膝の人工関節手術に失敗例はある?混同する原因とリスクが低い再生医療について解説
公開日: 2020.06.22更新日: 2025.03.07
膝の疾患によって治療を受ける場合、症状の進行具合で医師から手術を勧められることもあります。
しかし、「手術と聞くと怖いイメージがある」「手術で失敗してしまうのではないか」と不安になる方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、膝の人工関節手術で失敗する可能性やリスクについて紹介します。考え得る問題点を把握し、スムーズに治療を行いましょう。
目次
膝の人工関節手術に失敗例はある?
人工関節手術は90%以上という非常に高い成功率※を誇る手術です。
※参考:愛媛大学医学部附属病院 人工関節センター「人工関節について」
しかしながら、すべての手術にはリスクが伴うため、失敗のケースが皆無というわけではありません。
患者さまが「手術に失敗した」と感じる例としては、主に以下が考えられます。
- 手術部位の感染症など合併症がある場合
- 成功したといわれたのに痛みや動きづらさがある場合
手術後の経過は、術前の膝の状態や、患者さまの年齢、基礎疾患の有無などによって大きく異なります。
手術直後の痛みや違和感は回復過程の一部であり、多くの場合、リハビリの実施や時間の経過とともに改善していきます。
膝の人工関節手術に伴うリスク
膝の人工関節置換の手術は、いくつかのリスクを伴います。
予防策をとることでリスクを大幅に軽減できますが、手術を検討している方はどのようなリスクがあるのか事前に学んでおきましょう。
血栓のリスク
手術の切開によって出血すると、防御反応で血液が固まりやすくなることに加え、患部を動かさないようにするため静脈内に血栓ができやすくなります。
血栓のリスクを軽減するためには、十分な水分補給や手術後にできるだけ早く体を動かすことが挙げられます。
感染症のリスク
手術時の細菌侵入で感染症を引き起こすリスクも存在します。
手術中はもちろん、手術後に人工関節が感染するケースもあり、油断できないリスクです。
手術前の適切な抗菌薬の服用や、厳密な無菌操作が重要です。また、患者さまも手術部位の清潔保持に努める必要があります。
人工関節が緩むリスク
手術後のリスクのひとつに長年の使用や体重の増加、激しい動きなどで大きな負荷がかかり、人工関節が緩むことが挙げられます。
人工関節と骨の固定が不十分になり安定性が失われるのと同時に、痛みや不安定感、歩行障害といった症状が現れます。
また、人工関節が緩んだ際には再手術を考慮する必要があります。
脱臼のリスク
転倒などにより人工関節の脱臼が起こるリスクがあります。
正座や激しいスポーツなど、関節に大きな負担がかかる動作は避けましょう。
医師から指示された動作制限を守ることで、脱臼のリスクを防ぐことができます。
膝の人工関節手術後で失敗と混同しやすい原因
膝の人工関節手術を受ける方の多くが、痛みの解消やスムーズな動作に期待を抱くことでしょう。
しかし、術後の症状から手術が失敗したと勘違いしてしまうケースも多々発生します。
上記のような勘違いを防ぐためにも、手術後どのような状態になるか事前に把握しておく必要があります。
そこでこの項目では、変形性膝関節症の手術後に勘違いを招く症状やケースについて紹介します。
膝周辺が炎症している
手術によるダメージで手術後に炎症を起こし、膝が腫れることがあります。個人差がありますが、炎症は1カ月以内で治まるケースが多いです。
しかし、膝に負担がかかってしまうと炎症が長引いてしまうこともあり、膝の腫れが治まらないと不安を抱いてしまいます。
手術後は、専門家の指示のもと無理のない範囲でリハビリを行いましょう。
深部静脈血栓症を発症している
手術後は約80%の方に深部静脈血栓症が発症するとされています。これは手術後の安静により血液の流れが悪くなることが原因です。
深部静脈血栓症では、患部の炎症による痛み、だるさや疲れやすさなどの症状がみられます。
弾性ストッキングの着用や、早期からの適切なリハビリテーションにより、多くの場合は改善していきます。
上記の症状があっても、必ずしも手術の失敗を意味するわけではありません。
脱臼・骨折している
人工関節の装着後、長期間が経過すると緩みが生じ、まれに脱臼や周辺部の骨折が起こることがあります。
深くしゃがむ、重い荷物を持ち上げるなど「膝を大きく曲げる動作」によって、脱臼する可能性が高くなります。
しかし、手術の失敗ではなく、人工関節の経年変化によるものです。定期的な検診で状態をチェックし、必要に応じて再手術を検討することで対応可能です。
変形性膝関節症に対する人工関節手術以外の治療方法
膝の疾患で多くの方が悩まされているのが変形性膝関節症です。
変形性膝関節症の治療には、人工関節手術以外にもさまざまな方法があります。主な治療方法は以下の通りです。
- 薬物療法
- 温熱療法
- 運動療法
これらの治療法は、症状の程度や生活スタイル、健康状態などを考慮し専門医が判断します。
また、手術以外の治療方法で効果が得られない場合や、症状が悪化した場合は手術が検討されます。
膝の人工関節手術を避けたい方は再生医療をご検討ください
人工関節手術は高い治療実績を誇る手術ですが、入院や手術、人工関節は避けたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
そのような方には、再生医療の幹細胞治療とPRP療法という選択肢があります。
- 幹細胞治療:患者さま自身の脂肪から採取・培養した幹細胞を用いる治療法
- PRP療法:患者さま自身の血液から血小板を濃縮して用いる治療法
どちらも手術を必要とせず、日帰りで治療を受けることができます。ただし、これらの再生医療と人工関節置換術は併用できません。
そのため、以下のような方は、人工関節手術の前に再生医療についてご検討ください。
- 仕事や家庭の事情で入院時間が取れない方
- まだ現役で働いており、長期の休職が難しい方
- 膝に負担のかかるスポーツ活動を続けたい方
- 手術に不安を感じている方
当院「リペアセルクリニック」では、無料のメール相談やオンラインカウンセリングを承っております。ぜひお気軽にご相談ください。
【まとめ】膝の人工関節手術は90%以上が成功の見込みあり
人工関節手術は90%以上という高い成功率を誇る手術ですが、すべての手術にはリスクが伴います。
主なリスクとしては、血栓症、感染症、人工関節の緩み、脱臼などが挙げられます。
これらのリスクは、適切な予防措置と術後のケアで軽減することが可能です。
また、手術後に起こりやすい以下の症状は、必ずしも手術の失敗を意味するものではありません。
- 術後1か月程度続く膝周辺の炎症
- 手術後の安静による深部静脈血栓症(約80%の方に発症)
- 人工関節が馴染むまでの違和感や痛み
手術に不安がある方は、手術を必要としない再生医療という選択肢もあります。
ただし、再生医療と人工関節置換術は併用できないため、整形外科専門医との十分な相談の上で治療法を選択することが重要です。
膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設