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BAD(脳梗塞)とは?ラクナ梗塞との違い・症状・治療・予後まで解説

BAD(脳梗塞)とは?ラクナ梗塞との違い・症状・治療・予後まで解説
公開日: 2025.12.26

医師からBAD型脳梗塞と診断されたものの、初めて聞く病名に「聞きなれない病気だしこの先不安」「症状が進むことがあると聞いて心配」という方もいるのではないでしょうか。

BAD(バッド)とは、脳梗塞の中でも特有の進行リスクを持つタイプで、発症後しばらくしてから症状が悪化するのが特徴です。

しかし「治る見込みはあるの?」「どのように経過するの?」と、疑問に思う方もいるでしょう。

この記事では、BAD(脳梗塞)の特徴やラクナ梗塞との違い、治療の見通しについて解説します。

病気に対する理解を深め、前向きに治療へ向き合うためにぜひ参考にしてください。

また後遺症や回復に不安がある方は、再生医療も検討しましょう。

再生医療とは自身の体から取り出した細胞を使い、体の回復する力を活かして機能の回復を目指す治療法です。

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BADとは|脳の細い血管の分岐部が詰まり進行しやすい脳梗塞

BADとは、脳の細い血管の分岐部が詰まり進行しやすい脳梗塞のことです。

正式名称はBranch Atheromatous Disease(ブランチ・アテロマトース・ディジーズ)で、ビーエーディー(BAD) と読みます。

日本語では分枝粥腫病(ぶんししゅくしゅびょう)または分枝粥腫病型脳梗塞と呼ばれ、脳の太い血管(母動脈)から分かれる血管の根元が詰まる病態を指します。

発症メカニズムや特徴は、以下の表のとおりです。

特徴 詳細
閉塞の仕組み 母動脈の分岐部にアテロームプラークができ、血流が遮断される
障害される血管 比較的大きめの穿通枝が根元から障害される
症状の経過 入院後数日以内に症状が悪化しやすい

BADは血管の根元にあるプラークが原因で、広い範囲に脳梗塞が起こります。

比較的新しい疾患概念であるため、医師から診断された際に初めて耳にする患者様も少なくありません。

脳梗塞にはさまざまなタイプがあり、原因によって以下の4つに分類されます。

分類 特徴
アテローム血栓性脳梗塞 太い血管の動脈硬化が原因で起こる脳梗塞
心原性脳塞栓症 心臓にできた血栓が脳に飛んで詰まる脳梗塞
ラクナ梗塞 脳の細い血管が変性して詰まる、小さな脳梗塞
その他の脳梗塞 血管の解離や炎症など、上記以外の原因によるもの

BADは動脈硬化が原因となる点において、アテローム血栓性脳梗塞に似ています。

しかし、発生する場所やメカニズムが特殊なため、「その他の脳梗塞」や「原因不明の脳梗塞」に分類されることがあります。

ラクナ梗塞よりも症状が悪化しやすいため、医師による慎重な判断と適切な治療が必要です。

好発部位

BADは、特定の血管の分岐部で発生しやすいことが分かっています。

主な好発部位は、以下のとおりです。

部位名称 説明
レンズ核線条体動脈(LSA) 中大脳動脈から分岐し、内包の障害により重い片麻痺が出やすい
橋傍正中動脈(PPA) 脳底動脈から分岐し、橋の障害により運動麻痺などが生じる
前脈絡叢動脈(AchA) 内包後脚などに血液を送り、運動麻痺や感覚障害に関与する

上記の血管は太い血管から急な角度で分岐しているため、血流の負担を受けやすくアテロームができやすい構造です。

そのため血流のストレスが一点に集中しやすく、血管の内壁が傷つきやすい状態となります。

傷ついた部分にコレステロールが入り込むことで、BAD特有のアテロームが形成されると考えられています。

BAD(脳梗塞)とラクナ梗塞との違い

BADとラクナ梗塞の違いは、以下の表のとおりです。

比較項目 BAD(分枝粥腫病型脳梗塞) ラクナ梗塞
詰まる場所 血管の根元(分岐部) 血管の末端(細い部分)
原因 アテローム(プラーク)による閉塞 高血圧による血管の変性
梗塞の大きさ 大きい(15mm以上) 小さい(15mm未満)
症状の進行 進行しやすい 比較的安定している

※出典:脳卒中治療ガイドライン|一般社団法人 日本脳卒中学会

BADとよく似た病態にラクナ梗塞がありますが、原因や予後の注意点が異なります。

ラクナ梗塞は血管の末端近くが詰まるため梗塞範囲が限定的ですが、BADは血管の根元(分岐部)が詰まるため、広い範囲に影響が出やすい特徴があります。

最初はラクナ梗塞と診断されても、経過やMRI画像によってBADと診断名が変わることがあります。

BAD(脳梗塞)の主な症状|基本的にはラクナ梗塞と同じ

BADの初期症状はラクナ梗塞と共通しており、以下のような運動麻痺や感覚の異常が中心です。

症状 具体的な状態
片麻痺 体の左右どちらかの手足が動かしにくくなる、力が入らなくなる
感覚障害 手足がしびれる、感覚が鈍くなる
構音障害 呂律(ろれつ)が回らない、言葉が出にくい

しかし、BADで最も警戒すべき点は、これらの症状が入院後に悪化する可能性があることです。

BADと診断された場合、全体の20〜40%程度の患者において入院数日以内に麻痺が強くなる進行性運動障害(PMD)が起こる可能性があります。

診断時は軽症でも、急速に悪化するリスクがあるため注意が必要です。

症状が悪化する要因には、以下のようなものがあります。

  • 血栓が血管の奥へと広がること
  • 血圧が下がり、病変部への血流が維持できなくなること
  • 脳のむくみ(浮腫)が神経を圧迫すること

発症時は少し手足が動かしにくい程度であっても、数日の間に全く動かせない状態まで進むケースがあるため、入院直後は慎重な管理が求められます。

入院後48時間以内は特に症状が変化しやすいため、医師や看護師の指示に従い、安静を保つことが大切です。

BAD(脳梗塞)の原因|アテローム硬化・生活習慣病に注意

BADを引き起こす直接的な原因は、血管の壁にできるアテロームプラーク(脂肪の塊)です。

血管の分岐部分に負担がかかり、壁が傷つくことでコレステロールが入り込み、プラークが形成されます。

プラークを作る要因となるのが、以下のような生活習慣病です。

危険因子 血管への影響
高血圧 血管に常に高い圧力がかかり、壁を傷つける
糖尿病 血糖値が高い状態が続き、血管が脆くなる
脂質異常症 血液中の余分な脂質が血管壁に溜まり、アテロームの原因になる
喫煙 血管を収縮させ、動脈硬化を進行させる

生活習慣病の危険因子が重なることで、血管の根元に微小なアテロームができ、BADの発症リスクを高めると考えられています。

自覚症状がないまま動脈硬化が進行しているケースも少なくなく、日頃から血圧や血糖値を適切に管理することが、発症を予防する上で重要といえます。

BAD(脳梗塞)の診断方法|画像検査を中心に判断

BADの診断には、MRI検査が欠かせません。

以下の基準などを参考に、医師が総合的に判断します。

検査方法 診断のポイント
MRI(DWI) 梗塞巣の最大径が15mm以上
スライス数 3スライス以上にわたり梗塞を確認
形状の確認 LSA領域:勾玉(まがたま)や扇のような形を確認
PPA領域:橋の底面に達する楔形の梗塞を確認

一般的なラクナ梗塞よりも病変が大きいことや、血管の走行に沿った特徴的な形をしていることが判断材料になります。

心臓にできた血栓が飛んでくる心原性脳塞栓症や、太い血管自体が狭くなっている病変ではないことを確認(除外診断)した上で、BADと確定されます。

BAD(脳梗塞)の治療方法

BADと診断された場合、症状の進行(PMD)を防ぐための治療が最優先で行われます。

発症から時間が経過してから使用される血栓溶解療法(tPA)は効果が出にくいこともあるため、以下のような急性期対応が中心となります。

治療法 内容
抗血小板療法 DAPT(抗血小板薬2剤併用)などを用い、血栓形成を強力に防ぐ
急性期対応 アルガトロバン(抗凝固薬)を併用し、微小血管の血流を保つ

進行性の病態であるため、早期の治療開始が重要です。

症状が軽い段階で適切な抗血栓療法を行うことで、麻痺の進行を食い止められる可能性が高まります。

少しでも異変を感じたら、迷わず専門医を受診しましょう。

BAD(脳梗塞)の予後・リハビリについて

BADは症状が進行しやすいため、ラクナ梗塞に比べて麻痺などの後遺症が残りやすい傾向があります。

予後を改善するためには、以下の取り組みが必要とされています。

取り組み 目的・内容
継続的なリハビリ 発症直後から退院後も継続し、機能を維持・向上させる
再発予防 生活習慣の見直しと薬物療法で、血管の状態を管理する

脳には損傷した神経回路を迂回して新しい回路を作る「可塑性(かそせい)」という能力が備わっているため、根気強くリハビリを続けることで日常生活動作の改善が期待できます。

BAD診断後は進行に注意しつつ、根気強く治療を行おう

この記事では、BAD(脳梗塞)の特徴や治療法について解説しました。

BADについて覚えておきたいポイントは、以下のとおりです。

  • 血管分岐部にアテロームができ、症状が進行しやすい
  • 急性期は薬物療法で進行を抑え、再発予防が重要
  • 早期対応と継続的なリハビリで機能改善を目指せる

BADは進行しやすい脳梗塞ですが早期治療と継続的なリハビリ、生活習慣の改善によって悪化や再発を防ぎやすくなるため、根気強く治療に向き合っていきましょう。

「リハビリを続けているけれどつらい」「これ以上の回復は難しいと言われ、不安を感じている」方は、再生医療という新しい選択肢があります。

当院(リペアセルクリニック)では、ご自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、点滴で投与する治療を行っています。

実際の治療法などについては、当院の公式LINEでも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

「もうこれ以上は良くならない」と諦める前にぜひ一度、当院(リペアセルクリニック)にご相談ください。

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監修者

圓尾 知之

Tomoyuki Maruo

医師

略歴

2002年3月京都府立医科大学 医学部 医学科 卒業

2002年4月医師免許取得

2002年4月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務

2002年6月関西労災病院 脳神経外科 勤務

2003年6月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務

2003年12月大阪母子医療センター 脳神経外科 勤務

2004年6月大阪労災病院 脳神経外科 勤務

2005年11月大手前病院 脳神経外科 勤務

2007年12月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務

2012年3月大阪大学大学院 医学系研究科 修了(医学博士)

2012年4月大阪大学医学部 脳神経外科 特任助教

2014年4月大手前病院 脳神経外科 部長