高齢者の人工股関節置換術後のリハビリ内容とは?歩けるようになるまでの流れを解説
公開日: 2019.05.08更新日: 2025.04.30
股関節の痛みに悩まされる高齢者の方にとって、人工股関節置換術は活動的な生活を送るための手段の1つです。
しかし、手術後は日常生活に戻るため、長期的なリハビリを行う必要があります。
本記事では、高齢者の人工股関節置換術後のリハビリ内容・リハビリの流れと全体像について解説します。
また手術後の注意点やリハビリを継続するための工夫についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
人工関節置換術を検討している方や、ご家族の方のお役に立てる情報をお届けします。
目次
高齢者の人工股関節術後(THA)のフェーズ別リハビリ内容
高齢者の人工股関節術後(THA)のフェーズ別リハビリ内容は、以下の通りです。
今回は、手術後1週目から3か月後にかけてのリハビリ内容を紹介します。
具体的にどのような訓練を行うのか解説していくので、ぜひ参考にしてください。
手術後1週目:安静と日常的な運動を始める
手術後1週目は、安静を基本としつつ、早期離床に向けての準備段階の時期です。
体位変換(体の位置や向きを変える介助)を定期的に行い、褥瘡の予防に努めましょう。
運動は主に足首の曲げ伸ばしや、ふくらはぎのポンプなど、深部静脈血栓の予防運動が中心となります。
ベッド上での簡単な運動から始めて徐々に活動範囲を広げていき、痛みの程度を確認しながら無理のない範囲でリハビリを進めましょう。
また手術後1週目は日常生活動作への導入として、寝返りや起き上がりなどの練習を開始する時期でもあります。
術後の状態や回復具合に合わせて、理学療法士や医師の指示のもと、慎重にプログラムを進めていくことが重要です。
手術後2〜4週目:可動域と筋力回復訓練
手術後2〜4週目は、可動域と筋力回復訓練が中心です。
【主なリハビリ内容】
- 股関節の可動域訓練
- 筋力強化訓練
- 立位・歩行訓練の導入
歩行器や杖を使った訓練を開始し、徐々に歩行距離を伸ばしていきます。
大腿四頭筋や臀筋の強化を目的とした運動療法も、積極的に行う場合が多いです。
日常生活動作に必要な筋力と可動域の改善を目指し、階段昇降などの練習を始めていくケースもあります。
痛みのコントロールと状態観察を継続しながら、退院後の生活を見据えたリハビリを進めていきましょう。
手術後1〜3か月:歩行・日常生活に戻るための練習
手術後1~3か月は、安定した歩行の確立を目指す段階です。
自立して歩けるように、必要に応じて杖の使用を継続しましょう。
加えて買い物・調理・トイレ動作などのADLトレーニングを実施し、退院後の生活をスムーズに送れるよう療法士が支援します。
また、筋力維持・向上のための運動療法を継続し、自主トレーニングについても指導を行います。
この段階のリハビリは、「焦らず、しかしあきらめず」の姿勢が大切です。
日々の小さな変化や前進を前向きに捉え、継続する意志と自己肯定感を持って取り組むことが、回復への大きな力となります。
人工股関節術後のリハビリの流れと全体像
人工股関節術後のリハビリの流れと全体像は、以下の通りです。
術後は簡単なリハビリから始め、徐々に歩行・自立を目指します。
ここからは、2つの段階に分けて解説していきます。
術後リハビリのフェーズ(術後直後~退院後)
術後早期は、疼痛管理と基本的な運動から開始し、徐々に可動域訓練や筋力強化に移行します。
退院前には、日常生活動作(ADL)の練習を集中的に行い、社会復帰に向けた準備を整えます。
退院後は、自宅での自主トレーニングを継続し、定期的な外来リハビリで経過確認を行うフェーズに移行する時期です。
活動的な日常生活の維持と、再手術のリスク軽減を目標にリハビリを継続していきましょう。
一人ひとりの状態や経過に合わせた、段階的かつ継続的なリハビリが重要です。
歩行・自立までの目安
歩行・自立までの目安は、一人ひとりの状態や手術の経過によって異なります。
時期 | 到達目標 |
---|---|
術後〜1週 | 立位保持 |
2〜4週 | 杖を使った歩行訓練開始 |
1〜3か月 | 杖卒業・自立歩行の練習 |
3か月以降 | 屋外歩行の練習 |
人工関節置換術は身体への負担が大きく、回復までに個人差がある点に注意が必要です。
リペアセルクリニックでは、変形性膝関節症に対し、自己脂肪由来の幹細胞を用いた再生医療を提供しています。
この治療法は手術をせずに、損傷した軟骨の修復を促し、痛みを軽減することを目指します。
培養した幹細胞を膝関節に注射することで、軟骨の再生を促し、関節機能の改善が期待できるでしょう。
また当院では再発予防に重点を置いたリハビリ施術を提供するなど、早期の回復に努めています。
変形性ひざ関節症等でお悩みの方は、リペアセルクリニックの電話・メールからご相談ください。
膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
高齢者が人工股関節術後の生活で気をつけること
高齢者が人工股関節術後の生活で気を付けることは、以下の通りです。
歩行や自立が成功しても、思わぬ事故が起こり、再手術するケースは珍しくありません。
再手術や怪我をするリスクを下げるためにも、日常生活の中で対策を行いましょう。
家の中の安全対策
転倒は再手術や更なる怪我のリスクを高めるため、家の中での安全対策が必要です。
可能な限り段差の解消や手すりの設置を行い、移動の安全性を確保しましょう。
また転倒防止のために、滑りにくいマットの活用も有効です。
電気コードやカーペットの端など、つまずきやすいものの整理も忘れないようにしましょう。
さらに明るい照明を確保し、夜間の移動にも配慮することで、より安全な生活を送ることができます。
脱臼を防ぐ動作や生活習慣
術後の生活では、股関節に過度な負担をかけないことが重要です。
【日常で注意をするべき動作】
- 深く腰をかがめる
↳座った状態で足を組む・床にある物を拾う・和式トイレの使用など - 股関節を内側にねじる動作
↳片足立ちで靴を履く・布団の上で方向転換する動作など
特に、深く腰を曲げる、足を大きく開く、内側にひねるなどの動作は避けるように心がけましょう。
また睡眠姿勢や椅子の腰掛け方など、日常の「クセ」にも注意が必要です。
仰向けで寝る、座る際には深く腰掛けすぎない、立ち上がる際には手すりを利用するなどの工夫も重要となってきます。
長時間の同一姿勢も股関節に負担をかけるため、適度に体勢を変えるようにしましょう。
膝の人工関節置換手術のリスク・合併症について詳しく知りたい方は、ぜひこちらを参考にしてみてください。
杖や補助具の使い方
杖や補助具を使用する際は、医師や理学療法士の指示に従い、適切な種類と長さを選ぶことが大切です。
- 術後間もない方(特にバランス不安定な方)
↳歩行器または四点杖 - ゆっくり歩けるが、まだふらつきがある方
↳四点杖または多脚杖 - 屋外でもある程度歩ける方
↳T字杖(一本杖)
歩行時には、杖を体のやや前方に突き出し、杖を突くタイミングと反対側の足を一緒に出すよう意識しましょう
正しい使い方を身につけることで、転倒のリスクを減らし、安全に活動範囲を広げることができます。
また補助具に頼りすぎず、徐々に自力で歩けるように訓練することも大切です。
高齢者がリハビリを続けるための工夫
高齢者がリハビリを続けるための工夫は、以下の通りです。
歩行・自立を成功させるには、日々のリハビリが欠かせません。
1日でも早く歩行・自立した状態になるためには、家族や介護者のサポートが必要です。
ご家族や介護者の協力を得ながら、共に日々のリハビリを継続して、回復を目指していきましょう。
モチベーション維持のポイント
モチベーション維持のためにも、小さな成功体験を積むことを意識しましょう。
小さな成功体験は、リハビリへの更なる意欲に繋がります。
例えば「少しだけ歩けた」「痛みが少し和らいだ」など、些細なことでも家族や友達と喜びを共有しましょう。
そのためにも家族やスタッフの声かけが大切であり、励ましや応援の言葉が大きな支えとなります。
家族や介護者のサポート方法
家族や介護者のサポートは、高齢者が安心してリハビリに取り組み、日常生活に戻る上で欠かせません。
一緒に散歩や体操をすることで、身体的なサポートはもちろん、精神的な支えにもなります。
また生活リズムの見守りも重要な役割です。
規則正しい生活は、身体機能の回復を促し、意欲の維持にも繋がります。
さらに温かい励ましと理解を示すことが、高齢者にとって大きな心の支えとなります。
人工股関節置換術後は、元の生活に戻るために適切なリハビリが重要
人工股関節置換術後は、歩行や自立のためのリハビリが重要になります。
元の生活に戻るためにも、家の中での安全対策や生活習慣、家族やスタッフのサポートが欠かせません。
股関節や腰、脚に何らかの異変を感じた際は、放置せずにできるだけ早く医療機関を受診し、医師の診断と今後の具体的なアドバイスを受けることが重要です。
リペアセルクリニックでは、再生医療とリハビリを組み合わせた、より積極的な機能回復支援を提供しています。
自己の細胞を活用した治療法は、将来的な関節の健康維持に貢献できる可能性があります。
変形性ひざ関節症の痛みに悩まされている方は、ぜひリペアセルクリニックまでご相談ください。

監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師
略歴
2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業
2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医
2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科
2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科
2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科
2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長