肩が石灰化したらどのくらいで治る?早く治すためにやってはいけないことと予防法について解説
公開日: 2020.05.08更新日: 2025.06.02
肩の石灰化(石灰沈着性腱板炎)は日常生活に大きな支障をきたすことがありますが、適切な対処を行えば多くの場合、改善が期待できるようになりました。
しかし、治療期間や正しい対処法について不安をお持ちの方も少なくないでしょう。
本記事では、肩が石灰化したらどれくらいで治るのか、早く治すためにやってはいけないことを解説します。
- 肩の石灰化の治療期間の目安
- 症状を悪化させないために避けるべき行動
- 保存療法と手術療法の内容
- 再発予防に役立つ生活習慣とセルフケア
肩の石灰化による痛みでお悩みの方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
また、当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、肩の石灰化に対する治療の選択肢として注目されている再生医療に関する情報を公開しています。
「肩の石灰化を早く治したい」「手術は避けたい」という方は、ぜひご参考ください。
目次
肩が石灰化したらどのくらいで治る?
石灰沈着性腱板炎(肩の石灰化)は、多くの場合、保存療法で数週間〜数ヶ月ほどで痛みが改善します。
治療期間の目安とそれぞれの期間の状況は、以下の通りです。
期間の目安 | 状況・割合など |
数週間~数ヶ月 | 適切な保存療法(安静、薬物療法など)で痛みが和らぐことが多い |
3ヶ月以内 | 約半数の患者さまで症状が軽快すると報告されている |
1年以上痛みが残る | 約3割の患者さまで見られることがある |
また、一度痛みが治まっても肩の腱板に残った石灰が原因で、再び強い痛みが起こることもあります。
時間の経過とともに少しずつ症状は軽快していく傾向にありますが、痛みがなかなか改善しないときは医療機関を受診しましょう。
日常生活に大きな支障が出ているときは、自己判断せずに医師とよく相談し、根気強く適切な治療を続けていくことが大切です。
肩の石灰化を早く治すためにやってはいけないこと
肩の石灰化による痛みを早く和らげ、症状を悪化させないためには、炎症を助長したり肩関節に余計な負担をかけたりする行動を避けることが重要です。
早く治すためにやってはいけないこと
- 痛みを我慢して無理に肩を動かすこと
- 痛む部分への自己流の強いマッサージや鍼(はり)刺激
- 痛い方の肩で重い物を持つ
- 痛みがある肩側を下にして寝るなどの動作
- 適切な治療を受けずに放置すること
肩に強い痛みや違和感が続く場合は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。
痛みを和らげるために自己流のマッサージや、痛み止めや湿布の自己判断による使用も避けた方が良いです。
市販のお薬にも副作用のリスクはあり、根本的な解決にはなりません。
肩の石灰化を早く治すためにも、医師や薬剤師に相談しながら、適切な治療を受けることが重要です。
肩の石灰化はストレッチやマッサージで治せる?
ストレッチやマッサージで肩の腱板に沈着した石灰そのものを取り除いたり、溶かしたりすることはできません。
しかし、肩関節の柔軟性を保ち、痛みを和らげるためにはストレッチが有効な場合があります。
自宅でもできる肩の石灰化による痛みに効果的なストレッチは、以下の通りです。
- ①前かがみになる
- ②痛い方の腕を真下にリラックスして垂らす
- ③腕の重みを利用し、ゆっくりと前後・左右・小さな円を描くように揺らす
大切なのは決して無理をせず、痛みを感じたらすぐに中止することです。
マッサージについても同様で、石灰そのものを消す効果はありませんが、肩周りの筋肉の緊張を優しくほぐし、血行を促進することで痛みを和らげる効果が期待できます。
ただし、急性期の痛みが強いときに無理にストレッチやマッサージを行うと逆効果になることがあるため注意が必要です。
以下の記事では、肩の石灰化に有効なストレッチを詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
肩の石灰化に対する治療法
肩の石灰化の治療では、まず手術をしない「保存療法」から始めるのが一般的です。
多くの場合、保存療法で症状は改善に向かいますが、それでも痛みが取れない場合には「手術療法」が検討されることもあります。
それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。
保存療法
肩の石灰化の治療では、まず手術以外の方法で症状を和らげる「保存療法」が選択されます。
60~80%の患者さまは保存療法だけで症状が改善するといわれています。
保存療法の種類 | 主な内容・目的 |
薬物療法 | 痛み止め(NSAIDs等)内服で炎症と痛みを抑える |
理学療法 | ・急性期:安静・固定・冷却 ・亜急性期以降:温熱療法、運動療法(ストレッチ等)で拘縮予防、機能改善 |
ステロイド局所注射 | 患部に直接注射することで炎症を抑え、激痛を速やかに和らげるのに有効 |
ほとんどの場合、このような保存療法の組み合わせで症状は軽快し、日常生活に支障がない程度まで回復するケースが多いです。
手術療法
保存療法を行っても肩の石灰化による痛みが改善しない場合や、石灰の沈着が大きく日常生活への支障が著しい場合には、「手術療法」が検討されます。
関節鏡と細い手術器具を挿入し、モニターで内部の様子を確認しながら、腱板に沈着した石灰を丁寧に取り除いていきます。
この方法のメリットは、筋肉など周囲の組織へのダメージが少なく、術後の痛みが比較的軽く、回復も早い点です。
もちろん、手術には全身麻酔に伴うリスクや、感染症の可能性もゼロではありません。
そのため、手術を行うかどうかは、患者さまの症状の程度や生活への影響などを総合的に考慮し、医師と患者さまが十分に話し合って慎重に決定されます。
肩が石灰化したら予防策と生活習慣を見直すことが重要
肩の石灰化は一度症状が良くなっても、再発することがあります。
そのため、治療を受けて痛みが和らいだ後も、肩に余計な負担をかけないような予防策を講じたり、生活習慣を見直したりすることが大切です。
ここでは、肩の健康を保ち、石灰化の再発リスクを減らすために、日常生活で意識したいポイントをご紹介します。
見直すポイント | 内容 |
肩への負担軽減 | ・長時間重い物を持たない ・無理な姿勢での作業を避ける ・スポーツや作業時は適度な休息を挟む ・痛みを感じる動作は控える |
姿勢の改善 | ・猫背や巻き肩を避け、背筋を伸ばした良い姿勢を意識する ・デスクワーク中はこまめに体を動かし、同じ姿勢を続けない |
適度な運動・ストレッチ | ・肩周りの柔軟性や筋力を保つ ・ラジオ体操、軽いストレッチ、ヨガなどで肩甲骨や肩関節を動かす |
栄養バランスの改善 | バランスの良い食事を基本とし、抗炎症作用のある栄養素(オメガ3脂肪酸、ビタミンC・Eなど)も意識して摂取する。 |
肩周りを温める習慣 | ・肩を冷やさないように注意し、血行を促進する ・入浴で肩まで温まる、蒸しタオルなどで筋肉の緊張をほぐす。 |
上記のポイントを参考に、ご自身の生活習慣を見直し、肩を大切にいたわってあげることが、石灰化の予防と健やかな肩を保つためのポイントとなります。
肩が石灰化したときの治療期間に関するよくある質問
ここでは、肩が石灰化したときの治療期間についての質問に回答していきます。
日常生活で気を付けるべきポイントなどをみていきましょう。
肩の石灰化を早く治す方法はある?
肩の石灰化を早く治すには、痛みを我慢せずにできるだけ早く整形外科を受診し、ご自身の状態に合った適切な治療を早期に開始することが重要です。
一般的な治療としては、まず炎症を抑える飲み薬などで様子を見ることが多く、順調にいけば1〜2週間程度で痛みが和らいでくることもあります。
もし痛みが非常に強く、日常生活にも支障が出ているような場合には、ステロイド注射を行うことで痛みを緩和させることも可能です。
肩の石灰化を放置するとどうなる?
肩の石灰化は、自然に痛みが和らいでいくことも多いため、放置したからといって必ずしも深刻な事態に発展するわけではありません。
しかし、自己判断で放置してしまうといくつかのリスクもあるため、注意が必要です。
硬く大きくなった石灰は、肩を動かすたびに周囲の組織とぶつかり、繰り返し炎症を起こして、痛みが長引く原因となることがあります。
また、痛みのために肩を動かさない期間が長引くと関節が固まってしまい、動きの範囲が狭くなる「拘縮(こうしゅく)」という後遺症が出てしまうこともあります。
肩の石灰化になりやすい人は?
肩の石灰化になりやすい人の特徴は、以下の通りです。
- 年齢:40〜60歳代
- 性別: 女性に多い
- 基礎疾患: 1型糖尿病・甲状腺機能の異常・腎結石症など
一方で、肩をたくさん使う仕事やスポーツをしているからといって、必ずしも石灰化しやすくなるわけではないと考えられています。
肩の酷使が直接的な原因となるというよりは、加齢に伴う腱の変性などが背景にあると推測されています。
肩の石灰化になりやすい食べ物は?
特定の食べ物を摂取することが肩の石灰化の直接的な原因になるという明確な医学的根拠はありません。
肩の石灰化は、原因自体がまだ完全には解明されていないため「これを食べると石灰化する」といったものもなければ、「これを食べれば予防できる」という確実な食事法もわかっていないのが現状です。
そのため、肩の石灰化を心配して特定の食品を極端に避けたり、特別な食事制限を行ったりする必要はないといえるでしょう。
肩が石灰化したら早期治療と予防策を実践しよう
肩の石灰化によるつらい痛みは、適切な知識を持ち、早期に対処することで改善が期待できます。
痛みを我慢したり自己判断で放置したりすることは、症状を長引かせたり、悪化させたりする可能性があります。
この記事を参考に、専門医による正確な診断とご自身の状態に合った適切な治療を受けることが重要です。
そして、治療と並行してご紹介した予防策や生活習慣の見直しを根気強く実践することで、より早い回復と再発防止につながるでしょう。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設