前十字靭帯断裂は手術しないとどうなる?リスクや治療法について医師が解説
公開日: 2019.09.04更新日: 2025.06.02
前十字靭帯を断裂した場合、基本的に手術が推奨されます。
しかし、経済的、時間的な問題から手術に対して不安やためらいがある方もいるのではないでしょうか。
本記事では、前十字靭帯断裂と診断されて手術をしなかった場合のリスクについて解説します。
前十字靭帯断裂を根本的に治療できる可能性のある再生医療についても解説しています。
目次
前十字靭帯断裂で「手術しない」場合に考えられること
前十字靭帯断裂で手術をしなかった場合、二次的なリスクや生活で支障が生じるケースがあります。
4つの影響について、詳しくお伝えします。
膝の不安感が残りやすい(膝崩れ)
損傷が小さい場合は装具を使って治療をしますが、靭帯の機能は手術をしなければ再生しません。
前十字靭帯が断裂すると、膝が外れるような不安感が残ります。
損傷の程度が軽度で不安定さがほとんどない場合には、サポーターなどを用いた装具療法によって対処することもありますが、不安定さが生じる場合には手術以外の方法で回復は見込めません。
とくに運動をするときに膝崩れを起こす原因となり、さらなる怪我につながる可能性があります。靭帯断裂は自然治癒する可能性がきわめて低いため、運動を続ける場合は手術を検討しましょう。
半月板や軟骨の二次的な損傷リスクがある
前十字靭帯が断裂すると、半月板や膝関節面の軟骨に負担がかかって損傷のリスクが高まります。スポーツをするとさらに半月板・軟骨の損傷リスクが上がります。
関節がずれる動きが繰り返されることによって、軟骨や半月板が二次的に損傷する危険性が高くなってしまうのです。
踏み込んだり、ジャンプの着地などでとくに二次損傷の確率が高まるため、適切な治療と手術は必要です。
将来的に変形性膝関節症へ進行してしまう可能性がある
前十字靭帯を断裂すると、膝への負担が増加して、膝が異常な動きをしてしまいます。
膝関節への負担が大きくなると関節軟骨が摩耗して、将来的に変形性膝関節症を発症する可能性があります。
前十字靭帯の手術をせずに放置しておくと変形性膝関節症のリスクが高まるため、手術が推奨されています。
スポーツ活動や日常生活で支障が出る
前十字靭帯断裂の手術をしないと、スポーツ活動に支障がでるだけでなく日常生活にも影響を与えます。
不安定感が残るため、膝に負担がかかる動きが困難になるほか、痛みで走ることもままならなくなるケースがあります。
また、放置するとスポーツ活動に伴って膝くずれを繰り返し、スポーツ活動の継続が困難になるばかりでなく、膝関節機能が低下を招くことも。
日常生活でも痛みによって立ち上がる、階段の上り下りなどが難しくなる可能性があるのです。
前十字靭帯断裂の治療法
前十字靭帯断裂の治療法は、主に3つあります。
3つの治療方法について、詳しく解説します。
保存療法
保存療法では、主に以下の方法で回復を狙います。
- 患部の安静・冷却
- 運動制限
- 減量
- サポーターなどの装具で固定
保存療法では、運動や仕事の制限を行い治療をします。
また、体重が重い場合は食事制限などで膝への負担を軽減します。
保存療法は痛みや腫れの軽減が目的で、根本的な治療は難しいです。
手術療法
前十字靭帯断裂の手術は靭帯再建術と呼ばれていて、断裂した靭帯をほかの腱で置き換える手術が行われます。
太ももにある腱・ハムストリングスと、膝蓋骨の下にある腱・膝蓋腱を取るケースがあります。それぞれの腱で特徴が違うため、取る腱は医師と相談して決定されます。
関節鏡を用いて手術するため、傷口が小さく済むのがメリットです。
個人差はありますが、スポーツに復帰できるまで平均で7~8ヶ月※ほどかかります。
参考:日本鋼管病院・こうかんクリニック「十字靭帯(ACL)再建手術について」
再生医療
前十字靭帯断裂の手術法として、再生医療の選択肢もあります。
再生医療は患者さまの細胞や組織を利用して患部を治療するため、拒否反応のリスクが低い安全な手術法として注目されています。
また、再生医療は注射をするだけなので、手術や入院の必要がありません。
とくに関節鏡の手術だと、新たな膝の痛みが出てしまう可能性がありますが、再生医療であればそのようなリスクも少ないのが特徴です。
前十字靭帯は自然治癒しない
前十字靭帯を断裂してしまった場合、自然治癒する確率はきわめて低いと言えます。
自然治癒を期待して安静にしていても、膝の不安定感や二次的な損傷のリスクが上がります。放置して生活していると、日常生活にも影響を与える可能性があります。
根本的な治療のためには、手術か再生医療を受ける選択肢しかありません。
靭帯断裂で負担の少ない・根本的な治療として再生医療をご検討ください
靭帯断裂の手術は小規模でも、皮膚を切開する必要があります。
その点、再生医療は皮膚を切開する必要もなく、注射だけで治療ができるので、身体への負担が最低限で済みます。
また、保存療法では難しい根本的な治療が可能です。
さらに、再生医療は外科的な手術と比較してリハビリ期間が短くなりますので、早期のスポーツ復帰が期待できます。
保存療法で効果が見られなかった方、靭帯再建術に不安がある方は、再生医療をご検討ください。
スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。
前十字靭帯断裂を手術せず放置するのはリスクがある
前十字靭帯断裂は自然治癒しません。手術を受けないと、再受傷や将来の変形性膝関節症発症リスクがあります。
前十字靭帯断裂の手術は、靭帯再建術と再生医療の選択肢があります。
靭帯再建術は皮膚を切開して別の腱を利用するのに対し、再生医療は患者さま自身の細胞を利用した治療法です。
負担が少なく、根本的な治療が期待できるため、前十字靭帯断裂の治療法でお悩みの方は当院「リペアセルクリニック」にご相談ください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設