-
- 脳卒中
くも膜下出血は後遺症が出ることが多く、本人はもとより、家族もつらい思いをすることが少なくありません。 家族(患者)の幸せを願い懸命に看病することはとても素晴らしいことです。そのため、「家族である自分たちができることは何か」と考えをめぐらせる方もいらっしゃるでしょう。 そこで本記事では、くも膜下出血になってしまった家族に対して、残された家族ができることについて紹介します。 くも膜下出血になった家族に対してできること くも膜下出血を発症した家族のためにできることはいくつかあります。 この項目では、再発防止や日常生活のサポートなど、具体的な行動について説明します。 再発した場合の早期発見 くも膜下出血は、治療後も再発する可能性がある病です。そのため家族だからできる、重要なことは、再発した場合の早期発見です。 くも膜下出血は早期発見が非常に大切です。そのためには本人だけでなく、周りの家族も変調にいち早く気づけるかがその後のカギを握ります。 日頃から再発を意識して、注意深く観察する習慣を身につけましょう。また、医療機関を受診した際に、調子の良し悪しを詳細に医師へ伝えることでその後の治療に役立ちます。 顔や手足に麻痺がみられる・呂律が回っていない・こちらが言っていることを理解できていないなどの症状が見られた場合は、早急に医療機関を受診しましょう。 転倒防止のための工夫 くも膜下出血に関して家族ができることに転倒防止の工夫が挙げられます。くも膜下出血は麻痺などの後遺症が残り、転びやすくなるケースが多いため、なんらかの工夫を講じる必要があります。 玄関や部屋、廊下の境目に段差がある場合は、段差をなくす・手すりを設置するなど、歩くための障害を極力なくしましょう。 また、床や浴槽、マットが置いてある場所など、滑りやすくなっていないか確認することも大切です。また、床や廊下での物の置きっぱなしに気をつけましょう。 くわえて、足元が見にくい場所にライトを設置する工夫も有効です。 食事や喫煙・飲酒などの管理 くも膜下出血の危険因子(原因)を取り除くことも家族にできることのひとつです。くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂が主な原因ですが、その危険因子となるのが高血圧や喫煙、飲酒などです。 喫煙や飲酒は自制するのが難しいため、家族のサポートを必要とします。また、高血圧の対策として脂肪や塩分を控えた食事を提供することも大切です。 定期的な会話 くも膜下出血後の家族間の定期的な会話は身体的な回復だけでなく、精神的な健康を維持する上で重要です。 患者は不安や孤独感を抱きやすい状態にあるため、家族との対話が心の支えになります。日々の出来事や患者の気持ちについて、ゆっくりと話し合う時間を設けましょう。 認知機能の維持や改善にも会話は効果的です。また、会話を通じて患者の状態の変化にいち早く気づくことができます。 【ご家族向け】寝たきりのくも膜下出血患者に関する知識 寝たきりになったくも膜下出血患者の家族として、適切なケアを提供するためには、病状や回復過程に関する正しい知識が不可欠です。 そこでこの項目では、くも膜下出血の回復過程や入院期間、予後について解説します。 くも膜下出血の回復過程 段階 発症からの期間 過程 急性期 発症後約2週間 生命の危機管理が最優先され集中的に治療 回復期 2週間〜3ヶ月 集中的なリハビリテーション 生活期 3ヶ月以降 定期的な通院によるリハビリテーション くも膜下出血からの回復期間は個人差が大きく、一様ではありませんが全治までに6カ月以上かかるとされています。 一般的には、急性期・回復期・生活期と3つの段階を経ていきます。 上記の過程で、患者はさまざまな症状(頭痛・めまい・認知機能の低下など)を経験する可能性があります。家族は、医療チームと密に連携し、患者の状態に応じたケアを提供することが重要です。 くも膜下出血の平均入院期間 症状レベル 入院期間(目安) 軽症 1〜2ヶ月 中等症〜重症 3〜6ヶ月 くも膜下出血の平均入院期間は、患者の状態や治療方法によって大きく異なります。 一般的には、軽症例で1〜2ヶ月、中等症から重症例では3〜6ヶ月程度の入院が必要となることが多いです。 ただし、これはあくまで平均的な目安であり、個々の患者の回復状況によって大きく変動します。 また、入院中は定期的な面会や病室の環境整備(写真や好みの物の配置など)を通じた家族間の寄り添いが大切です。患者の回復意欲を高めることにもつながります。 くも膜下出血で寝たきりになった方の平均余命 くも膜下出血で寝たきりになった方の平均余命は、5年間で55%前後とされており、年々の生存率は改善傾向にあります。一方で未治療の場合、1年間の生存率は65%と向上します。 上記のことからもわかる通り、くも膜下出血は発症してからの治療・適切なケアが非常に重要です。 また、くも膜下出血の平均寿命は年齢・くも膜下出血の重症度・合併症の有無・ケアの質などが影響するため、個人差があります。 くも膜下出血患者に対して大切なのは家族の思いやり くも膜下出血になってしまった患者に対して家族にできることは、まずは思いやり、そして行動観察・生活環境の改善・飲食の管理などたくさんあります。 ・思いやり ・行動観察 ・生活環境の改善 ・飲食の管理 ・精神面での支えになる 大切な家族をしっかりとサポートし、精神面でも支えになれるようにしましょう。 また、脳をはじめとするさまざまな治療で注目を集めている再生医療は、くも膜下出血の再発予防に効果的です。 家族の後遺症に悩んでいたり、再発を恐れている場合は、再生医療による治療も検討してみましょう。
投稿日:2024.11.03 -
- 脳梗塞
脳梗塞(ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症)とは 脳梗塞は、一過性脳虚血発作と呼ばれる「ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症」という3つの分類に分けられます。 同じ脳梗塞でもそれぞれ発症頻度や障害の重さも違い、発症の原因も異なります。 今回は、脳梗塞のそれぞれの分類について、さらに検査や治療法、リハビリについて解説していきます。 脳梗塞とはどんな病気なのか 脳梗塞とは、脳を栄養する動脈の血行不良によって、栄養や酸素を受けている神経細胞が死ぬことによりさまざまな症状を起こす病気です。 脳梗塞は、脳卒中のうちのひとつで、一時的に血管が詰まる一過性脳虚血発作(TIA)は、24時間以内に元の状態に戻るため原則として後遺症を残すことなく、脳梗塞とは区別されています。しかし、原因が取り除かれない場合には再発することがあり、やがて脳梗塞となる危険性もあります。 初期症状は、脳梗塞は突然起こるもの、というイメージがあるかもしれませんが、予兆というのがあります。脳梗塞の予兆は、一過性脳虚血発作(TIA)といって短くて数分、長くても30分ほどで症状が治まります。 そのため「ちょっと調子が悪いのかな」という感じで放っておいてしまいがちなのですが、一過性脳虚血発作を起こると約5%から20%の人に脳梗塞が発症すると言われています。 脳梗塞になる半数の人は、一過性脳虚血発作(TIA)を起こしてから48時間以内に発症しており、約3割の人は3ヶ月以内に発症するというデータもあるので、予兆には十分注意をしなくてはいけません。 一過性脳虚血発作の症状はいろいろあり、急に言語が出なくなる失語症や、ろれつが回らなくなってしまう構音障害が代表的な初期の症状になります。また、何も原因がないのに顔が歪む片側顔面麻痺、急激に片方の視力が低下する一過性黒内障や視界の半分が見えなくなってしまう症状もあります。 他にも両手を持ち上げようとしても片腕だけ上がらない、といった症状も挙げられます。このような異変が起きた場合は、一過性脳虚血発作の可能性があります。 脳梗塞の分類 ラクナ梗塞 ラクナ梗塞(Lacunar Infarction: LI)とは、脳梗塞の中で最も多いタイプの脳梗塞で、脳の中の穿通枝(せんつうし)という200μm程度の細い血管が詰まって起こる脳梗塞です。ラクナ(Lacunar)とは、小さな空洞という意味で、15mm未満の小さな梗塞巣を意味しています。 最大の原因は高血圧症で、高い圧力が細い血管に負担が掛かると、血管が脆くなり、詰まったり、破れたりしやすくなります。穿通枝が破れると脳出血、詰まるとラクナ梗塞になります。どちらも高血圧症が最大のリスク因子なので、高血圧症の治療、血圧を正常に保つことが最も重要です。 ラクナ梗塞の診断 脳の中の穿通枝と呼ばれる細い血管があり、レンズ核線条体動脈、内側線条体動脈、前脈絡動脈、視床膝状体動脈、視床穿通動脈、傍正中動脈などがあります。梗塞に陥った血管から先の血流が途絶えしまい、脳の神経細胞に栄養分と酸素が行き渡らなくなった場所の神経機能が失われる症状、神経脱落症状が突然に発症します。 症状は起こる場所によって様々で、軽度のろれつ障害、上肢や下肢の痺れ、麻痺、などの軽微な神経脱落症状が特徴的で、ラクナ症候群(Lacunar syndrome)と呼びます。ラクナ梗塞のみで意識障害に陥ることは稀です。 脳卒中というと突然の頭痛というイメージがあるかも知れませんが、ラクナ梗塞だけでは基本的に痛みはありません。例外で視床梗塞では視床痛(Thalamic pain)という痛みが出ることがあります。 穿通枝の場所によっては明らかな自覚症状を来さない無症候性脳梗塞、いわゆる隠れ脳梗塞の場合も少なくありません。 無症候性脳梗塞が多発すると、多発性ラクナ梗塞と言って、一個一個の梗塞の症状は明らかでなくても積み重なると脳の中の細かい神経に障害を来して、もの忘れ、脳血管性認知症(Vascular dementia: VaD)の原因になります。症状の有無に関わらず、予防することが大事です。 アテローム血栓性脳梗塞 アテローム血栓性脳梗塞とは、脳の比較的太い血管に動脈硬化やアテローム硬化が起き、脳の血管が詰まって起きる脳梗塞です。心臓の血管に動脈硬化が起こると、狭心症、心筋梗塞になりますが、同じことが脳の血管にも起きると、アテローム血栓性脳梗塞になります。 血管が詰まる前に、一過性脳虚血発作(Transient ischemic attack: TIA)という脳梗塞の予兆を起こることがあり、脳梗塞と一過性脳虚血発作をまとめて、心血管における急性冠症候群(Acute coronary syndromes :ACS)に相当する概念として急性脳血管症候群(Acute cerebrovascular syndrome :ACVS)と呼ばれ、より早期に診断、治療することが大切となります。 アテローム血栓性脳梗塞の診断 アテローム硬化は粥状硬化と呼ばれ、主にコレステロールがプラークと言って粥状に血管壁にかたまりを作っている状態です。プラークが破綻すると、急速に血小板や凝固因子などが活性化され血栓が出来て、その場で血管が詰まってしまったり、血栓が末梢の血管を閉塞させたりします。 梗塞や閉塞に陥った血管から先の血流が途絶え、脳の神経細胞に栄養分と酸素が行き渡らなくなった場所の神経機能が失われる症状、神経脱落症状が突然発症します。 アテローム血栓性脳梗塞の場合は、比較的太い血管が閉塞することが多く、半身麻痺、視力低下、眩暈、嘔吐、意識障害、ろれつ障害、言語障害、顔面麻痺、などの神経脱落症状が出現することが多いです。ラクナ梗塞が、主に高血圧症が原因で細い血管に起こり、症状が軽微であることが多いのとは対照的です。 心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)とは、心臓の中の血栓が原因となり、脳の血管を詰まらせて起こる脳梗塞です。原因は心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈が主な原因です。心原性脳塞栓症は重症な脳梗塞になることが多く予防が大変重要です。 心原性脳塞栓症の診断 心房細動という不整脈があると、心臓の中の左心房という場所に血液の滞りが続き、血液の塊、血栓が出来やすくなります。なぜなら血液は、出血に備えて流れていないと固まるといった、凝固する性質をもともと持っているからです。 心臓に出来た血栓は、左心房、左心室、大動脈、総頚動脈、内頚動脈と、血管の中を流れていき、脳の血管まで辿り着き、最終的に脳の血管に詰まると脳梗塞に至ります。 小指の爪くらいの大きさの血栓であっても脳の半分の血管が一本詰まってしまうくらい、重症な脳梗塞になってしまいます。重症な脳梗塞とは、2割は命が助からず救急車で運ばれてすぐに最善の治療をしても、2割は寝たきりか要介護の状態に、5割の患者さんは何らかの後遺症が残ってしまいます。 通常の社会生活に復帰出来る場合はほんとわずかです。ですので、なんとしても脳梗塞が起こすのを防ぐことが重要です。これが心房細動を放置してはいけない理由です。心原性脳塞栓症を疑うような神経脱落症状が突然発症している場合には、脳卒中を疑い速やかに頭部画像検査を行います。 脳梗塞の検査 脳梗塞が疑われた場合、早急に治療を開始するために迅速な検査・診断が必要となります。 CTやMRIを用いて梗塞や出血の有無を確認し、どのタイプの脳梗塞かを調べるなど、頭部の血管の様子を立体画像化するMRA(磁気共鳴血管造影)で、動脈の硬化が進行して細くなってしまった血管や動脈瘤の様子を調べます。 また、脳の血流の分布を画像で示し、障害が起きている部分を観察する脳血流検査や、カテーテルから造影剤を入れて検査する脳血管造影検査も行います。その他に、心臓の検査(心房細動の有無を調べる心電図検査、血栓がないかを調べる心臓超音波検査)や、脳梗塞のリスク要因を確かめる為に血液検査も必要に応じて行われます。 まずは、出血なのか梗塞なのか、どちらでもないのかが重要ですので、頭部CTにて脳出血、くも膜下出血を検出します。心原性脳塞栓症は広大な範囲の梗塞巣を来すことが多く、大脳半球に大きな早期虚血所見(Early CT signs)を認めることもあります。 心原性脳塞栓症発症後の自然再開通を起こした例では、一定時間梗塞や虚血に陥った脆弱な血管が破綻し、出血性梗塞(Hemorrhagic infarction)を起こしていることも珍しくなく、心原性脳塞栓症を疑うCT所見が必要です。 頭部CTの次に頭部MRIを撮影します。頭部MRI、特に拡散強調画像(Diffusion weighted image: DWI)は発症早期の脳梗塞も検出可能とされています。T2*強調画像(T2 Star weighted image: T2 Star)では微小出血も含めた出血病変の検出も可能なので、 施設によってはCTをスキップしてMRIで最初に検査をするところもあります。脳卒中の原因、病型診断の精査のために、通常、MR血管画像(Magnetic resonance angiography: MRA)、凝固や線溶マーカーも含めた採血検査も行われます。 心原性脳塞栓症を疑った場合には、塞栓子となった血栓がどこから飛んできたのか塞栓源の検索をすることが重要で、頸動脈エコー、心エコー、心電図、必要があればホルター心電図や経食道心エコー(Trans esophageal echocardiography: TEE)、明らかな塞栓源が見当たらない場合は、アテローム血栓性脳梗塞として治療を開始することも少なくありません。 また逆に、アテローム血栓性脳梗塞として治療していた所、発作性心房細動や左心房内に血栓が見付かり、心原性脳塞栓症の治療に切り替えることも少なくありません。 原因によって、治療法や予防法が異なりますので、確定診断のために何度も検査を繰り返し行うこともあります。検診等で心房細動と指摘されたことがあるという病歴は非常に重要で、不整脈と言われたことがあるだけではなく、心房細動以外の不整脈なのか、あるいは他の場合の不整脈なのかが極めて重要ですので、不整脈と指摘された場合は合わせてその診断名まで把握しておくことがとても大切です。 脳梗塞の治療法 ラクナ梗塞やアテローム血栓症に対しての治療法は、動脈のように血流がとても速い血管のなかで血栓がつくられるのを防ぐため、抗血小板薬が有用となります。 また、抗血小板薬による薬物治療で十分に改善しない場合、外科治療も行なわれます。頚動脈内皮剥離術(CEA)という手術法によってプラークを除去する方法と、梗塞している血管内にステントを置いて狭窄部分を広げるステント留置術(CAS)があります。 さらに、動脈硬化が発症の大きな原因になるので、メタボリック症候群や喫煙、高血圧などの生活習慣の改善が、再発や症状悪化に対する予防につながると考えられます。 メタボリック症候群の基準 ・腹囲 男性>85㎝、女性>90㎝ ・中性脂肪 150㎎/dl以上 ・HDLコレステロール 男性<40㎎/dl、女性<50㎎/dl ・血圧 収縮期130㎜Hg以上、拡張期85㎜Hg以上 ・血糖 110㎎/dl以上 ▲上記5項目のうち3項目を満たすものをメタボリック症候群と言います。 心原性脳塞栓症(左房内血栓)の原因となる血栓は、静脈にできる血栓と同様に、血流の滞ったところでゆっくりとつくられるので、フィブリンという成分が主体となった血栓を形成します。このような血栓に対する治療は抗凝固薬が有用です。 抗凝固薬の種類として、これまではワルファリンという内服薬が主流でしたが、現在ではNOACsと呼ばれる新しい抗凝固薬が登場してきています。NOACsはワルファリンとは異なり、直接的にトロンビンあるいは第Ⅹa因子を阻害する薬で、副作用として問題になる頭蓋内出血のリスクが低いと考えられています。 また現在では血栓もしくは塞栓を直接溶かすための薬で、2005年から日本でも、脳梗塞発症4.5時間以内に治療可能な患者に対して、アルテプラーゼ(rt-PA)の静脈注射の使用が認められました。 このアルテプラーゼ(rt-PA)を使用することで、詰まった血管をいち早く再開通させ、脳に血液を再び送ることが可能となり、脳梗塞の後遺症の程度が著明に少なくなることが証明されています。 しかし、その効果の反面、脳内出血を生じる危険性も高いために治療を受ける場合は担当医の説明をきちんと聞いて、合併症についても理解した上で、同意をする必要があります。 脳梗塞のリハビリ 神経機能の回復のメカニズムはまだ良く分かっていないこともありますが、少なくとも早期にリハビリテーションを開始すると、機能予後は格段に良くなることがわかっています。 リハビリテーションは体の運動機能の回復だけでなく、社会的・心理的な回復も意味しています。一人ひとりの障害の程度に応じたリハビリテーションを行うことで、その人が行っていた脳梗塞発症前の日常生活にスムーズに戻れるようにしていくことが重要です。 また、リハビリは本人だけでなく、家族や友人などの周りのサポートや理解も重要なポイントとなってきます。 脳梗塞発症・治療開始直後は全身状態が変化しやすく、再度危険な状態になりやすいため、生命維持が優先されます。治療後~14日はベッド上でのリハビリテーションが中心に行われます。ただし、廃用症候群※などを防ぐために、無理のない範囲でベッド周辺でのリハビリテーションを開始します。 ※廃用症候群とは? 寝たきり状態や不活動状態が続くことで、筋肉が萎縮、関節が硬くなり、運動機能が衰えた状態のことを指します。体のさまざまな器官が機能しにくくなり、寝たきりによる床ずれや、起立性低血圧、深部の静脈での血液のかたまりの形成(深部静脈血栓症)、感染症などさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。 急性期を脱して病態や血圧が安定してきた頃には、症状に応じて様々なリハビリテーションが開始されます。基本的には、日常生活を行う上で必要な動作が行えるように運動機能・嚥下機能・高次脳機能などを改善せるリハビリテーションが中心となります。 基本動作の自立 寝返りをうつ、ベッド上で座る、ベッドサイドで立つ、自力で座る、立つ 歩行訓練 バランス獲得、車いすへの移動、杖や歩行器などを用いた歩行練習 応用動作の訓練 作や手芸、その他の作業 日常動作 食事やトイレ、着替え、入浴動作 嚥下・言語機能に関するリハビリ(言語聴覚士が行う)は、まず言語聴覚士による機能の評価、X線透視装置や内視鏡を用いた飲み込みの評価を行っていきます。 次に舌の運動や発声、首回りや肩の筋肉を動かしたり、舌や喉の奥を刺激したりする間接的訓練、その人の機能に応じた食事形態で飲み込みの練習をする直接嚥下訓練などをしていきます。 急性期で鼻や口から管を入れて流動食を流して栄養管理(経管栄養)をしていた人も、これらの訓練を行うことで多くの方は口から食べることができるようになります。 口周りの訓練 発声や舌・口・喉の筋肉を動かす運動 顔周りの訓練 首まわりや肩まわりの筋肉を動かす運動 間接的嚥下訓練 凍らせた綿棒などで喉の奥を刺激するなど 直接的嚥下訓練 ゼリーや水などの食物を用いる飲み込みの練習 機能に応じ発声練習・理解の向上、ゆっくりと話す練習や舌の運動、口まわりのストレッチや状況に応じて文字盤や日常よく使う言葉を書いたカードを用いたコミュニケーションの練習などを行います。 高次脳機能障害を防ぐリハビリでは、注意障害や遂行機能障害、半側空間無視、失認、失行などさまざまな機能評価を行って、まず障害を認識して頂くところから始めていきます。 次に、その人の障害に応じて、日常生活動作を確実にリスクなく行えるにはどのような点に注意すべきか理解を深め、繰り返し同じ行動を反復練習する、メモなどを用いて記憶の曖昧さを補うなどの工夫をしていきます。 ・プリント教材や風船、積木などの物品を用いた訓練 ・繰り返し同じ行動の練習 ・行動の順序を確認する 脳梗塞後の維持期に入ると一度回復した機能も、退院後何もしないでじっとしていると再び機能低下が進みますので、退院後も外来や介護保険を利用したリハビリテーションを続けることは極めて重要であると言われています。 脳梗塞のリハビリの専門家である鍼灸・理学療法士・作業療法士・運動トレーナーなどによる徒手的リハビリも機能維持するうえで大切です。 この記事がご参考になれば幸いです。 監修:リペアセルクリニック大阪院 ▼脳梗塞の後遺症|脳卒中の最新、幹細胞治療は、以下をご覧下さい 再生医療は、脳梗塞の新たな治療法として大きな可能性を持っています。
投稿日:2024.11.19