子供の膝の痛みは離断性骨軟骨炎かも?原因・症状・治療やスポーツ復帰まで解説
公開日: 2019.07.05更新日: 2025.04.30
子供が膝の痛みを訴えている場合、一般的に疑われるのは成長痛ではないでしょうか。
しかし、運動をしている子供の場合は、離断性骨軟骨炎という疾患の可能性があります。
本記事では、子供の膝の痛みの原因となる「離断性骨軟骨炎」について詳しく解説します。
この疾患の病態について網羅的に紹介します。
早期発見と適切な治療が将来のスポーツ活動継続のカギとなるため、お子さんの膝の痛みに気づいたら参考にしていただければ幸いです。
目次
子供の膝でも起こる離断性骨軟骨炎の症状と原因
膝の痛みに悩む子供たちの中には、離断性骨軟骨炎が原因であるケースが少なくありません。
この病気は10代前半の成長期に多く見られ、特にスポーツ活動を積極的に行う子供たちに発症しやすい特徴があります。
本章では、以下の内容について詳しく解説します。
子供の将来のため、親御さんが症状や原因を理解しておくことが重要です。
離断性骨軟骨炎の病態
離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)とは、関節の中で軟骨とその下にある骨(軟骨下骨)が一部剥がれてしまう病気です。
血流障害によって軟骨下骨が壊死し、進行すると骨軟骨片となって関節内に遊離してしまいます。
成長期の子供、特に10代前半に多く発症し、男女比は男子の割合が多く約2:1です。
膝関節での発生部位としては、大腿骨内側が約85%を占め、大腿骨外側が約15%、そしてまれに膝蓋骨(膝のお皿)にも見られます※。
※出典:順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科・スポーツ診療科
また、大腿骨外側に発症した場合、円板状半月(えんばんじょうはんげつ)という状態を合併することがある※ため注意が必要です。
離断性骨軟骨炎の主な症状
子供の離断性骨軟骨炎における症状は、病気の進行段階によって異なります。
初期の症状
- 運動後に感じる膝の不快感や鈍い痛み
- 休息すると症状が和らぐことが多い
この段階では骨軟骨部分はまだ完全に剥離していないため見過ごされやすい傾向があります。
しかし、痛みを放置していると症状が進行するリスクがあるため、注意が必要です。
進行した場合の症状
- 痛みが強くなり、スポーツ活動に支障をきたす
- 膝を動かすときに引っかかり感や異音が生じる
また、骨軟骨片が関節内に挟まると、膝が突然ロックして動かなくなる「ロッキング現象」を起こすこともあります。
離断性骨軟骨炎が発症してしまう主な原因
離断性骨軟骨炎の主な原因は、スポーツなどで繰り返し関節にかかる負荷や、思春期の急速な成長です。
同じスポーツを長期間続けていると関節にストレスがかかり、軟骨の下にある骨にダメージが蓄積されていきます。
例えば肘や膝などの関節で、いつも同じ場所に負担が加わると、軟骨や骨に向かう血液の流れが悪くなります。
血流が滞ると障害を受けた骨の一部は壊死してしまう、というメカニズムです。
また、成長期の子供は骨の成長と血流のバランスが崩れやすく、離断性骨軟骨炎を発症するリスクがあります
離断性骨軟骨炎の診断方法
離断性骨軟骨炎の診断は、症状の問診と画像検査を組み合わせて行われます。
初期の段階では通常のレントゲン検査で異常が見つかりにくいため、見落とされることがあります。
より正確な診断にはMRI検査が重要で、骨軟骨片の状態や剥離の程度を確認可能です。CTスキャンも骨の状態評価に役立ちます。
また、関節液の検査や関節鏡検査を行うこともあり、特に関節鏡は病変部を直接観察できるため、診断と治療を同時に行える利点があります。
早期発見が治療成績を左右するため、子供の膝の痛みが続く場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
スポーツ復帰の鍵になる離断性骨軟骨炎の治療法
離断性骨軟骨炎の治療法としては、主に次の2つがあります。
それぞれの治療法について詳しく解説します。
保存療法
保存療法は主に骨軟骨片がまだ完全に剥離していない初期段階で選択されます。
主に次の治療を行います。
- 安静・スポーツ制限
- 荷重制限・装具療法
- 物理療法・リハビリテーション
まずは症状を悪化させる可能性のある運動を控えて安静にします。発育期の子供は、安静により自然治癒する可能性があります。
また、膝への体重負荷を軽減するため、松葉杖の使用や膝装具の装着も有効です。特に大腿骨内側で発症している場合は膝装具が効果的とされています。
物理療法とリハビリテーションの内容は、主に痛みを緩和させるための低出力超音波やストレッチ、筋力低下を防ぐためのトレーニングです。太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)の強化が重要です。
保存療法は多くの場合で6ヶ月以上は継続し、定期的なMRI検査などで骨軟骨片の状態を確認しながら進めていきます。
症状の改善と画像所見の回復が見られれば、段階的にスポーツ活動への復帰を目指せるでしょう。
手術療法
保存療法で効果がない場合や早期スポーツ復帰を目指す場合には手術が検討されます。
手術名 | 内容 |
---|---|
鏡視下ドリリング術 |
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骨軟骨片固定術 |
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自家骨軟骨柱移植術 |
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鏡視下郭清術 |
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手術後は通常4ヶ月で軽い運動、6ヶ月程度で投球開始を目指します。再発防止のためのフォーム指導も重要です。
また、手術を伴わない治療法として、再生医療という選択肢もあります。
患者さま自身の幹細胞や血液を用いる再生医療について、詳しく知りたい方は以下のページもあわせてご覧ください
膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
離断性骨軟骨炎の予防方法
離断性骨軟骨炎を予防するためには、膝・肘・足関節への過度な負荷を避けることが重要です。
- 適切な練習量の調整
- 正しいフォームの習得
- サポーターの活用
- 定期的な検診
まずは無理のない練習量とし、負荷がかからないよう正しい運動フォームの習得に努めましょう。
負荷を軽減するためのサポーターの装着も効果的です。
さらに早期発見のために、少しでも違和感があれば医療機関を受診しましょう。
まとめ:子供の膝の痛みに気づいたら早めに医療機関へ
離断性骨軟骨炎は10代前半の成長期に多く見られる疾患で、スポーツを積極的に行う子供に発症しやすい特徴があります。
初期症状は運動後の軽い痛みから始まり、進行すると膝の引っかかりやロッキング現象を引き起こします。
原因は繰り返しの関節負荷や成長期特有の血流障害です。
治療は保存療法から手術療法まで病期に応じて選択され、早期発見・早期治療が将来のスポーツ活動継続のカギとなります。
また、予防には適切な練習量の調整とフォーム習得が重要です。
子供の膝の痛みを「成長痛」と安易に判断せず、違和感があれば早めに専門医に相談しましょう。
手術を伴わない治療法をお探しの方は、再生医療も治療の選択肢となります。
再生医療について詳しく知りたい方は、当院「リペアセルクリニック」へお気軽にご相談ください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設