坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの違いとは?症状・原因・治療法を解説
公開日: 2019.11.19更新日: 2025.08.29
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアは、どちらも腰から足にかけての痛みやしびれを引き起こすため、混同されやすい疾患です。
坐骨神経痛は症状の名前であり、その原因となる疾患のひとつが腰椎椎間板ヘルニアとなっているため、定義そのものが異なります。
しかし「腰から足にかけて痛みやしびれがある」「坐骨神経痛と言われたけど、ヘルニアとは違うの?」といった、疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの違いを解説します。
また、坐骨神経痛や腰椎椎間板ヘルニアに効果的な治療法・再生医療についても紹介します。治療にお悩みの方は治療法を検討する際の参考にしてください。
目次
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの違い【見分け方を紹介】
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの主な違いは、以下の通りです。
坐骨神経痛 | 椎間板が飛び出して、神経を圧迫することで痛みやしびれを引き起こす症状名 |
腰椎椎間板ヘルニア | 腰からお尻、足にかけてしびれや痛みが現れる病名 |
坐骨神経痛は神経の圧迫による「症状名」、腰椎椎間板ヘルニアはその原因となる「病名」になります。
つまり、ヘルニアによって神経が圧迫されることで、坐骨神経痛が生じるのです。
定義が異なるため正しく理解しておきましょう。
頸椎・腰椎椎間板ヘルニアの症状については、以下の動画でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
坐骨神経痛の原因となる代表的な疾患
坐骨神経痛の原因になる代表的な疾患は、主に以下の3つです。
3つの疾患について、症状などを詳しく紹介します。
腰椎椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアの症状は主に3つあります。
- 腰からお尻、太ももから足先までのしびれ・痛み
- 下肢に力が入りにくい
- 重い物を持った際の腰の痛み
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にある椎間板が外にはみ出し、神経を圧迫してしまう疾患です。椎間板はクッションの役割を担っていますが、長年の負荷によって外側に飛び出てしまうケースがあります。
患者さまの年齢層は20代~50代と幅広く、加齢以外にも頻繁に重い物を持つ方や、同じ姿勢を長時間続ける方が発症しやすいと言われています。
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症の症状は、主に3つです。
- 歩行時の足のしびれ・痛み
- 前かがみで楽になり、立っているときや歩行時に症状が悪化する
- 足の脱力感・冷感・感覚異常
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)とは、背骨の中を通る神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで痛みやしびれが起こる疾患です。
症状が進行すると歩行が困難になる、排尿に障害が出る場合があります。
腰椎すべり症
腰椎すべり症は、腰椎(腰の背骨)が本来あるべき位置から前方や後方にずれてしまう疾患です。
このズレによって脊柱管や神経根が圧迫されると、以下のような症状が現れることがあります。
- お尻から太もも・足にかけての痛みやしびれ
- 長時間立っていると悪化するが、前かがみになると症状が軽減される
坐骨神経痛と同様に、腰椎すべり症でも神経が慢性的に圧迫されることで、痛みやしびれが片側の足に生じる可能性があります。
脊柱管狭窄症と腰椎すべり症は症状が似ているものの、発症の原因が異なります。
坐骨神経痛・腰椎椎間板ヘルニアの治療法
坐骨神経痛・腰椎椎間板ヘルニアには、主に5つの治療法が効果的です。
症状や個人の状況によって採用される治療法は異なります。
保存療法
腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛に悩まされている場合、一般的には最初は保存療法が選択されます。
- 安静にする
- コルセットなどを装着する
スポーツや腰に負担がかかる動作を避け、症状が軽くなるまで安静にしましょう。
また、良い姿勢を維持して、腰への負担を軽減させるために、コルセットを装着するケースがあります。
保存療法は、痛みやしびれを改善させることを目的としています。
薬物療法
薬物治療とは、痛みやしびれなどのつらい症状を軽減するために医薬品を用いる保存的な治療法です。
安静にしていても痛みが続く場合、日常生活の質が低下するため、症状の早期改善を目的に薬物治療が選択されます。
- 消炎鎮痛剤
- 筋弛緩剤
- 神経障害性疼痛治療薬
- ビタミンB12製剤
薬の効果を見ながら、医師が処方量を調整します。
薬物療法は痛みの改善が目的なので、他の治療法と併用して行われる場合が多いです。
ブロック療法
ブロック治療とは、坐骨神経の周辺に局所麻酔薬を注射し、神経の興奮を抑えて痛みや炎症を和らげる治療法のひとつです。
神経の圧迫や過敏な状態を一時的に遮断することで、痛みの緩和と血行促進を図るのが主な目的です。
継続的にブロック療法を受けることで効果の持続期間が長くなるとされています。
理学療法
理学療法は、運動機能の維持・回復を目的とした保存療法の一種で、患部に物理的な刺激を与えることで痛みの緩和や機能改善を図る治療法です。
理学療法においては、以下のような治療が行われます。
- 運動療法(筋力トレーニングやストレッチなど)
- 温熱療法(ホットパック、入浴による血流促進)
- 電気療法(低周波治療器による神経刺激)
- 光線療法(赤外線による患部の加熱)
坐骨神経痛のリハビリでは、痛みが落ち着いてきた段階で腰椎周辺の筋力を強化し、再発を防ぐための運動を開始するのが一般的です。
治療は医師や理学療法士の指導のもとで進められ、患者の状態や症状に応じて異なるトレーニングが行われます。
無理のない範囲で継続して取り組むことで、坐骨神経痛の改善や再発予防につながります。
手術療法
坐骨神経痛が保存療法で改善しない・症状が進行している場合は、以下のような外科手術が検討されます。
内視鏡下腰椎椎間板摘出術(MED) | 小さな切開から内視鏡を挿入し、ヘルニアを直接視認して切除 |
経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PELD) | 皮膚に極小の穴を開け、内視鏡を使ってヘルニアを摘出する手術 |
内視鏡下椎弓切除術(MEL) | 椎弓や肥厚した靭帯を内視鏡下で除去し、神経の圧迫を軽減 |
レーザー治療(PLDD) | 椎間板内をレーザーで照射し、一部分を蒸発させて縮ませることで神経の圧迫を弱める |
手術は、患者さまの症状や年齢に応じて適切な方法が検討されます。
腰椎椎間板ヘルニアが治らない場合、再生医療も選択肢のひとつ
腰椎椎間板ヘルニアが治らない場合の治療法の選択肢として、再生医療もあります。
再生医療は患者さまの幹細胞を利用して腰椎椎間板ヘルニアの症状改善を図ります。患者さまご自身の幹細胞を利用するため、拒否反応のリスクが低いのが特徴です。
また、再生医療は幹細胞を注射や点滴で患部に投与するため、手術・入院を伴いません。
従来の治療法で効果が感じられなかった方、手術を避けたい方は、再生医療をご検討ください。
当院(リペアセルクリニック)の公式LINEでは、症例や治療法を紹介していますので、再生医療について詳しく知りたい方はご覧ください。
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの違いについてのよくある質問
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの違いについて、患者さまからのよくある質問にお答えします。
坐骨神経痛やヘルニアになってしまった場合にやってはいけないことなどを解説します。
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアは、完治するまでの期間はそれぞれどれくらいかかる?
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアは、完治までの期間が異なります。完治するまで安静にし、医師の指示に従って治療を受けましょう。
軽度:1~2週間程度
中度:1カ月~3カ月程度
重度:3カ月以上
症状の程度や年齢、生活習慣によって差がありますが、軽度の場合は1~2週間で自然に痛みが治まる場合もあります。
重度の場合は3カ月以上かかるケースもあるうえに、骨の変形などがあると症状が再発や慢性化の可能性もあるため、初期段階での治療開始が重要です。
軽度:約3週間
中度:数カ月~1年程度
重度:1年以上
多くは約3週間程度でヘルニアが吸収されてほぼ治ると言われていますが、症状の程度によっては1年以上かかる場合や手術が必要になるケースがあります。
症状が軽度でも、ヘルニアが飛び出た方向や大きさによって完治までの期間が異なる可能性があるので、治療期間については医師に相談してください。
おしりが痛いのはヘルニアの症状?
おしりの痛みがヘルニアによるものかどうかは、症状や痛みの特徴によって判断できます。
おしりから足にかけてしびれや痛みが生じる場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。ほかにも、重い物を持ったときに痛みが生じるかどうか確認してください。
数日後にも痛みやしびれが残る、悪化する場合には、医療機関を受診して医師の治療を受けましょう。
坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの痛みでそれぞれやってはいけないこととは?
坐骨神経痛や腰椎椎間板ヘルニアの痛みがある間、やってはいけないことがあります。
坐骨神経痛 |
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腰椎椎間板ヘルニア |
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坐骨神経痛は、筋肉が固まるほか、神経を圧迫する可能性があるため、身体を冷やし過ぎないようにしましょう。
対して腰椎椎間板ヘルニアの痛みがある場合は、身体を温めると炎症が悪化して痛みが強くなるケースがあります。
【まとめ】坐骨神経痛・腰椎椎間板ヘルニアの違いを理解して早めの診断・治療
ヘルニアは多くの場合、保存療法で完治が期待できます。
症状が重いケースや保存療法の効果が見られないケースには、手術療法が検討されます。
腰椎椎間板ヘルニアのほか、脊柱管狭窄症や腰椎すべり症も坐骨神経痛の原因になるため、腰やおしり、足に痛みやしびれが生じた場合は医療機関を受診しましょう。
腰椎椎間板ヘルニアにお悩みの方は、再生医療の選択肢もあります。
再生医療の症例について知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」の公式LINEをご覧ください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設