関節リウマチは治る?原因から治療法まで徹底解説
公開日: 2020.05.16更新日: 2025.04.30
関節リウマチと診断されたけど治るのか、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
関節リウマチは免疫の異常により関節が炎症を起こし、進行すると関節の破壊や変形につながる病気です。
完治が難しいとされる一方で、近年は治療法が進歩し、寛解という状態を目指すことが可能に。
本記事では、関節リウマチの「完治」と「寛解」の違いを詳しく解説します。
発症の背景やリスク要因・治療法についても、紹介していますので「この先どうなるのか不安」「何を選べばいいか迷っている」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
【結論】関節リウマチは現在の医学では完治は難しい|治療目標は寛解
関節リウマチは、免疫の異常によって発症すると考えられており※、現在の医学では完治が難しいとされています。
※出典:日本リウマチ学会「リウマチ・膠原病を心配したら」
根本的な原因を取り除く治療法は確立されていないため、「治す」のではなく、「うまく付き合う」ことが治療の基本方針です。
ただし、近年の治療法の進歩により、痛みや腫れを抑えて、日常生活に支障のない状態(寛解)を目指すことは可能になっています。
重要なのは早期発見・早期治療で、発症して間もない段階で治療を開始すれば、進行を抑えやすくなります。
また、リウマチは進行性の疾患のため、治療を怠ると関節の変形が進み、日常生活に深刻な支障をきたす恐れがあるので注意が必要です。
そのため、自己判断せず、必ず専門医のもとで治療方針を継続的に見直すことが大切です。
関節リウマチの主な原因
関節リウマチの原因は一つに特定できず、以下のような複数の要因が絡み合って発症すると考えられています。
原因 | 内容・具体例 |
---|---|
免疫異常 | 免疫システムが自分自身の滑膜組織を攻撃し、炎症が慢性化する |
遺伝的素因 | 関節リウマチになりやすい体質が遺伝するが、必ず発症するわけではない |
環境要因 | 喫煙、歯周病、腸内環境の異常、化学物質、外傷、強いストレスなどが発症や悪化のリスクになる |
ホルモンの影響 |
・女性に多く、30~50歳での発症が多い ・妊娠・出産・閉経など、女性ホルモンの変化が関与する可能性がある |
発症割合の内訳 |
・遺伝子によるもの:約40% ・環境ストレス因子によるもの:約60% |
体を守るはずの免疫が誤作動を起こし、本来なら攻撃しないはずの自分自身の関節を標的にしてしまうのが関節リウマチの発症メカニズムです。
原因はまだ完全には解明されていませんが、現在では「遺伝的な素因」と「環境要因」など、複数の要素が組み合わさって免疫の異常が生じると考えられています。
また関節リウマチは30代から50代の女性※に多く見られ、妊娠や出産、閉経などのホルモンバランスが変化しやすい時期と重なって発症する事例も。
※出典:リウマチeネット
このように、関節リウマチはさまざまな要因が複雑に絡み合い、免疫のバランスが崩れて発症に至ると考えられます。
関節リウマチの寛解を目指すための治療法
関節リウマチの治療法は、大きく分けると5つあります。
治療法 | 説明 |
---|---|
薬物療法 | 免疫の異常な働きを調整し、炎症や痛みを抑える薬を使用する。 |
生物学的製剤 | 免疫の特定の働きをピンポイントで抑えるタイプの薬。 |
手術療法 | 関節の変形や機能障害が進行した場合に、関節の修復や置換を行う。 |
リハビリテーション | 関節の動きや筋力を維持・改善し、日常生活の自立をサポートする。 |
再生医療 | 損傷した関節組織の修復を目指す治療法。現時点では標準治療ではない。 |
治療は患者の症状や進行度に応じて、これらを組み合わせて計画が立てられます。
専門医から治療の目的や効果、副作用の説明を受け、納得した上で取り組む姿勢が大切です。
ここでは、関節リウマチの代表的な5つの治療法を詳しく解説します。
薬物療法
関節リウマチの薬物療法は炎症を抑え、関節の破壊や変形防止を目的とし、治療を進めていく上での軸になる存在です。
症状や病状に合わせてさまざまな種類の薬が使用されますが、従来から使用されている定番は抗リウマチ薬(DMARDs)です。
抗リウマチ薬には複数の種類があり、それぞれ作用の仕方や副作用のリスクが異なるため、患者ごとに最適な組み合わせが検討されます。
ただし、薬物療法は副作用のリスクもあるため、治療中は定期的な血液検査や医師の管理が欠かせません。
必ず専門医と相談しながら、自分に合った治療を安全に継続していくことが大切です。
生物学的製剤
生物学的製剤は、従来の抗リウマチ薬とは異なり、炎症の原因となる特定の免疫物質(サイトカイン)直接ブロックするため、高い抗炎症効果が期待できます。
製剤は遺伝子工学などのバイオテクノロジー技術を用いて製造され、以下のように種類が豊富です。
薬剤の種類 | 作用機序 |
---|---|
TNF阻害薬 | ・腫瘍壊死因子(TNF)を中和し、炎症反応を抑制 ・骨破壊を抑制し、関節の損傷を防ぐ |
IL-6阻害薬 | ・インターロイキン-6(IL-6)の働きを抑え、炎症を軽減 ・免疫反応を調整し、関節の損傷を防ぐ |
T細胞活性化阻害薬 | ・T細胞の活性化を抑制し、免疫反応を調整 ・サイトカインの産生を抑えることで、炎症を軽減 |
生物学的製剤は従来の抗リウマチ薬で効果が不十分な場合や、関節破壊の進行が早い場合に検討される治療法です。
注射または点滴で投与され、高い効果が期待できる一方で、結核などの潜在感染症を悪化させる可能性※があるため、治療前に検査が必須です。
※出典:日本リウマチ学会「関節リウマチ(RA)に対する TNF 阻害薬使用の手引き」
導入にあたっては、専門医と相談のうえ、効果とリスクを理解したうえで計画的に進めましょう。
手術療法
関節リウマチの手術療法は薬物療法やリハビリテーションなどの保存療法で効果が得られない、関節の変形や機能障害が進行した場合に検討されます。
主な手術方法は以下の3つです。
手術の種類 | 特徴 |
---|---|
滑膜切除術 | ・炎症を起こしている滑膜を取り除く手術 ・痛みや腫れを軽減し、関節の機能を改善する ・回復が早い |
関節形成術 | ・変形した関節を再構築し、可動性を回復させる手術 ・自分の関節を動かせるようにするのが目的 |
人工関節置換術 | ・傷んだ関節を人工関節に置き換える手術 ・痛みを大幅に軽減し、関節機能を再生する ・人工関節の耐久性は10年ほど※ ※出典:愛媛大学医学部附属病院 人工関節センター |
手術療法は効果的な手段ですが、出血や感染、合併症などのリスクもあるため、手術の種類・適応・術後の生活について、専門医と相談することが重要です。
術後は適切なリハビリを行うことで、関節の動きや日常動作の改善が期待できます。
リハビリテーション
関節リウマチのリハビリテーションは薬物療法と並行して行われる治療法で、期待できる主な効果は以下の3つです。
- 痛みの軽減
- 炎症の軽減
- 関節の変形防止
これらを目指しながら、患者の状態に合わせた以下のような個別プログラムが組まれます。
種類 | 特徴 |
理学療法 | 関節の可動域を広げる運動や、筋力トレーニング、温熱療法などが行われる |
作業療法 | 日常生活動作の練習や、関節に負担をかけない動作の指導、自助具の活用などが検討される |
装具療法 | 関節を保護し、痛みを軽減するための装具(サポーターやインソールなど)が使用される |
ただし痛みや炎症が強い場合は安静を保ち、無理に動かさず安静を優先することが基本です。
再生医療(PRP療法・幹細胞治療)
再生医療は関節リウマチ治療の新たな選択肢として注目されており、主な治療法としては以下の2つがあります。
治療法 | 特徴 |
PRP療法 | ・患者自身の血液から血小板を濃縮したPRPを抽出 ・関節内に注入して成長因子を放出し、組織の修復を促す ・炎症を抑える作用や、痛みを軽減する効果が期待されている |
幹細胞治療 | ・患者自身の脂肪組織や骨髄から幹細胞を採取 ・培養・増殖させた後、関節内に注入する ・損傷した軟骨や骨組織の再生を促す |
再生医療は薬物療法や手術療法と比べて体への負担が少ないのが特徴で、患者自身の細胞を用いるため、拒絶反応のリスクも低いとされています。
ただし自由診療となるため、費用面などに注意が必要です。
治療を検討する際は専門医に相談し、自身の症状に合った選択肢か見極めましょう。
【まとめ】関節リウマチは完治が難しいものの、症状の寛解は目指せる!早期発見・治療を行おう
関節リウマチは、現代医学では完治が難しい疾患ですが、適切な治療と生活習慣の見直しによって症状の「寛解」は目指せます。
「リウマチ=一生つらい病気」と決めつけるのではなく、早期に発見し、適切な治療を始めることが何より重要です。
関節の痛みやこわばりなどの初期症状を感じたら、早めに専門医を受診しましょう。
関節リウマチは長く付き合っていく病気ですが、正しい情報と治療に基づき、希望を持って前向きに暮らすことは可能です。
症状の進行を防ぎ、よりよい生活を送りたい方は、ぜひリウマチ専門医に相談し、必要に応じて再生医療も視野に入れてみてください。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師
略歴
2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業
2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医
2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科
2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科
2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科
2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長