脊髄損傷でも歩ける?歩行可能なレベルやリハビリテーション・治療法について解説

脊髄損傷でも歩ける?歩行可能なレベルやリハビリテーション・治療法について解説
公開日: 2026.03.31

「脊髄損傷になったらもう歩けないのだろうか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

脊髄損傷は、損傷の程度や部位によって症状が大きく異なります。

一部の運動機能や感覚が残存している「不完全損傷」であれば、適切なリハビリテーションや治療によって歩行機能が改善する可能性があります。

本記事では、脊髄損傷でも歩ける可能性をはじめ、重症度別・レベル別の違いやリハビリテーションについて詳しく解説します。

また、従来の治療では改善が見られない場合、「再生医療」も治療の選択肢の一つになります。

再生医療とは、患者さまの細胞や血液を用いて、損傷した神経の再生・修復を促すことで、根本的な改善を目指す治療法です。

当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の情報を配信していますので、ぜひ参考にしてください。

脊髄損傷でも歩ける?重症度別の可能性

脊髄損傷でも歩ける可能性は、損傷が「不完全損傷」か「完全損傷」かによって大きく異なります。

本章では、脊髄損傷の重症度別に歩行回復の可能性について解説します。

以下でそれぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

不完全損傷:歩ける可能性あり

不完全損傷とは、脊髄が一部傷ついているものの、脳からの指令を伝える神経回路が完全には途切れていない状態を指します。

感覚や運動機能の一部が残っているため、受傷後の適切な治療と集中的なリハビリテーションによって、自立歩行や装具を用いた歩行を目指せる可能性があります。

特に受傷後6ヶ月程度までの「回復期」に集中的にリハビリテーションを行うことで、残された神経が新たなネットワークを築く「可塑性(かそせい)」が促され、機能改善が見られるケースも少なくありません。

歩行の自立度は損傷レベルによりますが、杖や歩行器を活用しながら、自分の足で歩けるチャンスが残されているといえるでしょう。

完全損傷:歩ける可能性は低い

完全損傷では、損傷部位より下の感覚や運動機能がほぼ完全に失われるため、自力歩行の回復は非常に難しいとされています。

下肢の筋肉を自分の意思で動かすことができないため、従来のリハビリテーションだけで歩行を取り戻すことは非常に困難です。

しかし、近年の医療技術の進歩によって、歩行機能の改善が期待できる場合があります。

ロボットスーツを用いた歩行訓練や、損傷した神経の修復を試みる再生医療などの組み合わせによって、わずかな機能回復やQOL(生活の質)の向上が期待できるケースもあります。

自力歩行だけでなく、ロボット支援による立ち上がりや移動にまで広がりを見せているため、希望を捨てずに治療の選択肢を探ることが重要です。

脊髄損傷の歩行可能なレベルについて

脊髄損傷による歩行への影響は、脊髄のどの高さ(レベル)が損傷されたかによって大きく異なります。

本章では、頸髄・胸髄・腰髄の各レベルにおける歩行の可能性について解説します。

以下でそれぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

頸髄損傷

頸髄損傷は、脊髄損傷の中でも深刻な症状を引き起こしやすく、多くの場合で車椅子生活や介助が必要となるため、自力での歩行は非常に難しいです。

頸髄はC1からC8までのレベルに分かれており、損傷される位置が脳に近い(高位)ほど影響範囲が広くなります。

損傷レベル 主な症状・残存機能 歩行の可能性
C1〜C4 ・四肢麻痺/呼吸筋の麻痺
・人工呼吸器が必要になる場合がある
歩行は困難
C5〜C6 ・肩/肘の一部の動きが保たれる
・手の機能は大きく制限される
歩行は困難
C7〜C8 ・肘の伸展や手指の動きが可能
・自立度は高まるが下肢麻痺あり
非常に限定的

上記のように、頸髄損傷では損傷レベルが高位であるほど全身への影響が大きく、歩行機能の回復は難しい状態となります。

ただし、不完全損傷の場合は手に麻痺が残りつつも歩行ができるケースがあるため、損傷の程度を正確に評価したうえで治療方針を立てることが重要です。

胸髄損傷

胸髄損傷では下半身に麻痺(対麻痺)が生じ、車椅子生活が一般的となりますが、損傷レベルや程度によっては装具や杖を使った歩行が可能になるケースもあります。

胸髄はT1からT12までのレベルがあり、上肢の機能は保たれるものの、体幹や下肢に大きな影響が出ます。

損傷レベル 主な症状・残存機能 歩行の可能性
T1〜T6 ・体幹の筋力低下/座位の不安定
・下半身麻痺/発汗・体温調節障害
歩行は困難
T7〜T10 ・上半身の安定性はある程度保たれる
・車椅子操作や移乗動作の自立が可能
装具を使った歩行訓練が可能な場合がある
T11〜T12 ・腰に近い部位の不完全損傷であれば、下肢に一部機能が残存する場合がある 装具や杖を用いて歩ける可能性がある

腰に近い部位の損傷では下肢機能が一部残りやすく、訓練により装具や杖を用いた歩行が期待できるため、早期からの積極的なリハビリテーションが大切です。

腰髄損傷

腰髄損傷は主に下半身に影響が出ますが、頸髄損傷や胸髄損傷と比べると影響範囲が狭く、リハビリテーションや装具の使用によって歩行が可能になるケースが比較的多いとされています。

腰髄はL1からL5までのレベルに分かれており、各レベルでの症状と歩行の可能性は、以下のとおりです。

損傷レベル 主な症状・残存機能 歩行の可能性
L1〜L2 ・股関節や膝の動きが制限される
・腰から大腿にかけての感覚低下
杖や歩行器などの補助具が必要になることが多い
L3〜L5 ・膝の伸展や足首の動きが一部保たれる
・感覚障害は大腿前面/下腿/足の甲など
装具を使用すれば歩行可能になるケースがある

L3以下の損傷では膝の伸展機能が残っている場合もあり、装具を併用したリハビリテーションによって日常的な歩行を目指せるケースがあります。

損傷の程度を正確に評価し、早期からリハビリテーションに取り組むことが重要です。

脊髄損傷後の歩行に向けたリハビリテーション

脊髄損傷後に歩行機能の回復を目指すためには、残存する身体機能を活かしたリハビリテーションが不可欠です。

本章では、脊髄損傷後に行われる主なリハビリテーションの内容について解説します。

以下でそれぞれのリハビリテーション内容について詳しく見ていきましょう。

歩行・移乗訓練

歩行・移乗訓練は、残存している身体機能を活用し、日常生活における移動の自立を目指すリハビリテーションです。

歩行訓練の第一歩は、ベッドから車椅子への移乗(トランスファー)や、平行棒内での立ち上がりといった基礎動作の習得から始まります。

残存している筋力を活かしつつ、腕の力や体幹のバランスを利用して、身体を安全にコントロールする技術を身につけます。

平行棒内での歩行が安定してきたら、歩行器や杖などの補助具を活用した屋外歩行訓練へと段階的に進みます。

早期から歩行訓練を実施することで、歩行機能の向上だけでなく、身体機能の維持・改善にもつながります。

吊り上げ式免荷歩行訓練

吊り上げ式免荷歩行訓練は、専用のハーネスで身体を上方へ牽引し、体重の負荷を軽減しながら歩行訓練を行う方法です。

自力で全体重を支えるのが難しい段階からでも歩行訓練ができるだけでなく、身体が吊り上げられているため、バランスを崩しても転倒する心配が少ない点が特徴です。

また、負荷を自由に調整できるため、過度な疲労を避けながら長時間の反復練習が可能になります。

免荷状態で繰り返し歩行動作を行うことで、正常な歩行パターンの再学習を促し、段階的に自力で歩行できる力を高めていく効果が期待できます。

ロボットリハビリテーション

ロボットリハビリテーションは、HAL(ハル)などの装着型サイボーグや外骨格型ロボットを用いて、歩行動作をアシストする方法です。

HALは、患者さまの生体電位信号(脳から筋肉に送られる微弱な電気信号)を感知して動作を補助する仕組みのため、自分の意思に沿った動きをロボットがサポートしてくれます。

人間が手動で行う介助よりも正確なパターンで反復練習ができるため、神経回路の再構築がより促進されやすいといわれています。

ただし、リハビリテーションの期間が長くなることもあるため、モチベーションを維持しながら計画的に取り組むことが大切です。

下肢の機能回復訓練

下肢の機能回復訓練は、歩行の土台となる筋力や関節の柔軟性を維持・向上させるための重要な基礎トレーニングです。

麻痺した部位の関節が固まってしまう「拘縮(こうしゅく)」を防ぐため、理学療法士が丁寧にストレッチやマッサージを行い、可動域を確保します。

また、わずかでも動く筋肉に対しては、抵抗をかけながら筋力を強化する運動を行い、歩行時の支持性を高めます。

足を地面につく際の感覚入力を繰り返すことで、立ち直り反応やバランス能力を刺激し、ふらつきの少ない安定した足取りの獲得をサポートします。

脊髄損傷後に歩けるようになるには「再生医療」をご検討ください

脊髄損傷後に歩ける可能性は、損傷の程度(不完全損傷・完全損傷)、損傷部位(頸髄・胸髄・腰髄)やレベルによって大きく異なります。

不完全損傷であれば適切なリハビリテーションにより歩行機能の回復が期待でき、装具の使用と併せて歩行を目指せるケースもゼロではありません。

一方で、完全損傷の場合は従来のリハビリテーションだけでは歩行の回復が難しいとされてきました。

しかし、近年では「再生医療」が脊髄損傷の新たな治療選択肢として注目されています。

前述の通り、再生医療は患者さまの細胞や血液を用いて、損傷した神経の再生・修復を促す治療法です。

以下の動画では、再生医療によって脊髄損傷の症状が改善した症例を紹介しているため、併せて参考にしてください。

「自力で歩けるようになる選択肢を探している」「再生医療について詳しく知りたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。

監修者

岩井 俊賢

Toshinobu Iwai

医師

略歴

2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業

2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医

2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科

2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科

2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科

2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長