脳梗塞になりやすい人の特徴を解説!予防方法や再生医療による治療について
公開日: 2025.01.09更新日: 2025.02.03
脳梗塞は、脳血管に血栓が詰まり血流が途絶えることで、脳の神経細胞が死んでしまう病気です。生活習慣病を持つ人やストレスを溜めてしまう性格の人は、脳梗塞になりやすい傾向があります。
本記事では、脳梗塞になりやすい人の特徴や予防方法について解説します。発症リスクを確認し、脳梗塞を予防しましょう。
この記事を読むとわかること
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脳梗塞になりやすい人の特徴に当てはまる場合でも、生活習慣を改善すると発症リスクを低減できる可能性があります。
発症リスクを理解して脳梗塞を予防するためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
脳梗塞とは
脳梗塞は、脳血管に血栓が詰まり血流が途絶えることで、脳の神経細胞が死んでしまう病気です。脳血管が詰まると、全身に指令を送る神経細胞まで十分な血液が供給されないため、さまざまな症状が現れます。
脳梗塞の主な症状は、以下のとおりです。
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脳梗塞を発症しないよう、脳梗塞になりやすい人の特徴を確認しましょう。
脳梗塞になりやすい人の特徴
脳梗塞になりやすい人には、以下の8つの特徴があります。
乱れた食生活や運動不足によって発症した生活習慣病は、脳梗塞の原因にもなりうるため注意が必要です。以下の動画では脳梗塞の初期症状についてわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
脳梗塞になりやすい人の特徴について、それぞれ詳しく解説します。
高血圧
脳梗塞になりやすい人の特徴の1つに、高血圧があります。一般的に最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低血圧が90mmHg以上の状態が慢性的に続くと高血圧と診断されます。
高血圧にならないために、以下の特徴を持つ人は注意しましょう。
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高血圧の状態が続くと、血管壁がもろくなり血栓ができやすいため、日常的な血圧管理が大切です。
脂質異常症
脂質異常症の人は、脳梗塞になりやすい傾向があります。脂質異常症とは、血液中の脂質の量が過剰になる疾患で、診断基準※は以下のとおりです。
疾患名 | 診断基準 |
高LDLコレステロール血症 | LDLコレステロール140mg/dl以上 |
境界域高LDLコレステロール血症 | LDLコレステロール120~139mg/dl |
低HDLコレステロール血症 | HDLコレステロール 40mg/dL未満 |
高トリグリセライド血症 |
中性脂肪(トリグリセライド:TG) 150mg/dL以上(空腹時採血) 中性脂肪(トリグリセライド:TG) 175mg/dL以上(随時採血) |
過食・肥満傾向があったり、運動習慣がなかったりする人は、脂質異常症になりやすいため注意が必要です。
血液中に過剰に存在するコレステロールや中性脂肪は、プラーク(粥種)となり血管壁に沈着します。プラークが血管壁に沈着すると、血管壁が肥厚して固くなり、動脈硬化のリスクが高まります。
心房細動
脳梗塞になりやすい人に、心房細動の方が挙げられます。心房細動は、加齢や高血圧などが原因で起こる不整脈です。
心房細動になると血液循環機能が上手に働かず、心房内に古い血液が溜まります。古い血液は新しい血液より粘度があるため、血栓ができやすくなります。
糖尿病
糖尿病の人は、脳梗塞になりやすい傾向があります。糖尿病は、血糖値を下げるホルモンのインスリンが上手に機能しない病気で、診断基準※は以下のとおりです。
血糖値 |
空腹時血糖≧126mg/dl 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間後の血糖値≧200mg/dl 任意の時間の血糖値≧200mg/dl |
HbA1c |
HbA1c(JDS値)≧6.1% HbA1c(NGSP)≧6.5% |
※参照:糖尿病の新しい診断基準|国立国際医療研究センター糖尿病情報センター
インスリンの機能低下により高血糖状態になった場合は、動脈硬化が進行します。血管の状態が悪化し血液循環が滞ると血栓が作られ、脳梗塞になるリスクが高まります。
動脈硬化
動脈硬化がある人は、脳梗塞の発症リスクがあるため注意が必要です。動脈硬化は加齢や高血圧、糖尿病などが要因となり、血管壁がもろくなる疾患です。
もろくなった血管壁を修復するために、血小板が凝集し、血栓ができやすくなります。動脈硬化が進行し身体のどこかで作られた血栓が脳血管まで到達したり、脳内で血栓ができた場合は、脳梗塞を発症する可能性があります。
運動不足
脳梗塞になりやすい人の特徴に、運動不足があります。運動不足の人が脳梗塞になりやすい理由は、生活習慣病の発症リスクが高いためです。
脳梗塞は血管障害で、生活習慣病と密接にかかわっています。血液循環が正しく行われるよう、運動を習慣化し血液を綺麗な状態に保つことが大切です。
ストレスを溜めやすい
ストレスを溜めやすい性格の人は、脳梗塞になりやすいため注意が必要です。ストレスを溜めてしまうと血圧が上がり、脳梗塞の発症リスクを高めます。
高血圧や脂質異常症などの生活習慣病は、動脈硬化のリスクも高めるため、脳梗塞になりやすくなります。生活習慣病にならないよう、自身に合った方法でストレスを発散しましょう。
遺伝
脳梗塞の発症リスクは、遺伝が関係している場合があります。脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患は、ストレスや飲酒などの環境的素因と遺伝的素因が組み合わさって、発症リスクが高まるといわれています。
家族に脳梗塞の人がいる場合や、もともと血圧が高い人は、脳梗塞の発症リスクが高いため注意しましょう。
脳梗塞になりやすい食べ物はある?
脳梗塞になりやすい食べ物の例は、以下のとおりです。
理由 | 食品例 | |
乳製品 | 飽和脂肪酸が多く、LDLコレステロール値が上がりやすい | バター、マーガリン、チーズ |
加工肉 | 飽和脂肪酸が多く、LDLコレステロール値が上がりやすい | ハム、ベーコン、ソーセージ |
お菓子・スイーツ | トランス脂肪酸が多く含まれるため | スナック菓子、ケーキ、クッキー |
漬物・干物 | 塩分が多く含まれており、生活習慣病のリスクが高まるため | 梅干し、漬物、干物 |
アルコール類 | 過剰なアルコール摂取は、生活習慣病のリスクを高めるため | ビール、ワイン、日本酒 |
動物性脂肪やトランス脂肪酸を含む食品や、加工食品の多量摂取は、動脈硬化のリスクを高めます。アルコールの過剰摂取も脳梗塞の発症リスクを高めるため、お酒の飲みすぎに注意しましょう。
脳梗塞を予防する食べ物を日常の食事に取り入れ、健康的な食事習慣をつくりましょう。
脳梗塞にならないためにすべきこと
脳梗塞にならないためには、以下の3つの行動を心がけることが大切です。
乱れた食生活や運動不足が続くと、生活習慣病の発症リスクが高まり脳梗塞になりやすくなります。生活習慣を見直し、脳梗塞のリスク因子を減らしましょう。
生活習慣の改善
脳梗塞にならないために、生活習慣の改善が大切です。生活習慣を改善すると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを低減できます。
生活習慣を見直す際は、以下のポイントを確認しましょう。
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ストレスや疲労を溜めずに、規則正しい生活を送れば、脳梗塞のリスク因子の生活習慣病を防げます。改善できる生活習慣から見直していくことが大切です。
食生活の改善
脳梗塞を予防するために、食生活を改善しましょう。食生活を改善すると、高血圧や動脈硬化の予防に繋がり、脳梗塞になりにくくなります。
脳梗塞の予防に効果的な食品は、以下のとおりです。
脳梗塞の予防に効果的な食品 | 理由 |
トマト・トマトジュース | トマトに含まれるリコピンは、悪玉コレステロールの値を下げる働きがある |
魚類 | 魚類に含まれるEPAは、コレステロールや中性脂肪を減らす働きがある |
オリーブオイル | オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪酸は、コレステロールや中性脂肪を下げる働きがある |
緑黄色野菜・果物類 |
ミネラルやビタミンは、体の酸化を予防できる 食物繊維はコレステロールの排出を促す働きを持つ |
ナッツ類 | ナッツに豊富に含まれるビタミンEは、抗酸化作用があり、悪玉コレステロールを減らす働きを持つ |
悪玉コレステロールや中性脂肪の値が下がると血圧も下がるため、脳梗塞の予防に効果的です。以下の動画では、脳梗塞の予防に効果的な食品について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
過剰摂取を避け、栄養バランスを考えて日々の食事に上記の食品を取り入れましょう。
運動不足の解消
脳梗塞を発症しないためには、運動不足を解消することが重要です。運動不足を解消すると血行が促進され、生活習慣病のリスクを低減できたり、ストレスを発散できたりします。
脳梗塞の予防には、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行うのが効果的です。以下の具体例を参考に、日々の生活に運動を取り入れましょう。
有酸素運動 |
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筋力トレーニング |
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厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」※で、息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上、筋力トレーニングは週2~3日行うことを推奨しています。
参照:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023|厚生労働省
運動する時間がない人は、家事や仕事などで積極的に身体を動かしましょう。
脳梗塞の再発リスクと予防方法について
脳梗塞の再発を予防するために、以下の2つのポイントを確認しましょう。
脳梗塞は再発率が高い疾患ですが、日常生活の改善や適切な治療を行うと、再発リスクを下げられます。脳梗塞が再発しやすい理由を確認し、予防策を実践しましょう。
脳梗塞は10年以内に約50%が再発している
脳梗塞を発症した人は、10年以内に約50%が再発している現状※があります。
参照:日本人コミュニティにおける初めての脳卒中から10年間の再発|久山研究
脳梗塞の再発率が高い理由は、症状が出現していない場合でも以下の危険因子が潜んでいるためです。
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脳梗塞の症状が落ち着くと、今まで気をつけていた生活習慣やリハビリなどへの意識が低くなり、再発リスクが上がるため注意しましょう。
再発予防のためにすべきこと
脳梗塞の再発予防のために、以下3つの方法を実施することが大切です。
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退院後は自分で生活環境を整え、食事管理や運動などを行う必要があるため、入院中できていたことができなくなってしまう場合があります。入院中から退院を見据え、生活習慣を改善していきましょう。
脳梗塞の再発を抑えるために「再生医療」が注目されている
脳梗塞の再発を抑えるために、再生医療が注目されています。再生医療とは、損傷した部位を修復するために、肝細胞の点滴を投与する治療法です。
脳梗塞の再生医療で期待できる効果は、以下の3つです。
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リハビリと合わせて再生医療を行うと、脳梗塞の後遺症である麻痺や言語障害などの症状を緩和できる可能性があります。専門家の意見を聞き、再生医療の実施を検討するのがおすすめです。
再生医療は原因となった部位だけでなく、脳梗塞になりそうな血管の修復も可能です。脳梗塞になりやすい特徴を持つ人は、再発を防ぐために再生医療も検討しましょう。
脳梗塞になりやすい人の特徴まとめ|予防のためにすべきこと
脳梗塞になりやすい人は、生活習慣病の人やストレスを溜めやすい性格の人です。脳血管疾患の発症リスクには、遺伝的素因も関係するため、家族に脳梗塞や脳出血などの人がいる場合は注意が必要です。
脳梗塞の再発予防のためにできることに、生活習慣の改善や薬物治療、再生医療があります。自身に合った方法で脳梗塞になるリスクを下げ、再発を防ぎましょう。
脳卒中のお悩みに対する新しい治療法があります。

監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
略歴
2002年3月京都府立医科大学 医学部 医学科 卒業
2002年4月医師免許取得
2002年4月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2002年6月関西労災病院 脳神経外科 勤務
2003年6月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2003年12月大阪母子医療センター 脳神経外科 勤務
2004年6月大阪労災病院 脳神経外科 勤務
2005年11月大手前病院 脳神経外科 勤務
2007年12月大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 勤務
2012年3月大阪大学大学院 医学系研究科 修了(医学博士)
2012年4月大阪大学医学部 脳神経外科 特任助教
2014年4月大手前病院 脳神経外科 部長