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ストレスで血圧が上昇する原因|下げる方法はある?高血圧との関係性と対処法を解説

ストレスは、心だけでなく血管にも直接的な負担をかけ、一時的な血圧上昇を引き起こす大きな要因となります。
「イライラした後に血圧を測ったら、普段より数値が高くて驚いた」という経験はありませんか?
このような血圧上昇は、ストレスホルモンの分泌や防衛反応によって交感神経が活性化し、血管が収縮されることで起こります。
本記事では、ストレスが血圧を上げるメカニズムから、日常生活ですぐに実践できる具体的な対処法について詳しく解説します。
ストレスと血圧の関係性を正しく理解し、健やかな毎日を取り戻すためのヒントとしてお役立てください。
目次
ストレスで血圧が上昇する3つの原因
ストレスによって血圧が上がる原因は、以下のとおりです。
ストレスによる血圧上昇の原因を知ることで、ご自身の体調変化を冷静に捉えるためのヒントが見つかるでしょう。
以下でそれぞれの原因について解説します。
ホルモン分泌による血管の収縮
脳がストレスを感知すると、体内でコルチゾールやアドレナリンなどの「ストレスホルモン」が分泌されます。
これらの物質には、心臓の拍動を強めて血液を送り出す量を増やすと同時に、血管を収縮させる作用があります。
収縮して狭くなった血管を大量の血液が通ろうとするため、血管壁への圧力が急激に高まり、血圧が上昇します。
防衛反応による交感神経の活性化
急なストレスに対して防衛反応が働き、交感神経が優位になることで血圧の急上昇を引き起こします。
これは人間に備わっている「防衛機制」と呼ばれるもので、心拍数の上昇や血管の収縮などの身体的反応以外にも、イライラや落ち込みなどの心理的反応が現れます。
緊張や激しい怒りを感じた瞬間にドキドキと心拍数が上がるのは、交感神経が一気に活性化しているサインです。
一時的なものであれば問題ありませんが、頻繁にこのスイッチが入ると血管へのダメージが蓄積されるため、リラックスする時間を意識的に設けましょう。
慢性的なストレスによる自律神経の乱れ
長期間ストレスを感じていると、自律神経の切り替えがスムーズにいかなくなり、血圧が高い状態が常態化してしまうリスクがあります。
本来であれば、リラックスしている時には副交感神経が働き、血管を拡張させて血圧を下げる機能が働くはずです。
しかし、仕事のプレッシャーや人間関係の悩みによる持続的なストレスによって、常に交感神経が張り詰めた状態になり、休息時でも血圧が下がりにくくなってしまいます。
診察室以外で血圧が高くなる「仮面高血圧」と呼ばれるケースも多く、気づかないうちに動脈硬化を進行させる要因となります。
ストレスと高血圧の関係性|血圧測定時に上昇する2つのタイプ
ストレスによる血圧上昇は、測定する場所や環境によって数値が大きく変動することがあります。
特定の状況下でのみ血圧が上昇する高血圧のタイプは、以下の2通りです。
これらは通常の健康診断だけでは正確な状態を把握しにくい特徴を持っています。
ご自身の生活パターンや性格と照らし合わせ、隠れた血圧変動のリスクがないかを確認してみましょう。
職場高血圧
職場高血圧とは、家庭や病院での測定値は正常であるにも関わらず、仕事中や職場にいる時だけ血圧が高くなるタイプを指します。
これは「仮面高血圧」の一種とされ、仕事のプレッシャー、過重労働、人間関係の悩みなどが交感神経を刺激し続けることが主な原因と考えられています。
健康診断では「異常なし」と判定されてしまうため発見が遅れがちですが、実際には血管への負担が長時間続いている状態です。
「仕事中に頭痛がする」「夕方になると動悸を感じる」といったサインがある場合は、就業中の休憩時間などに簡易測定を行い、実態を把握することをおすすめします。
白衣高血圧
白衣高血圧とは、普段の血圧は正常範囲内であるのに、病院や健診会場では緊張から一時的に血圧が急上昇してしまうタイプです。
精神的な緊張や不安が強く作用して起こる反応であり、診察室を出てリラックスすると数値が速やかに戻るのが特徴です。
一過性のものとして扱われることもありますが、ストレスに対して敏感に血圧が反応する体質であるサインとも捉えられます。
医師が正確な診断を下すためには、リラックスできる自宅で毎日決まった時間に測定する「家庭血圧」の記録を持参することが、誤診を防ぐための有効な手段となります。
ストレスで上昇した血圧を下げる方法・対処法
ストレスによる血圧上昇を防いだり、上がった血圧を下げたりするには、高ぶった交感神経を鎮め、心身をリラックスさせる副交感神経の働きを優位にすることが効果的なアプローチです。
主な対処法について解説していきます。
ストレスそのものをゼロにすることは難しくても、体が受けるダメージを軽減する方法は数多く存在します。
今日から無理なく始められる3つの習慣を見ていきましょう。
リラックス法を実践する
意識的に副交感神経のスイッチを入れるためには、深呼吸や入浴といった「リラックス法」を日常に取り入れることが推奨されます。
特に「腹式呼吸」は、場所を選ばず実践できる効果的なケアです。
鼻からゆっくり息を吸ってお腹を膨らませ、口から細く長く吐き出す動作を繰り返すことで、緊張した神経が落ち着きます。
また、38〜40度程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることも血管を広げて血流を良くするため、高めの血圧を落ち着かせるのに役立ちます。
適度な運動を取り入れる
ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、血管を広げる物質の分泌を促し、長期的に血圧を安定させる効果があるといわれています。
運動により血流が良くなると、体内のストレスホルモンの分解が促進され、心身のリフレッシュにも繋がります。
激しいトレーニングは逆効果になることもあるため、「会話ができる程度のウォーキング」や「お風呂上がりのストレッチ」など、うっすらと汗ばむ程度の運動を行いましょう。
1日20分ほど継続することが、健康的な血管ケアへの近道です。
生活リズムを整える
ストレスへの耐性を高めるためには、規則正しい生活リズムを刻み、自律神経のバランスを整えることが大切です。
特に睡眠は、日中に酷使した脳と血管を休ませるための重要な時間です。
睡眠不足は交感神経の緊張を長引かせ、翌日の血圧にも悪影響を及ぼします。
「起床時間を一定にして体内時計をリセットする」「寝る前のスマホ操作を控える」といった工夫で質の高い睡眠を確保し、ストレスに負けない体づくりを目指しましょう。
ストレスによる血圧上昇に関してよくある質問
ストレスと血圧の関係について、多くの患者さまから寄せられる質問にお答えします。
一時的な変動で済むものなのか、正しい知識を持っておくことで、数値に一喜一憂せず冷静に対処できるようになるでしょう。
以下でそれぞれ確認していきましょう。
ストレスで血圧はどれくらい上がる?
強いストレスを感じたり、緊張状態が続いたりすると、血圧は数mmHg〜30mmHg程度上昇する可能性があります。
これは一時的な反応であることが多いですが、例えば病院で数値を計測することに対する緊張で血圧が上昇する「白衣高血圧」などが代表的です。
重要なのは上昇幅そのものよりも、リラックスした後に「速やかに戻るかどうか」です。
時間が経っても高い数値が続く場合は、血管の柔軟性が失われている可能性があるため、一度医師への相談を検討しましょう。
疲労が溜まると血圧は上がる?
蓄積した疲労が交感神経を刺激し続け、血圧を上昇させる直接的な原因となります。
疲れが取れない状態で活動を続けると、体は無理にエネルギーを供給しようとしてアドレナリンを分泌し、血管を収縮させてしまうからです。
特に睡眠不足は、本来下がるはずの夜間の血圧が高いままになる「夜間高血圧」のリスクを高めます。
休息不足は血管へのダメージに直結すると認識し、早めのケアを心がけることが大切です。
高血圧を防ぐためにもストレスを自覚することが重要
ストレスは目に見えないものですが、血管には確実に負担をかけ、高血圧のリスクを高める大きな要因となります。
以下のポイントを押さえて、ストレスによる高血圧を防ぎましょう。
- イライラや緊張が血圧を上げる仕組みを理解する
- 深呼吸や運動でこまめにストレスを解消する
- 家庭での血圧測定を習慣にして変化に気づく
「たかがストレス」と放置せず、早めに対処することが、将来の深刻な病気を防ぐカギとなります。
まずは、深呼吸だけでも構いませんので、できる範囲でご自身の心と体をいたわる時間を作ってみてください。
もし家庭での測定値が高い状態が続くようであれば、迷わず専門医に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
監修者
渡久地 政尚
Masanao Toguchi
医師
略歴
1991年3月琉球大学 医学部 卒業
1991年4月医師免許取得
1992年沖縄協同病院 研修医
2000年癌研究会附属病院 消化器外科 勤務
2008年沖縄協同病院 内科 勤務
2012年老健施設 かりゆしの里 勤務
2013年6月医療法人美喜有会 ふたこクリニック 院長
2014年9月医療法人美喜有会 こまがわホームクリニック 院長
2017年8月医療法人美喜有会 訪問診療部 医局長
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 院長


















