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膝のヒアルロン酸注射が「失敗」と感じる理由は?効かない原因と次の選択肢を紹介

膝のヒアルロン酸注射をしたのに、思ったほど良くならないとお悩みの方もいらっしゃるかと思います。
痛みが続くと、仕事や家事の段取りまで狂ってしまい、「このまま悪化したらどうしよう」と焦ってしまう原因にもなります。
そこで本記事では、膝のヒアルロン酸注射が失敗と感じる理由を整理し、効かない原因と次の選択肢までをわかりやすく解説。
ヒアルロン酸注射以外の選択肢についても、紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
結論|失敗の多くは「適応・病期・期待値のズレ」と「一時的な反応」
「失敗」と感じる背景の多くは、治療の向き不向きや病気の進み具合、期待していた改善のイメージにズレがあることに加えて、注射直後の一時的な反応が重なって起こります。
【失敗と感じる背景】
- 適応が合っていない(原因が別にある)
- 病期が進んでいて効果が出にくい
- 期待値が高すぎて「効いたのに失敗」と感じる
- 注射後の痛み・腫れなどの一時的な反応で不安が増す
ヒアルロン酸注射は、合う人には助けになる一方で、万人に同じ結果が出る治療ではありません。
さらに、注射は「痛みがゼロになる魔法」ではなく、日常動作が少し楽になる程度が目標になることもあります。
つまり、「失敗かどうか」は感覚だけで決めるより、原因と病期を整理して判断するほうが納得しやすいのです。
まずは、よく起こるパターンを知り、いまの状況がどれに当てはまるかを確認しましょう。
ヒアルロン酸注射とは?効果の位置づけと限界(知っておくべき前提)
ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにする性質を期待して膝関節内に注入する治療で、痛みの軽減や動かしやすさの改善を目的に行われます。
- 目的:痛みの軽減、動作の負担軽減、生活の維持
- 得意:軽〜中等度の痛みで「動くとつらい」タイプ
- 苦手:変形が強い、炎症が強い、原因が半月板や筋力低下中心
- 注意:効果の感じ方に個人差がある
実際、学会の診療指針では、膝の変形性関節症に対するヒアルロン酸注射は「 routine( routine use )としては推奨しない」とする記載もあり、効果に限界がある点は前提として知っておく必要があります。
参照:AAOS Clinical Practice Guideline “Management of Osteoarthritis of the Knee (Non-Arthroplasty)” (2021)
一方で、「合う人には一定の痛み軽減を感じることがある」といった臨床的な実感もあり、治療の価値がゼロという意味ではありません。
参照:AAOS OrthoInfo “Viscosupplementation for Knee Arthritis”
大切なのは、注射の役割を「痛みを和らげて動ける状態を作り、運動療法や体重管理につなげる補助」と捉えることです。
この前提があるだけで、「効かない=失敗」と短絡的に決めつけにくくなります。
「失敗」と感じやすいパターン
ヒアルロン酸注射を「失敗」と感じる場面には共通点があるため、まずは代表的なパターンを先に押さえると整理がしやすくなります。
同じ「効かない」に見えても、原因は「病期」なのか「別の病気」なのかで対応が変わります。
また、注射後の反応は一過性のこともあり、タイミングの問題で不安が増幅している場合もあります。
自分がどのパターンに近いかを確認すると、次に何をすべきかが見えやすくなります。
注射しても効果が出ない
効果が出ないと感じる場合は、そもそも痛みの主因が注射の得意領域ではない可能性があります。
【効果が出ない原因】
- 変形が進んでいて、関節の構造変化が強い
- 膝以外(股関節・腰)由来の痛みが混ざっている
- 半月板や靱帯、滑膜炎など別要因が主役になっている
- 筋力低下や歩き方の癖で負荷が集中している
「注射したのに変わらない」と焦るときほど、痛みの出方(階段がつらいのか、立ち上がりがつらいのか)を具体的に振り返ることが役立ちます。
たとえば、歩き始めだけ痛いタイプと、歩くほど痛いタイプでは、関与する要素が変わることがあります。
また、注射は“今ある痛み”を薄める補助であり、根本の負荷(筋力・体重・動作)を放置すると手応えが出にくいこともあります。
改善が乏しいときは「同じ注射を続けるか」ではなく、「原因を再評価するか」を主軸に据えるほうが納得しやすいです。
一時的に痛み・腫れが増えた
注射後に痛み・腫れが増えたとしても、それだけで危険とは限らず、数日で落ち着く一時的な反応のことがあります。
注射後には一時的な痛みや腫れが出ることがあるため、強い運動は1〜2日避けることが推奨されます。
また、少数ですが強い腫れと痛みを伴う注射後反応が起こり得ることも説明されており、つらい場合は医療機関での対応が必要です。
参照:Cleveland Clinic “Knee Gel Injections (Viscosupplementation)”
痛みが増えたときは「我慢する」よりも、「いつから」「どれくらい」「熱感はあるか」をメモして相談すると話が早く進みます。
不安な反応ほど、自己判断で放置せず早めに確認することが結果的に安心につながります。
期待していた改善と違った
期待していた改善と違ったと感じるときは、注射に求めていたゴールが「治る」になっていた可能性があります。
膝の痛みは、炎症・変形・筋力・体重・動作の癖が絡み合って出ることが多く、「注射だけ」で全部を片づけるのは現実的に難しい場面があります。
そのため、医師と「何ができるようになれば成功か」を先に共有しておくと、治療の評価がブレにくくなります。
たとえば「夜間痛が減る」「買い物が最後まで歩ける」など、生活目線の目標があると判断しやすいです。
期待値の調整は妥協ではなく、次の手を最短で選ぶための準備だと考えると前向きになれます。
ヒアルロン酸注射が効かない主な原因
ヒアルロン酸注射が「効かない」原因を改善するには、「病期」「併存症」「生活要因」に分けて考えるのが近道です。
同じヒアルロン酸注射でも、効きやすい条件と効きにくい条件があるため、まずは当てはめてみましょう。
ここを押さえると「続けるべきか」「別の治療に切り替えるか」の判断がしやすくなります。
変形が進んでいる・炎症が強いなど病期の影響
病期の影響で効きにくい場合は、関節の構造変化が強く、注射のサポートだけでは追いつかない状態になっていることがあります。
【変形が進んでいる・炎症が強いなど病期の影響】
- 骨の変形が強く、関節の隙間が狭い
- 炎症が強く、水がたまりやすい(腫れや熱感が出やすい)
- 動かすたびに痛みが出て、筋力が落ちやすい
- 痛みのために活動量が減り、さらに悪循環になる
この段階では、注射で少し楽になっても「すぐ戻る」と感じやすく、失敗の印象につながりがちです。
ただし、病期が進んでいても、痛みを抑えながら運動療法に入れれば生活が整うケースはあります。
大切なのは、画像や診察所見と日常の困りごとをセットで評価し、いまの治療が目的に合っているかを確認することです。
「効かない理由が病期なら、次に何を足すべきか」が見えやすくなります。
併存症(半月板・筋力低下・肥満など)に原因がある
併存症が主因の場合は、関節内への注射だけでは痛みの根っこに届かず、結果として「効かない」状態になりやすいです。
【併存症の例】
- 半月板由来の痛み(ひっかかり感、動作で鋭い痛み)
- 太ももの筋力低下(膝が支えられず負荷が集中)
- 体重増加(歩くたびの負担が積み上がる)
- 股関節・足首の硬さ(膝に代償が起きる)
たとえば筋力低下が進んでいると、痛みが少し下がっても「膝が不安定で怖い」という別の困りごとが残ります。
また、体重や歩き方の問題が大きいと、注射で関節内の環境を整えても負荷が上回ってしまいます。
この場合は「注射をやめる」ではなく、「注射に何を組み合わせるか」を考えるほうが合理的です。
原因が複数あるほど、治療も“組み立て”が必要になります。
注射だけに頼り、運動療法・体重管理が不足している
運動療法・体重管理が不足すると、注射の効果が出ても生活の中で上書きされやすく、結局「変わらない」状態に戻りやすいです。
【おすすめのトレーニング】
- 太もも前(大腿四頭筋)やお尻の筋力トレーニング
- 膝に優しい有酸素運動(自転車、水中歩行など)
- 痛みが出にくいフォームの練習(立ち上がり・階段)
- 食事と活動量の見直しによる体重コントロール
注射は「動ける時間」を作る補助になり得るため、そのタイミングで運動に入れるかどうかが差になります。
逆に、痛みが怖くて動かない期間が長いと、筋力が落ちて膝の負担が増え、注射の実感が薄れやすいです。
「注射+生活の整え方」をセットで考えると、失敗感は減らしやすくなります。
注射後に「危険かもしれない」サイン(受診目安)
注射後の違和感はよくありますが、以下の受診の目安になるサインを知っておくと、必要以上に悩まずに済みます。
- 腫れが強く、日ごとに悪化する
- 熱感がはっきりして、赤みが広がる
- 発熱を伴う、全身状態が悪い
- 体重をかけられないほどの痛みが続く
- 痛みや腫れが「時間とともに軽快せず」むしろ増す
関節注射はまれに感染リスクがあるため、異常な腫れや熱感がある場合は放置せず相談することが大切です。
また、痛みや腫れが続く・悪化する場合は医療者に連絡することが推奨されます。
「様子見でよい反応」と「早めに確認したい反応」を分けておくと、治療を続けるかどうかの判断もしやすくなります。
不安が強いときほど、遠慮せず受診の目安を医療機関に確認してください。
失敗を減らすためにできること(続け方・併用策)
「失敗」を減らす最も現実的な方法は、以下のように続け方・併用策を最初から設計しておくことです。
- 「何ができるようになれば成功か」を医師と共有する
- 注射の効果判定のタイミングを決めておく(例:数週間単位)
- 運動療法(筋トレ・有酸素)を同時に開始する
- 体重・歩き方・靴など、日常の負荷を下げる工夫をする
注射を受ける前に「どのくらいの改善を、どの期間で見るか」を決めておくと、期待値のズレが起こりにくくなります。
また、運動は万能ではありませんが、膝を支える筋肉を戻すことは多くの人に共通して重要です。
体重や生活動作の癖は、短期で変わりにくい一方で、長期の痛みには大きく影響します。
だからこそ、注射を“単独イベント”にせず、「膝を守る習慣の開始点」にする意識が役立ちます。
改善しない場合の治療選択肢
ヒアルロン酸注射で改善が乏しい場合でも、治療選択肢は一つではありません。
【おすすめの治療法方法】
- 運動療法・理学療法(フォーム修正、筋力強化)
- 減量や生活指導(負荷を下げる)
- 装具(サポーター、足底板)
- 内服・外用の鎮痛薬(体質や併存症に配慮して調整)
- 症状が強い場合は手術を含む検討(病期に応じて)
ガイドラインでは、運動や体重減少が痛み・機能の改善に推奨されており、土台としての価値が高いことが示されています。
参照:AAOS Clinical Practice Guideline “Management of Osteoarthritis of the Knee (Non-Arthroplasty)”
「注射が合わない=もう手詰まり」ではなく、原因に合わせて組み替える余地が残っていることがほとんどです。
特に、半月板や筋力、体重などの要素が大きい場合は、組み合わせ治療で納得できるラインまで改善することもあります。
痛みが長引くほど生活の質が落ちやすいので、早めに次の一手を相談できる体制が重要です。
まとめ|「失敗」の正体を分解して、次の一手を決めることが重要
膝のヒアルロン酸注射を「失敗」と感じるときは、適応・病期・期待値と注射後の反応を分けて考えると、状況が整理しやすくなります。
【記事のまとめ】
- 効かない理由は「注射が悪い」ではなく「条件の不一致」のことがある
- 注射後の痛み・腫れは一時的なこともあるが、危険サインは早めに確認する
- 注射は単独で完結させず、運動療法・体重管理とセットで考える
- 改善が乏しい場合も、治療は組み替え可能で選択肢は残る
それでも「保存療法を続けているのに痛みが戻る」「生活を整えても限界がある」と感じる方もいるはずです。
そのような場合は、より根本に近いアプローチとして再生医療を含めた相談を検討する価値があります。
リペアセルクリニック大阪院では、慢性的な膝の痛みに対して、原因や生活背景まで踏まえたカウンセリングを重視し、治療の選択肢を整理したうえで提案しています。
「注射が合わなかったのかもしれない」と悩んでいる方こそ、いまの状態に合う次の一手を一緒に考えることが重要です。
| リペアセルクリニック大阪院の特徴 | 内容 |
|---|---|
| 相談の進め方 | 症状の経過・生活で困る場面・これまでの治療歴を整理し、次の選択肢を比較しながら説明 |
| 重視するポイント | 「何が痛みの主因か」を見立て、注射・運動・生活調整だけで足りない要素があるかを確認 |
| 提案の考え方 | 保存療法の継続が妥当か、段階を上げるべきかを、期待値とリスクの両面からすり合わせ |
| フォローの視点 | 治療だけでなく、再発予防の観点から日常動作・負荷管理も含めて案内 |
「このまま同じ治療を続けてよいのか」「次に何を試すべきか」が曖昧なままだと、不安だけが積み重なってしまいます。
だからこそ、現状を評価し直し、選択肢を比較したうえで納得できる判断をすることが大切です。
監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設
















