脳梗塞を発症しやすい年齢は?年代との関係性や若年性脳梗塞について
公開日: 2024.12.17更新日: 2025.02.03
脳梗塞は年齢が上がるほど発症リスクが高いとイメージする方もいるのではないでしょうか。
若くても脳梗塞にならないか不安な方もいるでしょう。
本記事では、年齢別の発症率や若年性脳梗塞について解説します。
この記事を読むとわかること
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脳梗塞の予防法も併せて紹介しますので、方法を実践して健康な生活を送りましょう。
目次
脳梗塞は何歳から発症しやすくなる?
脳梗塞は一般的に65歳以上の発症リスクが高いとされていますが、年齢別で見たときにリスクが上がるのは何歳からなのでしょうか。
脳梗塞患者15万人あたりの年齢別の内訳は以下の通りです。
15~34歳 | 約0.02% |
35~64歳 | 約9% |
65歳以上 | 約90% |
うち75歳以上 | 約70% |
65歳以上が全体の9割を占めています。つまり、65歳を過ぎると脳梗塞を発症するリスクが10倍に上がってしまうのです。
上の表を参考にすると、脳梗塞はとくに75歳以上の年齢の発症リスクが高いことがわかります。
脳梗塞は再発しやすい疾患です。初発の年齢が高いと再発リスクが高まります。
年齢によって異なる脳梗塞の発症リスク
年齢によって、脳梗塞の発症の原因が異なります。
以下では、年代ごとの脳梗塞の原因を解説します。
年代ごとの発症リスクを理解し、脳梗塞を予防できるようにしましょう。
若年者の発症リスク
45歳以下の若年層の方が脳梗塞を発症する原因は主に3つあります。
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慢性的なストレスによって脳梗塞につながりやすい高血圧や糖尿病などを引き起こす可能性があります。高血圧などの生活習慣病によって動脈が狭く・硬くなり、脳梗塞のリスクが高まるのです。
また、運動不足による脂質異常症も脳梗塞になる危険性があります。
若年者だからといって脳梗塞に絶対にならないと油断せず、運動を欠かさないようにしましょう。
中年者の発症リスク
40代後半~50代の中年者が脳梗塞を発症する原因は主に以下の3つです。
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中年者になると、不摂生などによる生活習慣病になる可能性が高くなります。生活習慣病が慢性化すると、脳梗塞につながるリスクがあるのです。
運動不足解消や生活習慣病改善のためには運動を行い、血圧を下げ血流を改善する必要があります。また、お酒を飲んでいる方は頻度や一度に飲む量の見直しをしてください。
運動の習慣がなかった方は、軽いラジオ体操やウォーキングなど無理のない範囲で始めてみましょう。
高齢者の発症リスク
60代以降の高齢者の方が脳梗塞を発症する原因は以下の2つが考えられます。
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60歳以降は高血圧のリスクがより高くなります。高血圧が常態化すると脳梗塞を発症する可能性があるのです。
また、血液がドロドロになることで血管が詰まりやすくなるので糖尿病の方も注意が必要です。
動脈硬化が進行すると、脳の血管が詰まる・狭くなり、脳梗塞を引き起こします。動脈硬化は他にも心筋梗塞などの病気を引き起こす可能性も高まり危険です。
若い世代でも発症する「若年性脳梗塞」とは
主に50歳以下で発症する脳梗塞のことを「若年性脳梗塞」と言います。
「若年性脳梗塞」になる原因や、受診の重要性について解説します。
若年性脳梗塞とは?
国際的な定義はありませんが、日本循環病センターは50歳以下で発症する脳梗塞を指して「若年性脳梗塞」と呼んでいます。
若年性脳梗塞は遺伝的要因や先天異常など、高齢者が発症する脳梗塞とは異なる原因で引きおこる特徴があります。
危険因子がある場合、年齢に関係なく誰でも脳梗塞になる可能性があるのです。
若年性脳梗塞の主な原因
若年性脳梗塞の原因は、以下の通りです。
病名 | 症状 |
抗リン脂質抗体症候群 |
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奇異性脳塞栓症 |
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もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症) |
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若年性脳梗塞の原因は高齢者の脳梗塞の原因とは異なるケースが多いです。
抗リン脂質抗体症候群とは、全身のどこにでも症状が出ますが、とくに若年層は脳梗塞につながる症例が多く見られます。
奇異性脳塞栓症は若年性脳梗塞を引き起こす原因として知られており、現在ではカテーテル治療や心臓手術などの治療法があります。
もやもや病は細い血管が太い血管の血液不足を補うために太くなることがありますが、本来の太さ以上に拡張しすぎて脳出血を引き起こすケースもあります。
一過性脳虚血発作の症状が出たら早期受診が重要
脳梗塞の前触れである一過性脳虚血発作の症状が出たら、すぐに病院を受診しましょう。
一過性脳虚血発作は(TIA)は、手足または顔面の運動障害・感覚障害や、言葉がしゃべりにくくなるなどの症状があります。
とくに知られている症状が黒内障です。片目の視界が白っぽく見えたり、まったく見えなくなったりする特徴があります。
この症状が出た患者の10~15%が3ヶ月以内に脳梗塞を発症したことが明らかになっています。
もし一過性脳虚血発作の症状が出た場合、すぐに病院を受診しましょう。適切な治療を受ければ脳梗塞を予防できる可能性が高いです。
脳梗塞は女性に多い?性別との関係性
脳梗塞は高齢者の発症リスクが高いですが、その中でもとくに女性に多いのです。
なぜ女性は脳梗塞を発症する可能性が高いのか、いくつか理由を調査しました。
女性特有の閉経などが原因であることが分かっています。以下で詳しく解説しますのでご覧ください。
ホルモンバランスの変化
女性ホルモン「エストロゲン」は血管を保護する働きがあります。閉経後は女性ホルモンが減少するため、脳梗塞のリスクが高まるのです。
男性は女性に比べてホルモンバランスの変化が緩やかなため、急激にバランスが変化する女性の方が脳梗塞を発症する可能性が高くなります。
大豆イソフラボンにはエストロゲンと似た作用があるので、積極的に大豆製品を取り入れましょう。
不整脈を発症しやすい
中年期から高齢の方は、男性と比較して不整脈を発症しやすい傾向にあります。
不整脈は心臓に入る血液の動きを妨げるため、脳梗塞になるリスクも高まるのです。
とくに心房細動は脳梗塞が起こる確率が高くなります。規則正しい心臓の動きを乱してしまうので、辛抱内の血液がよどんで血栓ができやすくなるのです。
その血栓が脳に運ばれると、脳梗塞を引き起こす可能性があります。
妊娠高血圧症候群
妊娠中に血圧が高くなる疾患を妊娠高血圧症候群と言います。
軽傷の場合は脳梗塞につながることはありませんが、重症化すると合併症で脳梗塞を発症するケースがあります。
妊娠高血圧症候群になった場合、脳卒中や脳梗塞を発症するリスクが約3倍に上がるので注意が必要です。
全身の臓器の不全につながり、胎児の発育不全や肺水腫などの合併症になる可能性も高くなります。
一般的には妊娠高血圧症候群は分娩後に少しずつ改善されていきます。
女性ホルモン補充療法によるリスク
ホルモン補充療法の副作用で動脈硬化が進行する可能性があるため、注意が必要です。
本来動脈硬化を改善する役割があるエストロゲンですが、閉経して動脈硬化が進んだ状態で女性ホルモンを投与すると、逆に硬化を進行させる恐れがあります。
実際に、2007年10月から2012年3月までに3例の脳梗塞発症事例があります。
2例には以下の危険因子がありました。
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3例とも脳梗塞は軽症でした。
女性ホルモン補充治療は閉経前または閉経後早期に始めることが大切です。閉経後10年または60歳以降の場合、女性ホルモン補充治療は慎重に行われます。
【年代別】脳梗塞を予防するためにやるべきこと
脳梗塞を予防するためにやるべきことを年代別でお伝えします。
すぐに生活に取り入れられる簡単な方法ですので、脳梗塞が心配な方、健康に気を遣いたい方はぜひ実践してください。
若年者
45歳以下の方は以下の方法を実践しましょう。
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若年者が脳梗塞になる原因の多くは運動不足です。運動不足解消のために、軽いウォーキングや散歩を取り入れることがおすすめです。
また、散歩は運動不足解消だけでなくストレス発散もできます。運動の時間が取れない場合は、一駅早く降りて歩いて帰宅するなど工夫しましょう。
高血圧や脂質異常症などの生活習慣病は不規則な食生活や睡眠不足が原因で発症し、脳梗塞につながります。これまでの生活を見直し、生活習慣病や脳梗塞を予防しましょう。
中年者
40代後半~50代の方は以下のことに気を付けましょう。
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お酒好きの方は節酒をしましょう。
アルコールは血を固まりにくくする効果があるため、血栓症のリスクを下げる効果がありますので、少量であれば節酒に問題ありません。
しかし、適量を超えるとアルコールは悪影響を及ぼします。利尿作用があるため水分不足になり血栓ができやすくなるほか、血糖値が急激に上昇します。
1日のアルコール摂取量は20g以内に抑えましょう。
出典:厚生労働省
また、タバコには以下のデメリットがあります。
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以上の3つの症状が脳梗塞を引き起こす原因になりますので、禁煙に努めましょう。
高齢者
60代以上の方は以下の方法を実践して脳梗塞を予防しましょう。
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高齢になると身体を動かすのが困難になり、運動をする習慣がなくなってしまうかもしれません。しかし、ラジオ体操などをするだけで高血圧の改善が見込めます。
年を重ねると食が細くなる傾向にあります。そんなときこそ食事を見直し、栄養価の高い食材を取り入れるようにしましょう。
水分が不足すると血液の循環が滞って血栓ができやすくなり、脳梗塞に繋がります。高齢になると喉の渇きを感じにくくなるため、時間を決めて水分補給をしてください。
寒いと血管が収縮したり、体温を上げようと血圧が上がったりします。それが脳梗塞を発症させる原因になりますので、家や部屋の温度は暖かく保ちましょう。
脳梗塞が疑われる場合は早期受診・治療が重要
脳梗塞の症状が出た場合、すぐに病院を受診しましょう。
脳梗塞の前触れである一過性脳虚血発作は放置しておくと脳梗塞を発症する可能性があります。以下の症状が出たらすぐに受診・治療を開始することが大切です。
代表的な脳梗塞の初期症状は3つあります。
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上記のような症状は急に出てやがて消えていくこともありますが、初期症状が出たら必ず病院を受診し、治療を受けてください。
【まとめ】脳梗塞は若くても発症するリスク有り!早期受診の重要性
今回は、脳梗塞の発症年齢や予防法について解説しました。
年齢を重ねると発症リスクが上がりますが、若年層に発症リスクがまったくないわけではありません。
運動不足やストレスなど、誰にでもあることが発症の原因になり得ます。運動でストレスも発散できますので、軽い運動を毎日しましょう。
脳梗塞は軽傷だと気にしない・放置してしまう方もいますが、重症化してからの治療は困難です。
初期症状が出た場合は早めに病院を受診し、重症化するまえに治療を開始しましょう。