高血圧とは?内科専門医がわかりやすく解説
公開日: 2025.02.11更新日: 2025.03.01
あなたは、気づかないうちに忍び寄る”サイレントキラー“の存在を知っていますか?
実は、日本人の約4人に1人がかかっているにもかかわらず、自覚症状がほとんどないため、放置されがちな高血圧。
2017年のアメリカのガイドライン改訂で、基準値が厳しくなった今、あなたも高血圧予備軍かもしれません。
高血圧は、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こす危険因子。
この記事では、高血圧の定義から合併症、最新の治療法まで、内科専門医がわかりやすく解説します。
ご自身の健康状態を正しく理解し、健康寿命を延ばすための第一歩を踏み出しましょう。
高血圧を理解する:定義と分類、合併症のリスク
高血圧は、知らず知らずのうちに進行し、ある日突然、重大な病気を引き起こす可能性があるため、「サイレントキラー」と呼ばれています。
ご自身の健康状態を理解し、健康管理に役立てていただくために、高血圧の定義や分類、合併症、初期症状、家庭血圧測定の重要性について、内科専門医の立場からわかりやすく解説します。
高血圧とは?基準値と高血圧の分類
高血圧とは、心臓が血液を送り出す圧力(血圧)が高い状態が続いていることを指します。血圧は2つの数値で表されます。
心臓がギュッと収縮して全身に血液を送り出す時の圧力が収縮期血圧、心臓が休息して血液を再び心臓に取り込む時の圧力が拡張期血圧です。
高血圧は、大きく分けて本態性高血圧と二次性高血圧の2種類に分類されます。
90%以上の方は原因が特定できない本態性高血圧で、遺伝的要因と環境要因(食塩の過剰摂取、肥満、運動不足、過度の飲酒など)の相互作用が関係していると考えられています。
一方、二次性高血圧は、腎臓病、ホルモン異常、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因で起こる高血圧で、全体の10%程度です。
若年者で高血圧が見つかった場合には、二次性高血圧の可能性が高いため、原因となる疾患の精査が必要です。
再生医療の無料相談受付中!
リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。
高血圧が引き起こす合併症:脳卒中、心筋梗塞、腎臓病など
高血圧は自覚症状が少ないため、放置すると血管に負担がかかり続け、動脈硬化が進行します。
動脈硬化は血管の壁が厚く硬くなり、血管が狭くなる状態です。高血圧は動脈硬化を進行させ、血管が詰まったり、破れたりするリスクを高めます。
高血圧が原因となる主な合併症には、脳卒中、心筋梗塞、腎臓病、心不全などがあります。
脳卒中:脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりする病気です。
麻痺やしびれ、言語障害などの後遺症が残ることもあり、要介護状態となるリスクも高い病気です。
心筋梗塞:心筋梗塞は、心臓の血管が詰まって、心臓の筋肉が壊死する病気で、強い胸痛や呼吸困難などの症状が現れ、突然死のリスクも高い病気です。
腎臓病:腎臓病は、腎臓の血管が傷つき、腎臓の機能が低下する病気です。むくみやだるさなどの症状が現れ、最終的には人工透析が必要になることもあります。
心不全:心不全は、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。息切れや動悸、むくみなどの症状が現れます。
高血圧は、血管に常に高い圧力をかけることで血管を傷つけ、動脈硬化を促進し、これらの合併症のリスクを大きく高めます。
高血圧の初期症状:自覚症状が少ないため注意が必要
高血圧は初期にはほとんど自覚症状がありません。
そのため、健康診断などで指摘されるまで、高血圧に気づかない人が非常に多いです。「サイレントキラー」と呼ばれる所以です。
高血圧の症状として、頭痛、めまい、肩こり、動悸、耳鳴りなどが挙げられることがありますが、これらの症状は高血圧以外でも起こるため、高血圧特有の症状とは言えません。
また、これらの症状が現れる頃には、すでに高血圧がかなり進行している可能性もあります。
高血圧は自覚症状が乏しいため、定期的な血圧測定を行うことが重要です。
高血圧のサインを見つける: 家庭血圧測定の重要性
家庭血圧測定は、リラックスした状態で血圧を測ることができるため、病院で測定する白衣高血圧による影響を受けず、より正確な値が得られる場合もあります。
また、毎日血圧を測ることで、血圧の変化を早期に把握しやすくなります。
家庭血圧計は、薬局や家電量販店などで手軽に購入できます。
家庭血圧測定を行う際には、朝、排尿後、朝食前に測定し、安静にしてから正しい姿勢で測定する、毎日同じ時間に測定する、などの点に注意しましょう。
家庭で血圧を測ることで、高血圧の早期発見・早期治療につながり、治療中の場合は、血圧コントロールの状態を把握するのにも役立ちます。
高血圧の原因と危険因子を知る
高血圧の危険因子は多岐に渡り、大きく分けて「加齢」「遺伝」「生活習慣」の3つに分類できます。
高血圧はこれらの因子が複雑に絡み合い発症すると考えられており、ご自身の危険因子を知ることで、予防や治療への意識を高め、健康管理に繋げることが重要です。
加齢、遺伝、生活習慣…高血圧の危険因子
まず、「加齢」による影響について考えてみましょう。
生まれたばかりの赤ちゃんの血管は柔らかく、しなやかで、風船のように柔軟です。しかし、年齢を重ねるにつれて、血管も徐々に老化し、弾力性を失い硬くなっていきます。
これは、血管の壁が厚く硬くなる動脈硬化の進行によるもので、加齢とともに血管が硬くなるのは自然な老化現象の一つと言えます。
血管が硬くなると、血液がスムーズに流れにくくなり、心臓はより強い力で血液を送り出さなければならなくなり、その結果、血圧が上昇しやすくなります。
次に、「遺伝」についてです。高血圧は、親から子へと遺伝する可能性のある疾患です。
両親が高血圧の場合、子供も高血圧になりやすい傾向があり、これは体質や遺伝子などが影響していると考えられています。
遺伝的要因は私たち自身でコントロールすることはできません。
しかし、遺伝だけで高血圧のすべてが決まるわけではなく、後述する生活習慣の改善によって予防できる可能性も十分に秘めているのです。
最後に、「生活習慣」について解説します。これは、私たちが毎日の生活の中で意識的に変えられる部分であり、高血圧の予防と治療において非常に重要な要素です。
食生活の乱れや運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどは、高血圧のリスクを大きく高める要因となります。
塩分過多、肥満、運動不足…生活習慣と高血圧の関係
高血圧と密接に関係する生活習慣の中でも、特に注意が必要なのは、「塩分の摂りすぎ」「肥満」「運動不足」の3点です。
塩分の過剰摂取は、体内の水分量を増加させ、血液量を増加させることで、心臓がより多くの血液を送り出す必要が生じ、血圧の上昇に繋がります。
現代の食生活では、加工食品や外食などで、知らず知らずのうちに過剰な塩分を摂取していることが多いです。
厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満ですが、現状では平均で男性10.9g、女性9.3gと、大幅に超過しているのが現状です。
高血圧を予防するためには、毎日の食事で減塩を意識することが重要です。
肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、血圧を上げる物質の分泌を促進し、高血圧のリスクを高めます。
内臓脂肪は、皮下脂肪とは異なり、臓器の周囲に蓄積される脂肪で、様々な生理活性物質を分泌し、血圧や血糖値、コレステロール値などに悪影響を及ぼすことが知られています。
適正な体重を維持することは、高血圧だけでなく、様々な病気の予防にも繋がります。
運動不足は、高血圧だけでなく、様々な生活習慣病のリスクを高めます。
体を動かす習慣がないと、血液の循環が悪くなり、心臓はより多くの血液を送るために、強い力で拍動しなければならなくなります。
結果として、血圧が上昇しやすくなります。適度な運動は、血圧を下げるだけでなく、ストレス解消や精神的な健康維持にも効果的です。
喫煙、過度の飲酒…高血圧のリスクを高める要因
血管が収縮すると、血液が流れにくくなり、心臓はより強い圧力で血液を送り出さなければならず、血圧が上昇します。
さらに、喫煙は血管を傷つけ、動脈硬化を促進する作用もあるため、高血圧のリスクをさらに高めます。
禁煙は、高血圧だけでなく、様々な病気のリスクを軽減し、健康寿命を延ばすために非常に有効です。
過度の飲酒も、血圧を上昇させる要因の一つです。
アルコールは、血管を拡張させる作用と収縮させる作用の両方がありますが、過剰に摂取すると血管が収縮し、血圧が上昇します。アルコールの摂取量が多いほど、高血圧のリスクは高くなるため、節度ある飲酒を心がけましょう。
基礎疾患や薬の影響で高血圧になることも
高血圧は、加齢や生活習慣だけでなく、他の病気や薬の影響で引き起こされることもあります。
これを二次性高血圧と言い、腎臓病、副腎疾患、甲状腺疾患などが原因となることがあります。
例えば、腎臓は体内の水分や塩分のバランスを調整する役割を担っていますが、腎臓病になるとこの機能が低下し、体内に水分や塩分が過剰に蓄積され、高血圧を引き起こす可能性があります。
また、一部の薬も高血圧の副作用を引き起こす可能性があります。
例えば、ステロイド剤や一部の鎮痛剤、風邪薬などに含まれる成分が、血圧を上昇させることがあります。
服用している薬がある場合は、医師や薬剤師に相談することが大切です。
特に、高齢者の高血圧患者は約6人に1人が、3種類以上の降圧薬を最大量使用しても血圧が下がらない難治性高血圧に該当する可能性があり、早期の診断と適切な治療が重要です。
高血圧の治療と予防:生活習慣の改善と薬物療法
高血圧の治療は、大きく「生活習慣の改善」と「薬物療法」の2つの柱から成り立っています。
まるで、建物を支える二本の頑丈な柱のようなものです。
どちらか一方だけでは、真に健康な状態を維持することは難しく、両方をバランスよく行うことが重要です。
まず、生活習慣の改善について考えてみましょう。
高血圧の危険因子には、塩分の摂りすぎや肥満、運動不足、喫煙、過度の飲酒など、様々なものがあります。
まるで、私たちの体に少しずつ負荷をかけていく重りのようなものです。
これらの重りを一つずつ取り除く、あるいは軽くしていくことで、高血圧を予防し、治療していくことができるのです。
2017年のアメリカ心臓病学会(ACC)とアメリカ心臓協会(AHA)のガイドラインでも、高血圧管理には包括的な戦略が必要であると強調されています。 |
薬物療法だけでなく、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善も重要視されているのです。
生活習慣の改善法
具体的には、1日に6g未満の塩分摂取を目標に減塩を心がけましょう。
外食や加工食品には、想像以上に多くの塩分が含まれていることが多いです。
例えば、カップラーメン1杯には約5g、スナック菓子1袋には約1gの塩分が含まれています。
普段何気なく口にしているものが、実は高血圧の大きな原因となっている可能性もあるのです。
カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ることも、血圧を下げる効果が期待できます。
ウォーキングやジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動を見つけ、1日30分以上を目標に取り組んでみましょう。
体を動かす習慣がないと、血管の柔軟性が失われ、血液循環が悪化し、心臓に負担がかかります。
その結果、血圧が上昇しやすくなるのです。
運動は、血圧を下げるだけでなく、ストレス軽減や精神的な健康維持にも効果的です。
心身ともに健康な状態を保つために、日常生活に運動を取り入れてみましょう。
さらに、禁煙も高血圧の予防と治療に大きく貢献します。
喫煙は血管を収縮させ、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化も促進します。
動脈硬化は、血管の壁が厚く硬くなり、血管が狭くなる状態です。
まるで、水道管に徐々に錆が溜まっていくようなものです。
錆が溜まると、水の流れが悪くなるのと同様に、動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、様々な合併症を引き起こすリスクが高まります。
そして、過度の飲酒も控えましょう。
アルコールは、少量であれば血管を拡張させる作用がありますが、過剰に摂取すると血管が収縮し、血圧が上昇します。
薬物療法での改善
次に、薬物療法についてです。
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合や、すでに合併症の危険性が高い場合には、薬物療法が必要になります。
降圧薬には、利尿薬やACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬など、様々な種類があり、2023年のコクラン共同計画のシステマティックレビューでは、一次治療薬としてチアジド系利尿薬が他の降圧薬と比較され、総死亡率や心血管イベント発生率に大きな差がないことが示唆されています。
さらに、有害事象による治療中止は利尿薬の方が少ない傾向があることも示されています。
薬の種類や服用量は、患者さんの状態や他の病気の有無などを考慮して、医師が決定します。
薬を飲み始めたら、必ず医師の指示に従って服用し、自己判断で中断したり、量を変えたりしないようにしましょう.
高血圧の治療は、長期にわたる場合がほとんどです。生活習慣の改善や薬物療法を継続していくためには、医師との信頼関係が不可欠です。疑問や不安があれば、遠慮なく医師に相談し、一緒に治療を進めていきましょう。
まとめ
高血圧は自覚症状がないまま進行し、脳卒中や心筋梗塞などの深刻な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な管理が重要です。
高血圧の基準値は収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧80mmHg以上で、家庭血圧測定による日常的な血圧管理が推奨されています。
高血圧の大部分は原因不明の本態性高血圧で、加齢や遺伝、生活習慣の積み重ねが影響しています。
特に、塩分の過剰摂取、肥満、運動不足、喫煙、過度の飲酒は高血圧のリスクを高めるため、生活習慣の改善が重要です。
生活習慣の改善に加えて、必要に応じて薬物療法も併用されます。
自分に合った治療法を見つけるためには、医師と相談し、信頼関係を築きながら治療を進めていくことが大切です。
高血圧は早期発見・早期治療で合併症のリスクを減らすことができるので、少しでも不安を感じたら、まずは医療機関に相談してみましょう。
再生医療の無料相談受付中!
リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。
参考文献
- 2017年版 成人高血圧の予防、検出、評価、管理に関するACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNAガイドライン(要約)
- Li EC, Heran BS, Wright JM. “Angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitors versus angiotensin receptor blockers for primary hypertension.” The Cochrane database of systematic reviews 2014, no. 8 (2014): CD009096.
- 高血圧と血管疾患
- Reinhart M, Puil L, Salzwedel DM, Wright JM. “First-line diuretics versus other classes of antihypertensive drugs for hypertension.” The Cochrane database of systematic reviews 7, no. 7 (2023): CD008161.
- Shalaeva EV, Messerli FH. “What is resistant arterial hypertension?” Blood pressure 32, no. 1 (2023): 2185457.
- Messerli FH, Bangalore S, Mandrola JM. “β blockers switched to first-line therapy in hypertension.” Lancet (London, England) 402, no. 10414 (2023): 1802-1804.
- Carey RM, Moran AE, Whelton PK. “Treatment of Hypertension: A Review.” JAMA 328, no. 18 (2022): 1849-1861.
医師監修 リペアセルクリニック
内科専門医 渡久地 政尚