野球による腰痛の治し方は?主な原因と予防に効果的なストレッチを解説【医師監修】
公開日: 2019.09.11野球選手にとって、腰痛はパフォーマンスに直結する深刻な問題です。
本記事では、野球による腰痛の治し方について、保存療法から手術療法、そして新しい選択肢である再生医療まで解説します。
- 野球による腰痛の主な治療法(保存療法・手術・再生医療)
- 野球選手に多い腰痛の種類とその原因
- 腰痛予防に効果が期待できるストレッチ方法
つらい腰痛に悩んでいる野球選手の方は、ぜひこの最後までご覧ください。
また、当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、腰の痛みに対する再生医療に関する情報を配信しています。
「腰痛を早く治したい」「早く野球復帰したい」という方は、ぜひ再生医療について知っておきましょう。
目次
野球による腰痛の治し方
野球による腰痛を克服するための治療法を3つご紹介します。
練習を休まなければならないほどの痛みや、思うようなプレーができないもどかしさに、どうすればこの腰痛を治せるのだろうかと悩んでいる方も多いことでしょう。
ご自身の状態と照らし合わせながら、どのような治療法があるのか確認していきましょう。
保存療法
野球が原因で起こる腰痛の治療は、まず手術を行わない「保存療法」から始めるのが基本です。
治療法 | 詳細 |
薬物療法 | 消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)や、筋肉の緊張をほぐす筋弛緩剤といった飲み薬で、痛みや炎症、筋肉のこわばりを和らげる。 |
理学療法(リハビリ) | ストレッチで筋肉の柔軟性を高めたり、体幹トレーニングなどで筋力を強化したりすることで、体の機能改善と腰痛の再発予防を目指す。 |
物理療法・装具療法 | 温熱療法(ホットパックなど)で腰部の血行を促進したり、コルセットを装着して腰を安定させたり、負担を軽減する。 |
ブロック注射 | 痛みが非常に強く、日常生活に支障が出ている場合に、神経の周りに局所麻酔薬などを注射することで直接的に痛みを抑える。 |
保存療法は効果が現れるまでに時間がかかる場合や、重度の椎間板ヘルニアなどで神経症状が強い場合には、十分な改善が得られないこともあります。
以下の記事ではアスリートに腰痛が多い理由や再生医療について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
手術療法
保存療法を長期間続けても腰痛が改善しない場合や悪化している場合には、最終的な治療の選択肢として「手術療法」が検討されます。
手術名 | 手術の概要 |
椎間板摘出術 | 内視鏡や顕微鏡を使って、神経を圧迫している、飛び出した椎間板の一部を取り除く。 |
脊椎固定術 | 医療用のボルトやスクリューといった器具を用いて、不安定になっている背骨(椎骨)同士を連結・固定し、背骨全体の安定性を高める。 |
手術によって痛みの原因が取り除かれるため、つらい痛みや神経症状が改善する期待が持てますが、長期的なリハビリによってスポーツへの復帰が長引く可能性があります。
また、手術には感染症や神経の損傷といった合併症のリスクが伴います。
再生医療
リハビリなどの保存療法では改善しない慢性的な腰痛に対して、患者様自身の血液や細胞を利用して、損傷した組織の修復を促す「再生医療」という選択肢もあります。
治療法の種類 | 詳細 |
PRP療法 |
患者様自身の血液を採取し、組織の修復を促す「成長因子」を多く含む「血小板」を、痛みの原因となっている部分に注射する。 |
幹細胞治療 | 患者様自身の脂肪などから、さまざまな細胞に変化する能力をもつ「幹細胞」を採取・培養してから痛みの原因となっている椎間板や関節に注入する。 |
再生医療のメリットは、手術や入院が不要で、短時間の処置で治療が終わる点です。
また、ご自身の細胞や血液を使うため、アレルギーや拒絶反応などの副作用リスクも少なく治療法です。
以下の動画では、ヘルニアの再生医療について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
野球選手に多い腰痛の種類
「野球による腰痛」といっても、その痛みの原因や体の内部で何が起きているのかは、実は一つではありません。
本章では、野球選手に多い腰痛の種類を紹介します。
当てはまるものがあるか、確認してみましょう。
筋・筋膜性腰痛症
「筋・筋膜性腰痛症」は、野球特有の投球やスイングといった動作の繰り返しによって、腰の筋肉や、筋肉を包む筋膜が傷つくことで起こる急性の腰痛です。
一般的に「ぎっくり腰」と呼ばれる状態に近いものと考えると分かりやすいでしょう。
症状としては、腰に沿って走るような鋭い痛みや体を動かしたときの痛み、そして痛む部分を押したときの痛み(圧痛)が特徴です。
発症した直後の急性期には、あまりの激痛にその場で動けなくなってしまうことも少なくありません。
腰椎分離症
「腰椎分離症」は、特にまだ骨が成長しきっていない成長期の野球選手に多く見られる、腰の骨(腰椎)の一部に繰り返しの負担が集中することで生じる「疲労骨折」です。
初期の段階では、運動中にだけ痛みを感じる程度ですが、進行すると日常生活でも痛むようになり、練習を休まなければならない状態になります。
重篤化すると偽関節化し、慢性的な痛みや炎症が続くことがあります。
椎間板ヘルニア
「椎間板ヘルニア」は、背骨と背骨の間でクッションの役割を果たしている「椎間板」という組織の中身が外に飛び出してしまう病気です。
椎間板が近くにある神経を圧迫することで、腰の痛みだけでなく、お尻から脚にかけての痛みやしびれを引き起こします。
前かがみになったり、椅子に座っていたりすると症状が強くなることもあります。
野球選手が腰痛を起こす主な原因
本章では、野球選手が腰痛を引き起こす主な原因を解説します。
「投げる」「打つ」「守る」といった野球ならではの動作は、腰に大きな負担をかけています。
繰り返される動作の中で、知らず知らずのうちに腰に疲労が蓄積し、やがて痛みとなって現れるのです。
プレーを思い浮かべながら、どこに腰痛のリスクが潜んでいるのか確認していきましょう。
ピッチングによる投球動作
ピッチャーが投げる一球一球には、全身の力が凝縮されています。
ピッチングによる投球動作
- 下半身の力を上半身に伝える際、腰が中継点となり大きな負荷がかかる
- 1試合100球前後の反復動作により疲労が蓄積し、腰への負担が増す
- 股関節などが硬いと本来ひねるべきでない腰椎を無理に捻ってしまい痛みの原因となる
- 投球フォームで上体を大きく反らす動きが、腰椎に直接ストレスを与える
上記の理由から、ピッチャーは野球のポジションの中でも、特に腰痛が生じやすいポジションといえるでしょう。
バッティングによる腰の回旋
力強い打球を生み出すバッティングのスイングは、下半身・背中・胸部・腕といった全身の筋肉を連動させて行われる、パワーを要する動作です。
バッティングによる腰の回旋
- 骨盤を固定したまま上半身を強く回旋させるため、腰椎に大きなねじれの力がかかる
- 体幹の筋力や股関節の柔軟性が不足するとスイングの負荷が腰に集中しやすくなる
- 過度な回旋動作の繰り返しは、腰椎分離症(疲労骨折)のリスクを高める
力強いスイングを支えるためには、腰だけでなく、全身の筋力と柔軟性のバランスが重要になります。
守備による中腰姿勢
守備による中腰姿勢は、ただ立っているだけの状態よりも腰に何倍もの負荷をかけ続けるため、腰痛を引き起こす大きな原因の一つとなります。
守備による中腰姿勢
- 姿勢を支える体幹の筋力が不足すると、構えているだけで腰に大きな負担がかかる
- ゴロ捕球から送球への一連の動作は、腰に大きな負荷がかかる動き
- 腰や股関節の柔軟性が低いと無理な体勢で動くことになり、腰への負荷が増大する
特に焦って不安定な体勢で投げると腰へのダメージが大きくなるため、普段から体幹や股関節の柔軟性を高めておくことが重要です。
また、次の記事では椎間板ヘルニアの治療法について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
野球による腰痛の予防に効果的なストレッチ
野球による腰痛を防ぐためには、日々のストレッチが重要です。
本章では、野球による腰痛の予防に効果が期待できるストレッチを3種類ご紹介します。
ストレッチの正しいやり方を理解し、練習前後のケアに取り入れてみてください。
腰背部のストレッチ
腰や背中の筋肉(腰背筋)をストレッチすることは、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、腰への負担を軽減するため、腰痛予防に効果的です。
腰背部のストレッチの手順
- 椅子に浅めに腰掛け、両手を床の方へ下ろす
- 息をゆっくりと吐きながら、お辞儀をするように上半身を静かに前に倒す
- 無理なく倒せるところまでいったら、今度はゆっくりと体を起こす
- 2~3回繰り返す
大切なのは、反動をつけずに、ゆっくりとした動作で行うことです。
大腿四頭筋のストレッチ
太ももの前側にある筋肉「大腿四頭筋」の柔軟性を高めるストレッチは、骨盤の動きをスムーズにし、投球や打撃動作における腰への負担を軽減します。
大腿四頭筋のストレッチの手順
- 体の左側を下にして横向きに寝て、下の脚股関節と膝を約90度に曲げる
- 上側になっている右足の足首あたりを右手で後ろから掴む
- 腰が反らないようにお腹に力を入れ、かかとをお尻に近づけるようにゆっくりと後ろへ引く
- 太ももの前面に心地よい伸びを感じる位置で約30秒間静止し、反対側も同様に行う
背中も反らないよう注意し、腰が浮かない姿勢で行いましょう。
ハムストリングのストレッチ
ハムストリングスが硬いと膝が伸びにくく、骨盤が後ろに傾き、股関節の動きが悪くなります。
骨盤の動きが制限されると腰椎への負担が大きくなり、腰痛の一因となります。
ハムストリングのストレッチの手順
- 仰向けに寝て、片方の膝を両手でしっかりと胸の方へ抱え込む
- 太ももがお腹から離れないようにしたまま、膝を天井に向けてゆっくりと伸ばす
- 太ももの裏側に心地よい伸びを感じる位置で約20秒間静止し、反対の脚も同様に行う
ストレッチのポイントは、膝を伸ばすときにお尻が床から浮かないようにすることです。
反動をつけずゆっくりとした動作で行うことで、ハムストリングスの柔軟性が高まり、骨盤の正しい動きが促され、腰への負担が軽減されます。
野球による腰痛はストレッチやセルフケアで予防しよう
野球による腰痛の治療法は、リハビリや薬物療法といった「保存療法」が基本となりますが、症状が重い場合には「手術療法」も検討されるケースがあります。
また近年の治療では、損傷した組織の修復を目指す「再生医療」も選択肢の一つです。
野球による腰痛を克服し、パフォーマンスを維持するためには、日々のストレッチやトレーニングといったセルフケアで、腰痛になりにくい体を作ることが重要です。
腰背部や太ももの筋肉の柔軟性を保ち、体幹を安定させることが、腰への負担を軽減し、怪我の予防に繋がります。
当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、腰の痛みに対する再生医療に関する情報を配信しています。
「腰痛を早く治したい」「早く野球復帰したい」という方は、ぜひ再生医療について知っておきましょう。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設