帯状疱疹とワクチンについて内科専門医が徹底解説
公開日: 2025.02.12更新日: 2025.03.01
ズキズキと刺すような痛みと、透明な液体が詰まった赤い発疹を伴う症状が出る。
実はこれ、誰でも発症する可能性のある帯状疱疹かもしれません。
本稿では、帯状疱疹がなぜ起こり、どんな症状が出るのか、治療法、そして予防に有効なワクチン情報まで、詳しく解説します。
もしかして、今の体の不調は帯状疱疹の初期症状かも?
少しでも気になる方は、ぜひ読み進めてみてください。
帯状疱疹の症状と原因を詳しく解説
帯状疱疹は、ズキズキと刺すような痛みと、透明な液体が詰まった赤い発疹を伴う症状が現れる病気です。
特徴的なのは、体の左右どちらか一方にのみ現れる発疹です。
実は、幼少期に感染した水ぼうそうの原因ウイルスは体内に残り、誰にでも起こりうる身近な病気とも言えます。
今回は、帯状疱疹の症状や原因、そして病気の経過について、わかりやすく解説していきます。
帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされます。
このウイルスは、実は小児期の水疱瘡の原因となるウイルスと同じものなのです。
初感染時には水ぼうそうとして発症しますが、治癒した後もウイルスは神経節と呼ばれる神経細胞の集まりに潜伏し続けます。
このウイルスは通常、人体の免疫システムによって抑制された状態で体内に留まっていますが、加齢や過労、ストレスなどによって免疫力が低下すると、休眠状態だったウイルスが再び活動を始め、帯状疱疹の症状として現れてきます。
VZVはアルファヘルペスウイルスというグループに属し、単純ヘルペスウイルスと同様に、一度感染すると体内に潜伏し続けるという特徴を持っています。
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帯状疱疹の初期症状
そのため、他の病気と見分けにくく、診断が遅れてしまうケースも少なくありません。
初期には、風邪に似ただるさや頭痛、微熱といった全身症状が現れることがあります。
また、皮膚症状が現れる数日前から、ピリピリとした痛みやしびれ、かゆみといった皮膚の違和感を感じることもあります。
こうした症状は、ウイルスによって神経に炎症が生じることで起こります。
しかし、これらの初期症状は個人差が大きく、必ずしも全員が同じような症状が出るわけではありません。
例えば、皮膚症状が出る前に強い痛みを感じる人もいれば、全く痛みを感じない人もいます。
重要なのは、これらの初期症状に注意を払い、少しでも異変を感じたら早めに医療機関を受診することです。
帯状疱疹の特徴的な症状:ピリピリとした痛みと赤い発疹
帯状疱疹の最も特徴的な症状は、なんといってもピリピリとした痛みと赤い発疹です。
痛みは、発疹が現れる数日前から始まることもあり、ヒリヒリ、シクシクなど、痛みの感じ方は人それぞれです。
痛みの程度も個人差が大きく、軽い痛みで済む人もいれば、激痛に苦しむ人もいます。
赤い発疹は、小さな水ぶくれが集まったもので、神経に沿うような帯のような形で出現してきます。
この水ぶくれは、次第にかさぶたになり、おおよそ2~3週間程度で完治に向かいます。
しかし、皮膚の症状が治まった後も、痛みが続く場合があります。
これは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれる合併症で、この症状は、とりわけお年を召した方に発生する傾向が確認されています。
帯状疱疹の症状の経過と回復までの期間
帯状疱疹の症状は、一般的に2~4週間で治まります。
最初は赤い水疱が現れ始め、かさぶたになって治っていきます。
しかし、前述のように、痛みは発疹が治った後も残ることがあります。
この帯状疱疹後神経痛は、数か月、数年と長引くことも報告されており、生活の質を著しく低下させる可能性があります。
年齢が高い方や免疫が弱っている方については、この病気にかかりやすいだけではなく、その後の神経痛に悩まされる可能性も増加します。
できるだけ早い段階で治療を始めることによって、そのような症状が残るリスクを抑制できることもあり、早期発見・早期治療が重要です。
帯状疱疹の原因:水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化が原因で起こります。
幼少期に水疱瘡を経験したことのある方は、このVZVが体内の神経節に潜伏しています。
加齢、疲労、ストレス、病気などによって免疫力が低下すると、VZVが再び活性化し、帯状疱疹を発症します。
免疫力の低下は、VZVの再活性化の主要な引き金となります。
高齢者や免疫抑制剤を使用している人、あるいは持病がある人は、特に注意が必要です。
VZVの再活性化は、神経に沿って炎症を引き起こし、独特の痛みと共に、皮膚に吹き出物が現れるのが特徴です。
帯状疱疹の発生率は、年齢とともに増加することが知られており、特に50歳以上で急増します。
帯状疱疹の治療法と後遺症
帯状疱疹は、体の片側にピリピリとした痛みと赤い発疹が現れる病気です。
早期に適切な治療を行うことで、症状を迅速に和らげ、合併症の危険性も軽減できます。
少しでも気になる症状があれば、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
帯状疱疹の治療薬:抗ウイルス薬
帯状疱疹の治療の要となるのは、抗ウイルス薬です。
この薬は、帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑えることで、皮膚の症状を早く治し、神経の痛みなどの合併症を防ぐ働きがあります。
抗ウイルス薬には、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなどがあり、一般的には内服薬として処方されます。
それぞれのお薬の働きをシンプルにご説明いたします。
アシクロビル:アシクロビルは帯状疱疹治療の基本となる薬ですが、1日5回服用する必要があります。
バラシクロビル:バラシクロビルはアシクロビルに比べて1日の服用回数が少なく、飲み忘れを防ぎやすいという利点があります。
ファムシクロビル:ファムシクロビルは1日2~3回服用し、食事の影響を受けにくいという特徴があります。
どの薬が患者さんに最適かは、現在の状態や他の疾患の有無、年齢などを考慮して医師が判断します。
自己判断で薬の服用を中止したり、服用量を変えたりすることは大変危険ですので、絶対にしないでください。
医師の指示に従って正しく服用することが重要です。
発疹出現後72時間以内に抗ウイルス療法を開始することで、症状の悪化や併発症の危険性を抑えられることが示されています。
帯状疱疹の痛みを抑える薬
帯状疱疹では、発疹に伴い、強い痛みを感じる方が多くいらっしゃいます。
このような痛みは、ウイルスが神経を刺激して炎症が発生することにより生じます。
痛みを和らげるために、鎮痛薬が使用されます。
鎮痛薬には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などがあります。
これらの薬は、痛みや炎症を抑える効果があります。
痛みが強い場合には、神経障害性疼痛治療薬と呼ばれる種類の薬が処方されることもあります。
神経障害性疼痛治療薬は、神経の損傷によって生じる痛みを特異的に抑える薬です。
適切な鎮痛薬を選ぶことで、日常生活における痛みを軽減し、より快適に過ごせるようになります。
痛みの強さと性質を考慮して、医師が適切な薬剤を選択し、処方しますので、ご安心ください。
▼痛み止めどれがいい?併せてお読みください。
帯状疱疹の治療期間
帯状疱疹の治療期間は、症状の重さや個人差によって異なりますが、通常は2~4週間程度です。
抗ウイルス薬は、発疹が出てから72時間以内に服用を開始すると最も効果的です。
できるだけ早い段階で治療を始めることにより、症状の悪化や後遺症のリスクを減らすことができます。
治療期間中は、医師の指示に従って薬をきちんと服用し、患部を清潔に保つことが大切です。
また、十分な休息と栄養を摂ることも、早期回復に繋がります。
帯状疱疹の合併症:帯状疱疹後神経痛
帯状疱疹の合併症として最も注意すべきなのは、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。
この症状は、帯状疱疹そのものが完治した後でも痛みが残る症状のことで、お年寄りや抵抗力が弱っている患者さんに発症することが多いとされています。
帯状疱疹後神経痛は、日常生活の質が大きく損なわれる可能性があり、適切な治療と管理が必要です。
帯状疱疹後神経痛の症状と治療法
帯状疱疹後神経痛の症状は、ピリピリ、シクシクする痛み、焼けつくような痛みなど、人によって様々です。服が軽く当たっただけでも痛みが生じたり、夜も眠れないほどの強い痛みが出ることもあります。
治療には、鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬、抗うつ薬、抗けいれん薬などが用いられます。
また、塗り薬や神経ブロック注射、リハビリテーションなども有効な場合があります。
痛みが長引く場合は、ペインクリニックなどの専門医療機関への受診も検討しましょう。
帯状疱疹後神経痛は、QOL(生活の質)に大きな影響を与える可能性があります。
日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合は、我慢せずに医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
帯状疱疹ワクチンの種類と効果
帯状疱疹は、ビリビリ、シクシクする痛みと赤みを帯びた発疹が主な特徴となる病気です。
50歳を過ぎると発症リスクが急激に上がり、80歳までに約3人に1人が発症すると言われています。
帯状疱疹後神経痛といった後遺症に悩まされる方も少なくありません。
帯状疱疹はワクチンで予防できることをご存知ですか?
ワクチン接種によって発症リスクや重症化リスクを大幅に下げることができますので、ぜひワクチンについて知っていただきたいと思います。
帯状疱疹ワクチンの種類:生ワクチンと不活化ワクチン
帯状疱疹ワクチンには、大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。
それぞれの特徴を理解し、あなたの状態に適したワクチンを選ぶことが大切です。
ワクチン種類 | 特徴 | 効果 | 副反応 | 対象年齢 |
---|---|---|---|---|
生ワクチン | 毒性を弱めた生きたウイルスを使用 | 帯状疱疹の発症予防効果は約50% | 注射部位の痛み、発赤、腫れ | 50歳以上 |
不活化ワクチン | ウイルスの一部または不活化したウイルスを使用 | 帯状疱疹の発症予防効果は約90%、帯状疱疹後神経痛の発症予防効果も高い | 注射部位の痛み、発赤、腫れ、頭痛、疲労 | 50歳以上 |
生ワクチンは、毒性を弱めた水痘・帯状疱疹ウイルスを接種することで、体内に免疫を作り出す仕組みです。
水疱瘡の感染予防としても活用されています。不活化ワクチンは、ウイルスの抗原となる一部を接種することで免疫を獲得させます。
ウイルスは不活化されているため、生ワクチンに比べて安全性が高い一方、免疫反応を高めるために、複数回の接種が必要となる場合があります。
帯状疱疹ワクチンの効果と持続期間
帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹を発症する確率を下げることができます。
生ワクチンの場合、その効果は約50%で、効果の持続期間は5年程度です。
つまり、接種後5年経過すると、この病気を防ぐ効果が次第に低下し、再び発症リスクが高まる可能性があります。
一方、不活化ワクチンの場合、90歳以上の方でも約90%の高い発症予防効果があり、後遺症として生じる神経痛の危険性も軽減できます。
その効果は少なくとも10年間持続すると考えられており、より長期的な予防効果が期待できます。
2018年から利用可能な不活化サブユニットワクチンは、有効性が高く、比較的忍容性も良好です。
帯状疱疹ワクチンの副反応
帯状疱疹ワクチン接種後に起こりうる副反応として、注射部位の痛み、発赤、腫れなどの局所反応が挙げられます。
これらの症状は、ワクチン接種による免疫反応の一環として現れるものであり、通常は数日以内に軽快します。
その他、頭痛や疲労感、発熱などの全身症状が現れる場合もありますが、多くは一時的なものです。
重篤な副反応はまれですが、アナフィラキシーショックなどのアレルギー反応が起こる可能性もゼロではありません。
気になる症状が出た場合は、速やかに医師に相談しましょう。
帯状疱疹ワクチンの接種費用と接種場所
多くの自治体で助成制度が設けられており、自己負担額が軽減される場合がありますので、お住まいの自治体にお問い合わせください。
接種は、医療機関やワクチン接種会場で受けられます。
かかりつけ医に相談するか、自治体のホームページなどで接種可能な医療機関を検索できます。
帯状疱疹ワクチンの接種対象者
帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の方を対象に接種が推奨されています。
とりわけ、お年を召した方や抵抗力が弱っている人は、帯状疱疹を発症すると重症化しやすい傾向があるため、ワクチン接種が重要です。
ただし、妊娠中の方、免疫不全の方、水痘ワクチン接種後8週間以内の方などは接種できない場合があります。
特定の疾患をお持ちの方は、接種前に医師に相談する必要があります。
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リペアセルクリニックは「再生医療」に特化した再生医療専門クリニックです。手術・入院をしない新たな治療【再生医療】を提供しております。
参考文献
- Ehrenstein B. “[Diagnosis, treatment and prophylaxis of herpes zoster].” Zeitschrift fur Rheumatologie 79, no. 10 (2020): 1009-1017.
- Arvin AM. “Varicella-zoster virus.” Clinical microbiology reviews 9, no. 3 (1996): 361-81.
監修医師 リペアセルクリニック
内科専門医 渡久地 政尚