PRP療法による肘治療|テニス肘・ゴルフ肘の痛みに効果的な理由【医師監修】
公開日: 2019.06.29更新日: 2025.08.30
日常生活やスポーツで肘を酷使し、テニス肘やゴルフ肘といった症状にお悩みの方は少なくありません。
湿布や痛み止め、リハビリテーションなど、様々な治療を試してもなかなか改善が見られない場合、PRP(多血小板血漿)療法という新しい治療選択肢が注目されています。
PRP療法とは、患者さま自身の血液から抽出した血小板を用いた再生医療の一つです。
この記事では、PRP療法の特徴や効果が期待できる肘の痛み、具体的な治療の流れについて解説します。
従来の治療法では効果が不十分だった方や、手術は避けたいとお考えの方にとって、PRP療法が新たな希望となるかもしれません。
なお、当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、「再生医療ではどのような治療を行うのか」「再生医療で治療した症例」を無料で配信しています。
「PRP療法で肘の痛みを早く治したい」という方は、ぜひ公式LINEをチェックしてみてください。
目次
PRP療法(多血小板血漿)とは
PRP療法は、患者さま自身の血液を利用して、血小板の濃縮液を用いて行う治療法であり、再生医療の一つです。
PRP療法は肘の痛みを早期に改善し、QOLを改善できる可能性があります。
PRP療法の特徴
PRP療法は、血小板に含まれる成長因子による組織の修復や新しい細胞の成長を促す働きを利用し、自己治癒力を高める治療です。
PRP療法のメリットとデメリットは、それぞれ以下のとおりです。
【PRP療法のメリット】
- 副作用リスクの少ない治療法
PRP療法では患者さまの血液を用いるため、アレルギー反応や拒絶反応の副作用リスクが少ない - 難治性の疾患の改善も期待できる
PRP療法は自然治癒力を高めることで組織の損傷や慢性的な痛みを改善させ、これまで治療が難しかった疾患の改善も期待できる - 手術や入院をせずに治療できる
PRP療法は手術や入院不要で通院治療が可能なため、日常生活を送りながら治療できる
【PRP療法のデメリット】
- 効果には個人差がある
効果が現れる時期や持続する期間、効果の程度については個人差がある - 痛みや腫れが生じることがある
注射を受けた部分に痛みや腫れ、熱感、発赤などの炎症反応を伴うことがある
ただし、これらの症状は一時的なものであり、徐々に症状が軽減する
メジャーリーガーの大谷翔平選手がPRP療法を受けた実績もあり、スポーツの世界では広く知られている治療法です。
PRP療法が早期治療や痛み軽減につながる理由
PRP療法が早期治療や痛み軽減につながるのは、PRP療法で使用する血小板に高い修復力があるからです。
血小板には損傷した組織を修復させるさまざまな物質が多く含まれており、それらが損傷した組織の修復を促します。
具体的には、以下のような作用があります。
- ダメージを受けた組織の修復を促す
- 自然治癒力を高める
- 炎症を抑える
- これらの作用により、PRP療法は早期治療や痛み軽減につながる治療法として注目されています。
PRP療法が効果的な肘の痛み
肘の痛みに悩む多くの方が経験するのが、「テニス肘」や「ゴルフ肘」といった症状です。
これらはスポーツの名称がついていますが、必ずしもスポーツをする人だけに起こるわけではありません。
これらの症状について、次に詳しく見ていきましょう。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
テニス肘の正式名称は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と呼びます。
この症状の大きな特徴は、肘の外側部分に痛みが生じる点です。
主な症状 | 肘の外側の痛み |
別名 | バックハンドテニス肘 |
原因 | ・テニスに限らず、手首や指を繰り返し使う動作 ・雑巾絞り、キーボード入力などによる肘の外側の腱の炎症や微細な断裂 |
痛みを感じる動作の例 | ・物をつかんで持ち上げる ・タオルや雑巾を絞る ・ドアノブを回す ・キーボードを打つ ・ペットボトルのキャップを開ける など |
これらの動作で痛みを感じる場合、テニス肘の可能性があり、PRP療法が症状改善の一つの選択肢となることがあります。
上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)
ゴルフ肘の正式名称は「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)」と呼びます。
その名の通りゴルフのスイング動作で肘の内側に痛みが生じることが多いです。
主な症状 | 肘の内側の痛み |
別名 | ・フォアハンドテニス肘 ・野球肘 |
原因 | ・ゴルフに限らず、手首を内側に曲げる動作 ・物を強く握る動作の繰り返しによる肘の内側の腱の炎症や微細な断裂 |
痛みを感じる動作の例 | ・ゴルフのスイング ・物を強く握って持ち上げる ・ロープを引っ張る ・投球動作 など |
このような症状がある場合、ゴルフ肘の可能性があり、PRP療法が適応となるケースがあります。
肘部管症候群
肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)とは、手のしびれや痛みが起こる病気です。
圧迫や牽引などが肘の神経に加わることで肘部管症候群を発症します。
主な症状 | ・手のしびれや痛み、運動障害 ・指の変形 |
別名 | – |
原因 | ・加齢 ・野球や柔道 ・幼少期の肘の骨折 |
痛みを感じる動作の例 | ・物を握る ・長時間肘を曲げる ・物を持ち上げる ・肘を曲げ伸ばしする ・指を使う細かい作業をする など |
肘部管症候群はデスクワークやドライバーのような職業でよく見られます。
上記の動作でしびれや痛みが見られる場合、肘部管症候群が疑われ、PRP療法で症状を改善できる可能性があります。
PRP療法で期待できる肘の痛みに対する効果
PRP療法は、特にテニス肘やゴルフ肘といった肘の腱付着部の痛みに対して、プロアスリートにもその効果が期待されています。
具体的には、以下のような効果が期待できます。
これらの効果について、以下で詳しく見ていきましょう。
変性した腱や靭帯の再生を促す
テニス肘やゴルフ肘では、肘の腱や靭帯が使いすぎや加齢などによって変性し、損傷していることが痛みの主な原因です。
PRP療法では、多血小板血漿(PRP)に含まれる豊富な成長因子が、これらの傷ついた腱や靭帯の組織修復を強力に促進します。
具体的には、成長因子が細胞の増殖や分化を促し、コラーゲンの産生を助けることで、損傷した組織が再生される過程をサポートします。
これにより、身体が本来持っている自然治癒力が高められ、変性してしまった腱付着部の再生が促されるのです。
難治性のスポーツ障害などで、組織が硬くなり治りにくくなっている場合にも、PRPを注入することで本来の修復力を活性化させ、治癒を目指す効果が期待できます。
関節内の炎症を抑える
PRPに含まれる血小板や白血球から放出される様々な生理活性物質には、炎症を抑える作用(抗炎症作用)があると考えられています。
肘の痛みは、関節内やその周辺組織で起きている炎症が原因となっていることも少なくありません。
PRPを患部に注入することで、これらの成分が過剰な炎症反応を鎮め、痛みの軽減につながることが期待されます。
例えば、テニス肘では上腕橈骨関節内の炎症が痛みの原因の一つとなることがありますが、PRP療法によってこの炎症が抑制されることで、症状の改善が見込めます。
硬くなった組織を柔らかくする
慢性的な肘の痛み、特にスポーツ障害などでは、損傷した組織が修復される過程で線維化し硬くなってしまうことがあります。
このように組織が硬くなると、血行が悪くなったり本来の柔軟性が失われたりして、治癒が遅れたり、痛みが再発しやすくなったりする原因となります。
PRP療法は、このような硬くなった組織に対してもアプローチが可能です。
PRPに含まれる成長因子などが組織の修復プロセスを正常化し、柔軟性を取り戻す手助けをすることで組織の質を改善し、治癒を促進する効果が期待できます。
PRP療法で肘の痛みを治療する流れ
PRP治療を実際に受ける際の一般的なプロセスは、以下のとおりです。
- 1. 診察・検査
医師による診察、症状の確認。必要に応じてレントゲン、エコー、MRI等の検査を行い、PRP治療の適応を判断。治療計画の説明 - 2. 採血
PRP作製のため、患者様自身の血液を採取(通常約10ml~60ml程度) - 3. PRP精製
採取した血液を遠心分離機にかけ、血小板を高濃度に含んだPRPを抽出・作製 - 4. 患部へ注射
精製されたPRPを、肘の痛む部分(損傷した腱付着部、関節内など)に注射 - 5. 治療後ケア
注射後、クリニック内で安静(5分~1時間程度)。帰宅後は医師の指示に従い安静。注射部位に一時的な痛みや腫れが出ることがあるが、通常数日~1週間で軽快。
多くの場合、採血から注射までが当日中に完了し、比較的短時間で治療が受けられるのが特徴です。
肘の痛みに対するPRP療法についてよくある質問
最後に、肘の痛みに対するPRP療法についてよくある質問を紹介します。
PRP療法について気になることがある方は、ぜひ参考にしてください。
PRP療法は肘に効く?
PRP療法はテニス肘やゴルフ肘のような肘の痛みにも効果が期待できます。
従来のリハビリやステロイド治療などで効果が不十分だった症例にも有効な可能性があります。
PRP療法は患者さまの血液を用いるため、アレルギーや拒絶反応のような副作用が少ない点がメリットです。
また、入院や手術が必要なく、点滴や注射などの簡単な処置だけで治療が完結します。
PRP療法で肘を治療するデメリットは?
PRP療法で肘を治療するデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- まれに副作用がある
- 効果に個人差がある
- 保険適用外の自由診療である
PRP療法では点滴や注射を行うため、注射部位の痛みや腫れなどが起こる可能性があります。
また、PRP療法はすべての患者さまに効果があるわけではなく、治療効果には個人差がもあるため、注意が必要です。
そして、PRP療法は基本的に自由診療のため、治療費は全額自己負担となります。
メリットとデメリットをよく理解した上で、PRP療法を受けるか検討しましょう。
PRP療法での肘治療をご希望の方は当院へご相談ください
長引くテニス肘やゴルフ肘など、つらい肘の痛みにお悩みの方にとって、PRP療法は有効な治療選択肢の一つです。
PRP療法は患者さまご自身の血液を利用し、損傷した組織の修復を促す再生医療であり、従来の治療で改善しない症例に新たな希望をもたらす可能性があります。
とくにスポーツへの早期復帰を目指すアスリートにとって、PRP療法によって身体に与える負担が少ない点が魅力でしょう。
ご自身の治癒力を利用して組織修復を促進し、痛みを軽減することで、従来の治療法では難しかった早期復帰の可能性を広げる有望な選択肢になります。
当院リペアセルクリニックでは、PRP療法をはじめとした再生医療について豊富な実績を持っております。
「つらい肘の痛みを早く治したい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックまでご相談ください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設