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股関節の手術後、生活はどう変わる?退院後の注意点と復帰の目安を紹介

股関節の手術後、生活はどう変わる?退院後の注意点と復帰の目安を紹介
公開日: 2025.12.26

股関節の手術を控えている、あるいは退院したばかりで、股関節の手術後の生活がどう変わるのか不安な方も多いのではないでしょうか。

歩けるようになるのか、家事はいつからできるのか、車はいつ運転できるのかなど、気になることが次々に出てきます。

一方で、周りに相談できる人がいないと「これってやっていいのかな」と判断に迷い、動くのが怖くなることもあるかと思います。

そこで本記事では、退院後の注意点と復帰の目安を時期別・生活シーン別に整理し、安心して生活を組み立てるヒントをお伝えします。

結論|術後生活は「やってはいけない動作」と「段階的な復帰」がカギ

術後の生活を安定させるコツは、やってはいけない動作を避けつつ段階的に復帰することです。

【術後生活でまず押さえる要点】

  • 深く曲げる・ひねる・脚を組むなど、脱臼リスクがある動作は避ける
  • 退院直後は「できること」を増やすより「痛みと腫れを増やさない」ことを優先する
  • 歩行距離や家事は、週単位で少しずつ増やす
  • 不安な動作は自己判断せず、主治医・理学療法士の指示を基準にする

特に人工股関節の手術後は、術式や進入方法によって注意点が変わるため、同じ「股関節手術」でも一律ではありません。

また、痛みが減ったからといって可動域を急に広げると、腫れや筋肉痛がぶり返すことがあります。

逆に、怖がって動かない期間が長いと、筋力が落ちて歩行が不安定になりやすい点も注意が必要です。

無理のない範囲で「守るべき動作制限」と「増やすべき活動」を分けて考えると、術後の生活は整えやすくなります。

股関節手術後の生活で不安になりやすいポイント

股関節手術後の生活で不安が強くなりやすいのは、日常動作のどこに危険が潜むかが見えにくいためです。

【よくある不安の例】

  • トイレや入浴で、うっかり前かがみになりそう
  • 靴下や靴ひもを結ぶ動作が怖い
  • 車の乗り降りで股関節をひねってしまいそう
  • 痛みが減ったのに、歩くと疲れやすい
  • 仕事や家事をいつから再開してよいかわからない

術後は、関節そのものだけでなく、切開した筋肉や周囲の軟部組織が回復途中の状態です。

そのため「関節は動きそうでも、支える筋肉が追いついていない」というズレが起こりやすくなります。

また、痛みを避ける歩き方が癖になると、腰や膝に余計な負担がかかりやすい点も見逃せません。

不安を減らすには、危険動作と安全な代替動作をセットで覚え、生活の場面ごとに対策を作っておくことが有効です。

時期別|退院後の生活の目安(できること・注意点)

退院後の生活は、時期ごとの目安を知って段階的に広げると失敗が減ります。

術後の注意点は「何週間」と固定で決まるわけではなく、筋力・痛み・安定性で前後します。

ここでは一般的な目安を示しますが、最終判断は主治医やリハビリ担当者の指示を優先してください。

退院直後〜1か月(無理をしない時期)

退院直後〜1か月は、無理をしない時期として生活の安全化を最優先にします。

【この時期の目標】

  • 室内移動とトイレ動作を安全に行う
  • 転倒リスクを減らす(段差・コード・滑り対策)
  • 痛みと腫れを増やさない範囲で歩く
  • 禁止動作を守る(深い前屈、ひねり、脚組みなど)

痛みが落ち着くと動けそうに感じますが、筋肉や靱帯はまだ回復途中です。

特に低い椅子や低い便座は立ち上がりで深く曲がりやすいため、座面の高さを調整する工夫が有効です。

退院後の「やり過ぎ」は数日遅れて痛みや腫れとして出ることがあるため、翌日に響く量は減らす意識が必要です。

医療機関から「股関節を90度以上曲げない」「脚を組まない」などの注意が出ている場合は、まずその指示を徹底してください。

注意期間は状態により異なりますが、6〜12週間の動作注意が示されることもあります。
参照:Royal National Orthopaedic Hospital「Hip precautions following total hip replacement」

1〜3か月(動作が広がる時期)

1〜3か月は、動作が広がる時期として体力と筋力を戻す段階です。

【この時期に増やしやすいこと】

  • 屋外歩行の距離を少しずつ延ばす
  • 階段の練習(手すり活用)
  • 家事の一部再開(短時間・分割)
  • 筋力トレーニングの継続(中殿筋・体幹など)

生活が戻り始める一方で、疲労が溜まると歩き方が崩れ、膝や腰が痛くなることがあります。

「できる日」と「つらい日」が混ざるのは自然なので、悪い日に合わせて計画を組むと無理が減ります。

車の運転や職場復帰は目安が示されることがありますが、痛み止めの使用状況や反応速度も含めて個別判断が必要です。

この時期は「痛くないから増やす」ではなく、「翌日に腫れない範囲で増やす」を基準にすると安定します。

3か月以降(再発予防を意識する時期)

3か月以降は、再発予防を意識する時期として動作の質を整えることが重要です。

【この時期の意識】

  • 歩行の左右差を減らす(跛行の改善)
  • 転倒予防のためのバランス練習
  • 無理のない運動習慣(低衝撃中心)
  • 体重管理で関節負担を下げる

日常生活は多くの方が楽になりますが、筋力が十分に戻っていないと長距離移動や坂道で疲れやすさが残ります。

運動の再開は医師の許可が前提ですが、低衝撃のスポーツは術後3〜6か月以降に許容されることが多いとされています。
参照:日本リハビリテーション医学会(J-STAGE)「人工股関節全置換術後の日常生活動作とスポーツ活動」

逆に、転倒リスクが高い運動や急な切り返しが多い運動は慎重に判断する必要があります。

この時期こそ、リハビリで身につけた動作を「生活の癖」として定着させることが、長期の安心につながります。

痛みが少ないからこそ、雑な動きが増えやすい点には注意しましょう。

生活シーン別の注意点

退院後の事故や痛みのぶり返しを減らすには、生活シーン別に危ない動作を具体化しておくことが有効です。

「これは大丈夫」と思い込んでしまう場面ほど、実は角度やひねりが入りやすくなります。

ここでは、よく質問が多い生活場面を取り上げ、代替動作の考え方も合わせて整理します。

歩行・階段・立ち座り

歩行や立ち座りは、毎日繰り返す動作だからこそ負担が積み上がる点が要注意です。

【安全に行うコツ】

  • 歩幅を小さめにして、痛みが出ない速度で歩く
  • 階段は手すりを使い、疲れたら無理をしない
  • 椅子は高めを選び、腕置きがあると立ち上がりやすい
  • 立ち上がりは体を前に倒し過ぎず、手の支えを活用する

歩行は「距離」より「質」が大切で、左右の揺れが大きいまま距離を伸ばすと腰や膝が先に痛くなることがあります。

階段は負荷が高いため、家の中の移動で疲労が出る日は回数を減らす判断も必要です。

また、低い椅子は股関節の屈曲が深くなりやすく、術式によっては避けた方が良い場合があります。

生活の中で「手すり」「椅子の高さ」「床の段差」を整えるだけでも、痛みの波が小さくなりやすいです。

不安が残る場合は、外来リハで立ち座りや階段のフォーム確認をしてもらうと安心です。

入浴・トイレ・靴下など前屈動作

入浴や靴下は、前屈動作で深く曲がりやすいため工夫が必要です。

【おすすめの工夫方法】

  • 洋式トイレの高さ調整(補高便座など)
  • 浴室で滑りにくいマット、手すりの活用
  • 靴下エイドやリーチャー(補助具)で前かがみを減らす
  • 靴はかかとを踏まずに履けるタイプを選ぶ

退院後しばらくは「足先に手を伸ばす動作」が最大の落とし穴になりやすいです。

特に、床の物を拾う動作は反射的に前かがみになるため、リーチャーの導入だけでも安心感が変わります。

また、浴室は転倒リスクが高いため、濡れた床での方向転換を減らすレイアウトも検討してください。

「補助具を使うのは大げさ」と感じる方もいますが、回復のための一時的な道具と割り切るほうが安全です。

車の乗り降り・長時間移動

車の乗り降りは、ひねりと屈曲が同時に起こりやすいため注意が必要です。

【移動で気をつけたいこと】

  • シートはできるだけ後ろへ下げ、座面を高めに調整する
  • 座ってから両脚をそろえて乗せる(片脚ずつひねらない)
  • 長距離は休憩を挟み、同じ姿勢を続けない
  • 荷物の積み下ろしは無理をせず、周囲に頼る

乗り降りの基本は「先に座ってから脚を入れる」で、立ったまま脚をひねって入れる動きは避けた方が安全です。

また、長時間座るとむくみやこわばりが出やすいため、休憩で歩く時間を作ると楽になります。

痛み止めを服用している場合は運転可否の判断が変わることがあるため、必ず医師に確認してください。

移動を「避ける」よりも「危険動作を減らす方法を先に決める」ほうが、生活は回しやすくなります。

術後リハビリで押さえるポイント

術後の回復を左右するのは、術後リハビリのポイントを外さず続けることです。

【リハビリの基本要素】

  • 筋力回復(中殿筋・大腿四頭筋・体幹)
  • 歩行練習(左右差の修正、杖の使い方)
  • 可動域の管理(無理に広げず、痛みと相談)
  • 転倒予防(バランス、段差対応)

股関節の痛みが長かった方ほど、手術前から筋力が落ちており、術後に「思ったより疲れる」と感じやすいです。

この疲れやすさは、関節の問題というより、支える筋肉が戻りきっていないサインのことがあります。

また、跛行(びっこ)は無意識に固定化しやすく、腰痛や膝痛の原因になることがあるため、早めの修正が重要です。

近年は動作制限が減少しつつある一方で、術式によっては脱臼予防の動作指導が必要になることがあります。
参照:日本リハビリテーション医学会(J-STAGE)「人工股関節全置換術後の日常生活動作とスポーツ活動」

不安が強い場合は、リハビリで「やってよい動作」と「避けたい動作」を生活場面に落とし込んで確認すると安心です。

仕事・家事・趣味(運動)の再開目安

術後の社会復帰は、仕事・家事・趣味を一気に戻さず段階化することが重要です。

【再開の考え方】

  • 家事:短時間に分割し、前かがみ作業を減らす
  • デスクワーク:座りっぱなしを避け、こまめに立つ
  • 立ち仕事:休憩導線を作り、痛みが出る前に調整する
  • 運動:低衝撃中心から開始し、転倒リスクを避ける

復帰が早い方でも、術後の体は「動けるが持続しない」状態になりやすく、無理をすると翌週に疲れが出ることがあります。

仕事の復帰目安は業務内容で差が大きいため、職場と相談し、最初は時短や軽作業から始めるのが現実的です。

運動は「痛みがないから何でも良い」ではなく、転倒・衝撃・急旋回を避ける選び方が重要です。

不安が残る場合は、趣味復帰の動作をリハビリで模擬し、危険動作がないか確認してから進めると安全です。

痛みや違和感が長引く場合の考え方

術後に痛みや違和感が長引くときは、原因を分解して早めに相談することが大切です。

【長引く痛みで確認したい視点】

  • 筋力不足や歩き方の癖で負荷が集中していないか
  • 腰・膝など他関節の痛みが混ざっていないか
  • 腫れ・熱感・発熱など、炎症サインがないか
  • 動かすと鋭い痛みが出る動作が特定できるか

術後の痛みは回復過程で揺れますが、「日ごとに悪化する」「熱感が強い」「全身状態が悪い」などは放置しない方が安全です。

また、痛みを避ける歩き方が続くと、お尻や太もも外側が張り、生活のしづらさが残ることがあります。

この場合は、関節そのものより、周囲の筋肉・腱の使い方の修正が効果的なこともあります。

保存的なケアを続けても改善が乏しいときは、状態によって再生医療を含めた「次の選択肢」を整理しておくことも一案です。

何が原因か曖昧なまま我慢を続けるより、検査や評価で方向性をはっきりさせた方が、生活設計は立てやすくなります。

手術をしない新しい治療「再生医療」を提供しております。

まとめ|「生活設計+リハビリ」で術後の安心感は作れる

股関節の手術後は、生活設計とリハビリをセットで進めることで不安を減らしやすくなります。

【この記事の要点】

  • 術後は「避ける動作」と「増やす活動」を分けて考える
  • 退院後は時期別にできることを広げ、やり過ぎを防ぐ
  • 前屈・ひねり・低い椅子などは場面ごとの対策が重要
  • リハビリは筋力と歩行の質が要で、再発予防につながる

術後は「できることが増える喜び」と「再び痛くなる不安」が同時に出やすい時期です。

だからこそ、生活の中で迷いやすい動作を先に洗い出し、代替策を決めておくと安心感が作れます。

また、痛みや違和感が長引く場合は、原因を整理して評価し、必要なら治療方針を組み替える視点が欠かせません。

リペアセルクリニック大阪院では、術後の痛みが残るケースも含め、状態評価と選択肢の整理を重視し、必要に応じて再生医療の可能性も含めて相談を受け付けています。

「退院後の生活が思うように整わない」と感じる場合は、我慢を続ける前に一度ご相談ください。

リペアセルクリニック大阪院の特徴 内容
評価の視点 疼痛部位の切り分け、歩行・動作の負荷評価、併発要因の確認
提案の方向性 保存的ケアの最適化、生活動作の調整、必要時の治療選択肢の比較
サポートの考え方 生活設計と再発予防の両立、長期の負担軽減を意識した案内

 

【相談時に整理しておくと役立つこと】

  • いつから、どの動作で痛むか(歩行・立ち座り・寝返りなど)
  • 痛みの場所(鼠径部、外側、お尻、太ももなど)
  • リハビリ内容と、増やしたら悪化する負荷
  • 画像検査や血液検査の結果があるか

同じ「術後の痛み」に見えても、原因が違えば対策も変わります。

症状の出方を言語化しておくと、診察での確認がスムーズになります。

治療は一つに決め打ちせず、現状に合う手段を比較して判断することが大切です。

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監修者

岩井 俊賢

Toshinobu Iwai

医師

略歴

2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業

2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医

2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科

2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科

2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科

2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長