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投球障害肩(野球肩)は治らない?原因と正しい治し方を医師が解説

投球障害肩(野球肩)とは、野球の投球動作によって肩に痛みが生じる状態の総称で、成長期の小中学生から成人まで幅広い年代で発症します。
適切な治療を行わずに放置すると、慢性化して競技復帰が困難になる場合があります。
この記事では、野球肩が治るまでの期間目安や治らない場合の原因、正しい治療法について解説します。
投球時の肩の痛みで悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んで適切な対処法を見つけましょう。
また、現在リペアセルクリニックでは手術を伴わない治療法の再生医療について公式LINEで発信しております。
野球肩などのスポーツ障害に対する治療選択肢として、肩の痛みに関する改善症例も紹介しておりますので、ぜひ登録してください。
目次
野球肩が治るまでの期間は数週間から1~2カ月が目安|ノースロー期間が重要
野球肩とは、投球動作によって肩に痛みが生じる状態の総称で、腱板損傷やインピンジメント症候群など、さまざまな疾患が含まれます。
野球肩が治るまでの期間は、症状の程度や原因によって異なりますが、一般的には数週間から1~2カ月程度が目安です。
軽度の炎症であれば数週間で改善することもありますが、重症の場合は数カ月以上かかることもあります。
治療において重要なのが、投球動作を完全に休止する期間であるノースロー期間で、痛みの回復や炎症を鎮めるために欠かせません。
ノースロー期間は通常3~4週間程度必要とされ、この間にストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリテーションを行います。
ノースロー期間を守らずに投球を続けると、症状が悪化して慢性化する可能性があります。
焦らずにしっかりと休養を取ることが、早期復帰への近道です。
なお、野球肩が治らない原因については、以下で詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
野球肩が治らない原因|投球フォームや身体の使い方に注意
野球肩が治らない原因として、以下の4つが考えられます。
これらの原因を理解して、適切な対処法を実践しましょう。
投球動作によるオーバーユース
投球動作を繰り返すことで肩に過度な負担がかかり、組織が損傷することをオーバーユースと呼びます。
とくに成長期の選手や投手は、連続した投球により肩の筋肉や腱に疲労が蓄積しやすい状態です。
オーバーユースが原因の野球肩では、まず投球動作を3~4週間完全に休止することが必要です。
この期間に炎症を鎮め、その後リハビリテーションを開始します。
休養期間を守らずに投球を続けると、症状が悪化して治りにくくなるため、無理は禁物です。
不適切なフォームでの投球
投球フォームに問題があると、特定の筋肉や腱に過度な負担がかかり、炎症や損傷を引き起こす原因になります。
以下のようなフォームは野球肩のリスクを高めます。
| フォームの特徴 | 問題点と肩への影響 | 
|---|---|
| 肘が下がっているフォーム | 投球時に肘が肩よりも下がることで、肩関節に過度なストレスが加わります | 
| 手投げのフォーム | 下半身や体幹を使わず腕だけで投げるため、リリース時に肩関節へ瞬間的な高負荷がかかります | 
| 体の開きが早いフォーム | 上半身が先に開くことでリリースが不安定になり、肩関節に過度なストレスがかかります | 
| ステップが不足しているフォーム | ステップが小さい、前足が早く着地するなどで上半身主導になり、肩への負担が増えます | 
これらの不適切なフォームは、長年積み重なることで損傷が蓄積し、肩の違和感や痛みとして現れます。
予防には、指導者による適切なフォーム指導や、自身のフォームを見直すことが大切です。
筋力や柔軟性が不足している
肩周辺の筋力や柔軟性が不足していると、投球動作で肩関節が不安定になり、特定の組織に負担が集中します。
とくに肩甲骨周辺の筋力や、肩関節の柔軟性が低下していると、正常な投球動作ができずに野球肩を引き起こしやすくなります。
予防と改善には、肩甲骨周辺の筋力トレーニングや、肩関節のストレッチを日常的に行うことが重要です。
投球前後のウォーミングアップとクールダウンも欠かさず実施しましょう。
成長期に見られる骨の脆弱性
成長期の骨には特有の弱さがあり、スポーツ障害を引き起こしやすい状態です。
成長期の骨は以下のような特徴を持っています。
- 骨が柔らかく、折れ方が大人と異なる
- 自然治癒力が高いが、変形したまま治ることもある
- 骨端線(成長線)が存在し、力学的負荷に弱い
野球肩はこれらの特徴を持つ小中学生の野球選手、とくに投手に多くみられます。
野球肩(投球障害肩)の原因となる疾患
野球肩の原因となる疾患としては、以下の6つがあります。
野球肩は単一の疾患ではなく、さまざまな疾患の総称です。
ご自身が該当する症状を確認して、適切な治療を受けましょう。
インピンジメント症候群
インピンジメント症候群とは、肩の関節を構成する骨同士が衝突したり、骨の間に筋肉が挟まれたりして痛みが生じる状態です。
インピンジメント症候群には主に2つのタイプがあります。
| タイプ | 症状の特徴 | 
|---|---|
| 肩峰下インピンジメント | 肩の上部にある肩峰と上腕骨の間で組織が挟まれ、腕を上げる動作で痛みが生じる | 
| インターナルインピンジメント | 肩関節の内側で骨や腱が衝突し、投球動作の特定の角度で痛みが生じる | 
主な要因は姿勢の悪化や筋力の低下、柔軟性の低下です。
治療では、これらの要因を改善して、インピンジメントを生じさせない動きを取り戻すことが目的になります。
炎症がある場合はアイシングや安静で痛みを和らげ、その後ストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリテーションを行います。
ベネット損傷
ベネット損傷とは、野球の投球など肩の使いすぎによって肩甲骨の後下部にできる骨の突起のことです。
投球動作を繰り返すことで、肩甲骨の一部に骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の出っ張りができます。
ベネット損傷は、投球時の肩の後ろ側に痛みや違和感を引き起こします。
治療は投球動作の休止とリハビリテーションが基本ですが、症状が改善しない場合は手術を検討することもあります。
腱板損傷・腱板炎
腱板損傷・腱板炎は、肩を動かす重要な腱が使いすぎや外傷、加齢などによって傷つき、炎症や断裂を起こす疾患です。
腱板が損傷すると肩関節が不安定になり、腕を上げる動作で痛みが生じます。
治療は保存療法が基本ですが、断裂が大きい場合や保存療法で改善しない場合は手術を検討します。
SLAP損傷(関節唇損傷)
SLAP損傷とは、肩関節を構成している肩甲骨に接する関節唇が傷ついたり、裂けてしまったりすることです。
SLAP損傷の症状には、投球時の肩の痛み、肩の引っかかり感、力が入りにくいなどがあります。
診断にはMRI検査が有用で、治療は保存療法を行いますが、改善しない場合は関節鏡を使った手術を検討します。
上腕二頭筋長頭腱炎
上腕二頭筋長頭腱炎は、腕の力こぶを作る上腕二頭筋の長頭腱が、繰り返し動作による摩擦で炎症を起こし、肩の前部から二の腕にかけて痛みを生じる疾患です。
症状は肩の前面の痛みで、腕を上げる動作や物を持ち上げる動作で痛みが強くなります。
治療は投球動作の休止、アイシング、ストレッチなどの保存療法が中心です。
炎症が強い場合は消炎鎮痛薬を使用することもあります。
上腕骨近位骨端線離開(リトルリーガーズ・ショルダー)
上腕骨近位骨端線離開は、上腕骨の肩に近い部分にある骨端線(成長線)が損傷・離開する状態で、成長期の選手に発症しやすい疾患です。
投球時や投球後に肩の痛みを感じ、腕を上げる動作が困難になります。
治療は投球動作を直ちに中止することですが、早期であれば症状が改善し、スポーツに復帰できます。
復帰にあたっては投球フォームの見直しが重要で、再発予防のために過度な投球数を避けることが大切です。
野球肩に対する治療法|基本は保存療法による投球動作の休止とリハビリテーション
野球肩の治療法としては、主に以下の3つがあります。
- 保存療法による投球動作の休止
- リハビリテーション(ストレッチ・筋トレ)
- 手術療法
野球肩の治療は、症状の程度や原因によって異なりますが、基本的には保存療法から開始します。
まずは、投球動作を完全に休止することが重要です。
休止期間は通常3~4週間が目安となりますが、症状の程度によって調整されます。
同時に、炎症を抑えるためのアイシングや、痛みがある場合は消炎鎮痛薬を使用することもあります。
投球動作を休止している間も、適切なストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリテーションを行うことで、早期復帰につながります。
保存療法やリハビリテーションを数カ月続けても症状が改善しない「投球肩」に対しては、関節鏡下後方関節包リリース術が有効な治療となる場合があります。
この手術では、肩の内旋制限が20度以上ある投球選手5人に対してこの手術を行った結果、以下のような成績が報告※されています。
※※出典:J-STAGE「Arthroscopic Capsular Release for a Throwing Shoulder with Refractory Posterior Capsular Tightness」
| 評価項目 | 結果 | 
|---|---|
| 競技復帰率 | 5人中4人が元の80%以上のパフォーマンスで野球に復帰 | 
| 外転位での内旋制限の改善 | 31度から7度へ改善(腕を横に上げた状態) | 
| 屈曲位での内旋制限の改善 | 25度から5度へ改善(腕を前に上げた状態) | 
これらの改善は手術の有効性を示すものです。
ただし、手術はあくまで最終手段であり、まずは保存療法とリハビリテーションで改善を目指します。
野球肩の長期化・慢性化を防ぐには、早期診断と適切な初期治療が重要
野球肩は適切な治療を行えば改善が期待できる疾患ですが、放置すると慢性化して治りにくくなります。
投球時に肩の痛みを感じたら、我慢せずに早めに整形外科を受診しましょう。
初期段階であれば、投球動作の休止とリハビリテーションで多くの場合改善します。
慢性化した野球肩に対しては、再生医療という新しい治療法があります。
再生医療の一つである幹細胞治療は、患者様自身から採取した幹細胞を培養して、損傷した組織に投与する治療法です。
再生医療の治療法については、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご確認ください。
 
                            監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設


 
							
 
							 
						 
					
 
                  
















 
                  