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脊髄損傷の原因とは|治る可能性はある?症状や治療法について解説【医師監修】

「脊髄損傷の原因は?」
「手足の麻痺が治る可能性はある?」
脊髄損傷の原因は、交通事故や転落、転倒によって強い衝撃が加わる外傷性のものだけでなく、加齢や病気などの非外傷性の原因までさまざまです。
患者さまやご家族の中には、症状が回復する可能性について疑問を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、脊髄損傷の主な原因から重症度の評価項目、治る可能性について詳しく解説します。
「脊髄損傷による手足のしびれにお悩みの方」「将来に不安を抱えている方」は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
脊髄損傷の主な原因・割合
脊髄損傷の主な原因は、日常生活や社会生活の中で生じる強い外力が中心であり、「転倒や転落」と「交通事故」が高い割合を占めています。
具体的には、以下の4つが主な原因として挙げられます。
それぞれの原因がどのような状況で発生しやすいのか、詳しく見ていきましょう。
転倒や転落
脊髄損傷の原因として、高い割合を占めているのが日常生活の中での「転倒」や「転落」です。
日本脊髄障害医学会の調査結果では、脊髄損傷の原因の中でも「平地転倒:38.6%」、「低所からの転落:13.7%」というデータ※があります。
※出典:日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査
階段からの転落や、屋根の雪下ろしなどの作業中の滑落だけでなく、平らな道での転倒によっても脊髄損傷に至る可能性があります。
特に高齢者の場合、骨がもろくなっているケースも多く、わずかな段差で転んだだけでも首の骨を骨折しやすくなります。
転倒・転落リスクを抑えるためにも、手すりやスロープを導入するなど、生活環境を改善することも重要です。
交通事故
日本脊髄障害医学会の調査結果では、脊髄損傷の原因の中でも、平地転倒の次に高い割合を占めているのが「交通事故※」です。
※出典:日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査
交通事故による外部からの大きな衝撃が首や腰の骨に直接伝わり、脊髄の損傷を引き起こします。
自動車やバイクとの衝突事故をはじめ、歩行中の接触事故など、さまざまなケースで発生する可能性があります。
交通ルールを遵守することはもちろん、事故に巻き込まれないように注意して行動することも重要です。
スポーツ外傷
スポーツ中の激しい衝突や不意の落下も、脊髄に大きなダメージを与える重大な原因となります。
無理な体勢で頭や首から落下したり、相手選手と強くぶつかったりすることで、脊髄を損傷するケースが考えられます。
特に、水泳の飛び込みやスキー、ラグビーなどの激しくぶつかり合うコンタクトスポーツにおいて発生しやすい傾向があります。
競技中における適切なルールの遵守はもちろん、運動前後にストレッチなどを行い、怪我の予防に努めることも重要です。
加齢や病気の影響
外部からの強い衝撃だけでなく、加齢による骨の変形や特定の病気が原因で脊髄損傷を引き起こすこともあります。
代表的なものとして、加齢に伴い首の骨が変形する「頚椎症」や、靭帯が骨のように硬くなる「後縦靭帯骨化症」などが挙げられます。
病気によって元々脊髄の通り道が狭くなっていると、軽い転倒やむち打ちでも脊髄が圧迫されてしまいます。
その結果、ちょっとした衝撃が引き金となって手足のしびれや麻痺などの深刻な症状が出やすくなるため、注意が必要です。
脊髄損傷のレベルとは?評価項目(ASIA分類)
脊髄損傷の重症度や残存機能を正確に評価するため、世界共通の基準である「ASIA(エイジア)分類」が用いられます。
「運動機能」と「感覚機能」のテストを行い、評価結果をもとに損傷の全体的な重症度を「ASIA障害スケール」と呼ばれる以下の5段階に分類されます。
| スケール | 損傷の状態 | 運動・感覚機能の残存程度 |
|---|---|---|
| A | 完全損傷 | 損傷部位より下の運動・感覚機能が完全に失われている状態 |
| B | 不全損傷 | 感覚機能のみが残存し、運動機能は失われている状態 |
| C | 不全損傷 | 運動機能が残存するが、半数以上の筋肉が重力に逆らえない状態 |
| D | 不全損傷 | 運動機能が残存し、半数以上の筋肉が重力に逆らって動かせる状態 |
| E | 正常 | 運動・感覚機能ともに正常に回復した状態 |
運動・感覚機能が完全に失われている「A評価」であっても、受傷直後からの適切な治療と専門的なリハビリによって、B〜D評価へ改善する可能性があります。
上記のように正しい重症度の評価を行うことは、患者さまの状態に合わせた適切なリハビリ計画の立案に役立ちます。
脊髄損傷によって生じる主な症状
脊髄を損傷すると、脳から全身へ送られる神経の命令が途絶えるため、損傷部位より下の身体にさまざまな症状が現れます。
具体的に生じる主な症状は、大きく以下の3つに分けられます。
以下でそれぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
運動障害
脊髄を損傷すると脳からの指令が筋肉に伝わらなくなるため、運動障害(麻痺)の症状が見られます。
損傷した部位によって麻痺の範囲が異なり、以下のように区分されます。
- 頚髄:四肢麻痺(手足のすべてが動かせない)
- 胸髄:対麻痺(足が動かせない)
- 腰髄:下半身の筋力低下、歩行困難
- 仙髄:軽度の歩行障害、排泄機能障害
首の脊髄である頚髄を損傷すると、両手足のすべてが動かせなくなる「四肢麻痺」が生じます。
一方、胸髄や腰髄を損傷すると、下半身が動かせなくなる「対麻痺」や下半身の筋力低下などが見られます。
脊髄の中でも最下部に位置する仙髄を損傷すると、排泄に異常が出る「排泄機能障害」が特徴的です。
感覚障害
運動障害と併発しやすいのが、触れた感覚や痛み、温度などが分からなくなる「感覚障害」です。
皮膚からの情報が脳へ正しく伝わらなくなるため、損傷部位より下の感覚が鈍くなったり完全に失われたりします。
感覚がない状態では、熱いものに触れて火傷を負ったり、床ずれができても気づくのが遅れたりする危険性が高まります。
また、触れていないのにしびれを感じたり、強い痛みが慢性的に続いたりするケースも少なくありません。
自律神経障害
脊髄は内臓の働きをコントロールする自律神経の通り道でもあるため、損傷によりさまざまな「自律神経障害」が引き起こされます。
特に生活への影響が大きいのが、尿意や便意を感じにくくなり、自力で排泄をコントロールできなくなる排尿・排便障害です。
また、汗で体温を下げることが難しくなる体温調節障害や起立性低血圧などの症状も見られます。
外からは見えにくいものの、日々の生活において慎重な体調管理とケアが必要となります。
脊髄損傷は治る?主な治療法
一度損傷してしまった脊髄の神経細胞を完全に元通りに治すことは、現代の医学でも困難とされています。
しかし、少しでも後遺症を減らし、残された機能を引き出すために、進行の段階に応じた適切な治療が行われます。
具体的には、以下の2つの時期に分けて治療が進められます。
原因となる事故や転倒などで受傷した直後から、いかに早く適切な処置を開始できるかが、その後の回復を大きく左右します。
それぞれの時期における具体的な治療アプローチについて、順番に確認していきましょう。
急性期|薬物療法や手術療法
受傷直後の急性期においては、脊髄へのさらなるダメージを防ぎ、命を守るための迅速な処置が最優先で行われます。
折れた骨が脊髄を圧迫しているケースでは、早急に手術を行って圧迫を取り除き、背骨を固定して安定させる手術療法などが必要です。
また、神経の腫れや炎症を抑える治療を行い、二次的な損傷の拡大を防ぎます。
この時期に損傷をどれだけ食い止められるかが、今後の麻痺の程度や回復の可能性に影響します。
回復期〜慢性期|リハビリテーション
全身の状態が安定してきたら、残された身体の機能を活用し、日常生活への復帰を目指すリハビリテーションへと移行します。
理学療法士の指導のもと、関節が固まるのを防ぐストレッチや、残存している筋肉の筋力トレーニングなどを根気よく行います。
また、車椅子の操作やベッドからの移乗など、実際の生活を想定した動作訓練も欠かせない重要なステップです。
同時に、排泄のコントロールや床ずれ予防など、自律神経障害に対するケアの方法も専門家の支援を受けながら身につけていくことになります。
脊髄損傷からの機能回復を促す「再生医療」という選択肢
脊髄損傷の原因は、転倒や転落、交通事故といった外傷性のものから、年齢や病気による非外傷性のものまでさまざまです。
損傷部位や重症度によって現れる症状や治療法、回復の可能性には個人差があります。
脊髄損傷による麻痺や感覚障害が見られた場合でも、早期の治療とリハビリテーションの継続によって改善する可能性があります。
近年の治療では、自己細胞を用いて、損傷した組織の再生・修復を促す「再生医療」も選択肢の一つです。
以下の動画では、再生医療によって脊髄損傷による症状が改善した症例を紹介しています。
現在、当院リペアセルクリニックでは再生医療について無料カウンセリングを実施しております。ぜひご相談ください。
監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師























