立ち仕事の方が前十字靭帯断裂を発症した場合の対処法を紹介
公開日: 2019.07.02更新日: 2025.07.31
サッカーなどのスポーツ中に転んだり、プレーヤー同士がぶつかったりすると、前十字靭帯断裂になる可能性があります。
前十字靭帯断裂は強い痛みを伴うため、「立ち仕事が辛い」と感じている方もいらっしゃるでしょう。
飲食店の厨房や建設現場などは立ち仕事が多く、前十字靭帯断裂になった場合は早めの治療が必要です。
症状が悪化すると歩行が困難となり、手術しか選択肢がなくなってしまうので、膝に負担をかけないリハビリも実践してみましょう。
本記事では、前十字靭帯断裂の特徴や放置した場合のリスク、日常的なケア方法などをわかりやすく解説します。
手術不要の治療法も紹介しますので、膝を切らずに治したい方はぜひ参考にしてみてください。
目次
立ち仕事に影響する前十字靭帯断裂とは?
前十字靭帯断裂とは、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ前十字靭帯が断裂し、痛みや腫れを引き起こす症状です。
スポーツ中にプレーヤー同士がぶつかり、膝が可動域を超えて曲がったときや、ジャンプ後の着地で膝に強い衝撃が加わると、前十字靭帯断裂になる場合があります。
前十字靭帯断裂が疑われる場合は、受傷時の断裂音や以下の症状をチェックしてみましょう。
- 受傷時に「ブチッ」という断裂音が聞こえた
- 受傷直後から強い痛みと腫れが生じている
- 膝に内出血がある
- 膝が不安定になり力が入りにくい
- 膝の曲げ伸ばしが難しくなった
- 膝が抜けてしまうような感覚がある(歩行時の方向転換や階段の昇降時など)
土木や建設、飲食などの業界は立ち仕事が多いため、膝の痛みが長時間続くと、精神的にも大きなストレスがかかります。
痛みを我慢して立ち仕事を続けた場合、膝の変形を引き起こす可能性もあるので要注意です。
「膝崩れ」などの自覚症状があるときは、早めに医療機関の診察を受けておきましょう。
立ち仕事の方が前十字靭帯断裂を発症した場合の放置リスク
立ち仕事は膝にかかる負担が大きいため、前十字靭帯断裂を放置すると、以下のリスクが発生します。
- 強い痛みで立ち仕事が困難になる
- 室内の移動や階段の昇降が困難になる
- 毎日の通勤が苦痛になる
- スポーツに復帰できない(プロ・アマを問わず)
- 旅行などのレジャーを楽しめない
- 個人経営の飲食業などは廃業の恐れがある
- 治療方法が手術に限られてしまう
前十字靭帯には血管があまり通っておらず、栄養が届きにくいため、自然な回復は期待できません。
立ち仕事を続けると前十字靭帯の損傷が進行し、完全断裂する恐れがあります。
プロのアスリートは選手生命に関わるため、収入が途絶えてしまう可能性も。
ご自身の技量で成り立っている飲食店など、代替が利かない職業の場合は、経営悪化や廃業リスクもあるので要注意です。
前十字靭帯断裂の症状が重くなると、治療方法が外科手術に限定される場合があるため、2週間程度の入院も必要になります。
仕事や家事を休めない方は、前十字靭帯断裂を放置しないように注意しましょう。
仕事を続けながら膝を守る実践的な方法
立ち仕事を続けながら膝を守りたい場合は、以下の方法を実践してみましょう。
サポーターなどの活用を保存治療といい、前十字靭帯断裂の悪化を防止できるため、初期段階の症状に効果的です。
具体的な治療方法は以下のようになりますが、患者の年齢や症状のレベルなどを考慮するので、必ず医師の指示を受けておきましょう。
インソール・サポーターなどのサポート用品の活用
前十字靭帯断裂を治療する場合、インソール(靴の中敷き)によって足部へアプローチする方法があります。
足部のアーチ形状が崩れていると、膝にかかる負担が重くなってしまうため、前十字靭帯断裂の進行を早めてしまいます。
インソールは膝の負担となる衝撃を吸収・分散するので、膝痛の緩和に効果的です。
ただし、既製品のインソールは足裏の形状に合いにくいため、整形外科などの診断を受け、オーダーメイドしてもらうほうがよいでしょう。
また、膝が抜ける感覚がある場合は、膝用のサポーターもおすすめです。
サポーターで膝関節の動きを固定すると、安定感が増すため、立ち仕事を続けやすくなります。
外科手術の治療を避けたい場合は、早めにサポート用品を活用してみましょう。
正しい姿勢と膝に優しい動作のポイント
膝にかかる負担を軽くしたい場合は、姿勢や動作の改善も必要です。
以下の姿勢や動作を習慣化すると、前十字靭帯断裂の進行を防ぐ効果があり、膝の痛みも和らぎます。
姿勢や動作の改善ポイント | 具体的な改善内容 |
---|---|
立つときの姿勢 |
・膝を真っすぐ伸ばす ・重心を意識して左右のバランスをとる ・背筋を伸ばして立ち、顔は前方に向ける |
座るときの姿勢 |
・背筋を伸ばす ・膝を深く曲げるあぐらや正座、横座りを避ける |
歩くときの姿勢 |
・背筋を伸ばして前を見る ・猫背にならないよう注意する |
立ち座りの動作 |
・ゆっくりと立ちあがる ・床や椅子から立ち上がるときは手で体重を支える ・立ち座りが長時間になるときは適度に姿勢を変える |
歩くときの動作 |
・膝を伸ばし、大きな歩幅で歩く ・腕を振って歩く ・お腹に力を入れる |
猫背がクセになっていると膝に負担がかかりやすいので、立つときや歩くときは背筋をまっすぐ伸ばしましょう。
座るときは基本的に椅子を使い、正座やあぐらを避けると、前十字靭帯断裂の悪化を防止できます。
寝るときは仰向けになり、膝の下にクッションを入れて痛みを和らげましょう。
休憩・アイシングなど負担を軽減する日常ケア
前十字靭帯断裂は膝関節の腫れや内出血を引き起こす場合があるため、日常的なケアには休憩やアイシングもおすすめです。
休憩や患部のアイシングなどをRICE処置といい、以下の効果を期待できます。
RICE処置 | 具体的な処置方法 |
---|---|
安静(Rest) | 膝関節が動かないように固定し、安静にする |
冷却(Icing) | 氷や冷却パックなどで膝関節を冷やし、腫れや内出血を抑える |
圧迫(Compression) | 膝関節を包帯などで圧迫し、腫れや内出血を抑える |
拳上(Elevation) | 膝関節を心臓より高い位置に上げ、血液循環を調整して腫れを軽減する |
立ち仕事が長くなるときは適度な間隔で休憩を取り、膝を冷やすと痛みが緩和されます。
ただし、RICE処置は応急処置に過ぎないため、根本的な治療にはなりません。
休憩やアイシングで症状が改善されない場合は、医療機関で治療を受けておきましょう。
前十字靭帯を断裂した際の治療法【立ち仕事の場合】
前十字靭帯断裂は自然治癒が難しいため、立ち仕事を続ける場合は以下の治療法を検討する必要があります。
外科的手術や運動療法、再生医療には以下の特徴があるので、医師と相談の上、自分に合った治療法を選択しましょう。
.外科的手術
前十字靭帯断裂の外科的手術には以下の種類があり、保存療法に効果がなかったときの選択肢になります。
手術の種類 | 特徴 |
---|---|
靭帯修復術 |
・前十字靭帯の断裂を縫合する手術 ・部分断裂で断裂端が明確な場合の治療法となる ・膝関節の安定性を十分に確保できない ・手術は1~2時間程度 ・入院期間は2~4週間程度 |
靭帯再建術 |
・自分の膝蓋腱などを患部に移植し、新たな前十字靭帯をつくり直す手術 ・提供者の腱を使う場合もある ・体に負担がかからないよう、一般的には内視鏡を用いる ・手術は2時間程度 ・入院期間は1~2週間程度 |
現在は靭帯修復術があまり用いられておらず、靭帯再建術によって治療するケースが一般的です。
入院期間の目安は1~2週間ですが、術後は6カ月~1年程度のリハビリ期間が必要です。
手術に抵抗がある方や、入院を避けたい方は、以下の運動療法や再生医療を検討してみるとよいでしょう。
運動療法
運動療法にはストレッチと筋力トレーニングがあり、痛みの緩和などを期待できます。
運動療法の種類 | 特徴 |
---|---|
ストレッチ |
・膝の柔軟性を高めて負担を軽くする ・膝の可動域を広くする・主に足首を回す、太ももやふくらはぎを伸ばす、膝の曲げ伸ばしなどのストレッチを行う |
筋力トレーニング |
・筋力アップにより膝の安定性を高くする・主に太ももの筋力を高めるため、椅子に座って片脚を伸ばす動作や、スクワットなどを行う |
前十字靭帯の断裂後はRICE処置を行い、痛みや腫れが引いたら運動療法に移行しましょう。
両脚の筋力に大きな差が出ないよう、バランスディスクなどを使ったトレーニングも重要です。
ストレッチや筋力トレーニングはすぐに効果が出ないため、辛抱強く続けていきましょう。
再生医療という選択肢
再生医療とは、幹細胞の修復能力を活用し、損傷した患部を元どおりにする治療法です。
治療の際には患者の身体から脂肪を採取し、幹細胞を1,000万~1億個に増やして患部に注入します。
幹細胞の働きによって前十字靭帯が修復されると、立ち仕事やプロスポーツへの復帰も可能です。
再生医療には以下の特徴があるため、前十字靭帯断裂の根本治療を目指したい方は、選択肢に入れてみてもよいでしょう。
- 脂肪は米2~3粒程度を採取するため、体の負担が軽い
- 患者自身の幹細胞を活用すると、拒絶反応などのリスクを低減できる
- 投与する幹細胞が多くなるほど修復力が高くなる
- 骨や血管の病気、免疫疾患などにも活用できる
- 通院のみで治療できる
手術や入院を避けたい方におすすめの治療法ですが、自分に合うかどうかを判断する必要があるので、まず専門医に相談してみましょう。
リペアセルクリニックは再生医療を導入しており、プロスポーツ選手にも活用されています。
具体的な治療プランなどを知っておきたい方は、電話やメールの無料相談をご活用ください。
手術をしない新しい治療「再生医療」を提供しております。
前十字靭帯断裂で立ち仕事に復帰する際は靭帯再建手術を検討しよう
前十字靭帯断裂を受傷したときは、休憩・冷却などの方法で膝をケアし、早めに専門医の診察を受けましょう。
初期段階の痛みはリハビリや運動療法で緩和できますが、立ち仕事に復帰する際は、靭帯再建手術を検討する必要があります。
断裂した前十字靭帯をつくり直し、ストレッチや筋力トレーニングを続けると、膝の機能が徐々に回復します。
また、手術に抵抗があり、仕事や家事を休めない場合は、再生医療も選択肢の一つです。
本格的な治療を開始する前に、外科手術や再生医療の特徴を理解し、納得できる治療方法を選択してみましょう。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設