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脊髄損傷のリハビリトレーニング|目的別メニューと安全に続けるポイントも紹介

脊髄損傷のあと、「リハビリを続けたいのに、何をどこまでやってよいのか分からない」と感じる方は少なくありません。
体調が日によって揺れたり、痛みや疲れが出たりすると、継続そのものが難しくなる場面もあります。
一方で、焦って負荷を上げると、皮膚トラブルや自律神経の問題など、別のリスクが前面に出てしまうことがあります。
そこで本記事では、脊髄損傷のリハビリトレーニングを「目的別の組み立て」と「安全管理」の両面から整理し、自宅で続けるコツまでを分かりやすく解説します。
目次
結論|回復は「目的別トレーニング+合併症予防+継続設計」で最大化できる
回復を伸ばす要点は、やみくもに頑張ることではなく、目的別トレーニングと合併症予防を同時に設計することです。
【回復を最大化する3本柱】
- 目的別トレーニング:歩行・移動、上肢機能、体幹安定、持久力など
- 合併症予防:自律神経過反射、褥瘡、過負荷・痙縮悪化などを先回りする
- 継続設計:疲労・生活動線・介助体制に合わせて「続けられる形」に落とし込む
脊髄損傷のリハビリでは、同じ運動でも「狙い」が違うとやり方も量も変わります。
また、合併症の予防は“別メニュー”ではなく、トレーニングの安全性を支える前提です。
さらに、良いプログラムでも続かなければ効果は積み上がらないため、継続設計が重要になります。
次の章から、安全管理と目的別メニューを順番に整理していきます。
トレーニング前に必ず押さえる安全管理(危険サイン)
トレーニングを安全に続けるには、まず危険サインを見逃さないことが最優先です。
脊髄損傷では、痛みの感じ方が変化したり、体温調節が難しくなったりして、体の異変に気づきにくい場合があります。
だからこそ「よくある不調」と「危険な兆候」を分けて理解しておくことが大切です。
自律神経過反射(AD)の症状と緊急性
自律神経過反射(AD)は、突然の血圧上昇などを起こし得るため、脊髄損傷の方にとって緊急性が高い状態です。
【ADで疑う症状(例)】
- 突然の強い頭痛
- 顔や上半身の紅潮・発汗、鳥肌
- 動悸、息苦しさ、不安感
- 血圧の急上昇(普段より明らかに高い)
ADは、膀胱や腸の刺激、皮膚への圧迫など「損傷レベルより下の刺激」が引き金になると説明されています。
命に関わる高血圧につながり得るため、医療的に緊急対応が必要なケースがある点が重要です。
運動中に「いつもと違う強い頭痛や発汗」が出た場合は、無理に続けず、速やかに中止して対応を確認してください。
皮膚トラブル・褥瘡予防(運動とセットで考える)
褥瘡を防ぐには、運動の質だけでなく、除圧(体圧を逃がす習慣)をトレーニング計画に組み込む必要があります。
【褥瘡予防で押さえるポイント】
- 座位が長い日は、計画的に体圧を逃がす時間を入れる
- 皮膚の赤み・熱感・ただれを毎日確認する
- クッションや座り方の調整を「運動の一部」として扱う
- 衣類の縫い目やずれなど、小さな刺激も見落とさない
車いす生活では、同じ部位に圧が集中しやすく、皮膚トラブルが運動継続の障害になります。
「運動を増やしたい時期」ほど座位時間が伸びやすいため、除圧を先に整えると継続が安定します。
痛み・痙縮・過負荷のサイン(“頑張りすぎ”を避ける)
回復を急ぐほど起こりやすい落とし穴は、過負荷で痛みや痙縮が悪化することです。
【過負荷を疑うサイン】
- 運動後の痛みが翌日以降も強く残る
- 痙縮が増えて動作がぎこちなくなる
- 睡眠の質が落ち、疲労が抜けにくい
- 皮膚のこすれ・赤みが増える
痛みや痙縮が増えると、フォームが崩れて別の部位に負担が移り、負の循環になりやすいです。
また、運動後に疲労が長引くと、日常生活の動作量が落ち、結果として活動全体が低下します。
“頑張った分だけ回復する”とは限らないため、反応を記録して負荷を調整する姿勢が重要です。
気になる変化が出た場合は、運動内容・時間・強度を一度分解し、医療者と再設計してください。
目的別|脊髄損傷の代表的リハビリトレーニング
脊髄損傷のトレーニングは、目的を先に決めることで、「やるべき運動」と「今は避ける運動」が整理しやすくなります。
同じ「歩く」でも、神経の状態、装具の有無、介助量で現実的なゴールは変わります。
また、歩行が目標でなくても、上肢と体幹の強化は生活の自立度を大きく左右します。
さらに、電気刺激の活用は、運動量の確保や筋の働きを補う観点で検討されることがあります。
移動・歩行を目指すトレーニング(立位・歩行・ロボット歩行など)
移動・歩行を目指す場合は、単に脚を動かすよりも、立位での荷重と歩行パターンの学習を段階的に積み上げることが要点です。
【歩行系トレーニングの例】
- 立位練習:安全な支持で荷重に慣れる
- 歩行練習:平行棒・歩行器などを用いてパターンを作る
- 免荷歩行:反復回数とフォームを確保する
- 持久力の土台:疲労でフォームが崩れない範囲で量を調整する
歩行練習は、皮膚トラブルや過負荷のリスクも伴うため、安全管理とセットで進めてください。
介助量や疲労度を記録すると、負荷の調整がしやすく、継続にもつながります。
上肢・体幹のトレーニング(車いす操作・移乗・日常動作の土台)
上肢・体幹は、生活動作の土台であり、移乗や車いす操作の質を左右します。
【上肢・体幹で狙う代表項目】
- 車いすの直進・旋回・段差の操作性を上げる
- 移乗(ベッド⇄車いす)の安定性を上げる
- 肩の過負荷を避けるフォーム(押し方・手の位置)を整える
- 体幹の支持性を高め、上肢だけで無理に代償しない
上肢トレーニングは「強くする」だけでなく、「痛めない使い方」を同時に作ることが重要です。
特に肩は負担が集中しやすく、痛みが出ると生活の自由度が大きく下がります。
体幹の安定が整うと、移乗や更衣などの日常動作が安定し、疲労の積み上がりも抑えやすくなります。
運動は“できる日だけ”になりやすいため、短時間でも毎日回せるメニューに落とし込むと継続しやすいです。
電気刺激(FES等)を活用したトレーニング
電気刺激を用いたトレーニングは、状況によっては運動量の確保や筋機能の補助として検討されます。
【FESを用いる代表例】
- FESサイクリング:下肢に刺激を入れ、回転運動を補助する
- FESローイング:上肢運動に下肢刺激を組み合わせる
- 課題志向の練習:動作の一部を電気刺激で補う
適応・刺激条件・実施体制で結果は変わるため、導入前に目的と評価指標を確認することが重要です。
皮膚刺激や疲労の出方も個人差があるため、無理のない範囲で段階的に調整してください。
脊髄損傷のリハビリトレーニングを自宅で続けるコツ
自宅で続ける最大のコツは、意志ではなく仕組みで回すことで、「続けられる条件」を先に整えることです。
【自宅継続が安定する工夫】
- 時間:5〜10分でも「毎日できる枠」を先に確保する
- 場所:ベッド横・車いす周辺など、準備が最小で済む配置にする
- 記録:疲労・皮膚・痛みの変化を簡単に残し、調整材料にする
- 安全:ADや皮膚トラブルの兆候が出たら中止するルールを作る
自宅では、体調や介助者の都合で予定が崩れやすく、完璧な計画ほど破綻しやすいです。
そのため、短時間でも積み上がるメニューを核にし、調子の良い日に追加する形が現実的です。
また、記録があると「何をした日に悪化したか」が分かり、過負荷を避けた再設計が可能になります。
トレーニング器具がなくても、姿勢・呼吸・体幹支持など、土台に当たる要素は自宅でも積み上げられます。
継続が難しい場合は、生活動線や介助体制を含めて医療者に相談し、やり方を“生活に合わせる”発想へ切り替えてください。
改善が頭打ち・慢性期におすすめの再生医療という選択肢
慢性期で改善が頭打ちに感じる場合は、現状の目標を再設定しつつ、再生医療を含めて選択肢を整理する視点が役立つことがあります。
【慢性期にまず整理したい論点】
- 「何が伸びていないのか」(移動・上肢・疲労・痛み・痙縮など)を分ける
- 合併症(皮膚・自律神経・肩痛など)が継続を阻害していないか確認する
- トレーニングが目的に合っているか、量と質を見直す
- 治療選択肢の比較を行い、納得できる方針へ組み替える
慢性期の課題は、単に「回復が止まる」ことよりも、「続けられない要因が増える」ことにあります。
痛みや皮膚トラブルが重なると、トレーニングの量が確保できず、改善の実感が得にくくなります。
この段階では、運動メニューだけでなく、環境調整や症状の切り分けも含めて総合的に再設計することが重要です。
選択肢を比較できる相談先があると、漫然と同じ対応を続ける状態を避けやすくなります。。
リペアセルクリニック大阪院では、慢性期での停滞感や合併症の不安を含め、状態評価と選択肢の整理を重視し、必要に応じて再生医療の可能性も含めて相談を受け付けています。
「安全に続けたいが不安が残る」「自宅継続が破綻してしまう」と感じる場合は、現状を評価し直すことが第一歩になります。
| リペアセルクリニック大阪院の特徴 | 内容 |
|---|---|
| 相談の軸 | 症状の経過、生活上の困りごと、リハビリ継続状況の整理 |
| 治療の視点 | 危険サインの確認、皮膚・痛み・痙縮の影響、負荷のかかり方の分析 |
| 提案の方向性 | 目的別トレーニングの再設計、継続計画の最適化、治療選択肢の比較 |
| サポートの考え方 | 安全確保と継続の両立、生活動線に合わせた実行可能性の重視 |
脊髄損傷のリハビリトレーニングは安全を守りながら続けられるトレーニングが重要
成果を積み上げる条件は「安全」と「継続」であり、続けられる設計こそが回復の土台になります。
【この記事の要点】
- 危険サイン(AD・皮膚・過負荷)を先に押さえ、安全を最優先にする
- 目的別にメニューを組み、狙いと評価指標を明確にする
- 自宅継続は「仕組み化」と「記録」により安定しやすくなる
- 慢性期は目標の再設定と選択肢整理が前進のきっかけになる
脊髄損傷のリハビリは、短期の頑張りではなく、長期に積み上がる形に整えることが重要です。
そのためには、合併症予防を運動と切り離さず、生活の中に落とし込む必要があります。
改善が頭打ちに感じる場合も、目標と手段を見直すことで、進み方が変わることがあります。
リペアセルクリニック大阪院では、状態評価と選択肢の整理を重視し、必要に応じて再生医療の可能性も含めて相談を受け付けています。
安全に継続するための方針が曖昧な場合は、早めに相談し、継続設計を整えましょう。
監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設
















