治療介入により、健康な人と大きく変わらない生活の質を維持することが十分に期待できるとされています。
もやもや病の発症はストレスに原因がある?
結論から言うと、ストレスが直接的な原因となって病気を発症するわけではありません。
もやもや病の根本的な原因はまだ完全には解明されていませんが、近年の研究により、日本人患者の多くが「RNF213」という遺伝子の特定の多型(p.R4810K)を持っていることが報告されています。
※参照:難病情報センター「もやもや病(指定難病22)」
これは病気になりやすい体質(感受性遺伝子)を示すものですが、この遺伝子を持つ健康な人も存在するため、遺伝的素因に加えて何らかの環境要因が複合的に絡み合って発症すると考えられています。
病気を発症した後は、強いストレスが交感神経を刺激して血圧を急上昇させ、脆弱なもやもや血管を破綻させて脳出血を誘発する重大な「引き金」になり得るため、ストレスを避ける生活管理は重要です。
監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師

























