変形性股関節症の看護するポイントは?治療に重要なケアについても解説
公開日: 2019.05.08更新日: 2025.04.30
変形性股関節症の患者さんを看護する際は、股関節への負担を減らせるよう、日常生活を工夫することが大切です。
股関節の軟骨が擦り減り、骨の変形を引き起こす「変形性股関節症」は、下半身に痛みがみられる疾患です。
本記事では、変形性股関節症の患者さんの看護について、詳しく解説します。
看護ケアを行う際は、身体的側面だけでなく心理的側面にも注意し、患者さんと関わりましょう。
目次
変形性股関節症の患者さんを看護するポイント
変形性股関節症の患者さんを看護する際は、以下の4つのポイントを押さえることが大切です。
骨の変形がみられる変形性股関節症では、病状の進行や治療経過などに、患者さんの気持ちが追いつかない場合もあります。
患者さんが安心して日常生活を送れるよう、患者さんに合わせて看護ケアを行いましょう。
股関節への負担を減らす日常生活の管理
変形性股関節症の看護では、股関節への負担を減らす日常生活の管理を行うことがポイントです。
股関節へ大きな負担がかかると、症状が悪化し、治療期間が延長する恐れがあります。
改善が必要な生活習慣を送っている場合は、患者さんの意見を聞きながら、個々に合わせた行動を提案しましょう。
リハビリが行えるように環境を整える
変形性股関節症の患者さんを看護する際は、リハビリが行えるように環境を整えることが重要です。
リハビリを実施する際は、以下の点に注意して環境整備を行いましょう。
- ベッドの高さが患者さんに合っているか
- ナースコールやコードが絡まっていないか
- 固定具の装着方法が正しいか
- 床に物が散らかっていないか
変形性股関節症でリハビリを行う目的は、症状の緩和や術後の可動域の拡大です。
安全にリハビリが行えるように、看護師は患者さんの身の回りを入念にチェックしましょう。
問診時
変形性股関節症の患者さんを看護する際は、問診時の表情や言動を確認することがポイントです。
問診時に以下の点を観察すると、症状の有無や患者さんの気持ちなどを把握できます。
- 苦痛表情の有無
- 動作時の痛みの有無
- 股関節の可動域
- 歩行状態
- 感覚障害の有無
- 不安症状
- リハビリの進捗状況 など
患者さんの訴えに耳を傾けることも大切ですが、診察の出入りや待っている様子などを見て、日常生活での困りごとを知ることも重要です。
人工股関節置換術(THA)の手術前後
変形性股関節症で人工股関節置換術(THA)を受ける患者さんを看護する際は、手術前後の様子を観察しましょう。
人工股関節置換術(THA)とは、股関節の擦り減った部分を人工物に置き換える手術です。
術後は変形性股関節症による痛みや動かしにくさなどの症状が改善しますが、リハビリで日常生活動作を獲得していく必要があります。
手術前後で下半身の使い方に違いが生じることで違和感を覚えたり、今後の生活が見通せなかったりすると、患者さんの不安が大きくなるため注意が必要です。
手術への不安が大きく、手術を避けて治療したい場合は、再生医療による治療も選択肢の1つです。
以下の動画では、手術を避けて変形性股関節症を治した方の体験談をご紹介していますので、合わせてご覧ください。
変形性股関節症の看護ケアで重要なこと
変形性股関節症の看護ケアで重要なことは、以下の2つです。
手術で変形性股関節症を治療した場合は、リハビリによる可動域の拡大が期待できるため、今までできなかった動作ができるようになる可能性があります。
人工股関節置換術を受けた患者さんの、日常生活での注意点を指導し、合併症のリスクを低減しましょう。
退院後の生活指導も重要
変形性股関節症の看護ケアでは、退院後の生活指導も重要です。
人工股関節置換術を受けた患者さんに退院指導を行う際は、以下の内容を伝えましょう。
- あぐらの姿勢をとらない
- 正座で前かがみにならない
- 前かがみで靴下を履かない
- 足を組まない
- 手術をした側の足を軸足にしない
- 重い荷物を持たない
- 転倒に注意する
- 洋式トイレを使用する
- 激しい運動を行わない
変形性股関節症の術後は、人工関節に負担がかからないように姿勢を工夫することが大切です。
仕事や趣味などで、股関節に負担のかかる動作がないか、患者さんとともに確認しましょう。
術前後のメンタルヘルスに注意する
変形性股関節症の患者さんを看護する際は、術前後のメンタルヘルスに注意が必要です。
術前に思い描いていた生活と実際の術後の様子が異なる場合に、ストレスが増加したり意欲の低下がみられたりするケースがあります。
元の日常生活に戻るためにはリハビリが必要ですが、意欲の低下により目標を見失うこともあります。
看護師は術前後の患者さんの悩みを傾聴し、不安を軽減できるよう関わりましょう。
【まとめ】変形性股関節症の看護はケアと周囲の協力が重要
変形性股関節症の看護は、患者さんの周囲の協力や気持ちに寄り添ったケアが重要です。
変形性股関節症で痛みや動かしにくさなどの症状がある場合は、保存療法や手術療法が検討されます。
手術療法は患者さんの気持ちが変化しやすく、不安や辛さなどの心理は術後のリハビリにも影響する恐れがあります。
生活指導では患者さんだけでなく、患者さんのご家族の協力も得て、退院後の生活について考えていくことが重要です。
不安が大きく、手術療法を避けて変形性股関節症を治療したい患者さんには、再生医療による治療も1つの選択肢です。
患者さんやご家族の気持ちに寄り添い、患者さんに合わせた看護を提供しましょう。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師
略歴
2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業
2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医
2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科
2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科
2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科
2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長