仙腸関節炎の治し方|自宅でできるセルフケアとやってはいけないことを解説【医師監修】

仙腸関節炎の治し方|自宅でできるセルフケアとやってはいけないことを解説【医師監修】
公開日: 2025.11.28

「腰やお尻の痛みが長期間引かない」「椅子から立ち上がる瞬間にズキッと走る痛みがある」

その症状は、単なる腰痛ではなく骨盤にある「仙腸関節炎(せんちょうかんせつえん)」かもしれません。

画像診断では異常が見つかりにくく、「原因不明」と診断されがちな病気ですが、適切な治療とセルフケアを行えば着実に改善を目指せます。

しかし、誤った対処を続けると慢性化し、生活の質を大きく下げてしまう恐れもあります。

本記事では、仙腸関節炎の主な治療法から自宅でできるセルフケアについて詳しく解説します。

この記事を読んでわかること

  • 仙腸関節炎の治し方や主な治療法
  • 自宅でできるセルフケア
  • 仙腸関節炎が悪化するやってはいけないこと

長引く痛みに別れを告げ、快適な日常を取り戻すためのガイドとして、ぜひ最後までご覧ください。

従来の治療で十分な効果が得られない場合や、手術は避けたいけれど早期に治したいとお考えの場合は、「再生医療」が選択肢の一つです。

再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて、炎症を起こしている組織や傷ついた機能の再生・修復を促す治療法です。

「再生医療について詳しく知りたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。

仙腸関節炎の治し方は?主な治療法

仙腸関節炎の治療は、基本的に手術を伴わない「薬物療法」「装具療法」「リハビリ」などの保存療法から開始します。

痛みのレベルや生活環境に合わせて、医師と相談しながらプランを組み立てましょう。

以下では、それぞれの治療法について具体的に解説します。

薬物療法

痛みが激しい時期は、まず薬を使って炎症を鎮めます。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤を服用し、日常生活の動作を楽にすることが第一歩です。

治療の種類 特徴
内服薬・湿布 全身または局所の炎症を抑える基本的な処置
局所麻酔(注射) 関節を覆う靭帯に打ち、痛みを和らげる
ステロイド注射 強い炎症がある場合に関節内へ注入する

飲み薬だけでは痛みが引かない場合、ステロイド注射など患部に直接アプローチする方法もあります。

まずは靭帯への注射を試み、就寝時などに痛みが残るようであれば、関節内部への注入を検討します。

装具療法

装具療法は骨盤ベルトやコルセットを活用し、患部を物理的に安定させる方法です。

ゴム製のベルトなどで骨盤を締め付けることで、グラグラと不安定になった関節をサポートします。

関節の適合性が良くなると、以下のメリットが期待できます。

  • 動作時の痛みが和らぐ
  • 患部への負担が減り再発を防ぐ

特に出産をきっかけに発症した女性や、症状が慢性化している方に適しています。

リハビリテーション

リハビリテーションでは運動療法や物理療法を取り入れ、再発しにくい体を作ります。

仙腸関節炎のケアとして一般的なアプローチです。

特に以下のポイントを強化します。

  • 腰や骨盤まわりのストレッチ
  • 骨盤底筋や体幹(インナーマッスル)の強化
  • 負担のかからない正しい姿勢の習得

筋肉を柔軟にし、自前の筋肉で骨盤を支えられるようになれば、関節へのストレスは軽減されます。

電気治療などを併用し、痛みをコントロールしながら進めましょう。

仙腸関節ブロック注射

仙腸関節ブロック注射は、痛みの発生源に麻酔薬を注入し、神経の興奮を抑える処置です。

「診断」を兼ねて実施されるケースもあります。

手順としては、まず関節周囲の靭帯へ注射し、効果が不十分な場合は関節内部へアプローチします。

即効性があり一時的に楽になりますが、あくまで対症療法です。

根本的な解決を目指すため、リハビリなど他の治療と組み合わせる場合もあります。

関節運動学的アプローチ(AKA-博田法)

関節運動学的アプローチ(AKA-博田法)は、医師の手技によって、引っかかっている関節の動きを調整する方法です。

わずかなズレや機能不全を修正し、スムーズな動きを取り戻します。

ただし、この技術は習得が難しく、施術者の技量によって効果が左右されます。

誤った方法では悪化する恐れもあるため、日本AKA医学会の認定医など、専門的な知識をもつ医師に相談しましょう。

手術療法

保存療法を半年以上続けても改善せず、生活に大きな支障がある場合は手術を検討します。

ボルトなどで関節を固定し、動かないようにする処置です。

手術が選択肢に入る目安は以下のとおりです。

  • 椅子に15分以上座っていられない
  • うつ伏せでないと眠れないほどの痛みがある
  • 脚にしびれが出ており、歩行に杖が必要

他の病気が隠れていると術後も痛みが残る可能性があるため、慎重な判断が求められます。

仙腸関節炎は自分で治せる?自宅でできるセルフケア

仙腸関節炎は、自分で治すことは困難です。

ズレてしまった関節や炎症を根本的に治すには、専門医による適切な処置が欠かせません。

しかし、通院と並行して自宅でケアに取り組むことは、痛みの悪化を防ぎ、治療効果を高めるために役立ちます。

あくまで「補助的な対策」として、無理のない範囲で取り入れましょう。

安静にして骨盤ベルトを装着する

痛みが強いときは、まずは患部を休ませることが基本です。

無理に動かさず、安静を保ちましょう。

そのうえで不安定になった仙腸関節を外側から締め付け、動きをサポートする「骨盤ベルト」を活用するのがおすすめです。

ただし、24時間つけ続けると筋力が低下し、かえって自分の力で支えられなくなる恐れがあります。

医師の指示に従い、痛みが強い時間帯や動くときだけ装着するなど、メリハリをつけて使用しましょう。

梨状筋をマッサージする

仙腸関節に隣接する「梨状筋(りじょうきん)」をほぐすのも有効です。

この筋肉はお尻の奥にあり、関節炎になると緊張して硬くなりやすいため、ほぐすことで痛みの緩和につながります

梨状筋マッサージの手順

  • 膝を立てて座る
  • マッサージしたい側のお尻の下にストレッチポールやテニスボールを置く
  • 体重をかけながら、お尻を前後左右に動かして筋肉を刺激する

上記の梨状筋マッサージを1回30秒~1分程度、1日2〜3回を目安に行いましょう。

ただし、炎症が激しい急性期にマッサージを行うと、逆効果になる場合があるため、注意が必要です。

痛みが強まるようであればすぐに中止し、医師へ相談してください。

仙腸関節炎が悪化するやってはいけないこと

何気ない日常動作が、知らず知らずのうちに関節への負担を倍増させていることがあります。

治療の効果を下げないためにも、以下の行動は避けましょう。

避けるべき主な行動リスト

  • 重い荷物を持ち上げる
  • 腰を強くひねるスポーツ
  • 長時間同じ姿勢で座り続ける
  • 痛みを我慢して長時間歩く
  • 片脚立ち、片脚に体重を集中させる
  • あぐらや横座り
  • 急な方向転換、ジャンプ動作

「動かせば治る」と勘違いし、痛みを我慢してストレッチやウォーキングを行うのは逆効果です。

炎症が悪化し、治るまでの期間が長引いてしまいます。

仙腸関節炎の治し方についてよくある質問

ここでは、仙腸関節炎の治し方についてよくある質問に回答していきます。

疑問や不安を解消し、前向きに治療に取り組みましょう。

仙腸関節炎はどのくらいで治る?

仙腸関節炎は症状の重さや関節の状態によって、完治までの期間は大きく変動します。

AKA-博-田法を参考にした治療期間の目安は、以下のとおりです。

状態 治療期間の目安
単に関節の動きが悪い場合 1〜2回の治療で改善が見込める
動きが悪く、炎症がある場合 月1〜2回の通院で約3ヶ月
炎症を繰り返す特殊なタイプ 完治は難しく、定期的なメンテナンスが必要

軽度であれば数週間から1ヶ月程度のリハビリで良くなるケースも少なくありません。

しかし、炎症が慢性化している場合は数ヶ月単位の時間が必要です。

焦らず根気よく治療を続け、生活習慣の見直しも並行して進めましょう。

仙腸関節炎にロキソニンは効く?

ロキソニンなどの鎮痛剤(NSAIDs)は、痛みを一時的に抑える手段として有効です。

薬の成分が炎症を鎮めるため、辛い痛みが和らぎ日常生活が送りやすくなります。

ただし、これはあくまで「対症療法」であり、病気の根本原因を治すものではありません。

薬の効果が切れれば、痛みは再び現れます。

薬で痛みをコントロールしながら、リハビリや物理療法、ブロック注射などを組み合わせ、関節の機能を正常に戻すアプローチが欠かせません。

薬だけに頼らず、多角的な視点で治療を進める必要があります。

仙腸関節炎と椎間板ヘルニアの違いは?

どちらも腰やお尻に痛みが出ますが、原因となる場所や症状の特徴に違いがあります。

主な違いは、以下のとおりです。

項目 仙腸関節炎 椎間板ヘルニア
原因 骨盤にある関節の炎症やズレ 背骨のクッション(椎間板)が神経を圧迫
痛みの場所 片側の腰やお尻、脚の付け根 腰から足先にかけての広範囲
特徴的な症状 座りっぱなしで痛む、動き始めが辛い 足に強いしびれや放散痛が走る

仙腸関節炎はレントゲン等の画像診断では異常が見つかりにくく、診断が難しい病気です。

自己判断で決めつけず、専門医による詳細な検査を受けて、正しい病名を特定してください。

また、次の記事では坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアの違いについて解説しているので、併せて参考にしてください。

仙腸関節炎の早期改善には再生医療をご検討ください

仙腸関節炎は、焦らず適切な保存療法を続け、日常生活での負担を減らすことで多くのケースで改善が見込めます。

しかし、中には慢性化してしまい「リハビリを続けても痛みが残る」「ブロック注射の効果がすぐに切れてしまう」とお悩みの方もいらっしゃいます。

もし、従来の治療で十分な効果が得られない場合や、手術は避けたいけれど早期に治したいとお考えの場合は、新たな選択肢として「再生医療」をご検討ください

再生医療は、患者さま自身の細胞や血液を用いて、炎症を起こしている組織や傷ついた機能の再生・修復を促す治療法です。

自己細胞のみを使用するため、アレルギー反応や拒絶反応などの副作用のリスクが低く、長引く痛みに対する根本的な解決策として注目されています。

「再生医療について詳しく知りたい」「早く治したい」とお考えの方は、ぜひリペアセルクリニックにご相談ください。

監修者

坂本 貞範

Sadanori Sakamoto

医療法人美喜有会 理事長

「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。

略歴

1997年3月関西医科大学 医学部卒

1997年4月医師免許取得

1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務

1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務

1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務

1999年2月国立大阪南病院 勤務

2000年3月野上病院 勤務

2003年3月大野記念病院 勤務

2005年5月さかもとクリニック 開設

2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任

2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設

2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設

2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設