鵞足炎が高齢者に多い理由は?治療法や繰り返す場合の対処法について解説
公開日: 2019.06.08年配の方や運動をされる方に多い膝の痛みの原因のひとつに「鵞足炎(がそくえん)」があります。
階段の上り下りや長時間の歩行で膝の下に痛みを感じる、といった症状でお困りの方は、この記事がお役に立つかもしれません。
本記事では、鵞足炎が高齢者に多い理由や原因や治療法について詳しく解説します。
鵞足炎の理解を深め、適切な対処法を知ることで、膝の痛みから解放され、快適な日常生活を取り戻しましょう。
目次
鵞足炎とは?高齢者に多い膝の症状の1つ
鵞足炎は、膝の内側にある「鵞足(がそく)」と呼ばれる部位に炎症が起こる症状です。
鵞足とは、半腱様筋、薄筋、縫工筋という3つの筋肉の腱が集まって付着する部分で、その形がガチョウの足に似ていることから名付けられました。
高齢者に多く見られるこの症状は、膝の内側に鋭い痛みを引き起こします。
とくに階段の上り下りや長時間の歩行、膝を曲げた状態から伸ばすときに痛みが強くなることが特徴です。また、膝の内側を押すと痛みを感じる場合もあります。
鵞足炎は変形性膝関節症と併発することも多く、高齢者の膝トラブルとして見逃せない症状の一つです。
鵞足炎の原因
鵞足炎は年齢によってその発症原因に違いがあり、大きく以下の2つに分けられます。
ここでは高齢者と若年者それぞれの発症原因について詳しく解説します。
高齢者が鵞足炎を発症してしまう原因
高齢者が鵞足炎を発症する主な原因は、次の通りです。
- 加齢に伴う筋力低下による膝関節の不安定化
- O脚変形による膝内側へのストレス
- 変形性膝関節症の併発
また、長年の不適切な歩行パターンが鵞足周辺の滑液包に繰り返し刺激を与え、炎症を引き起こします※。
※出典:National Library of Medicine
体重増加も膝関節全体への負担を増やし、鵞足部分の炎症リスクを高める重要な要因です。
若年者が鵞足炎を発症する原因
若年者の鵞足炎は以下のようなスポーツ活動が原因となります。
- 急激なトレーニング量の増加
- 不適切なフォームでの運動
- オーバーユース
- ストレッチ不足 など
とくにハムストリングスの硬さがあるアスリートや、膝を頻繁に曲げたり捻ったりするスポーツをする人に多く見られます。
また、直接的な打撲や内側半月板損傷なども鵞足炎のリスク要因となります。
鵞足炎の痛みを緩和させる方法
鵞足炎による痛みや炎症は適切な治療によって緩和が期待できます。
本章では、以下の2つを紹介します。
治療は症状によって異なりますが、これらの治療法は併用されることが一般的です。
抗炎症剤や注射などの投薬治療を受ける
鵞足炎の治療では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬や外用薬が処方されます。
内服薬は、炎症を抑え痛みを軽減するロキソニンやボルタレンなどが一般的です。
外用薬は患部に直接塗布して局所的な効果を発揮します。
症状が強い場合はステロイド注射も選択肢となり、鵞足部の滑液包に直接薬剤を注入することで即効性のある抗炎症効果が得られます。
理学療法を受ける
理学療法では超音波療法やイオン導入などの物理療法により深部の炎症を抑え、血行を促進します。
また、大腿後面や内側の筋肉のストレッチで柔軟性を高め、鵞足に負担をかけている筋肉のバランスを整えるエクササイズを行います。
さらに、適切な歩行パターンの指導や姿勢矯正のアドバイスも提供され、日常生活での膝への負担を減らす工夫が指導されます。これらの総合的なアプローチで症状緩和と再発防止が期待できます。
鵞足炎を繰り返して発症する際の対処法
鵞足炎は一度治療しても繰り返し発症することが多い厄介な症状です。
再発を防ぎ、症状が現れた際に早期対応するためには、以下のような対処法を行います。
日常的なケアと適切な予防策が重要です。ここでは、鵞足炎が繰り返し発症する場合の効果的な対処法を3つ紹介します。
アイシングを施す
鵞足炎の痛みや炎症が再び現れた場合、最初に行うべき対処法がアイシングです。
痛みを感じたら直ちに氷や冷却パックを患部に当て、1回につき15〜20分間、1日3〜4回程度繰り返します。
アイシングにより血管が収縮し、炎症を抑える効果があります。
とくに運動後や長時間の歩行後には予防的にアイシングを行うことで、症状の発現を抑えられます。
タオルなどで包んだ冷却パックを使用し、直接肌に当てないよう注意しましょう。
サポーター装着やストレッチで予防する
鵞足炎の再発予防には、膝サポーターの装着と定期的なストレッチが効果的です。
膝の内側を適度に圧迫するサポーターは、鵞足部への負担を軽減し、正しい膝の動きをサポートします。
また、太もも後面や内側の筋肉の柔軟性を保つためのストレッチを毎日行うことで、鵞足への過度な負荷を防ぎます。
とくに運動前後のストレッチは硬くなった筋肉をほぐし、炎症リスクを大幅な減少が期待できます。
再生医療による治療を受ける
何度も繰り返す鵞足炎に対しては、再生医療が新たな選択肢となっています。
再生医療のひとつ、PRP(多血小板血漿)療法では、血液から抽出した成長因子を含む血小板を患部に注入します。
患者さま自身の血液を用いるため、副作用のリスクが小さいのが特徴です。
再生医療に関して詳しくは、以下のページをご覧ください。
膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。
【まとめ】鵞足炎の痛みが続くなら早急に医療機関を受診しよう
鵞足炎は、膝の内側にある「鵞足」と呼ばれる部位に炎症が起こる症状で、特に高齢者に多く見られます。
原因は年齢によって異なり、高齢者では筋力低下やO脚変形、変形性膝関節症などが主な原因となります。
治療法としては、NSAIDsなどの抗炎症薬やステロイド注射による投薬治療、超音波療法やストレッチなどの理学療法が一般的です。
再発を防ぐためには、アイシングの実施や膝サポーターの装着、定期的なストレッチが効果的です。
繰り返し発症する場合は、PRP療法などの再生医療も選択肢となります。
鵞足炎の痛みが長く続く場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診して、適切な治療を受けましょう。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設