高齢者の脳梗塞は回復する?回復見込みや家族ができるサポートを解説
公開日: 2025.01.08更新日: 2025.02.04
高齢者が脳梗塞を発症した場合、回復見込みはあるのか不安を抱える方も多いでしょう。
また、家族としてどのように支えれば良いかわからず、戸惑うこともあるかもしれません。
脳梗塞は発症後の対応が重要であり、適切な治療やリハビリ次第で生活の質を大きく改善できる可能性があります。
この記事では、高齢者が脳梗塞を発症した際の回復の見込みや後遺症への対応方法について詳しく解説します。
リハビリや再生医療といった治療法、さらに家族ができる具体的なサポート方法も紹介します。
脳梗塞についての疑問や悩みを解消し、回復への道を支えるための情報をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
高齢者に多い脳梗塞とは?基礎知識と回復の可能性
高齢者に多く見られる脳梗塞は、脳への血流が途絶えることで発症する疾患です。
主な原因として動脈硬化や高血圧、糖尿病などの生活習慣病が挙げられ、加齢によってそのリスクはさらに高まります。
脳梗塞にはいくつかの種類があり、発症した際の症状や回復の見込みはケースによって異なります。
とくに高齢者の場合、発症後の回復には年齢やリハビリの質が大きく影響し、後遺症が出ることも少なくありません。
ここからは、脳梗塞の種類や症状、回復の見込みについてさらに詳しく解説していきます。
気になることについては、ここで確認してください。
脳梗塞の種類と症状
脳梗塞は主に以下の3種類に分類されます。
- 脳血栓症:動脈硬化によって血管が狭くなり、血栓(血のかたまり)ができて血流が止まる
- 脳塞栓症:心臓や血管から流れてきた血栓が脳の血管を塞ぐ
- ラクナ梗塞:細い脳の血管が詰まることで発症する
高齢者が脳梗塞を発症しやすい理由は、加齢による動脈硬化の進行や、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の影響が大きい点です。
詳細について知りたい方は、以下の記事で詳しく紹介していますのでご参照ください。
高齢者が脳梗塞になった場合の回復見込み
一般的に年齢が高くなるほど、若年層と比較して高齢者の脳梗塞の回復には時間がかかる傾向があります。
しかし、高齢者であっても適切な治療を受け、計画的にリハビリを進めることで、日常生活動作(ADL)の向上が十分に期待できます。
高齢者が脳梗塞を発症した場合の回復の見込みはさまざまな要因に左右されますが、回復見込みに影響を与える主な要因には以下があります。
- 患者の年齢と体力
- 発症から治療開始までの時間
- 脳の損傷部位と程度
- リハビリテーションの質と継続性
- 基礎疾患(高血圧、糖尿病など)の管理状態
- 患者個人の回復力や意欲
とくに重要なのが「発症から治療までの時間」で、発症後4.5時間以内は「ゴールデンタイム」と呼ばれ、迅速な対応が回復に影響します。
この早期治療とリハビリテーションの組み合わせにより、機能改善が期待できます。
脳には「神経可塑性」という特性があり、適切なリハビリを継続することで、損傷した機能の一部を他の部位が補うことが可能です。
ただし、回復の程度や速度には個人差が大きく、同じような症状であっても、改善の度合いは患者によって異なることに留意が必要です。
回復のステージと必要な対応について、以下の表にまとめました。
回復段階 |
重要なポイント |
期待される効果 |
具体的なリハビリ例 |
---|---|---|---|
発症直後 |
t-PA治療の実施(4.5時間以内) |
脳細胞の損傷を最小限に抑制 |
早期離床訓練 |
急性期 |
早期リハビリの開始 |
二次障害の予防、基本機能の維持 |
関節可動域訓練、嚥下訓練 |
回復期 |
計画的なリハビリの継続 |
日常生活動作(ADL)の改善 |
麻痺した手足の運動訓練、言語訓練、生活動作訓練 |
維持期 |
生活習慣の改善と基礎疾患の管理 |
機能維持と再発予防 |
自主トレーニング |
リハビリの成果は継続性や頻度に依存するため、専門家の指導のもとで計画的かつ段階的なアプローチを行うことが重要です。
たとえば、麻痺が残った手足の運動訓練では関節の動きを維持することから始めたり、失語症に対する言語訓練などによってコミュニケーション能力の回復を目指します。
日常生活動作(ADL)の改善については個人差があるものの、高齢者の場合でも比較的軽い脳梗塞であれば、早期治療とリハビリの組み合わせにより機能改善が期待できます。
ただし重度の場合は介助を必要とする場面が残る可能性もあり、さらに脳梗塞は再発リスクが高い疾患であり、とくに高齢者ではその傾向が顕著です。
そのため回復期以降も、以下の点で注意が必要となります。
- 定期的な健康診断の受診(血圧、血糖値、コレステロール値のチェック)
- 基礎疾患の適切な管理(高血圧、糖尿病、心房細動など)
- バランスの取れた食事(減塩、適切な栄養摂取)
- 適度な運動の継続(主治医と相談の上で)
- 十分な休息の確保(過度な疲労を避ける)
早期かつ適切な治療とリハビリを行うことで、高齢者であっても脳梗塞後の生活の質を向上させることが可能です。
焦らず、専門家のサポートを受けながら、段階的に回復を目指すことが大切と言えるでしょう。
高齢者で脳梗塞の後遺症が残った場合の回復見込み
高齢者が脳梗塞を発症した後、後遺症が出る可能性は若年層より高く、回復にも時間がかかる傾向があります。
とくに80歳以上や90歳以上では、その傾向が顕著です。高齢者が脳梗塞を発症した際に現れやすい後遺症は、以下の通りです。
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後遺症が残った場合でも、回復見込みはありますので、以下のポイントを意識して症状の緩和や生活の質の向上を目指しましょう。
- 継続的なリハビリ
- 介護・支援環境の整備
- 再発予防
身体機能や言語機能の回復には、毎日の継続が大切です。理学療法や作業療法を通じて、日常生活動作をサポートします。
また、脳梗塞後の高齢者が後遺症と向き合うためには、家族や介護者のサポートが欠かせません。
自宅に手すりの設置などの環境整備、食事のサポートなどの助けがあると、身体的・精神的な負担が軽減されます。
脳梗塞は一度発症すると再発しやすい病気であり、とくに高齢者の場合は再発による後遺症の悪化リスクが高まります。
生活習慣の改善を図ることで、脳梗塞の再発リスクを抑えることが重要です。
脳梗塞の後の高齢者の回復を助けるリハビリについて
脳梗塞後の後遺症からの回復を助けるリハビリとして、段階に応じたリハビリテーションを行います。
リハビリは大きく急性期、回復期、維持期の3つの期間に分けられ、それぞれ異なる目的とリハビリ内容を設定します。
リハビリの期間 | 発症からの期間 | 目的 | 主なリハビリ内容 |
---|---|---|---|
急性期 | 発症から1~2カ月以内 | 合併症の予防と身体機能の維持 |
|
回復期 | 発症から6カ月以内 | 身体機能・日常生活動作(ADL)の回復 |
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維持期(生活期) | 発症から6カ月以降 | 機能の維持と生活の質向上 |
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急性期には合併症の予防、回復期には機能の回復、維持期にはその維持と生活の質の向上を目指します。
脳梗塞後の高齢者の回復には、継続的なリハビリが欠かせません。医療スタッフや家族と協力しながら、その人の状態に合ったリハビリを進めていきましょう。
再生医療で実際に高齢者が苦しむ脳梗塞の後遺症が改善した事例
再生医療の一環として行われる幹細胞治療は、脳梗塞後の高齢者の後遺症改善に効果が期待できます。
今回は当院(リペアセルクリニック)における実際の症例と治療後の経過について簡単に紹介します。
年齢 | 症例 | 治療方法 | 治療後の経過 |
---|---|---|---|
60代男性 | 急性期脳梗塞の後遺症 | 自己脂肪由来幹細胞を用いた 点滴治療を1回実施(3回予定) |
左手のしびれが完全に消失し、不整脈も改善。呂律も回復してスムーズに発語できるようになった。 |
60代男性 | 脳梗塞後の右上肢の機能低下 | 自己脂肪由来幹細胞を用いた 点滴治療を3回実施 |
右肩の可動域と筋力が改善し、ボールを投げる動作が可能になった。脳の血管造影検査で再生した血管の確認も得られる。 |
70代男性 | 急性期脳梗塞の後遺症 | 自己脂肪由来幹細胞を用いた 点滴治療を3回実施 |
初回投与後1週間で左口周りと左手のしびれが軽減し、夜間頻尿が消失。4か月後にはふらつき、めまいがなくなり、小走りも可能になった。 |
それぞれの詳しい紹介は以下にて紹介していますので、詳細が気になる方はぜひご確認ください。
・急性期脳梗塞 幹細胞治療 70代男性 ・急性期脳梗塞の後遺症がほぼ改善! 60代男性 ・脳梗塞後の造影検査で血管が再生されたのを確認!60代男性 |
脳卒中のお悩みに対する新しい治療法があります。
ご家族ができるサポート
脳梗塞後の高齢者を支えるには、家族の協力が欠かせません。心理的な支援や日常生活のサポートによって、本人の回復を助けられます。
以下でポイントをまとめました。
心理的サポート |
・不安を軽減するために、本人の気持ちに寄り添った声かけを行う ・小さな進歩を褒めるなど、意欲を高める環境を作る |
---|---|
日常生活の支援 |
・安全な住環境の整備:手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床材の導入を行い、転倒リスクを軽減する ・食事の工夫:栄養バランスを意識しつつ、飲み込みやすい形態(刻み食やゼリー状の食品)の食事を取り入れる ・外部サービスの活用:訪問リハビリやデイサービスの利用を検討し、必要に応じて保険外サービスも活用する |
サポートは重要ですが、家族だけですべてを抱え込むのは困難な場合も多いため、外部の介護サービスなどの活用も検討しましょう。
また、幹細胞治療のような再生医療であれば、本人の回復を促し、家族の負担を軽減できる可能性もあります。
再生医療についてご興味がある方やご検討している際は、お気軽に当院へご相談ください。
高齢者の脳梗塞と回復についてよくある質問
高齢者の脳梗塞と回復についてよくある質問は以下の通りです。
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以下では上記の質問に回答しながら、高齢者でも可能な回復の道筋や治療の選択肢について解説します。
脳梗塞になると長生きできない?
脳梗塞を発症すると命に関わる場合があるのは事実ですが、それが必ずしも長寿を妨げる要因ではありません。
適切な治療やリハビリ、再発予防の取り組みによって、発症後も生活の質を維持しながら長生きできる可能性があります。
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再発リスクを抑える生活習慣の見直し
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リハビリと心理的サポート
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支援サービスの活用
まずは高血圧や糖尿病などの基礎疾患の管理が重要です。塩分を控えた食事や適度な運動を日常生活に取り入れることで、再発リスクを低減できます。
定期的な健康診断を受け、高血圧などの脳梗塞の要因を早期に発見することも大切です。
また、リハビリを通じて身体機能や日常生活動作の改善が可能です。歩行訓練や失語症の改善に向けた言語訓練などが効果を発揮します。
家族や介護者による心理的な支えが本人の意欲を高める鍵となるので、長い目で見ると結果的に負担が軽くなることも期待できるでしょう。
リハビリには家族のサポートは大切ですが、負担が大きくならないように支援サービスの活用も検討してみてください。
訪問リハビリやデイサービスといった外部の支援を取り入れることで、家庭での介護負担を軽減しながら、適切なケアを継続できます。
高齢者で脳梗塞になる・繰り返すと治療できない場合もある?
高齢者が脳梗塞を発症した場合、治療が難しいケースは確かに存在します。これにはいくつかの要因が関係しています。
- 年齢と回復力
- 早期治療が不可能な場合
- 後遺症の重篤さ
- 合併症のリスク
高齢になるほど身体の回復力が低下し、外科的処置や薬物治療が適さない場合があります。
また、発症からの時間が遅れたためにt-PA治療(血栓を溶かす治療)などの早期治療が適用できないケースも少なくありません。
さらに、麻痺や言語障害が深刻でリハビリを行うことが難しい状況や、基礎疾患(心臓病や糖尿病など)が治療の妨げとなることもあります。
このような場合、従来の治療法が行えないため、代替策として以下の対応が考えられます。
- 緩和的ケアによる痛みや不快感の軽減
- 移動や日常生活を支えるための住環境の調整
- 専門家の指導を受けながらの家族や介護者の支援
治療が行えない場合でも、症状の進行を防いで生活の質を保つための工夫や支援を行うことが重要です。
家族や介護者が連携し、患者ができる限り快適な生活を送るためのサポートが大切です。
まとめ:脳梗塞後の高齢者でも回復見込みはある
脳梗塞は高齢者にとって深刻な疾患ですが、適切な治療とリハビリを行うことで、回復への道が開ける場合があります。
ただし、若い世代と比較すると、加齢による回復力の低下や後遺症が出る可能性が高く、完全な回復は難しいケースもあります。
これらの要因を踏まえつつ、再発を防ぎながら生活の質を向上させることが重要です。
近年、幹細胞治療をはじめとする再生医療は、高齢者の脳梗塞後の後遺症改善において注目されています。
再生医療は、損傷した脳細胞を再生させ、従来の治療で難しかった回復を目指せる方法です。
もし、脳梗塞後の後遺症や回復についてお悩みの場合は、ぜひ当院へお問い合わせください。

監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
略歴
2002年3月京都府立医科大学 医学部 医学科 卒業
2002年4月医師免許取得
2002年4月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2002年6月関西労災病院 脳神経外科 勤務
2003年6月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2003年12月大阪母子医療センター 脳神経外科 勤務
2004年6月大阪労災病院 脳神経外科 勤務
2005年11月大手前病院 脳神経外科 勤務
2007年12月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2012年3月大阪大学大学院 医学系研究科 修了(医学博士)
2012年4月大阪大学医学部 脳神経外科 特任助教
2014年4月大手前病院 脳神経外科 部長