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脳梗塞後に記憶障害が起きるのはなぜ?5つのタイプとリハビリ方法について解説

脳梗塞を経験した方やそのご家族にとって、後遺症の一つとして現れる「記憶障害」は日常生活に大きな影響を及ぼす深刻な問題です。
突然、直前までの記憶を思い出せなくなったり、日々の出来事を忘れてしまったりする状況に直面すると、困惑や不安を抱える方も多いでしょう。
本記事では、脳梗塞後に引き起こされる「記憶障害」の原因や、リハビリ方法について詳しく解説します。
また、社会的支援の活用方法についても紹介しますので、脳梗塞後の記憶障害にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
脳梗塞後に記憶障害が起きる原因とは
脳梗塞によって「海馬」や「視床」などの記憶に関わる部位が損傷することで「記憶障害」が起こる可能性があります。
本章では、脳梗塞後の記憶障害に関する以下の項目について解説します。
それぞれの内容を詳しく確認していきましょう。
記憶障害は後遺症の一つ
脳梗塞によって引き起こされる記憶障害は「高次脳機能障害」の一種に分類され、日常生活の質を左右する深刻な後遺症の一つです。
特に、新しい出来事を覚える役割を担う「海馬」や、情報を整理して受け渡す「視床」が損傷すると、数分前の会話さえ忘れてしまうことも少なくありません。
こうした症状は手足の麻痺とは異なり、外見からは判断しにくいため、周囲からの理解が得られにくいという側面を抱えています。
周囲の方がただの物忘れではなく、「記憶が抜けたり覚えられなかったりする障害」として理解することで、患者さまに寄り添った適切な環境づくりを進めやすくなるでしょう。
記憶障害の兆候
記憶障害の兆候として、一時的な記憶の混乱や、新しいことを覚えられなくなる短期記憶障害が見られるケースがあります。
具体的には、以下のようなシーンが挙げられます。
- 数分前に話していた内容を全く思い出せない
- 今いる場所や今日の日付が一時的に分からなくなる
- 慣れている家事や仕事の手順が分からなくなる
上記のような「わずかな違和感」を覚えたら、ただの物忘れと見過ごさずに速やかに医療機関を受診することが重要です。
脳梗塞後の記憶障害における5つのタイプ
脳梗塞によって脳への血流が遮断されると、記憶障害が引き起こされます。その症状は、影響を受けた脳の部位や損傷の程度によってさまざまです。
ここでは、5種類の記憶障害と症状について紹介します。
記憶障害の症状は、患者さまの日常生活や対人関係に影響を及ぼすため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
短期記憶障害
短期記憶障害とは、新しい情報を保持する能力が低下して、数秒から数分前の出来事を覚えておくのが難しい状態です。
【短期記憶障害の症状例】
- 今日の日付や曜日が思い出せない
- 食事をしたことや友人との会話を覚えていない
- 物の置き場所を頻繁に忘れる
- 何をしようとしていたか忘れる
短期記憶障害は、日常生活で必要な動作や作業に大きな影響を及ぼし、さまざまな支障を引き起こす原因となります。
長期記憶障害
長期記憶障害は、数日~数週間、数十年で覚えた情報や出来事を思い出すことが難しくなる状態です。
【長期記憶障害の症状例】
- 過去の記憶が思い出せなくなる
- 記憶していた内容が時系列で整理できなくなる
- 新しく得た情報を長期的に記憶するのが難しい
長期記憶障害は、過去の経験や知識を思い出すことが難しくなるため、日常生活や人間関係に影響を及ぼすことがあります。
エピソード記憶障害
エピソード記憶障害は、過去に体験したエピソードを思い出すのが難しくなる状態です。
【エピソード記憶障害の症状例】
- 家族や友人との旅行で体験した出来事が思い出せない
- 過去に働いていた職場での仕事内容を思い出せない
- 食事したことを忘れてしまう
体験した記憶の一部、あるいはエピソード全体が思い出せなくなってしまいます。
出来事がいつ・どこで起こったのかといった、文脈的な情報を含む記憶が失われるのが特徴です。
手続き記憶障害
手続き記憶障害は、体で覚えた動作や技能を忘れてしまう状態です。
【手続き記憶障害の症状例】
- 車や自転車の乗り方を思い出せない
- 料理で食材の切り方や包丁の使い方がわからない
- パソコンのキーボードが打てなくなる
主に頭ではっきり考えずともできていた、習慣的な行動に支障をきたします。
今まで意識せずに行っていた動作ができなくなり、日常生活で大きなストレスや不便さを感じる原因になります。
見当識障害
見当識障害は、時間や場所、自分自身に関する基本的な認識が混乱する状態です。
【見当識障害の症状例】
- 今が何月何日なのかわからない
- 自分が現在どこにいるのかわからない
- 自分が誰であるのかわからない
見当識障害は、記憶だけでなく、日常生活全般に深刻な影響を及ぼします。
特に、自分がどこにいるかを認識できないため、道に迷ったり、家に帰れなくなったりするといった危険な状況が生じることもあります。
見当識障害は脳梗塞だけでなく、初期の認知症にも見られる症状です。
脳梗塞後の記憶障害に対するリハビリ方法
リハビリテーションでは、患者さまの記憶機能を補助したり代替したりする、さまざまな方法が用いられます。
ここでは、脳梗塞による記憶障害に対して行われるリハビリテーション方法について解説します。
また、ご家族のサポートとリハビリ効果を高める再生医療についても解説しているので、ぜひご覧ください。
内的記憶戦略法
内的記憶戦略法※は、脳梗塞による記憶障害のリハビリにおいて、患者さま自身が意識的に記憶力を高めるための方法です。
※参照: 国立障害者リハビリテーションセンター「医学的リハビリテーションプログラム」
この方法では、記憶を活性化し情報を効果的に覚えるための具体的な工夫を取り入れます。
代表的な方法として、語呂合わせや情報をカテゴリーごとに整理する手法、視覚イメージ法などがあります。
内的記憶戦略法の主な手法とその実践例を以下の表にまとめました。
| 手法 | 概要 | 具体的な実践例 |
特徴・効果 |
|---|---|---|---|
|
カテゴリー分類法 |
情報を共通の特徴で分類して記憶する |
野菜(にんじん、キャベツ)、果物(りんご、みかん)のように分類 |
|
|
視覚イメージ法 |
記憶したい情報を具体的な映像として思い描く |
買い物リストに「牛乳とパン」がある場合、「巨大なパンで牛乳パックをサンドイッチ」とイメージ |
|
これらの内的記憶戦略法の利点は、患者さま自身が能動的に取り組むことで、記憶の回復を目指せる点です。
この方法は、日常生活に取り入れやすく、繰り返しの練習により効果が高まるとされています。
外的補助手段
外的補助手段※は、外部ツールを利用して記憶力の低下を補助する方法です。
※参照: 国立障害者リハビリテーションセンター「医学的リハビリテーションプログラム」
患者さまが記憶を頼りにせずとも日常生活を円滑に送るための方法で、実用性が高いのが特徴です。
記憶障害があるとスマートフォンなど外部ツールの使用を忘れてしまいますが、繰り返しにより習慣になる場合もあります。
外的補助手段は習慣化するまでは患者さまだけで継続するのは難しく、ご家族や支援者が協力して環境を整えることで、より効果を発揮します。
課題指向型アプローチ
課題指向型アプローチは、患者さまが日常の生活で直面する具体的な問題に焦点を当て、その解決を目指す実践的なリハビリテーション方法です。
たとえば、以下のような具体的な課題設定と実践方法が挙げられます。
| 生活場面 | 具体的な課題例 | 実践方法 | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
|
買い物 |
商品リストの記憶と購入 |
|
|
|
家事 |
段取りを考えた家事の実行 |
|
|
これらのリハビリにより、実際の生活で記憶を活用する能力を高められますが、課題の設定は患者さまごとに異なり、その人の能力や生活環境に合わせて設定する必要があります。
必要に応じて外的補助手段も活用し、記憶力の向上を図りつつ、実際の生活場面での失敗を最小限に抑えるアプローチも可能です。
また、成功体験を重ねることで自信を回復させる効果も期待できます。
家族による環境のサポートも重要
脳梗塞による記憶障害に対しては、家族のサポートが患者さまの回復を支える重要な要素です。
ご家族は患者さまの生活環境を整えるだけでなく、心理的な支えにも大きな役割を果たします。
効果的なご家族サポートの具体例として、以下のような環境づくりが挙げられます。
| サポートの種類 | 具体的な方法 | 期待される効果 | 実践する上での注意点 |
|---|---|---|---|
|
物理的環境整備 |
必要なものを見える位置に配置 |
日常生活の自立支援 |
配置場所の一貫性を保つ |
|
習慣形成支援 |
スマートフォンのアラーム設定を一緒に練習 |
自己管理能力の向上 |
段階的に習慣づける |
|
心理的サポート |
適切な距離感を保ちながらの見守り |
自尊心の維持 |
過度な干渉を避ける |
しかし、リハビリテーションによる回復には個人差があり、時には望むような改善が見られないこともあります。
家族とはいえ、すべてのサポートをするのは容易ではなく、負担が大きくなることで、ご家族の方が心身に疲れを感じることもあるでしょう。
また、記憶障害のある患者さまにとってもご家族への依存を余儀なくされる状況は大きな精神的負担となるため、早期の機能回復により患者さまとご家族双方の負担軽減が望まれます。
そこで、患者さまの回復をより早めつつ、ご家族の負担を軽減する手段として、ぜひ再生医療もご検討ください。
- 再生医療は、患者さまの脳細胞の修復や再生を促進する先進的な治療法です。
- 脳梗塞をはじめとする脳卒中の後遺症改善効果が期待できます。
- リハビリと並行して再生医療を行うことで、リハビリ効果を高められます。
脳梗塞による記憶障害でお困りの方、あるいはご家族のサポートに課題を感じている方は、ぜひ当院へご相談ください。
脳卒中のお悩みに対する新しい治療法があります。
脳梗塞による記憶障害への社会的支援
脳梗塞の後遺症である記憶障害には、公的な助成や専門の相談窓口を活用することで、家計の負担や将来への不安を軽減できる可能性があります。
障害者手帳や各種支援制度など、さまざまなサポートを受けることで、患者さま本人だけでなくご家族の負担軽減にもつながるでしょう。
主な支援策は、以下のとおりです。
| 支援策 | 詳細 |
|---|---|
| 精神障害者保健福祉手帳 | 税金の控除や公共交通機関の割引など、生活を支える多角的な恩恵を受けられる。 |
| 自立支援医療 | 自立支援医療(精神通院医療)の通院による精神医療費の自己負担軽減が受けられる。 |
| 介護保険 | 40歳以上から特定疾病として認定を受けられ、訪問リハビリや福祉用具が活用できる。 |
これらの制度を組み合わせることで、目に見えにくい記憶障害でも生活を再構築する助けとなります。
まずは、地域の福祉窓口や「高次脳機能障害支援センター」へ相談し、利用可能な選択肢を一つずつ整理することから始めましょう。
脳梗塞後の記憶障害に関するよくある質問
最後に、脳梗塞後の記憶障害に関するよくある質問に回答していきます。
患者さまやご家族が抱える「以前のようになれるのか」という不安に対し、現在の医学的知見に基づいた考え方を確認していきましょう。
脳梗塞による記憶障害は回復する?
残された神経細胞が新たなネットワークを築く、脳の可塑性(かそせい)という働きを促すことで、失われた機能の一部を補完できる可能性があります。
一度死滅した細胞そのものの回復は難しいものの、早期からの適切なリハビリが脳内の情報伝達を助け、記憶を保持する力を整えてくれます。
また、メモやアプリを活用して「覚える負担」を物理的に減らす工夫は、脳の疲労を和らげ、回復を円滑に進める手助けとなるでしょう。
脳梗塞後に物忘れがひどいのはなぜ?
脳梗塞後に物忘れがひどくなった場合、記憶に関連する部位がダメージを受けたことで、「記憶障害」や「血管性認知症」を起こしている可能性があります。
加齢による物忘れとは異なり、脳内の「回路」が物理的に途切れるため、直前の出来事に関する記憶も抜け落ちるなどの症状が見られます。
これは本人の意識の問題ではないため、ご家族や周囲の方が情報を小分けに伝えたり、メモを活用したりする工夫が重要です。
脳梗塞後の記憶障害の治療には「再生医療」もご検討ください
脳梗塞による記憶障害は、短期記憶や長期記憶、エピソード記憶などさまざまな記憶機能に影響を及ぼします。
記憶障害への対応には、後遺症や原因について理解し、早期から適切なリハビリテーションを行うことが重要です。
金銭的な負担やご家族の負担を軽減できる社会支援サービスもありますので、これらを活用しながら、無理のない形で後遺症と向き合っていくことが大切です。
また、記憶障害を含む脳梗塞の後遺症の改善には、再生医療による治療も選択肢の一つです。
再生医療では、患者さまの細胞や血液を用いて損傷した組織の再生・修復を促す治療によって、後遺症の根本的な改善が期待できます。
以下の動画では、実際に再生医療によって、脳梗塞の後遺症が改善された患者さまの症例を紹介していますので、併せて参考にしてください。
>>脳卒中(脳梗塞)に対する再生医療の症例はこちら
「脳梗塞の後遺症を治したい」「再生医療について詳しく知りたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。
監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
資格・所属学会
日本脳神経外科学会 所属
脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。


























