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脳卒中|急性期のリハビリ!必要性とその注意点

脳卒中の急性期(発症時)のリハビリテーションで注意したいこと

脳卒中について、症状が現れた当初の急性期におけるリハビリテーションの大きな目的は、合併症予防、廃用症候群予防のために運動量を可能な限り確保すること、機能の回復を促すために適切な運動課題を実施することが挙げられます。

脳卒中のリハビリテーションは、急性期、発症してから何時間後に、もしくは何日後に始めるべきか明確な基準がないのが現状ですが、リスク管理を徹底して行いながら可能な限り介入していくことが望ましいと考えられます。

この時期のリハビリにおいては注意すべきことが多々あります。まずは機能障害の面だけをみて患者さんを評価せず、病棟での実際の日常生活動作(activities of daily living:ADL)にも着目する必要があります。

脳卒中、急性期のリハビリ

また、過度の安静により長期間の臥床が続くと、廃用症候群といわれる「身体の不活動状態により生ずる二次的障害」によって様々な二次的合併症の出現に注意すべきであり、そのため早期から車椅子に移乗し、ベッドから離れて、食事や洗面、トイレ、歩行などのADLを進めていく必要があります。

このような早期離床の大きな効果として、ADL(日常生活動作)能力の向上、二次的合併症の予防が挙げられます。脳卒中の急性期では、脳の血流を一定に保つはたらきをする脳循環自動調節能が障害されます。

そのため、脳の血流は血圧の影響を大きく受けやすくなっています。座位や立位によって血圧が変動すれば、脳循環に影響を与え、症状の悪化につながる危険があるため、血圧変動に注意しながら意識レベル、バイタルサイン、呼吸状態、神経症状の有無などを注意しながらよく観察し、進める必要があります。

離床前に注意すべき点
・意識障害の進行がない
・神経症状の進行がない
・心原性ショックや急性循環不全(収縮期血圧<90mmHg)がない
以上の基準を満たしているか確認するようにします。

また、離床を実施するにあたり、途中で運動を中止する場合の基準となる目安をあらかじめ決めおくべきです。

■途中で運動(リハビリ)を「中止する場合」

・中等度以上の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛、頭痛、強い疲労感などが出現
・脈拍が140/分を超えた
・運動時の収縮期血圧が40mmHg以上または拡張期血圧が20mmHg以上上昇
・30回/分以上の頻呼吸、息切れが出現
・運動により不整脈が増加
・徐脈が出現
・意識状態の悪化

■いったん運動(リハビリ)を中止し、回復を待って「再開する場合」

・脈拍数が運動前の30%を超えた
(ただし、2分間の安静で10%以下に戻らないときは以後のリハビリは中止、またはきわめて軽労作のものに切り替える)
・脈拍が120/分を超えた
・10回/分以上の期外収縮が出現
・軽い動悸、息切れが出現

その他、血尿が出現した場合、喀痰量や体重、下肢の浮腫が増加した場合、倦怠感がある場合、食欲不振や空腹時も注意が必要です。

症状別の離床開始基準

脳卒中には様々な病型があり、それぞれ離床開始の基準は異なります。離床を行う際は、病型による違いをふまえて検討します。
その際、脳出血においての急激な血圧上昇や、脳梗塞においての急激な血圧低下等、離床に伴う血圧変動にも注意が必要です。

離床とは、ベッド等で生活していた人が、徐々に床(ベッド)から離れて生活機能・範囲を拡大していくことをいいます。 臥床が続くほど、心肺機能や消化機能・運動機能・精神状態等、心身ともに機能低下が進んでしまうため、全身状態が落ち着いたら可及的早期に座位や立位・歩行を行う「早期離床」を進める必要があります。

■脳梗塞、(ラクナ梗塞)

・診断日より離床開始可能
・進行性麻痺を認める症例は個別で検討

(心原性脳塞栓症)
・心エコーの評価後、残留心内血栓と心不全徴候がなければ離床開始

(アテローム血栓性脳梗塞)
・原則、診断日翌日より離床開始を検討
・検査画像上、梗塞の拡大を認める場合、神経症状の進行を認める場合は個別に検討

■脳出血

以下の項目を満たしていれば離床を開始
・収縮期血圧140mmHg以下にコントロール
・フォローアップ画像検査で血腫の増大、急性水頭症は否定されている

■くも膜下出血

以下の項目を満たしていれば離床を開始
・破裂脳動脈瘤の根治術が行われている
・症候性脳血管攣縮がない
・急性水頭症が無い

脳卒中において、早期離床は世界的にも推奨されていますが、発症から何日目に行うか、離床中の具体的な血圧管理・変動に対する判断などは、各病院・施設に委ねられているのが現状です。

また一方では、発症24時間以内の早期離床は危険であるとの報告もあります。つまり、離床を画一的に行うのではなく、患者の病態、既往歴、合併症など含めて、慎重に判断し、注意深く実施していくことが重要となります。

具体的に早期離床を個別で判断する例

脳出血では入院後の血腫増大、急性水頭症、降圧薬でコントロール困難な血圧上昇例、脳動静脈奇形(AVM)があげられます。また脳梗塞では、内頸動脈狭窄ないし閉塞、脳底動脈血栓症、解離性動脈瘤、出血性梗塞、塞栓源が特定困難な脳塞栓症、トルーソー(Trousseau)症候群など。

さらに脳出血、脳梗塞共通のものでは、意識レベルやバイタルサインの増悪、頻脈性心房細動、急性期心不全、低酸素血症、重症感染症、深部静脈血栓症(DVT)があります。

重症例で、長期臥床や低活動の場合は、特に以下の2点に注意します。

■深部静脈血栓症(DVT)

脳卒中患者は、安静臥床や片麻痺による血流の停滞、血液凝固能の亢進など、深部静脈血栓症を発症しやすい状態にあります。肺塞栓症(PE)をきたす確率が高く、呼吸状態の急性増悪、心肺停止のリスクがあります。担当医に治療方針を確認後、酸素飽和度、APTT、D-dimer、PT-INRの値を確認し、離床再開のタイミングを検討します。

■起立性低血圧

座位や起立の抗重力位をとることで、下肢静脈に血液が貯留し、静脈還流が減少することで血圧低下を引き起こします。離床はヘッドアップ座位→端坐位→立位の順に段階的に進めていき、下肢運動を実施しながら行うなど工夫が必要です。

ADL評価の注意点

離床が進み、ADL(日常生活動作)が拡大していくにあたって注意点があります。臥位、座位でバイタルサインが安定している場合であっても起立、歩行などを実施する際に体調が変動することがあるため、循環動態に影響を及ぼす原因がないか、脱水、不整脈、心不全などの合併症の有無をチェックします。

転倒にも注意が必要ですがその原因として、麻痺や関節拘縮、筋力低下などが挙げられます。また、立ち直り反射(姿勢反射)が低下しているため、バランスを崩しやすく、軽度の麻痺でも転倒のリスクがあります。

転倒の特徴は、トイレ動作や排泄に関連する転倒の頻度が高いといわれており、患者に応じて転倒を生じやすい場面を具体的に予測し、転倒予防に努めます。

「脳卒中ガイドライン2015」のなかで、リハビリテーションは発症早期からADL向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもと、積極的に行うことが強く勧められています。

特に発症早期の患者では、機能低下の回復を促すために、訓練量や頻度を増やし、日常生活の場面で課題を繰り返し行うことが勧められています。

リハビリテーションは、患者のADLや機能障害、患者属性など、さまざまな背景をもとにリハビリテーションプログラムが計画されています。このプログラムを計画、評価、実施、修正するにあたり、リハビリテーションの効果を評価するには、機能障害を評価するだけでは不十分であり、ADLを評価する必要があります。

「脳卒中治療ガイドライン2015」のなかでも、一般的に広く用いられ、信頼性・妥当性が検証されているADL評価法が勧められています。看護師は、24時間患者のそばにいる環境のなかで、日常生活援助を通してリハビリテーションを行い、その成果を評価していくことが大切です。

ADL評価は、実際のADLを観察して評価

特に脳卒中急性期には、投与される薬剤や、日々変化する神経症状など、患者の状態そのものが変動的な時期にあります。そのため、評価するスタッフ(評価)や時間帯、環境や条件などによりADL評価は変化します。

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)など、リハビリテーション機能訓練の専門スタッフが、「リハビリで〇〇さんは、何とか歩行器を使用してトイレまで歩けましたよ」と言っても、病棟で看護師は「夜は歩かず、オムツや尿器を使用しているなぁ」と感じることがあります。

これは、訓練などで最大限の能力を発揮する場合での「できるADL」と、普段日常生活で実際に行っている「しているADL」による評価の違いがあるからです。

患者のリハビリテーションを行っていくうえで、発症早期から十分なリスク管理のもとに、このがんばって「できるADL」を、普段の生活のなかでも「しているADL」に近づけていくことが、急性期脳卒中リハビリテーションの目標といえます。

■FIM(functional independence measure:機能的自立度評価法)・・・「しているADL」の評価

セルフケア、排泄コントロール、移乗、移動、コミュニケーション、社会認知の6つをカバーした全18項目で、それぞれを実生活のなかで実際に行っている介助の量や質に従い、7段階で評価する評価法

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■バーセルインデックス(Barthel Index:BI、機能的評価)・・・「できるADL」の評価

各ADLについて、患者の能力が「自立」「要介助」「全介助」のいずれであるかを簡潔に評価する評価法

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まとめ/脳卒中の急性期で必要なリハビリと注意点

看護師は、患者の日常生活を24時間みているという専門性から、普段から日常的に行っている活動の「しているADL」を評価することができます。(※ADL:日常生活動作)

その際は、これまでのように「食事は一部介助で全量摂取」ではなく、患者はどのような姿勢で、どちらの手(麻痺側、健側)で摂取したか、看護師はどの部分をどのように介助したか、その介助量はどれくらい必要であったかなど、患者のADLを細かく評価しなければなりません。

看護師は、患者の「できるADL」に常に関心を持ち、把握し、看護師が普段みている「しているADL」との間の差を、客観的に評価できるスキルを身につけなければなりません。

そこで、「できるADL」と「しているADL」の乖離している要因について、PTやOT、STと話し合い、より効果的な支援ができるよう介入計画を作成する必要があります。そのためにはADL評価法を用いて、「しているADL」を客観的に評価することが重要となります。

 

監修:リペアセルクリニック大阪院

 

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