野球肩 | 種類や原因、治療法も解説
公開日: 2019.09.10更新日: 2024.11.19
目次
野球肩とは
野球肩とは、腕を上から強く振る動作に関連して、肩の痛みを発症する肩関節の疾患です。
野球の投球動作によって生じるケースが多いため野球肩と呼ばれますが、テニスや水泳などの他競技でも発症することがあります。
つまり、腕を頭の上まで挙げて振りかぶる「オーバーヘッドスポーツ」をおこなう場合に発症しやすい疾患です。
野球肩の症状には、肩の痛みのほか、血行障害なども含まれます。
「投球肩」「投球障害肩」と呼ばれることもあり、治療をせず放置していると症状が悪化して手術が必要になる可能性もあります。
野球肩の種類
野球選手の肩の怪我の主な原因は「野球肩」によるものであると考えられます。
野球肩とは、野球の投球動作のように腕を大きく振る動作を繰り返すことにより、肩関節に関わる腱や筋、骨が損傷や炎症を起こしている状態の総称です。
野球肩には、以下のようにいくつかの種類があります。
【野球肩の種類】
- 腱板損傷
- 上腕骨骨端線離開(リトルリーグショルダー)
- 動揺性肩関節症(ルーズショルダー)
- 肩甲上神経損傷
- インピンジメント症候群
腱板損傷とは
肩の中にある筋肉の腱の複合体である腱板が損傷を起こしている症状で、日常生活における肩の痛みにより、生活の質を大きく落とす可能性が高いです。
上腕骨骨端線離開とは
「リトルリーグショルダー」とも呼ばれ、成長期に起こる投球障害です。成長期における過度の投球により成長軟骨が損傷することで、投球時や投球後に痛みを生じます。
動揺性肩関節症とは
別名「ルーズショルダー」とも呼ばれる症状です。上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯などが先天的に緩い状態にあり、その状態で肩を酷使することで周囲の組織を損傷してしまい、肩の痛みや不安定感を覚えます。
肩甲上神経損傷とは
棘下筋を支配する肩甲上神経が投球動作により引っ張られる、或いは圧迫されるなどによって損傷を起こし、肩の痛みや肩の疲労感を覚えます。
インピンジメント症候群とは
野球肩の中で最も多くみられる症状で、靱帯や肩峰に上腕骨頭が衝突することで腱板が挟まれ、炎症を起こすことで肩の痛みを生じます。
野球肩の原因
野球肩の主な原因は、投球動作の繰り返しによる肩の酷使です。ボールを速く正確に投げる技術を身につけるため、投球動作を繰り返すことで肩関節に過剰な負担が蓄積するため、肩周辺の筋肉が緊張し、血行不良や炎症が発生します。
また、不適切な投球フォームや肩周りの筋力不足も一因となり、肩の腱や関節、神経に負担がかかるため、さまざまなタイプの肩の痛みや障害を引き起こすのです。
野球肩の治療
保存療法(リハビリテーション)
野球肩の治療として、基本的に多くのケースで選択されるのが保存療法(リハビリ)になります。症状によって行う期間は異なりますが、数週間〜数ヶ月の投球中止(ノースロー)期間を設けることで、痛みが軽減されることが多いです。
保存療法中は投球動作をしばらく中止し、全身のコンディションを整えることが重視されます。特に、肩以外の体幹や下半身の柔軟性を向上させることが、再発防止の重要なポイントです。
そのため、肩の痛みを引き起こす原因を突き止め、その原因に対処するためのリハビリを行います。リハビリの具体的な内容は、ストレッチや筋力トレーニング、投球フォームの修正です。また、物理療法(アイシングや電気治療、超音波治療)も組み合わせて治療を進めることにより、再発を防ぐことを目指します。
このように、保存療法は手術を避け、リハビリを通じて肩の状態を改善しながら治療を進めていくアプローチ方法なので、多くの野球選手にとって第一選択となっています。
手術療法
野球肩の手術療法は、保存療法やリハビリでは十分に改善せず、肩の痛みが強く日常生活に支障が出る・スポーツを継続したい・早期復帰を希望するなど、必要に応じて検討されます。
手術の方法としては、損傷した肩関節における組織の修復を促す関節鏡視下手術のデブリードマンや、肩峰の骨切除する除圧術、通常の手術である直視下手術、腱板の断裂がある場合には腱板の縫合といったものが挙げられます。
再生医療
保存療法に必要な安静期間は、症状次第で大きく異なり、場合によっては1年以上の期間を使っても症状を改善できず、手術を選択する結果になることもあります。
しかし、手術にはリスクがつきまといます。
一方、「再生医療」は手術を必要とせず、従来の保存療法よりも短い期間でスポーツに復帰できる可能性を秘めた治療法です。
まだまだ日本では浸透していない治療法であり、利用できる医療機関は限られますが野球選手にとってメリットの多い治療法となります。
野球肩の予防
野球肩の予防には、正しい投球フォームを習得や、全身の筋肉強化、肩の可動域を広げるストレッチや肩周りの凝りや血流改善を意識することが非常に重要です。
肘が下がっていたり体を開くタイミングが早かったりと、体に負担のかかるフォームでの投球は、肩に負担がかかってしまうため、野球肩発症の原因になってしまいます。正しい投球フォームを身につけて、肩にかかる負担を減らしましょう。
投球に必要な筋肉である、肩や肩甲骨周りの筋肉など、全身の筋肉不足も肩への負担になります。インナーマッスルを鍛えるトレーニングや肩の可動域を広げるストレッチもあわせておこなうのが、予防策としておすすめです。
また、初期段階の野球肩では、投球数を制限し、肩に過度な負担をかけないようにすることも予防の一環として推奨されています。自分に合った投球数や配分を理解し、野球肩を予防するようにしましょう。
肩周りの凝りや血流改善には、肩や首の血行を促進するための磁気ネックレスやウェア、定期的なマッサージも肩のコンディション維持に役立つことが知られています。これらの取り組みを組み合わせて、野球肩のリスクを最小限に抑えることが大切です。
まとめ
野球肩を発症させないためには、無理な投球をしすぎない、肩への負担を減らすためのフォームチェックやストレッチ、筋力トレーニングの実施などが大切です。日々、肩に負担をかけないことを意識して、故障リスクを減らすようにしてください。
万が一発症してしまった場合は、軽度の症状であれば数週間の安静で回復が期待できることもあるため、重篤化させないように早期に医療機関を受診して、適切な治療を受けるようにしましょう。