脳血管性認知症のリハビリは何を行う?症状や主な原因、再生医療による治療について詳しく解説
公開日: 2025.03.07更新日: 2025.05.07
脳血管性認知症は、脳梗塞などの脳血管障害を原因として発症する認知症です。
物忘れが激しくなった、曜日や日付が思い出せないなど日常生活に大きな影響を及ぼします。
症状改善のために「どのようなリハビリを行うのが良いかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
本記事では、脳血管性認知症に対してどのようなリハビリを行うかを詳しく解説します。
具体的なリハビリの方法や、再生医療による治療についても紹介します。
脳血管性認知症の治療法にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
脳血管性認知症とは
脳血管認知症は、脳梗塞や脳出血などによって引き起こる認知症です。
認知症の中ではアルツハイマー型に次いで多く、約20%を占めています。男女別では男性の割合が多くなっています。
※筑波大学精神神経科
脳血管認知症の症状は個人差があり、損傷した脳血管の箇所によっても差があります。
以下では、詳しい症状や原因について解説します。
症状や原因を知り、脳血管認知症の早期発見・予防に努めましょう。
脳血管性認知症の症状
脳血管性認知症の主な症状は、以下の通りです。
記憶障害 |
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見当識障害 |
日付や曜日がわからない |
麻痺 | 手足の麻痺、動かしにくさなど |
嚥下障害 | 飲み込みにくい |
感情失禁 | 怒りやすい・落ち込みやすいなど感情のコントロールが難しくなる。 |
抑うつ症状 | 鬱状態になる、意欲がなくなる |
基本的な症状は認知症と変わりません。しかし、障害を受けていない箇所の機能は保たれるため、できることとできないことの差が生じるのが特徴です。
時間によっても症状に差が見られるため、「まだら認知症」と呼ばれます。
できないことを本人も自覚しているため、他の認知症よりも気分が落ち込みやすい、怒りっぽくなるケースがあります。
脳血管認知症の原因
脳血管認知症は、脳梗塞や脳出血などによる脳の血管障害によって引き起こされます。
そのため、脳梗塞や脳出血と危険因子は同じであり、動脈硬化を引き起こす糖尿病や高血圧、高脂質症、肥満、飲酒などが発症のリスクを大幅に高めます。
早い段階から歩行障害などの身体機能の低下がみられるケースもあり、排尿障害などの症状が出る可能性もあります。
脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症との違いは?
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の違いは、以下の通りです。
アルツハイマー型認知症 |
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脳血管性認知症 |
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アルツハイマー型認知症は、記憶障害の後に認知機能障害に広がっていきます。最初は物忘れのような症状で、次第に行動そのもの(食事を摂ったかなど)を忘れるようになります。
アルツハイマー型認知症の根本的な治療は難しいですが、進行を遅らせる薬があります。対して、脳血管性認知症は脳出血などを予防することで再発・進行の抑制が期待できます。
脳血管性認知症に対するリハビリテーション
脳血管性認知症に対するリハビリテーションは主に以下の5つです。
脳血管性認知症の症状は多岐にわたりますので、症状が多い場合には多くのリハビリを行わなければなりません。
五感を使った認知刺激療法
認知刺激療法は非薬物療法のひとつで、具体的に以下の活動をします。
- 塗り絵、習字などの創作
- 簡単な計算
- パズル
- 音楽活動
- 興味のあることについてのディスカッション
認知刺激療法は、見る・聞く・触ることによって五感を刺激し、脳の活性化や認知機能の改善を狙う治療法です。
音楽療法、アロマテラピー、ペットセラピーなどが認知刺激療法に含まれます。
効果のある治療法は患者さまによって異なるので、医師の判断によってリハビリ内容が検討されます。
日常生活の動作訓練
脳血管性認知症では、手足が動かしにくくなる症状が現れるケースがあります。そのため、動作訓練では手足を動かしやすくする運動を行います。
- 関節が動く範囲を広げる運動
- 着替えやトイレなど日常で必要な動作の練習
- 関節の柔軟性を保つためのストレッチ
日常生活が送れるほど手足が動く場合は省略されますが、手足が動かない場合は関節の可動域を拾げる運動などが行われます。
また、日常生活をスムーズに送れるように、着替えやトイレなどの動作訓練も実施します。
歩行などの運動訓練
脳血管性認知症のリハビリでは、脳血管障害を予防するための運動訓練も重要です。
- ウォーキング
- サイクリング
- 水中歩行
水中での訓練は身体への負担を軽減できるため、体を動かすリハビリに適しています。
10分程度の軽い運動でも実行機能の向上が期待できます。
無理なリハビリは気分が落ち込んでしまうケースがあるので、無理のない範囲でリハビリを行いましょう。
言語機能改善のためのコミュニケーション訓練
脳血管性認知症では、失語症などの言語障害が生じるケースがあるので、家族や介護者との日常会話を通して治療していきます。
言葉だけでなくジェスチャーやスキンシップを取り入れて会話することで、発話だけでなく手指の運動機能や状況理解の障害も回復する可能性があります。
嚥下障害がある場合は基礎訓練(関節訓練)
脳血管性認知症では、食べ物を飲みこむ際に障害が生じるケースがあります。このような嚥下障害が起こった場合、以下のリハビリが行われます。
- 舌、頬のマッサージ
- 食前の嚥下体操
- 水分、ゼリーを飲み込む訓練
舌、頬のマッサージなどを行う基礎(間接)訓練や、食べ物を用いて嚥下機能の回復を狙う直接(摂食)訓練が行われます。
一般的に基礎訓練から始まり、実際に食べる・飲む訓練(摂食訓練)に移行していきます。
脳血管性認知症に対するリハビリ以外の治療法は?
脳血管性認知症にはリハビリ以外の治療法は主に2つあります。
それぞれの治療法の特徴について詳しく解説します。
薬物療法
脳血管性認知症に対する薬物療法では、血圧降下剤や抗血栓薬のほか、自発性や意欲の低下に効果のある薬が処方されます。
また、アルツハイマー型認知症などの治療に用いられる認知機能低下を抑制する薬などが処方される場合もあります。
患者さまの低下している機能によって処方される薬は異なりますので、医師と相談のうえ、用法・用量を守って服薬しましょう。
再生医療
脳血管性認知症を治すには、損傷した脳血管や神経の回復が期待できる再生医療による幹細胞治療が注目されています。
当院(リペセルクリニック)の再生医療は、患者さま自身の幹細胞を利用するため、拒絶反応やアレルギーのリスクが低い治療法です。
また、脳血管性認知症の原因となる脳卒中などの脳血管障害の再発防止や症状緩和の効果も期待できます。
早めに治療を開始した方が治療成績は良好ですが、数年経過していても回復する見込みがある場合もあります。
再生医療による治療を検討している方は、当院(リペアセルクリニック)にご相談ください。
脳血管性認知症の原因となる脳梗塞の再発予防が重要
脳血管性認知症を予防するには、原因となる脳梗塞などの脳血管障害の再発予防が重要です。
脳血管性認知症の予防や再発防止は、本人だけでなく周囲の方の協力が不可欠です。
生活習慣の改善
脂質や塩分の低い食事を摂る、飲酒を控えるなどの工夫が必要です。
また、日々の運動を心掛けましょう。1日20分の有酸素運動で糖尿病の予防に効果があります。無理のない範囲で日常に運動を取り入れてください。
以下の動画では、脳梗塞の予防に効果的な食品を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
家族のサポートも大切
脳血管性認知症の患者さまには家族のサポートも重要です。症状を進行させないための環境づくりを行いましょう。
転倒を防止するために手すりをつける、段差をなくすなどが効果的です。
しかし、本人ができないことをすべて代わりに行うのではなく、適度なサポートにとどめてください。
塗り絵・音楽活動・料理など、家族と一緒にできるリハビリもあります。患者さまの気持ちに寄り添い、できることを増やしていきましょう。
【まとめ】脳血管性認知症はリハビリと脳梗塞の再発予防が重要!
脳血管性認知症は、脳梗塞などの脳血管障害によって引き起こされる認知症です。
リハビリを行うことも重要ですが、一番大切なのは家族の理解と協力です。患者さまに寄り添いながらリハビリを行っていきましょう。
また、原因となる脳梗塞などを予防するために食事や運動の習慣を改善しましょう。
再生医療は、脳梗塞などの脳血管障害の再発予防・症状緩和に効果的な治療法です。脳血管性認知症の症状にお悩みの方は、ぜひご検討ください。

監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
略歴
2002年3月京都府立医科大学 医学部 医学科 卒業
2002年4月医師免許取得
2002年4月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2002年6月関西労災病院 脳神経外科 勤務
2003年6月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2003年12月大阪母子医療センター 脳神経外科 勤務
2004年6月大阪労災病院 脳神経外科 勤務
2005年11月大手前病院 脳神経外科 勤務
2007年12月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2012年3月大阪大学大学院 医学系研究科 修了(医学博士)
2012年4月大阪大学医学部 脳神経外科 特任助教
2014年4月大手前病院 脳神経外科 部長